見直す余地はある?大家さん向け"火災保険”の保険料っていくらくらい?

2023.12.19更新

この記事の監修者

金指 歩

金指 歩

【資格】3級FP技能士

見直す余地はある?大家さん向け"火災保険”の保険料っていくらくらい?

加入している火災保険の見直しを考えている大家さんへ、保険料が決まる仕組みや補償範囲を特約事例と合わせてご紹介します。

目次

火災保険料ってどうやって決まる?

火災保険の保険料が決まる要素は、以下の6つです。

・建物の構造
・建物の所在地
・建物の延床面積
・火災保険の契約期間
・火災保険の補償範囲
・建物の保険金額

以下でそれぞれ詳しく説明していきます。

建物の構造

構造には、M構造・T構造・H構造の3種類があり、一番保険料が安いのはM構造、中間はT構造、一番高いのはH構造です。

M構造コンクリート造建物や耐火建築物の共同住宅建物
T構造コンクリート造建物や鉄骨造建物、共同住宅建物以外の耐火建築物、準耐火建築物など
H構造M構造、T構造に該当しない木造建物など

建物構造が保険料に関わるのは、その構造によって火災や水災などが起きたときに、被害を受ける範囲が変わってくるからです。たとえば、最近できた燃えにくい耐火マンション(M構造)と、木造アパート(H構造)が同時に燃えたとき、より延焼しやすいのは木造アパートの方でしょう。

建物の所在地

物件の所在地によっても保険料は変動します。その理由は、物件のある都道府県によって、事故の発生率が異なるからです。火災保険の保険料率は、保険会社から提供された契約・支払いに関する大量のデータをもとに保険統計を作成し、社会環境の変化を考慮したうえで、「損害保険料率算出機構」が参考準率を決めており、必要に応じて都度変更されています。各保険会社は、参考純率をもとに保険料を算出しています。なお、参考準率とは、保険料率(保険金額に対する保険料の割合)を算出する際に利用する参考値です。

2018年5月に保険料の改正があった際には、2013年度に大規模な雪災が発生した関東地方や甲信越地方、2015年度に台風15号の直撃を受けた九州地方などで保険料の値上げが行われました。

建物の延床面積

保険料を算出する際には、面積も重要です。より延床面積の広い物件ほど、その面積に応じて保険料が高くなります。

火災保険の契約期間

火災保険の保険期間は1年から10年まで選ぶことができますが、より長い保険期間で契約する方が、保険料の割引率は高くなります。

また、アパートローンなどの融資を受けて物件を購入した人は、ローン期間が終わるまでは火災保険をつけておきましょう。ローン期間中に火災などで物件を失った場合、ローン返済だけが残ってしまうからです。なお、ローン期間が30年の場合は、最長である10年の火災保険を契約し、その後ローン終了まで更新するようにしましょう。

火災保険の補償範囲

火災保険の補償種類は多岐に渡ります。その補償範囲を広くするほど保険料は高くなるので、必要最小限に限定することで保険料を安く抑えることが可能です。

火災保険の基本補償プランによって選択できる補償
火災保険
落雷
破裂・爆発
風災・雪災・ひょう災(※)
水災
建物外部からの落下・飛来・衝突
水濡れ
盗難による窃取・破損・汚損
集団行動に伴う暴力行為
突発的な事故
※商品によっては付帯の有無を選択できます。

建物の保険金額

保険金額とは、自然災害や事故などにあった際に、損害保険会社が支払う保険金の限度額のことです。火災保険に加入する際、その物件の状況によって見積もりされるので、その金額で契約するのが一般的でしょう。ただ、保険商品によっては保険金額を30%程度増減させられるものもあります。

この保険金額は、基本的に「同じ構造の同じ建物を立て直すのに必要な金額」に設定されています。マンションの場合、保険金額は購入金額よりも大幅に低くなりますが、これはマンションの購入金額に土地代が含まれているのに対し、保険金額にはその土地代が含まれないからです。

火災保険は、保険金額以上の補償は受けられない仕組みになっているので、その金額を念のため確認しておきましょう。

保険に掛ける理想の割合って?

火災保険料は、賃貸収入に対して何割ほどに収めるのが理想なのでしょうか?実はその保険料ベースで考えていること自体が危険です!火災保険は万が一のトラブル時に、自費では賄いきれない損害を補填してくれるもの。保険料の安さよりも、必要な補償をつけることを優先しましょう。

火災保険の補償範囲は?

火災保険の補償範囲は、自然災害から人為的災害まで多岐にわたります。その補償内容について解説していきましょう。

火災

失火や放火、近隣からのもらい火などにより建物が燃えたときは、火災保険の補償対象となりますが、実は単純に損害だけを補償するわけではありません。建物の保険金額に応じて補償を受けられます。また、火災後、一時的にホテルや仮住まいを利用した際の費用なども補償の対象となりますので、利用した領収書などは必ず保管しておきましょう。

人為的な被害

火災保険は、火災以外の人為的な災害に対しても補償されます。その種類と事例は以下のとおりです。

破裂・爆発外付けのガス設備から漏れたガスが引火して爆発が起き、建物が破壊される
建物外部からの落下・飛来・衝突自動車が外壁にぶつかってきて破損する
水濡れ居室からの水漏れで天井部分が水びたしになり、修理が必要になる
盗難による窃取・破損・汚損強盗に侵入され、建物のエントランス部分や防犯カメラを壊される
集団行動に伴う暴力行為建物前でデモ隊と警官の衝突し建物が壊される
突発的な事故その他突発的な事故に巻き込まれて建物が損壊する

火災以外にもさまざまなトラブルに対応できることがわかりますね。

自然災害

火災保険は、自然災害に対しても補償を受けることができます。その種類と事例は以下のとおりです。

・落雷:落雷事故によって外壁が焦げたとき
・風災・雪災・ひょう災:暴風雨による強風で窓ガラスが割れたとき
・水災:台風により床上浸水したとき

自然災害は予測ができず、被害額も大きくなりやすいです。火災保険によって一定の補償を受けられるのは安心感につながりますが、さらに、特約で補償範囲を広げることもできます。特約をつけるとその分保険料は上がりますが、その分充実した補償を受けられるため、検討してみてもよいでしょう。

特約で補償範囲を広げることもできる

火災保険の補償範囲をさらに広げたい場合は、特約をつけることが可能です。特約をつけるとその分保険料は上がりますが、その分充実した補償を受けられるのはメリットでしょう。

火災保険にはどんな特約がある?

火災保険につけられる特約には、主に以下のような種類があります。

・類焼損害
・個人賠償責任

地震保険

地震により発生した火災の場合は、火災保険ではなく地震保険の対象となりますので注意しましょう。

地震保険は、国が一部費用を負担しているため、保険料は建物の所在地と構造で決まり、どの損害保険会社で加入しても保険料はまったく同じです。また、地震保険料は、確定申告時に保険料控除が受けられることも覚えておきましょう。

類焼損害

自分の建物から出火したものが飛び火して、他の戸室や近隣の物件に被害を与えた場合に適用されます。被害を受けた側の火災保険からの補償では足りない場合に、保険金が支払われます。

もし自分の建物から出た火が原因で周辺の建物が大規模に焼けてしまった場合、その被害総額は莫大なものになり、火災保険だけでは保険金が足りない可能性があります。その際にとても頼りになる補償となるでしょう。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は、本人や家族が他人にケガをさせたり、他人の所有物を壊してしまったりと、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償を受けられる保険です。補償の上限額を1億円とするケースが多いです。

損害保険会社や商品によって差はありますが、10年で1.5万円前後の保険料となるところが多いようです。小さい子供がいる方などは、万が一のトラブルを避けるために加入しておいてもよいでしょう。

火災保険とセットで加入する地震保険

火災保険の特約ではありませんが、地震保険は単独では加入することはできず、火災保険とセットで加入する必要がある保険です。地震保険に加入することにより、火災保険では対象外だった地震を起因とした火災が補償対象となります。

地震保険は、国が一部費用を負担しているため、保険料は建物の所在地と構造で決まり、どの損害保険会社で加入しても保険料は同じです。なお、地震保険料は、確定申告時に保険料控除が受けられることも覚えておきましょう。

まとめ

火災保険の保険料や補償範囲などについてお伝えしてきました。火災保険料は、建物の所在地や構造・契約期間などの要素から算出され、特約の有無によっても変動します。なるべく支出を減らしたいと考えている大家さんであれば、火災保険についても低コストで抑えておきたいと考えるかもしれません。

しかし、火災保険は自費では賄えない損害を補填してくれる重要なものです。必要な補償はなんなのか、そして、その補償を備えるための保険料負担はどうなのかといった流れで検討することをおすすめします。また、アパート経営に関する火災保険料は、経費計上できるという点も覚えておきましょう。

この記事の監修者

金指 歩

金指 歩

【資格】3級FP技能士

法学部政治学科出身・元信託銀行勤務のフリーライター。神奈川県出身。FP3級を大学在学時に取得。金融系全般、女性のライフスタイルをテーマとした記事を中心に執筆している。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。