アパートの外壁リフォームで補助金・助成金を受け取る方法

2023.12.19更新

この記事の監修者

河野 陽炎

河野 陽炎

【資格】3級FP技能士

アパートの外壁リフォームで補助金・助成金を受け取る方法

お手持ちのアパートの外壁リフォームを考えている大家さんへ、補助金・助成金の仕組み、受取方法、適用条件までご紹介します。

目次

外壁リフォームの見直す期間はどれくらいがベストか

アパートの外壁は、風雨や紫外線などの影響を受けて少しずつ劣化します。一見してボロボロになったアパートには、入居の希望が集まりにくくなりますので、適切な時期に外壁リフォームを行うことが大切です。では、外壁リフォームが必要な時期はどのように見極めるとよいでしょうか?それには2つの方法があります。

外壁に現れた症状に応じて対処する方法

外壁に次のような症状が見られたときは、塗料の塗り替えを行うタイミングです。

・幅0.3mm以上のひび割れ
・塗料の色あせ
・外壁を触ると白い粉が手に着く状態(チョーキング)
・塗料の剥がれ
・カビ、コケ、藻、サビなどの発生

このような症状を放置すると、さらに劣化が進む可能性もあるため、早めに外壁リフォームを検討したほうがよいでしょう。これらの症状は塗料の寿命である数年~十数年くらいかけて発生してきます。ただし、施工不良の場合は1~3年でチョーキング現象が現れる場合もあります。

塗料の耐用年数をもとに判断する方法

塗料には耐用年数があり、耐用年数をすぎると劣化症状がみられます。塗料の耐用年数に合わせて外壁リフォームを計画する方法があります。

【耐用年数の目安】
・アクリル:3~5年
・ウレタン:5~7年
・シリコン:7~10年
・フッ素:10~15年
・光触媒:10~15年

耐用年数の長い塗料を使えば、外壁リフォームの周期を長くすることができますが、1度の塗り替えにかかる塗料の費用が高くなる場合もあります。外壁リフォームにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?

外壁リフォームの費用イメージ

2階建て2DK8戸のアパートで塗装面が500m2の場合で、外壁リフォーム費用は200~300万円、4階建てマンションで塗装面が1000m2~の場合の大規模修繕には500~1000万円がかかると考えられます。かなりの幅がありますが、アパートの規模、外壁の状況や塗料の種類など、さまざまな要素で外壁リフォームの費用は変わります。

外壁リフォーム費用の内訳と塗料1缶あたりの費用

外壁リフォーム費用の内訳と、塗料1缶あたりの費用は、おおむね次の通りです。
なお、塗料1缶あたりの費用は、あくまでも目安であり、メーカーや製品ごとに費用は異なります。

外壁リフォーム費用の内訳塗料1缶あたりの費用
塗料代 約3割
足場代 約2割
施工/人件費 約3割
工務店の利益 約3割
アクリル 5,000~15,000円
ウレタン 5,000~20,000円
シリコン 15,000~40,000円
フッ素  40,000~100,000円
光触媒  50,000~100,000円

塗料の代金のほかに、足場代、施工費(人件費、塗料の飛散防止のためのネットを着脱する費用、高圧洗浄を行う費用、養生代、その他諸経費)がかかります。以上のような費用がかかる外壁リフォームですが、国や地方自治体の補助金、助成金を利用することができる場合もあるんです。

外壁リフォームで補助金と助成金があるって知ってました?

補助金や助成金を受けたい場合は、自ら申請しなければならず、工事の内容が給付の条件を満たしている必要もあります。それぞれの制度についてご紹介しましょう。

補助金

・審査に通過しなければ受けることができない
補助金の申請要件を満たしている場合も、審査の結果、補助金を受けられないことがあります。補助金は「国の政策目標達成に役立つ事業である」「社会に役立つ事業である」と認められた場合に受け取ることができるもの。外壁リフォーム工事の内容が、そのようなものかどうかの審査が行われるのです。

・事業計画書などの書類が必要
「社会に役立つ事業である」とアピールする必要があり、そのためには事業計画書、応募申請書、経費明細書をはじめとする書類を揃えたり、面接を受けたりする必要がある場合も。

・募集期間が短い
補助金制度について公示されてから、募集が終了するまでの期間が、1~2か月と助成金に比べて短いです。

助成金

・要件を満たしていれば受け取ることができる
工事内容や使用する塗料の種類などが、助成金支給の条件を満たしていれば助成金を受け取ることができ、申請の後に審査などは行われません。

・複数の助成金を活用することもできる
要件を満たしていれば、複数の助成制度を利用できる場合もあります。ただし、他の補助金や助成金を利用していないことが申請の条件である助成金もあります。各地方自治体に確認するようにしましょう。

・補助金に比べて募集期間は長い
通年募集の助成金もあります。

注意点

助成金は審査が行われず、募集期間も長いので、補助金に比べて申請しやすく受け取りやすいことが分かります。地方自治体ごとにさまざまな制度があり、似た名前の補助金や助成金であっても、制度の細かい部分が異なることもありますので、給付の要件などは各自治体に確認することが重要です。

外壁リフォームで補助金・助成金を受け取るには

東京都葛飾区の「平成30年度 《集合住宅用》かつしかエコ助成金」を例として、どのような条件を満たせば補助金や助成金を受け取ることができるのか、みてみましょう。

「平成30年度 《集合住宅用》かつしかエコ助成金」は、アパートやマンションなど集合住宅の共用部分に、太陽光発電システムや断熱改修などを導入する場合、費用の一部を補助してもらえる制度です。具体的な条件として、以下のようなものがあります。

対象地(区)域であること

区内に住所を有する集合住宅の共用部分に対象機器等を導入する人が対象です。次のような条件もあります。

1. 区内分譲マンションの管理組合
(管理組合を構成する区分所有者の集会<総会>において議決を得ていること)
2. 区内に集合住宅を所有又は所有を予定する中小企業者等(中小企業基本法第 2 条に規定する中小企業者、中小企業等協同組合法第 3 条に規定する中小企業等協同組合、社会福祉法人、学校法人、医療法人、宗教法人等)
※個人事業者も含まれます。

納税していること

前年度の特別区民税、都民税、直近の法人都民税などの滞納をしていないことが条件です。

特定の塗料・工事を行うこと

遮熱塗装等断熱改修(※新築は対象外)で、助成の対象となる対象機器と助成金額が定められています。なお、助成金額は、下記1~3を合わせて限度額 1,000,000円となっています。

1.屋根・屋上・壁等における高反射率塗装等

高反射率塗料等においては、国内の第三者機関における日射反射率が 50%以上又は同等以上の性能であること。

助成金額助成対象経費の 1/4 又は施工面積(m2)×1,000 円(助成単価)のいずれか小さい額

2.窓の遮熱塗装等

日射調整フィルム及びコーティング材においては、国内の第三者機関における測定値が遮蔽係数 0.7 未満、可視光線透過率 65%以上、熱貫流率 5.9W/(m2・K)未満(コーティング材の場合は 6.0W/(m2・K)以下)であり、かつ日射調整性能について、適切な対候性が確認されている製品とする。
※可視光線透過率が 70%以上の場合は、遮蔽係数 0.8 未満とする。

助成金額助成対象経費の 1/4 又は施工面積(m2)×3,000 円(助成単価)のいずれか小さい額

3.断熱改修(外壁・屋根・屋上・天井・床・窓)

外壁、屋根・屋上、天井、床の断熱改修においては、住宅金融支援機構の「断熱等性能等級4(フラット35s)技術基準」に規定する断熱材の厚さの基準以上、窓の断熱改修においては、ガラスの熱貫流率が 4.0(W/m2・k)以下を満たすものであること。

助成金額助成対象経費の1/4

提出すべき書類が揃っていること

下記の書類を揃えて提出しなければなりません。

・かつしかエコ助成金交付申込書 【集合住宅対象】
・対象機器等の内訳がわかる見積書の写し等
・対象機器等の設置又は施工場所を示す書類(平面図、立面図等)
・対象機器等の形状や規格がわかる書類(パンフレットやカタログ等の写し)
・対象機器等の設置または施工前の現況写真(カラー写真又はカラー印刷のもの)

申請者が個人事業者の場合申請者が法人等の場合
・前年度の特別区民税
・都民税納税証明書
・確定申告書等の写し
・直近の事業年度の法人都民税納税証明書
・法人の登記簿謄本(現在事項全部証明書等
 または履歴事項全部証明書)
・その他区長が必要と認めるもの

必ず各自治体に確認をしよう

補助金や助成金が受けられる条件(どのような塗料を使うか、どのような工事が対象となるか)、またどのような書類を提出すべきかは、各自治体によって異なります。ホームページなどでご確認の上、漏れや抜けがないようにしましょう。

申請前に気をつけておきたいこと

補助金や助成金の給付をスムーズに受けるためには事前の準備が大切。申請前に気をつけておきたいことをお伝えします。

期間

補助金や助成金は、申請してから受け取るまでに時間がかかります。工事完了報告をしてから2か月程度は見ておいたほうがよいので、早めに申請を行いましょう。補助金申請と受給までの流れは次の通りです。

1.補助金について調べる
地方自治体のホームページなどで、条件に合う補助金について調べましょう。

2.申請を行う
必要な書類を揃え、申請を行います。工事に着手する前に補助金申請を行わなければならない点にご注意ください。

3.審査を経て補助金の交付が決定する
審査には1~2か月がかかります。

4.交付決定通知を受け取る
補助金の交付決定通知を受け取ってから着工します。着工したことを証明する写真などの提出を行います。

5.工事の完了を報告する
完了実績報告書などの書類を提出します。工務店には大家さんがいったん支払いをします。

6.補助金を受け取る
5.の報告を受けて補助金額が決定され、補助金を受け取ることができます。完了実績報告書を提出し、補助金額が確定した月の翌月末に補助金が支払われることが多いです。

工事完了の報告は早めに行いましょう

外壁リフォーム費用は、大家さんがいったん自己資金で支払い、その後に補助金を受け取ることができます。資金繰りがショートしないように、キャッシュフロー表を作成し、補助金をいつまでに受け取らなければならないか検討して、工事完了の報告を早めに行うことも大切です。

提出書類

交付申請書、暴力団排除に関する誓約書などのほかに、自治体によっては物件の平面図や見取り図などの書類の提出を求められます。自治体ごとに必要書類が異なりますので、事前に必ず確認しましょう。

業者選び

地方自治体によっては、外壁リフォームを行う業者について、自治体の指定業者であることなど一定の条件を定めている場合があります。地方自治体の定める条件に合う業者かどうか確かめて、工事の相談をしましょう。

まとめ

外壁リフォームは、アパートの印象を向上させるだけでなく、老朽化や水漏れなどのトラブルを防ぐためにも必要です。多額の費用がかかりますが、外壁リフォームのために補助金や助成金を利用できる場合もあるので、国や地方自治体のホームページなどで制度の有無を調べてみましょう。

補助金や助成金を申請してから、実際に受け取るまでは、大家さんがいったん自己資金で工事費用を支払う必要があります。キャッシュフローの面で無理がないよう、早めに工事完了の報告を行いましょう。

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この記事の監修者

河野 陽炎

河野 陽炎

【資格】3級FP技能士

3級FP技能士資格を持つライター、コラムニストとして、生命保険や医療保険、金融、経済などの執筆実績が多い。次々と発売される商品や、改正の相次ぐ税制、法律が1人の生活者にどう影響を与えるかの視点を大切にする。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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