目次
サラリーマンの副業として人気の賃貸経営
副業ランキングにランクインすることの多い、人気の賃貸経営。この記事をお読みの方の中にも、関心を寄せている方は多いのではないでしょうか。まずは、サラリーマン大家さんと専業大家さんの違いとメリットおよびデメリットについて、簡単にご説明します。
サラリーマン大家と専業大家の違い
サラリーマン大家さんと専業大家さんの大きな違いは、収入源です。サラリーマン大家さんは勤務先企業からの給与と賃貸経営における家賃収入が収入源となります。一方、専業大家さんは、賃貸経営における家賃収入のみが収入源です。
また、社会保険はサラリーマン大家さんの場合、勤務先企業の加入している健康保険および厚生年金にも加入しますし、保険料は企業との折半となります。一方、専業大家さんをする場合、法人化すれば健康保険、および厚生年金に加入できます。
ただ一般的には個人事業主からのスタートとなるので、国民健康保険、国民年金に加入することになります。法人、個人事業主いずれにしても、実質的に保険料は全額大家さんの負担となります。
また、社会保険はサラリーマン大家さんの場合、勤務先企業の加入している健康保険および厚生年金にも加入しますし、保険料は企業との折半となります。一方、専業大家さんをする場合、法人化すれば健康保険、および厚生年金に加入できます。
ただ一般的には個人事業主からのスタートとなるので、国民健康保険、国民年金に加入することになります。法人、個人事業主いずれにしても、実質的に保険料は全額大家さんの負担となります。
サラリーマン大家のメリット
サラリーマン大家さんのメリットは、勤務先企業から安定した給与が受けられる点です。安定した給与が受けられるため、賃貸物件を取得する際の融資も受けやすいといえます。また、賃貸経営で赤字が生じた場合、給与所得との損益通算もできます。
サラリーマン大家のデメリット
サラリーマン大家さんのデメリットとしては、専ら企業に勤務しているわけですから、賃貸経営にかけられる時間が少ないという点があげられます。そもそも勤務先企業が副業を推奨しておらず、賃貸経営の副業を行う旨を伝えにくいというケースもあるかもしれません。
賃貸経営は、決して不労所得ではありません。賃貸管理には手間を要します。もちろん、賃貸管理を管理会社に委託することもできますが、コストがかかります。
なぜ賃貸経営を行うのか、どれくらいの手間やコストがかかりそうなのか、下調べをしてから実行に移さなければのちのち後悔してしまう可能性もあります。
賃貸経営は、決して不労所得ではありません。賃貸管理には手間を要します。もちろん、賃貸管理を管理会社に委託することもできますが、コストがかかります。
なぜ賃貸経営を行うのか、どれくらいの手間やコストがかかりそうなのか、下調べをしてから実行に移さなければのちのち後悔してしまう可能性もあります。
【専業大家への道1】まずは「事業的規模」を目指そう
専業大家さんを目指すのであれば、事業規模を目指しましょう。その理由は、税制上のメリットを受けられる点にあります。
業務的規模と事業的規模の賃貸経営の違い
不動産投資の収入は、不動産所得として扱われますが、不動産所得は、その規模によって業務的規模と事業的規模に分けられます。その判定基準が、いわゆる5棟10室です。これは、"所得税法基本通達26-9"に示されているものです。不動産所得が事業的規模である場合、税制上のメリットが受けられます。
所得税法基本通達26-9
建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
事業的規模での賃貸経営のメリット
事業的規模で賃貸経営を行うと、下記のような税制上のメリットを受けられます。
青色申告特別控除
青色申告特別控除は、所得金額から最高65万円又は10万円を控除できる制度です。支出を伴わずに、節税を図れます。なお、65万円の控除を受けるためには事業規模である必要があります。青色申告は、複式簿記で記帳し、貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付する必要があることにも留意が必要です。
青色事業専従者給与
賃貸経営を夫婦など、生計を一にしている方と行う場合、その方に支払う給与は原則として必要経費にはなりません。しかし、青色申告の場合、一定の要件の下に実際に支払った給与の額を青色事業専従者給与として、必要経費とすることが認められています。
資産損失
賃貸物件を取り壊すなどした場合、その損失の金額を損失の生じた年分の必要経費に算入することができます。なお、業務的規模の場合、必要経費に算入できるのは、損失の金額を損失の生じた年分の不動産所得が限度となります。
貸倒損失
入居者が家賃を滞納し、本人だけでなく連帯保証人などに滞納解消の依頼、内容証明の送付など強制力のある手段にでても、なお家賃が回収できないというケースもあります。そのようなケースにおいて、賃貸経営が事業規模で行われている時には未納家賃を貸倒損失として経費計上することが認められています。
事業的規模での賃貸経営のデメリット
事業的規模で賃貸経営を行うと、下記のような項目がデメリットとして挙げられます。
個人事業税
所得が一定の金額(290万円)を超える場合、個人事業税の納税義務が生じます。10室のアパートがあり、家賃5万円であった場合、年間の家賃収入は600万円となります。経費が20%かかると仮定しても不動産所得は480万円となるため、事業規模で賃貸経営を行う場合、個人事業税が課税される可能性は高いでしょう。なお、税率は5%で、納税額は経費計上できます。
帳簿の作成
事業規模で税制上のメリットを受けるためには、必ず帳簿を整える必要があります。事業的規模となれば、10室以上の家賃収入と日々の管理コストの記録を複式簿記で記帳し、会計書類の作成、確定申告の準備を行う手間がかかります。
【専業大家への道2】経営の収益を拡大していくには
賃貸経営は、文字通り賃貸物件を活用した事業経営です。専業大家さんとなる場合、収入減少を回避するために、時流を見極め、事業拡大や修繕などを検討する必要もあります。
追加投資(新規物件取得)か買い替えが必要
賃貸経営のリスクの1つである空室リスクを回避するためには、空室率を低く抑えるために対策を講じる必要があります。
たとえば、賃貸物件は未来永劫、新築物件であり続けることはできません。一般的に何も対策を講じなければ、老朽化に従い空室率は増加する傾向にあります。そのため、築浅物件に買い替えたり、老朽化を感じさせないようなリフォームを施したりといった対策を講じる必要があります。
新たに新規物件を取得して、空室率を下げる方法もあります。たとえば、所有する賃貸物件が1室しかなければ、1室空室になれば空室率は100%です。しかし、所有する賃貸物件が10室あれば、1室空室になったとしても空室率は10%です。このように、所有する賃貸物件の数を増やすことによって1室あたりの空室率を下げることができます。
いずれの方法も、大きな金額を必要とするため、金融機関から追加融資を受ける必要があります。そのためには、日々満室経営のための対策を講じて賃貸経営状況を良好に保ち、延滞なく返済を行う実績作りも求められます。
あわせて、将来的に自身で行う賃貸経営をどう終わらせるのか(売却、子どもへの相続など)についてもビジョンを明確にしておくのが望ましいでしょう。
たとえば、賃貸物件は未来永劫、新築物件であり続けることはできません。一般的に何も対策を講じなければ、老朽化に従い空室率は増加する傾向にあります。そのため、築浅物件に買い替えたり、老朽化を感じさせないようなリフォームを施したりといった対策を講じる必要があります。
新たに新規物件を取得して、空室率を下げる方法もあります。たとえば、所有する賃貸物件が1室しかなければ、1室空室になれば空室率は100%です。しかし、所有する賃貸物件が10室あれば、1室空室になったとしても空室率は10%です。このように、所有する賃貸物件の数を増やすことによって1室あたりの空室率を下げることができます。
いずれの方法も、大きな金額を必要とするため、金融機関から追加融資を受ける必要があります。そのためには、日々満室経営のための対策を講じて賃貸経営状況を良好に保ち、延滞なく返済を行う実績作りも求められます。
あわせて、将来的に自身で行う賃貸経営をどう終わらせるのか(売却、子どもへの相続など)についてもビジョンを明確にしておくのが望ましいでしょう。
法人化の検討
賃貸経営の規模が大きくなれば、法人化を検討する時期も来ます。法人化することにより、個人の所得を給与として分散することができますし、相続対策にもつながります。
ただ、法人化するためには、会社設立費用が必要となりますし、賃貸物件を個人所有から法人所有に名義替えをすると、登録免許税がかかります。また、法人は赤字が生じても一定の法人税が課税されます。このように、法人化にともなう新たな費用負担があるという点には注意が必要です。
法人化のメリット・デメリットを慎重に検討し、法人化するか否かを決定するようにしましょう。
ただ、法人化するためには、会社設立費用が必要となりますし、賃貸物件を個人所有から法人所有に名義替えをすると、登録免許税がかかります。また、法人は赤字が生じても一定の法人税が課税されます。このように、法人化にともなう新たな費用負担があるという点には注意が必要です。
法人化のメリット・デメリットを慎重に検討し、法人化するか否かを決定するようにしましょう。
【専業大家への道3】セミリタイアするか否か。ポイントを確認しよう
賃貸経営をサラリーマン大家さんとして副業から始め、専業大家さんとしてセミリタイアを考えるのであれば、以下のことを確認してみましょう。
リスク管理ができているか
賃貸経営を行っていくためには、金融機関からの借り入れが必要です。借り入れ後は、毎月返済をしていく必要がありますが、勤務先企業からの給与に頼らずとも家賃収入のみで返済をしていけるかどうかを確認しましょう。
賃貸経営は、日々の管理支出のみならず、災害による賃貸物件の損傷や老朽化による劣化を修繕する支出も必要となります。長期的に賃貸経営の見通しを立て、家賃収入のみでそれらの必要支出をカバーしていけるのか、賃貸経営におけるリスクを理解できているか、今一度確認をしましょう。
賃貸経営は、日々の管理支出のみならず、災害による賃貸物件の損傷や老朽化による劣化を修繕する支出も必要となります。長期的に賃貸経営の見通しを立て、家賃収入のみでそれらの必要支出をカバーしていけるのか、賃貸経営におけるリスクを理解できているか、今一度確認をしましょう。
キャッシュフローに余裕があり、今後も伸び代があるか
専業大家さんとして、安定的に家賃収入を得ていくためには、賃貸経営をスタートしようと思っているエリアにおける賃貸ニーズや家賃相場、類似物件の入居状況、人気物件の強みなどをリサーチする必要があります。
そのうえで、取得しようとしている賃貸物件の競合力の高低を見極め、想定される家賃収入と日々の管理支出を確認しましょう。長期的にも手元資金に余裕がある賃貸経営となるかどうかキャッシュフロー表を作成して確認するのも重要です。
そのうえで、取得しようとしている賃貸物件の競合力の高低を見極め、想定される家賃収入と日々の管理支出を確認しましょう。長期的にも手元資金に余裕がある賃貸経営となるかどうかキャッシュフロー表を作成して確認するのも重要です。
不動産所得は不労所得ではないと理解できているか
副業の人気ランキングにランクインすることの多い賃貸経営。賃貸経営は不労所得というイメージが強いからだと思いますが、賃貸経営による不動産所得は決して不労所得ではありません。
以下のように、賃貸経営における管理業務は数多く存在し、入居者満足向上のために地味で手間のかかる業務も多いものです。
・入居者募集のための不動産会社との打ち合わせ
・毎月家賃の入金管理
・滞納があった場合の督促業務
・賃貸物件の共用部分の清掃や電灯の交換
・入居者からの苦情相談対応
・賃貸物件の各種点検の依頼
サラリーマンとして会社に勤めている時には、同僚などと仕事の愚痴をつぶやき合うという機会もありますが、専業大家さんとなると同僚はいません。大家さん同士で、情報交換や相談をしたり、愚痴をつぶやきあったりというコミュニケーションをとる機会を自発的に得ていく必要もあるでしょう。
以下のように、賃貸経営における管理業務は数多く存在し、入居者満足向上のために地味で手間のかかる業務も多いものです。
・入居者募集のための不動産会社との打ち合わせ
・毎月家賃の入金管理
・滞納があった場合の督促業務
・賃貸物件の共用部分の清掃や電灯の交換
・入居者からの苦情相談対応
・賃貸物件の各種点検の依頼
サラリーマンとして会社に勤めている時には、同僚などと仕事の愚痴をつぶやき合うという機会もありますが、専業大家さんとなると同僚はいません。大家さん同士で、情報交換や相談をしたり、愚痴をつぶやきあったりというコミュニケーションをとる機会を自発的に得ていく必要もあるでしょう。
まとめ
なんのために賃貸経営をスタートするのか、考えてみたことはありますか?もちろん収入アップのため、サラリーマンを辞めてセミリタイアをするため、いろんな理由があると思います。賃貸経営は快適な住空間を提供し、その対価として家賃収入をえることによって成り立つ事業です。
どんな物件を取得し、どんな入居者に住んでもらいたいと考えるのか。その賃貸物件の管理業務を管理会社に委託するとしても、入居者に対して、快適な住空間を提供するために、どのような思いをもった大家さんとなりたいのか、によって選ぶ管理会社も委託する管理業務の範囲も異なってくるでしょう。
自分の強みは何か、大家さんに向いているのか否か、じっくり考えてから大家さんを始めてみても遅くはありません。
どんな物件を取得し、どんな入居者に住んでもらいたいと考えるのか。その賃貸物件の管理業務を管理会社に委託するとしても、入居者に対して、快適な住空間を提供するために、どのような思いをもった大家さんとなりたいのか、によって選ぶ管理会社も委託する管理業務の範囲も異なってくるでしょう。
自分の強みは何か、大家さんに向いているのか否か、じっくり考えてから大家さんを始めてみても遅くはありません。
この記事の監修者
中村 昌弘
宅地建物取引士
新卒で不動産ディベロッパーに勤務し、用地仕入れ・営業・仲介など、不動産事業全般を経験。入居用不動産にも投資用不動産にも知見は明るい。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。