賃貸住宅にあった住宅用火災警報器とは?設置義務や10年毎の交換についても解説します

2024.08.14更新

この記事の監修者

吉田 成志
吉田 成志

宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/マンション管理士/消防設備士

賃貸住宅にあった住宅用火災警報器とは?設置義務や10年毎の交換についても解説します

賃貸物件にも、火災警報器を設置する義務があります。火災警報器の基礎知識や設置費用などを把握しておきましょう。

この記事のポイント
  • 住宅用火災警報器は、住宅火災件数の増加などにより設置が義務化されています。
  • 自治体によっては、住宅用火災警報器設置のための補助金制度を設けている場合も。
  • 住宅用火災警報器の設置については条例で指定されています。設置の際には、条例の指示に従うようにしましょう。

目次

住宅用火災警報器の設置義務

住宅用火災警報器は、住宅火災件数の増加や住人の高齢化を受け、設置が義務化された設備です。

賃貸物件の場合には、所有者である大家さんが住宅用火災警報器を設置するケースが多いですが、実際には管理者や入居者なども含めた、すべての「関係者」に設置義務があります。

一度設置した後は、10年を目安に交換が推奨されていますが、設置・交換義務は大家さんだけにあるわけではないことを覚えておきましょう。くわえて、条例によって住宅内の設置場所や個数についても異なってきます。設置や交換の際にはよく条例を確認するようにしましょう。

住宅用火災警報器と自動火災報知設備の違い

住宅用火災警報器は、配線の必要がなく簡単に取り付けができ、警報器そのものが警報音などを出して火災発生を知らせます。

一方、自動火災報知設備は、配線工事によって建物全体に感知器を設置し、火災発生時に火災報知設備の受信機やベルを鳴らしたり、警備会社などに通報したりするものです。自動火災報知設備は延べ面積500m2以上のマンションなどに設置義務があり、感知器を設置する基準なども消防法で詳しく定められています。

交換方法は?

火災警報器はホームセンターや電気店などでも購入することができるので、大家さん自身で交換することもできますし、専門の業者に依頼することもできます。

警報器は壁や天井にドライバーでネジ止めされている場合と、フックなどで引っ掛けられている場合があります。壁や天井の材質にもよりますが、電動のインパクトドライバーなどがあれば、初めての方でも楽に交換できるでしょう。

設置しないと罰則がある?

2006年には、すべての住宅において住宅用火災警報器の設置が義務づけられました。しかし、設置しなかったとしても直接罰金などの罰則を受けることはありません。とはいえ、人命を守るためにも、住宅用火災警報器は積極的に設置するようにしておきたいものです。

住宅用火災警報器の役割

住宅用火災警報器は、火災の発生を伝え、人命を守るためのとても大切な設備です。

効果

熱や煙など、火災が発生した場合に生じる異常を感知すると、警報音を発して火災の発生を住人に伝えます。就寝中・入浴中などは避難が遅れがちですが、住宅用火災警報器がいち早く異変を知らせてくれることで、初期消火や避難などの対応が可能となり生存率が高まります。

設置基準

マンションはもちろん、一戸建てなどを含むすべての住宅において住宅用火災警報器の設置義務があります。ただし、自動火災報知設備やスプリンクラー設備などの消防用設備が適法に設置されているマンションなどでは免除されます。

また、以前は原則として寝室と階段だけに住宅用火災警報器の設置が求められていましたが、現在では各市町村の条例によって、台所などにも設置を求められる場合があります。各市町村の条例をよく調べておきましょう。

住宅用火災警報器の設置にかかる費用と期間

住宅用火災警報器は、ベーシックなものであれば1つ3,000円程度の本体価格が相場です。業者に依頼する場合の工賃は、取り付け個数などによってさまざまですが、たとえば50戸前後のマンションであれば、5万円~10万円の工賃と本体代金で、全住戸に1日で取り付けできる場合が多いです。

ただし、すでに借主が入居中で、入室時間の調整のために時間がかかる場合などは、その分の費用が増加してしまうので注意しましょう。

設置に対する補助金を設けている自治体もある

自治体によっては、住宅用火災警報器の設置のために補助金などの制度が設けられている場合もあります。1人暮らしの高齢者や障がい者のみの世帯で暮らす方などを対象に住宅用火災警報器の給付を行っている自治体などもあるので、活用できる制度がないか、確認してみてください。

住宅用火災警報器の製品紹介

ここでは、さまざまな商品が多数発売されている住宅用火災警報器の、代表的な製品を紹介していきます。また、熱式・煙式のどちらをどう設置すべきかなどについては、条例などで指定されています。設置の際には、条例の指示に従うようにしましょう。

住宅用火災警報器の種類

住宅用火災警報器が火災を検知した場合、検知した警報器のみ音がなる「単独型」と、住戸内のそのほかの警報器も一緒に音が鳴る「連動型」があります。また、警報器が火災を検知する方法には、熱を検知する「定温式」と、煙を検知する「煙式(光電式)」があります。

このほか、火災を検知した場合に光や振動で警報を発するものなど、さまざまな住宅用火災警報器が販売されています。

単独型熱式:ホーチキ(SS-FLシリーズ)

メーカー名品番(商品名)寸法((高さ×横×厚さ)
ホーチキSS-FL-10HCCA100mm×100mm×41.5mm
ホーチキ製のSS-FLシリーズは、設置状況に合わせて誤報を抑える「ラーニング機能」や、電池の消費を抑える特許技術などが搭載されたハイスペックな住宅用火災警報器です。本体に滑り止めもついているため、ご自身でも交換作業が簡単であることがメリットです。

連動型熱式:NOHMI(まもるくん)

メーカー名品番(商品名)寸法((高さ×横×厚さ)
NOHMI(能美防災)FSLJ016-C型(まもるくん)φ99mm×25.6mm

まもるくんは、火災検知時にはその部屋だけでなく、ほかの部屋に設置された警報器も警報音を発する、いわゆる連動型の住宅用火災警報器です。中継アダプターなどを利用すれば、フラッシュライトを連動させたり、スマホに火災の通知を送ったりすることもできます。部屋が多数ある住宅や、高齢者・聴覚障がい者などが住む住宅におすすめの警報器です。

単独型煙式:ニッタン(けむタンちゃんシリーズ)

メーカー名品番(商品名)寸法((高さ×横×厚さ)
ニッタンKRL-1 (けむタンちゃんスリム音声)φ100mm×30mm

けむタンちゃんシリーズは、円形で薄型の住宅用火災警報器です。とくにKRL-1はマットタイプで存在感を抑えているため、内装がおしゃれ・スタイル重視のマンションなどにもうまくなじみます。

連動型煙式:パナソニック(けむり当番薄型2種)

メーカー名品番(商品名)寸法((高さ×横×厚さ)
パナソニックSHK74201P (けむり当番薄型2種)φ100mm×25mm

けむり当番薄型2種は、連動型煙式の住宅用火災警報器です。連動ですべての警報器が起動することはもちろん、本体がほのかに光って夜間や停電時などの避難の助けとなるため、住人の安全に一役買ってくれる警報器です。

よくある質問

ここでは、住宅用火災警報器についてのよくある質問についてまとめました。
住宅用火災警報器は、禁煙やオール電化の物件なら付けなくても問題ない?
住宅用火災警報器は、すべての住宅に設置義務があります。たとえタバコを吸わない禁煙の部屋や、オール電化で火の気が少ない部屋であっても、家電などからの出火や近隣からの火災などに見舞われる可能性がありますので、住宅用火災警報器を設置して警戒しておく必要があります。
住宅用火災警報器は、「住宅用」だから「店舗や事務所」は関係ない?
住宅用火災警報器は、店舗や事務所に設置する必要はありません。しかし、これは「火災の発生を警戒する必要がない」というより「住宅と用途が違うために設置できない」という意味です。事務所に設置義務のある消防設備などが別にあります。自治体によって異なりますので、所轄の消防署へ確認するようにしましょう。
住宅用火災警報器の設置後は何をしたらいい?
住宅用火災警報器を設置したら、警報器が正常に作動するか点検する必要があります。商品や設置状況によって操作方法は異なりますが、ヒモを引っ張る、ボタンを長押しすることで機能を点検できるようになっていますので、取り付けが完了したら確認しておくようにしましょう。

基本的には1か月に1回ほどの機能点検と、埃がたまってくると誤作動を起こす可能性が高くなりますので、半年に1回程度、点検を兼ねて掃除をすることをおすすめします。
住宅用火災警報器の設置届けは誰がどこに提出するの?提出期限は?
住宅用火災警報器については、ほかの消防設備と違って設置届の提出は基本的に必要ありません。ただし東京では、「新築や改築の際には、設置から15日以内に消防署長に届け出なければならない」と定められています。設置届の要否、書式や記載内容などについてはよく確認するようにしましょう。

まとめ

住宅用火災警報器は条例によって設置が義務付けられており、人命を守るために必要不可欠な設備です。防災への意識が高まっている昨今、アパートやマンションなどの住居を選ぶ際、とくに高齢者・小さい子どもなどがいる家庭にとっては、防災設備が適切に整備されているかどうかは入居の際の大きな判断基準となります。

住宅用火災警報器の設置、そして10年を目安としての交換を心がけ、安心・安全の賃貸経営を目指しましょう。ただし、警報器の種類や取付場所などは、各市町村の火災予防条例で定められている内容に従う必要があります。よく調べて、入居者とご自身の物件を住宅火災から守っていきましょう。

この記事の監修者

吉田 成志
吉田 成志

宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/マンション管理士/消防設備士

専任の宅建士として不動産仲介会社に従事した後、マンション管理士・消防設備士として独立。宅建士をはじめとした幅広い知識や経験を生かし、不動産売買や賃貸時に気になる疑問点の相談なども担当している。

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