ハウスクリーニングの定義はご存知ですか?
ハウスクリーニングとは、掃除の専門事業者が特別な設備や技術を使って家全体をきれいにすることです。ハウスクリーニングを利用することで、通常掃除ではなかなか手の届かない天井や水周りの部分まで、徹底的にきれいにすることができます。
ハウスクリーニングを行うタイミング
ハウスクリーニングは単に家を大掃除する際に使うこともできますが、賃貸経営においては、入居者が退去した後、新しく入居者を募集するまでの間に実施するのが一般的です。また、退去時に大家さんから入居者に返還する敷金や保証金より、ハウスクリーニング費用を差し引いて返還するといった形を取る場合もあります。
ハウスクリーニングの業者の種類
ハウスクリーニングはハウスクリーニングを専門としている業者以外にも、引越し業者や便利屋などの業者が行うこともあります。ここでは、それぞれの特徴について見ていきましょう。
◆清掃専門業者
清掃専門業者はハウスクリーニングを専門としている業者であることもあり、専門知識や技術がそろっていて、清掃が必要である設備や部位に特化しているのが一般的です。具体的には、浴室や換気扇、エアコンやフローリングなど、掃除の難しい箇所を特に念入りに掃除したい場合におすすめです。
◆引っ越し業者
引越しと同時に、引っ越し業者にハウスクリーニングを依頼するというケースもあります。引越しとセットのハウスクリーニングだから大家さんには無関係というわけではありません。細かいオプションメニューを選べる業者もあるので、引越し業者が行っているハウスクリーニングも含めて、どの業者を使うか比較検討していくとよいでしょう。
◆その他
その他、便利屋や家事代行業者がハウスクリーニングを行っている場合もあり、地方の郊外など、清掃専門業者が近くにないようなケースでは、便利屋にハウスクリーニングを依頼することもあるのです。また、家事代行業者のハウスクリーニングの特徴は、週に1回や月に1回など、定期的に清掃するサービスであることが多く、特にキッチンやトイレなどの水周りのクリーニングにおすすめです。
ハウスクリーニングの掃除内容
ハウスクリーニングにはさまざまな種類の業者があることをお伝えしましたが、どの業者に依頼しても、一般的に以下のような箇所のクリーニングをしてもらうことが多いです。
・キッチン(換気扇、レンジフード含)、バス(洗面、脱衣所)、トイレなどの水回りの掃除 |
・窓やサッシの掃除 |
・ベランダやバルコニーの掃除 |
・リビングやダイニング、寝室、廊下など各室の掃除 |
・エアコンの掃除 |
特に水回りの掃除やエアコンの掃除では専門の設備を使って掃除を行うため、素人の手で掃除したのとは段違いのきれいさで仕上がります。エアコンを例にとると、一般の人が行うエアコン掃除では、基本的にエアコンの表面部分やフィルター部分しかきれいにできませんが、プロの掃除ではエアコンのパーツを分解して、高圧洗浄機を使って内部洗浄します。これにより、表面だけでなく内部にたまったホコリや汚れ、さらにその元となる菌を除去できるのです。
【注意】オプション内容をしっかり確認!
ハウスクリーニングは、家全体をクリーニングするのか、キッチンやエアコンなど一部を清掃するのかによって費用が異なります。ハウスクリーニングを依頼する際には、どの箇所を清掃したいのか決めてから問い合わせしましょう。また、清掃したい箇所を決めたら、見積もりを取るときに、どこまでが基本料金で、どこからがオプションになるのか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。例えば、エアコンの清掃ではエアコン本体の清掃が基本料金で、室外機の清掃はオプションとしているような業者もあるため注意が必要です。
原状回復と原状復帰の違い
入居者退去時のハウスクリーニングは原状回復のために行いますが、この原状回復はどういうもので、また原状復帰とはどう違うのでしょうか。まず、「原状回復」とは、入居者の過失による損失のない状態に戻すことを指します。部屋の傷や汚れは大きく「経年劣化」によるものと「入居者の過失による損失」に分けることができます。この内、経年劣化分の補修については、原状回復には含まれません。「入居者の損失による損失のない状態に戻す」とは、言い換えれば「経年劣化の傷や汚れのみの状態にする」とすると分かりやすいでしょう。
大家さんも、ハウスクリーニングを依頼する際には、原状回復とはどういうものかについてよく理解しておくことが大切です。なお、傷や汚れが経年劣化の結果であるかどうかは入居者や大家さん、不動産会社の担当者の主観によるものですので、当事者の意見が食い違うこともあります。こうしたトラブルに備える意味でも、「経年劣化」や「原状回復」について知っておく必要があるといえるでしょう。
ちなみに、原状回復と原状復帰はほとんど同じ意味の言葉となります。少しややこしいですが、原状復帰は主に建設用語として用いられる言葉で、賃貸オフィス等から退去する際、「原状回復するために建設業者などに原状復帰工事を依頼する」といった使い方をします。大家さんの立場であれば、基本的に「原状復帰」という言葉を使うことはないため、クリーニング業者や退去者に対しては、混乱を避けるためにも「原状回復」で統一して使うようにしたほうがよいでしょう。
ハウスクリーニングの相場を知ろう
ここでは、ハウスクリーニングの相場と、相場をみるときのポイントについてお伝えしていきたいと思います。
1. 間取り
間取り | 費用相場 |
---|
1R、1K | 20,000~50,000円 |
1DK、1LDK | 40,000~80,000円 |
2DK、2LDK | 30,000~70,000円 |
3DK、3LDK | 60,000~200,000円 |
4DK、4LDK | 70,000円~ |
実際には部屋の広さによって費用が異なるため、価格帯も幅広くなっていますが、おおむね上記のような相場で行っている業者が多いです。
2. 時期
ハウスクリーニングには繁忙期と閑散期があり、繁忙期に頼むのと閑散期に頼むのとでは、同じ内容の作業を依頼する場合でも費用が異なることがあります。ハウスクリーニングは引っ越しシーズンの2~4月、エアコンを活用する時期の6~8月、大掃除シーズンの11~12月等に忙しくなるのが一般的です。反対に、年明け~2月までの間や、9月~11月の間は閑散期という業者が増えます。次の入居者が決まっており、入居が少し先になる場合など、時間に余裕があるのであれば、繁忙期を避けて閑散期に依頼するとお得に利用しやすくなるでしょう。
3. 業者
また、ハウスクリーニングはどの業者に依頼するかによっても費用が大きく異なります。業者によっては「水回り丸ごとハウスクリーニング」をパッケージにすることで、安く利用できるようにしていることもあります。パッケージに含まれているものと含まれていないものが業者によって違いがあるため、単純に比較はできませんが、複数の業者へ相見積もりをとって比較検討するようにしましょう。
クリーニング業者を選ぶ際のポイント
クリーニング業者を選ぶ際には、価格の高低以外にも以下のような点に注意するとよいでしょう。
・見積もりの内容について具体的な説明がある |
・損害保険に加入している |
・電話対応や来社見積もりが丁寧 |
まず、見積もりの内容について「一式費用」などではなく、具体的にどのような作業にいくらの費用がかかっているか説明してくれる業者は信頼できるといえるでしょう。また、ハウスクリーニング中に万が一何らかの損害が生じてしまったときに、その損害をカバーできる保険に加入しているかどうかも一つのポイントとなります。そして、見積もりを依頼したときのスタッフの対応が親切・丁寧であれば、その後の仕事についても丁寧にしてくれたり、細かな部分の相談をしやすくなったり、コミュニケーションが図りやすかったりといった判断ができるでしょう。
クリーニング費用の懸念点
冒頭で、賃貸物件の退去時にハウスクリーニング費用を「入居者に返還する敷金や保証金」から差し引くことがある、とお伝えしました。実際に大家さんとして、入居者に対して上記のように対応している方もいらっしゃるでしょう。一方、ハウスクリーニング費用を大家さんが負担するか、入居者が負担するかについては、過去、数々のトラブルが起こっています。実際のところ、判例ではハウスクリーニング費用を大家さんが負担するとなっていることが多いので、大家さんは契約する際に注意しておきましょう。
クリーニング費用が敷金を越えてしまう場合
ハウスクリーニングの費用を入居者から徴収するにしても、基本は敷金内で対応するのが一般的です。しかし、中には敷金を0円としていたり、ハウスクリーニング費用が高くなり、敷金を超えたりするケースがあります。この場合、入居者に直接不足している分を請求することになります。
ただし、退去時に追加で費用を支払わなければならないとなると、不満を持つ入居者も少なくありません。過大な請求となってしまわないよう、大家さんが請求額を調整するなど多少の配慮を検討してみてもよいでしょう。その場合、ハウスクリーニング費用の一部を大家さんが負担することになりますが、後々トラブルに発展すると、場合によっては多額の裁判費用が必要になることもあるため、必要経費と考えておくとよいでしょう。
大規模なクリーニングが必要になる場合
入居者の喫煙や家具の配置を原因とする汚れ、浴室やエアコン、換気扇を長期間手入れしなかったことによる故障など、入居者の使用状況が悪いことにより大規模なクリーニングが必要になることがあります。この場合も、基本的には敷金内でクリーニングを行い、足りない分については入居者に直接クリーニング費用を請求することになります。請求額が過大となったことで入居者とトラブルになった場合でも対処できるよう、どのような状況が原因で大規模なクリーニングが必要となっているのか、写真を撮るなどして詳細な見積書を作成するようにするとよいでしょう。
【参考】部位別の費用
最後に、参考として部位別のハウスクリーニング費用の相場もご掲載いたしますので、事前に予算感を把握しておきましょう。
部位別ハウスクリーニング費用の相場 |
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換気扇、レンジフード | 15,000円~ |
ガスコンロ、グリル | 10,000円~ |
エアコンクリーニング | 10,000円~ |
浴室クリーニング | 15,000円~ |
フローリングワックス | 1,000円/m2~ |
ベランダ清掃 | 15,000円~ |
まとめ
退去時のハウスクリーニング費用について、具体的な掃除内容や費用相場、ハウスクリーニングに関する注意点などをお伝えしました。実際の現場では敷金からハウスクリーニング費用を差し引く形で、入居者負担とすることも多いですが、判例ではハウスクリーニング費用の負担は大家さんとなっている点に注意が必要です。賃貸経営上、できるだけ経費を安く抑えるという目的に加え、退去時の入居者とのトラブルを避けるためにも本記事の内容を参考になさってください。
この記事の監修者
逆瀬川 勇造
【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。
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