目次
決め物、当て物とは
主に入居希望者が物件を内見するシーンで使われる隠語が「決め物」や「当て物」などの言葉です。
不動産業者の内見案内ルート
内見の目的は入居申し込みをいただくことです。内見するお客さんにとっても早く希望の物件を見つけたいはず。そして、もっとも望ましいルート設定は[3]の「申し込みを確実にもらえるルート」です。
このルート設定にはセオリーがあります。
当て物→中物→決め物
このように、最低3つの物件を用意し、申し込みを入れてもらおうとする“本命”は最後に案内する「決め物」になるのですが、引き物も含めて4つの言葉の意味を紹介します。
隠語 | 読み方 | 意味や使い方 |
---|---|---|
引き物 | ひきぶつ | お部屋探しをしている人に「内見したいな」と思わせる物件のことで、実際に案内可能ですが生活するには難のある物件、問い合わせなど高い反響を目的としている |
当て物 | あてぶつ | 内見の際、最初に案内する物件、引き物よりは条件が良くなりますが、やはり欠点があり“本命物件”の良さを印象付けるのが目的 |
中物 | なかぶつ | 当て物と決め物の中間ぐらいの評価を得る物件、当て物から決め物に一気に移動すると作為的に感じられるため、その心理的なギャップを埋める目的 |
決め物 | きめぶつ | 当て物→中物と見てくると条件がほぼ合致しているように感じ、入居申し込みを決断させる目的 |
不動産業界用語、いくつ知ってますか?
隠語 | 読み方 | 意味や使い方 |
---|---|---|
カラ電 | からでん | 顧客を物件に案内できない事情があり、先方に電話をかけているフリをして「案内を断られた」と言い訳するような場合に使う |
在籍会社 | ざいせきがいしゃ | 入居審査を通りやすくするために入居審査申込書に記載する架空の会社 |
飛ばし | とばし | 内見時に不動産会社の担当者が同行せず顧客だけで内見させる |
ダマ | だま | 明らかにすると入居申し込みを断られる理由になりそうな都合の悪いことを隠すこと、不動産会社が行うこともあれば入居者が行うこともある |
物確 | ぶっかく | 「物件確認」の意味で案内可能な物件かどうかを確認する |
「当て物」扱いされるのには理由がある?
「当て物」や「引き物」のデメリットと、大家さんの大事な物件が入居者募集の現場ではどのような評価を得ているのかチェックする方法をご紹介します。
「当て物」「引き物」にされるデメリット
「当て物」「引き物」にされる理由のほとんどは、物件仕様と設定家賃のアンバランスさです。また、管理会社が行っている仲介会社へのアピール不足があり、仲介会社が正当な評価をしていない可能性もあります。
当て物、引き物かどうかチェックする方法
・物件ごとの内見数や問い合わせ数またはHPアクセス数を確認する
・問い合わせ数やHPアクセス数に比較して内見数が少ない場合は「引き物」の可能性が高い
・内見数が多いのに入居が決まらない場合は「当て物」の可能性が高い
「当て物」「引き物」になっているかの確認も必要ですが、そもそも空室期間が長い物件には何らかの問題や理由があります。そのような物件は設定条件を含めて見直すことが必要です。
不動産営業マンに「決め物」にしてもらうために
では、決め物として認識してもらうために、大家さんにはどのような考え方が必要なのでしょうか?ここでは3つのポイントをご紹介します。
ADは有効?
ADを付けると仲介会社はAD付き物件を優先して紹介する傾向があり、入居が早く決まるメリットがあります。しかし、ADは必要経費の増加につながり収益性を悪化させます。
ADが必ず必要かというと、たとえば1月~3月の繁忙期はADがなくとも入居が決まるケースは多く、募集のタイミングを考えながら活用すべきです。ADに頼ってしまうと、入居したくなるような物件の魅力づくりが疎かになってしまい、本来の賃貸経営のあり方から外れてしまいます。
たとえば、家賃設定が周辺相場や競合物件と比較して割高になっている場合、ADの有無よりも賃貸条件の見直しにより入居率が高まるケースもあります。ADについては必ず必要なものではないといった考え方が重要です。
ADについては売買取引では想定される費用と考えられますが、賃貸借取引においては宅建業法違反になるとの判例が、公益財団法人全日本不動産協会のウェブサイトで紹介されています。
まずは自分の物件を知ってもらおう
「引き物」や「当て物」に該当する物件と意識している物件もあれば、そのような意識をしていない物件も多いと思います。多数の物件から顧客に紹介する際に「決め物」と意識している場合は、優先的に紹介してもらえ、入居申し込みが入る可能性が高まります。
「決め物」と意識してもらうには、まず大家さん自身が所有している物件を担当者に知らせる努力が必要です。そのためには、大家さんとしてすべき活動があります。
こういった地道な努力が実を結ぶものです。
営業マンとの信頼関係が大事
管理会社や仲介の元付業者ばかりでなく、客付け業者の担当者ともできるだけ信頼関係を築いておくことが大切です。
「客付けに強い仲介」や「管理会社との付き合い方」など、仲介会社や管理会社との関係構築に関する記事もあります。ぜひ参考にしてください。
部屋探しをする顧客と直接触れ合う仲介営業マンは、大家さんの顔を浮かべながら案内や商談をすることも多く、単に部屋を紹介・案内するといったドライな関係ではありません。商談成立により入居者・大家さん・管理会社・仲介会社と、関わるすべての人たちが喜び合える“人としての関係”の中で仕事をこなしていると言えるでしょう。
不動産営業マンに軽んじられないようにするには
営業マンからリスペクトされるような大家さんになるには何が必要か、ここでは2つの重要なポイントをお伝えします。
マーケティングは重要
このことは管理会社や仲介会社の担当者から見た大家さんにも言えることで、賃貸経営に明るい大家さんであればあるほど「大家さんのために」といった意識が働きます。
また、中途半端な仕事ぶりでは大家さんに信頼されないといった意識も生まれ、大家さんが「できる人」であるほど、担当者はより真剣により誠実に対応してくれるものです。
そのためには、大家さんは「できる大家」でなければなりません。賃貸市場の相場や人気アイテムのトレンドなど、マーケティングに関する知見を身に付けると自然と「できる大家」になっていくものです。
賃貸管理も仲介も任せきりにしない
家賃設定などの入居条件、退去時の原状回復のグレード、空室対策のキャンペーンなど大家さんみずから検討し、PDCAサイクルを繰り返し賃貸経営のレベル向上を図っていくことができます。
みずからの意志で賃貸経営上重要な決断を行い、専門家としての管理会社や仲介会社をビジネスパートナーと捉え「できる大家さん」でいる姿勢が重要です。
まとめ
そのような物件は「決め物」として評価されることはなく、空室のまま長く放置される可能性があります。
「決め物」「当て物」などの業界用語を解説してきましたが、不動産業界の慣習を理解することにより、管理会社・仲介会社との付き合い方や賃貸経営の基本的な考え方を身に付けることができるのです。
不動産業界の常識・慣習の理解が、不動産のプロたちとのパートナーシップを形成する近道になるでしょう。
この記事の監修者
宅地建物取引士/一級建築士
宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年。住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動中。さまざまな情報が多い不動産業界で正しい情報発信に努めている。
大家さんがADを支払ったからといって、宅建業法に抵触することはありませんが、違法行為を助長することにつながるものであり、好ましいことではありません。ADに頼らず、物件の魅力を高めるとともに賃貸条件がニーズに適合しているかどうかをまず検証してみることが大切です。