賃貸物件をリノベーションする前に!知っておきたい減価償却の仕組みとその計算方法

監修キムラ ミキ

  • 公開日:
  • 2019年10月18日
  • 更新日:
  • 2019年10月18日
賃貸物件をリノベーションする前に!知っておきたい減価償却の仕組みとその計算方法
中古物件の賃貸経営をしている大家さんの中には、収益改善のために、リノベーションを行うことを検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、リノベーションには、多額の費用がかかるため、なかなかリノベーションを行うことに踏み込めないでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、賃貸物件のリノベーションを考えている大家さんに向けて、リノベーション費用と減価償却の関係、計算方法などを中心とした減価償却の仕組みについて一緒にお伝えしていきます。

目次

減価償却の仕組みについて

賃貸経営をする際、取得した賃貸物件は、1年で価値がゼロになるわけでなく、年数を重ねて徐々にその価値が減少していきます。そのため、取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、賃貸物件の使用可能期間の全期間にわたって分割し、必要経費としていくべきと考えられています。つまり、実際には支出してはいないものの、賃貸物件の経年劣化分を必要経費として計上することができるのが、減価償却という考え方です。

減価償却の対象となる資産とは

減価償却の対象となる資産は、建物だけでなく、建物に附属している設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などが対象となります。なお、土地は減価償却の対象ではありません。使用可能期間は、法定耐用年数が財務省令の別表にそれぞれ定められています。なお、使用可能期間が1年未満のもの又は取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とします。

・参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令|電子政府の総合窓口e-Gov

減価償却は確定申告の際に必要

減価償却は、確定申告で所得税額を算出する際に必要となります。減価償却の対象となる資産について、取得時の領収書や契約書は大切に保管し、法定耐用年数を調べておきましょう。また、減価償却がどれくらいの金額になるか、税理士に相談するなどして、予め確認しておくことも大切です。

不動産における減価償却の主なポイント

1.法定耐用年数(減価償却ができる年数)

法定耐用年数は、主な建物構造、用途別に決められています。住宅および住宅設備の法定耐用年数は、以下の通りです。
種類法定耐用年数
木造22年
鉄骨鉄筋コンクリート造47年
金属造(骨格材の厚みにより異なる)34年/27年/19年
給排水・衛生設備、ガス設備15年

2.建物の構造

建物の構造は、躯体の材料によって様々なものがありますが、木造、鉄骨コンクリート造、金属造が一般的です。金属造という言葉に耳慣れない方もあると思いますが、軽量鉄骨造、重量鉄骨造と言われたら、分かる方も多いでしょう。躯体が金属(鋼材)でできており、その厚みによって、法定耐用年数が異なります。

3.建物の種別

また、建物の種別(用途)によって、法律で定められている強度が異なります。そのため、事務所、店舗・住宅、飲食店、ホテルなど、どの用途で建物が利用されるかによって、法定耐用年数は異なっています。

なぜリノベーションで減価償却が大切になってくるのか

減価償却は、賃貸物件を取得した時だけではなく、リフォームやリノベーションを行ったときにも関連のある考え方です。

国税庁HPによると、
「減価償却資産に対して平成19年4月1日以後に資本的支出を行った場合、その資本的支出は、その支出金額を固有の取得価額として、資本的支出の対象資産である既存減価償却資産本体(以下、「旧減価償却資産」といいます。)と種類及び耐用年数を同じくする新たな減価償却資産(以下、「追加償却資産」といいます。)を取得したものとして、その種類と耐用年数に応じて償却を行うこととなります。」
と記されています。

・参考:No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却|国税庁

おおまかにいえば、リフォームやリノベーションが、資本的支出(記事後半の説明をご参照ください)と認められる場合、元の建物が同じ工法で新築された場合の耐用年数に応じて減価償却が行われるということになります。つまり、複数年に渡って経費計上することができるということです。なお、単に原状回復するための小規模なリフォームは、修繕費とみなされることもあります。その場合は、工事が終了した年に一括経費計上することになります。

「資本的支出」と「修繕費」の違い

説明の中にでてきた、資本的支出と修繕費について、その概要と違いについて整理しておきたいと思います。

資本的支出とは

減価償却の対象となる「資本的支出」とは、減価償却の対象資産を修理・改良するために支出した金額のうち、その資産の価値の向上、耐久性の増加につながると認められる部分に対応する金額のことをいいます。

国税庁HPには、「資本的支出」として以下のような例示があります。

(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

・参考:第8節 資本的支出と修繕費|国税庁

修繕費とは

一方、「修繕費」とは、減価償却の対象資産を修理、改良等のために支出した金額のうち、その資産の通常の維持管理、もしくは、その資産がき損したために行う原状回復、を目的として支出したと認められる部分の金額のことをいいます。

リノベーション費用はどちらにあたるのか?

リノベーションとは、そもそもリフォームと明確な違いはありません。ただ、言葉の定義を確認してみると、
「近年では、建築物の改造についていうことが多い。特に、古い部分の補修や内外装の変更程度にとどまるリフォームに対し、増築・改築や建物の用途変更など、資産価値を高めるための大規模な改造をさす。」
(デジタル大辞泉/小学館)と記されています。

この定義と、国税庁HPに例示されている「資本的支出」とみなされる例示を照らし合わせると、リノベーション費用は資産の価値の向上、耐久性の増加につながるため、「資本的支出」にあたる可能性が高いと考えられます。

リフォーム費用はどちらにあたるのか?

一方で、先ほどのリノベーションの言葉の定義の中にも「古い部分の補修や内外装の変更程度にとどまるリフォーム」と記されているように、リフォームは、資産の通常の維持管理、もしくは、その資産がき損したために行う原状回復、を目的とした支出であり、「修繕費」にあたる可能性が高いといえるでしょう。なお、国税庁HPには、次のような少額又は周期の短い費用は修繕費として計上ができることなどが、挙げられています。

(1) 修理、改良等のために要した費用の額(省略)が20万円に満たない場合
(2) その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

・参考:第8節 資本的支出と修繕費|国税庁

【確認】税理士と一緒に内容と目的を事前に相談しておこう!

リノベーション費用が、「修繕費」となるか「資本的支出」となるかは、その規模や内容、金額によって異なります。「資本的支出」としてのリノベーションだと思っていたのに、「修繕費」として一括経費計上するように求められてしまった等、こんなはずじゃなかったと後で後悔しないためにも、まずは税理士に事前に相談をしましょう。

そして、資金見通しも立ててから、計画的にリノベーションを実行することをおすすめします。

リノベーション費用の減価償却方法

リノベーション費用が、「資本的支出」と認められ、減価償却ができる場合、どのように減価償却をしていけばよいのでしょうか。

法定耐用年数について

法定耐用年数は、建物部分だけでなく、建物附属設備にも定められています。リノベーションによって、建物そのものだけでなく、建物附属設備についても修理・改修を行った場合は、その設備の法定耐用年数についても確認をしておく必要があります。

計算方法は2種類ある

また、減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」があります。建物については、「定額法」しか選択することができません。建物附属設備については、「定額法」または「定率法」から選択することができます。なお、計算方法は、以下の通りです。

【定額法】

リノベーション費用×定額法の耐用年数に応じた償却率=定額法償却限度額

【定率法】

(リノベーション費用-償却累計額)×定率法の耐用年数に応じた償却率=定率法償却限度額

まとめ

新築の時には空室率に悩まされることがなかった大家さんでも、築年を重ねるにつれて空室が目立ち、気になってきている方もいるのではないでしょうか。空室対策・収益改善のためにも、対策を講じることは、賃貸経営を長く続けるうえで重要なことです。リノベーションもその対策のうちのひとつ。築年を重ねても満室経営を続けていくために、税金の仕組みを理解した上で、賢くリノベーションを行ってみませんか?
キムラ ミキ

監修キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容です。法律改正等により内容に変更がある場合もございます。