大家さんも守られる大切な保険「入居者家財保険」の重要性、理解していますか?

2023.11.10更新

この記事の監修者

金指 歩

金指 歩

【資格】3級FP技能士

大家さんも守られる大切な保険「入居者家財保険」の重要性、理解していますか?

具体的な補償内容までは把握していない大家さんへ、家財保険の重要性と火災保険との補償範囲の違いを交えながら解説します。

目次

入居者に「家財保険」へ加入してもらっていますか?

入居者家財保険とは、入居者の家具家電などの財産を守るための保険です。火災で入居者の家財が損害を受けてしまったり、水漏れ事故により家財が損傷してしまったりなどの場合に補償が受けられます。

入居者家財保険は入居者がアパートに入居する際に加入することが一般的ですが、大家さんが加入する火災保険とどのような違いがあるのでしょうか。

火災保険と家財保険の違いは?

火災保険

火災保険とは、自然災害や事故などによって建物や建物の中にある家財が被害を受けたときに、補償が受けられる保険のことです。火災保険には「建物のみを補償する保険」「家財のみを補償する保険」「建物と家財の両方を補償する保険」などがあります。

入居者家財保険

家財保険とは、上記で説明した火災保険のうち「家財のみを補償する保険」のことを指し、入居者家財保険は入居者が加入し、入居者が所有する家財のみが補償の対象となる保険です。

入居者家財保険に付されている2つの特約

入居者に家財保険への加入を促す大家さんが多い背景には、借家人賠償責任保険があります。この借家人賠償責任保険とは、入居者が家財保険に加入する際、一般的に特約として付されているもので、入居者による過失で建物や建物設備などが被害を受けた際に補償が受けられます。

その他、日常のトラブルを補償する個人賠償責任保険が付されていることも多く、これは第三者に対する賠償責任を補償するものです。

入居者家財保険と特約の補償範囲

前述した入居者家財保険、借家人賠償責任保険、個人賠償責任保険について、補償範囲はどのようになっているのでしょうか。詳しく説明していきます。

※補償内容については、各保険会社の規約・約款をご確認ください。

1. 入居者家財保険の補償範囲

火災や風災、盗難による破損・汚損など、自然災害や人災によって家財が損害を受けたときに補償を受けられます。ちなみに、家財に当たるのは、「家具や衣服などの日常的に使うもの」、「貴金属や美術品・現金など(契約によっては対象外)」です。

自動車や建物の外に持ち出しているもの、ペットや植物などは補償の対象外となりますので注意しましょう。具体的には、以下のようなときに保険金が下ります。

・火災によって布団やバッグが燃えてしまった
・落雷によって家電が壊れてしまった
・空き巣にあい、現金数万円やアクセサリーなどが盗まれてしまった

なお、最近では家具家電付きのアパートが珍しくありませんが、この場合の家具家電は大家さんの所有物となり、被害を受けたとしても入居者の家財保険では補償されません。大家さん側でも、家財保険への加入をおすすめします。

2. 借家人賠償責任保険の補償範囲

火災や人災などの事故やトラブルによって建物や建物設備に被害を出してしまい、大家さんに対して法律上の損害賠償責任を負った場合に補償されます。具体的には以下のような場合です。

・失火によって室内の一部分を燃やしてしまった
・空き巣にドアのカギを壊されてしまった

3. 個人賠償責任保険の補償範

日常生活の事故やトラブルで第三者に対し被害を与えてしまった場合などに、その損害が補償されます。具体的には以下のような場合です。

・漏水してしまい階下の部屋の家財に被害を出してしまった
・ベランダから植木鉢を落として通行人にケガをさせてしまった

大家さんにとって重要なのは「大家さんに対する賠償責任」

入居者に家財保険への加入を促進するのは、大家さんに対する賠償責任に対して補償が受けられるためです。故意ではなく過失で建物部分を破損させてしまった場合、大家さんには入居者を責めきれない気持ちもあると思います。

せっかく入居してくれた人とトラブルになって退去されてしまったら、元も子もありません。でも損害賠償をしてもらわないと賃貸業に影響が出てしまう…。そんな困った状況を打開するのが家財保険です。

入居者本人ではなく損害保険会社からお金を受け取れるようにすることで、入居者との金銭トラブルを回避することができるのです。大家さんにも入居者にも、家財保険はなくてはならない保険と言えるでしょう。

入居者が家財保険に未加入…そんなときはどうする?

通常は入居時の賃貸借契約時に、家財保険への加入を義務付けるのが一般的です。しかし、まれに入居者が家財保険に加入していないことがあります。

例としては、親から相続した賃貸住宅の経営を始めてから、家財保険への加入を義務付けていなかったことが判明したり、入居者が勝手に家財保険を解約してしまっていたりするケースが挙げられます。もし入居者が家財保険に加入していない場合は、一刻も早く加入してもらいましょう。

未加入ケーススタディ

ここで、家財保険に加入していなかったために起きたトラブル事例を2つご紹介します。

ケーススタディ1. 入居者の過失でキッチン部分が損傷

親から引き継いだ賃貸住宅を経営していたのですが、入居者の過失によってぼやが起き、室内の一部と入居者の家具家電が損傷してしまいました。室内の修繕費について入居者に損害賠償を請求したところ、実は入居者家財保険に加入しておらず、借家人賠償責任保険についても未加入。

なんとか資金を工面して多額の賠償金を返済してくれました。家具家電についても当然ながら入居者自身が負担し再購入。このような入居者の負担をなくすためにも、家財保険への加入はしっかりと義務付けておきましょう。

ケーススタディ2. 洗濯機からの水漏れで床が腐食

入居者から洗濯機置き場の床が傷んでいると連絡を受け、調査のため伺ってみると、水漏れは数か月間続いていたようで洗濯機周りの床が腐食し、張り替えが必要な状態でした。

大家さんは借家人賠償責任保険で補償を受けようとしたところ、入居者は家財保険に未加入であったため、借家人賠償責任保険についても未加入。結局、保険による補償を受けることはできませんでした。

注意点

入居者家財保険の未加入によるトラブルを避けるために重要なのは、入居者に保険の重要性についてしっかりと説明することです。新規入居者であれば賃貸借契約時に、すでに入居している方に対しては案内文をポスティングするなど、管理会社を通して連絡するとよいでしょう。

まとめ

入居者家財保険には、入居者の財産を守るだけでなく、火災などによる部屋の損害の補償が受けられる「借家人賠償責任補償」や、第三者への損害を補償する「個人賠償責任」といった機能も備えており、大家さんと入居者両方にとって、とても有用な損害保険です。

新規入居者に家財保険への加入を義務付け、すでに入居している方に対しても、万が一加入していない場合には加入を促進することをおすすめします。

この記事の監修者

金指 歩

金指 歩

【資格】3級FP技能士

法学部政治学科出身・元信託銀行勤務のフリーライター。神奈川県出身。FP3級を大学在学時に取得。金融系全般、女性のライフスタイルをテーマとした記事を中心に執筆している。

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