税金対策になるって本当?不動産に関わる損益通算の仕組みについて解説

監修逆瀬川 勇造

  • 公開日:
  • 2020年10月16日
  • 更新日:
  • 2020年10月16日
税金対策になるって本当?不動産に関わる損益通算の仕組みについて解説
賃貸経営では税金についての知識が欠かせませんが、知っておくとお得になるかもしれない、損益通算についてはみなさんご存じでしょうか。この記事では、賃貸経営に取り組んでおられる方、または興味を持たれている方に向けて、税金の損益通算について基本から分かりやすく解説していきます。

目次

損益通算とは

損益通算とは、不動産所得の赤字と所得の黒字を相殺する仕組みのことを指します。所得税は働いて得た利益に対して課されるもので、利益額がいくらかを計算し、その額に応じた税金を納める必要があります。この働いて得た利益のことを所得と呼びますが、所得には、サラリーマンの方が受け取る給与所得のほか、賃貸経営などで得られた利益を計上する不動産所得、事業に取り組んで得た利益を計上する事業所得などがあり、これらを合算する必要があります。

損益通算では、たとえば給与所得で400万円の利益があり、不動産所得で100万円の損失があるといった場合、これらを相殺することを指します。もし、損益通算しなければ、給与所得400万円に対して税金が課されますが、損益通算することで、給与所得と不動産所得を相殺した300万円に対する税金を計算することができます。

損益通算で控除しきれない場合は繰越控除できる

損益通算には繰越控除の仕組みもあります。繰越控除とは、損益通算を行っても控除しきれない損失がある場合、翌年以降に損失分を繰り越すことができるというものです。たとえば、給与所得が400万円ある方が、不動産所得で1,000万円の損失を出した場合、その年の所得は0円とすることができます。また、損失分のうち、600万円分についてはまだ残っているため翌年以降に繰越できます。この場合、翌年以降も給与所得400万円であると仮定すると、翌年の所得は0円、翌々年の所得は200万円となります。

ただし、個人の方がこの繰越控除をするには、複式簿記による方法で帳簿をつけて確定申告する「青色申告」をすることが条件です。さらに、個人の場合は繰越控除の期間が3年までとなりますが、法人化すると繰越控除の期間を10年まで延ばすことができます。

損益通算できないときがあるので注意

損益通算は異なる所得間の利益と損失を相殺できる仕組みですが、すべてに適用できるというわけではありません。ここでは、賃貸経営において損益できないケースについて見ていきたいと思います。

1. 別荘を運営して発生した赤字

損益通算は、競走馬や骨とう品、ゴルフ会員権、リゾート会員権など、通常の生活を送るうえで必要でない資産で生じた損失については適用されないことになっています。とくに賃貸経営においては、別荘の売却や賃貸で生じた赤字は、損失が生じなかったものとされます。

2. 土地取得分の負債の利子

ローンを組んで賃貸物件を購入した場合、そのローンにかかる利子について経費として計上できますが、土地部分は損益通算の適用外となっています。この場合、建物部分と土地部分とを分けて、建物部分のみ損益通算できるということになる点に注意が必要です。

損益通算の計算方法

ここでは改めて、賃貸経営における損益通算の計算方法について見ていきたいと思います。

所得税率

損益通算を計算するにあたっては、所得税率を確認しておくようにしましょう。下表のように、所得税率は、所得が高くなればなるほど税率も高くなる累進課税制度となっています。たとえば、ある年の所得が400万円だった場合、納税額は以下のように計算できます。

4,000,000円×20%-427,500円=372,500円

一方、給与所得が400万円で不動産所得が100万円の赤字といったケースでは、損益通算することでその年の所得を300万円とできるため、納税額は以下のようになります。

3,000,000円×10%-97,500円=202,500円

非常に節税効果の高い制度だということが分かるのではないでしょうか。
課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超40%2,796,000円

損益通算を賢く活用して税金をおさえる方法はある?

賃貸経営において、損益通算を賢く活用して税金をおさえるためには、できるだけ多くの経費を計上することを考えるとよいでしょう。賃貸経営において、経費計上できるものには以下のようなものがあります。

・水道光熱費
・管理委託費
・修繕費
・租税公課
・借入金利子(建物部分のみ)
・減価償却費

損益通算を賢く活用するなら減価償却費に注目!

上記のうち、うまく活用したいのが減価償却費です。減価償却費とは、不動産の建物部分について、経年劣化して価値が落ちていく分を経費として計上できるというものです。建物の構造により、RC造は47年、鉄骨造は34年、木造は22年と耐用年数が定められており、取得費(建設費や購入金額)を耐用年数で割って各年の経費とするといった計算を行います。

耐用年数が短いほど、取得費に対して1年ごとの経費を高い割合で計上でき、逆に長ければ、1年ごとの経費は少なくなるものの、長い期間減価償却費を計上できます。たとえば、簡略化した計算にはなりますが、9,400万円の賃貸物件を取得した場合、RC造だと47年間200万円(耐用年数が47年のため)計上でき、木造だと22年間約427万円計上できるということになります。

損益通算を賢く活用しようと思えば、物件の取得前にこの減価償却についてどのくらいの期間、どの程度計上できるかを計算しておくことをおすすめします。

損益通算は万が一の対応策!

この記事では損益通算についてお伝えしていますが、計上できる経費についてはしっかり計上することが大切ではあるものの、賃貸経営に取り組むのであれば、安定した黒字経営を意識することが何より大切です。

節税を目的とした賃貸経営はリスクだらけ

損益通算は、不動産所得が赤字になったときに初めて活用できるものです。税金を節税できるメリットはあるものの、賃貸経営においては、キャッシュフローの悪化や金融機関の信用低下といったリスクの方が大きい点に注意が必要です。

特に後者については、2棟、3棟と事業の規模を拡大していきたいと考えている方にとって大きな問題となります。賃貸経営に取り組むのであれば、損益通算はいざという時の対応策と考え、赤字が出ないよう収支バランスをみながら経営計画を立てていくようにしましょう。

まとめ

賃貸経営における損益通算について、その仕組みや具体的な計算方法などをご紹介しました。賢く活用すれば税金を大きくおさえることもできるため、しっかりと内容を理解することが大切です。ただし、とくにサラリーマンの方が賃貸経営を始める際、この損益通算による節税効果を期待することも多いようですが、そもそも損益通算は不動産所得が赤字になることが前提ですので、万が一のときの対応策程度に考えておくことをおすすめします。
逆瀬川 勇造

監修逆瀬川 勇造

【資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。

大学在学中に2級FP技能士資格を取得。
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

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