管理物件の万が一に!施設賠償責任保険は事故や災害時どこまで補償してくれるの?

2023.12.19更新

この記事の監修者

たじり ひろこ

たじり ひろこ

【資格】2級FP技能士/証券外務員第一種

管理物件の万が一に!施設賠償責任保険は事故や災害時どこまで補償してくれるの?

保険の見直し・検討を考えている大家さんへ「施設賠償責任保険」の補償内容についてケーススタディを交えながらご紹介します。

目次

大家さんであれば入っておくと安心の「施設賠償責任保険」

施設賠償保険とは施設(この場合はマンションやアパート)の不備で他人や物に損害を与えた時に、補償してくれる保険です。

例えば、マンションの外壁の落下で駐車中の車に損害を与えてしまった、マンションロビーの床で滑って入居者にケガをさせてしまった場合の補償も、施設賠償保険で行うことができます。この、施設賠償保険が火災保険や地震保険とどう違うかも確認していきます。

火災保険、地震保険との違い

火災や水漏れがあった時の補償をしてくれる火災保険、地震や津波での被害を補償してくれる地震保険。災害が起き施設に損害があった時に補償してくれる保険です。火事や地震はいつ起こるか誰も予想が付きません。自分で故意に起こすものでもありません。

火災保険や地震保険とは違い、施設賠償責任保険はこちらの不備で相手に損害を与えた時でも補償してくれる保険となります。火災保険・地震保険と施設賠償責任保険の大きな違いは偶然起こった損害を補償するか、こちら側の不備で起こした損害でも補償するか、というところなのです。

補償が大きく、保険料が安い施設賠償責任保険

設賠償責任保険のもうひとつの特徴は補償の大きさの割に保険料が安めだというとことでしょう。マンション・アパート一棟規模の保険料でも数千円程度で済むことも少なくありません。また、補償が大きいところも見逃せないポイントでしょう。数千円の保険料で何かあった時には1億円単位の保険金が支払われるのです。

「うちのマンションはまだ新しいから施設賠償責任保険がなくても大丈夫」と思われるかもしれません。ですが、たった数千円で大きな補償があるのならば、ぜひとも入っておいた方がいいのではないでしょうか。

どのような時に保険金が支払われる?

施設賠償責任保険は

●施設の安全性の維持・管理の不備や、構造上の欠陥
●施設の用法にともなう仕事の遂行

が原因で他人や物に損害を与えた時に保険金が支払われます。具体的にどのようなことに保険金が支払われるのかですが、以下の通りとなっています。

●法律上の損害賠償金
●賠償責任に関する訴訟費用・弁護士費用等の争訟費用
●求償権の保全・行使等の損害防止軽減費用
●事故発生時の応急手当等の緊急措置費用
●保険会社の要求にともなう協力費用

損害を与えた対象に支払う賠償金だけでなく、それにともなう裁判費用、応急手当の費用など、幅広く補償されるのです。忘れてはいけないことですが、施設賠償責任保険の支払い対象になるのは「法律上の損害賠償責任を負担することにより被る損害に対して」です。「ケガをさせてしまったから、お詫びのつもりで支払いたい」と大家さんの個人的感情だけで保険金を支払うということはできませんので注意しておきましょう。

また、施設賠償責任保険の補償範囲では示談交渉まではしてもらえません。こちらも留意しておいてください。

保険金が支払われないケースとは?

施設賠償責任保険を契約していても保険金が支払われないこともあります。

●告知義務や通知義務を怠った場合
●他社と補償内容が重複しており、すでにそちらの保険金が支払い済みである場合
●地震や噴火などの天災が原因で生じた損害
●被保険者(この場合は大家さん)と生計を一にする同居親族が受けた損害

これは施設賠償責任保険に限ったことではありませんが、告知すべきことをしていなかった場合、すでに他の保険会社で同じような保険に入り、そちらで保険金が支払われている場合は補償されません。加入する際に注意しておきましょう。また、天災がもとで生じた損害についても保険金は支払われません。この場合は地震保険等からの支払いとなります。そして、この施設賠償責任保険はあくまで「他人・他人の物」が受けた損害に対しての保険です。生計を一とする身内が損害を受けても補償対象にはなりません。

施設賠償責任保険が適用されるケース

施設賠償責任保険はどのような不備があった際に支払われる保険なのでしょうか。具体例を挙げながらチェックしていきましょう。

マンション・アパートの安全性の維持・管理の不備があった場合

施設賠償責任保険はマンション・アパートの安全性や管理に不備があったために生じた損害について保険金が支払われます。いくつか例を挙げてみましょう。

物の外壁の落下での損害

管理する建物の外壁が落下し、通行人にケガをさせてしまった場合には保険金が支払われます。人だけでなく、止めてあった車両への損害、他の建物への損害も補償されます。

建物エントランスの不備での損害

建物内部、例えばエントランスが壊れており、そこでつまずいた人が骨折をしてしまった場合も補償されます。

エレベーターでの事故で起こった損害

壊れたエレベーターに乗っていた人がケガをしてしまった場合も保険金支払いの対象となります。

マンション・アパートの構造上の欠陥があった場合

施設賠償責任保険はマンション・アパートの構造上の欠陥がもとで生じた損害でも保険金支払いの対象です。

非常口や避難経路の不備

マンション内で火事が起こった際、非常口や避難経路が十分に確保されておらず、逃げ遅れた人がケガ、もしくは死亡してしまった場合、保険金支払いの対象となります。

滑りやすい床での事故

滑りやすい材質を使っているマンション共用部の床で転んでケガをした場合も保険金支払いの対象となります。

特約を付けて補償の対象になるパターン

施設賠償責任保険自体では保険金支払い対象になりませんが、特約を付けて補償対象になるものもあります。確認しておきましょう。

水漏れによる損害

マンションの老朽化した給水管から水漏れし、居住者の部屋を水浸しにしてしまった際の補償は「漏水補償特約」を付けることで保険金が支払われます。
※保険会社によっては主契約の施設賠償責任保険の補償対象になっている場合もあります。

ただし、補償されるのは他人に損害を与えた際に支払われる賠償金のみです。水漏れした給水管の原因調査費用や修理代金は補償されません。また、自室の水道から漏水させ階下の部屋を水浸しにするという「居住者のミス」の場合も施設賠償責任保険からは保険金は支払われません。この時は居住者が加入する「個人賠償責任保険」からの支払いとなります。

こんな物件・シチュエーションであれば加入を検討しよう

マンション・アパートを管理する大家さんならば、ぜひ施設賠償責任保険への加入をおすすめします。特に、築年数が古い物件を管理する大家さんはすぐにでも加入を検討した方がいいでしょう。たとえ修繕工事をしていても、内部の老朽化で思いもよらない事故が起こる可能性も考えられます。

もちろん、これからマンション・アパート経営を考えている方も同様です。新しい建物であったとしても、問題が起こって人や物を傷つける可能性はゼロではありません。多額の損害賠償を請求されることも想定して、施設賠償責任保険の加入を検討してください。施設賠償責任保険は安い保険料で大きな補償が得られる保険です。加入しておいても損することはないでしょう。

まとめ

施設賠償責任保険は火災保険・地震保険に比べて知名度が低い保険です。しかし、自分が予想もしてなかった建物の不備から生じる損害にも対応できるというメリットがある保険です。

それほど負担のない金額で加入することができますので、自分だけなく他人を守るためにもぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

たじり ひろこ

たじり ひろこ

【資格】2級FP技能士/証券外務員第一種

証券会社営業、生命保険会社営業サポート、銀行コールセンター等複数の金融機関勤務経験あり。2016年末からライターとして活動し、主に金融系サイトで執筆。

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