家賃収入に消費税がかかる?大家さんでも消費税が課税される場合ってどんなとき?

監修秦 光一郎

  • 公開日:
  • 2021年02月15日
  • 更新日:
  • 2021年02月15日
家賃収入に消費税がかかる?大家さんでも消費税が課税される場合ってどんなとき?
1989年に導入された消費税は、当初の3%から、1997年5%へ、2014年8%へ、そして2019年に10%へと、段階的に税率が引き上げられてきました。消費税率が選挙のたびに争点となるという現実は、消費税に対する人々の関心の高さを物語るものです。税率の度重なる上昇により、消費税の納税額は事業者にとって軽視できない金額になっています。この記事では、不動産貸付業を営む方が、消費税について押さえておいて頂きたいポイントをお伝えしていきます。

目次

そもそも消費税とは

消費税とは消費(モノやサービスの購入)という取引行為に対し課税されるものです。税金を負担しているのは消費者ですが、実際に納税をするのは事業者です。このような税負担をする者と税金を納める者が異なる税金を間接税といいます。

消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等に対して課する、と規定されています。対象となる取引は「事業」ですので、不用品の売却など個人が消費者として行う行為は通常は消費税の対象外です。またここでいう「資産の譲渡等」には、譲渡、貸付及びサービスの提供まで含まれており広い概念を指します。

家賃収入に消費税は課税されない?

消費税法でいう取引の種類には、消費税の対象となる「課税取引」、消費税の対象ではない「不課税取引」、政策的な配慮等から消費税を課さない「非課税取引」、消費税の対象であるものの税率0%である「免税取引」等々があります。非課税取引とされている取引の1つに、住宅の貸付があります。住宅の貸付は、消費税導入当初は課税対象の取引でしたが、平成3年に消費税の非課税範囲が拡大された際に、政策的な配慮から非課税取引とされました。

企業等が借り上げて従業員に提供する社宅の家賃も、住宅の貸付に該当し非課税になります。他方、住宅の貸付であっても貸付期間がひと月以下である場合や、旅館業法に規定する施設の貸付に該当する場合は、非課税取引にはなりません

礼金や共益費も非課税

住宅の貸付に伴って発生する礼金、共益費、管理収入、更新料等も、通常必要であると考えられる範囲の金額は、家賃同様非課税となります。非課税である家賃に付随して授受される金額であるためです。しかし家賃に付随して授受される金額であっても、空調設備や給湯設備の利用料等として区分されている場合は、消費税の課税対象になります。

大家さんでも消費税が課税されるのはどんなとき?

不動産の貸付のすべてが消費税の非課税取引となるわけではありません。大家さんが消費税を課される場合について考えてみましょう。

事務所・店舗を賃貸しているとき

住宅の貸付は非課税取引ですが、事務所・店舗の賃貸は課税取引です。そして事務所や店舗の賃貸に伴って発生する、保証金(返還を要しない部分)や共益費なども、課税取引とされます。SOHOや時間貸しのレンタルスペース・オフィス等も事務所・店舗と取り扱いは同様で、課税取引とされます。また民泊の提供も同様です

駐車場を賃貸しているとき

駐車場の賃貸は課税取引になる場合と、非課税取引になる場合があります。更地を駐車場として貸し付けている場合は非課税取引です。土地は時の経過に伴って自動的に価値が減ずる性質のものではないため消費という概念に馴染みません。このため土地の売買や貸付は原則非課税となります。他方、土地にアスファルトや砂利を敷設するなど、駐車場としての設備を整えて賃貸している場合は、課税取引とされます。

しかし、駐車場が舗装整備されているような場合であっても、住宅に付随して、住宅と一体となって賃貸される場合は、非課税として取り扱われます。ただしこの取り扱いは、一戸当たり1台以上の駐車スペースが確保されており、住宅家賃と別に駐車場使用料を収受していない等の要件に該当していることが必要です。

前々年の課税売上高が1,000万円を超えたとき

消費税法では、消費税の納税義務者である事業者を課税事業者といい、消費税の納税義務者ではない事業者を免税事業者といいます。個人が課税事業者であるかの判定は、その年の前々年の課税売上高が1,000万円を超えるかにより判定され、個人の場合の期間の捉え方は暦年単位です。ここでいう「課税売上高」とは、収入が発生する課税取引の一年間の合計額を意味します。

たとえば、令和元年分の課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々年の令和3年から課税事業者になります。この場合、令和3年1月1日以降の取引が消費税の課税対象となります。今年、令和3年にご自分が課税事業者に該当するかが気になるという方は、令和元年分の課税売上高をご確認なさってください。

前々期の課税売上高が1,000万円を超えたとき

法人の場合も課税事業者の判定は前々年が基準となりますが、暦年ではなく事業年度単位で判断します。たとえば、事業年度が1年間の3月決算法人について考えてみましょう。平成31年3月期(平成30年4月1日~平成31年3月31日)の課税売上高が1,000万円を超える場合、翌々事業年度である令和3年3月期(令和2年4月1日~令和3年3月31日)から課税事業者となります。この場合、令和2年4月1日以後の取引が消費税の課税対象となります。

課税事業者選択届書を提出したとき

消費税の課税事業者になりたい事業者は、届出期限までに課税事業者選択届出書を税務署長へ提出し、課税事業者となることができます。あえて課税事業者になる目的は、通常は消費税の還付を受けるためです。還付とは払い過ぎた税金を国が返還する手続きをいいます。消費税の納税額の算出方法は原則として、一定期間中に事業者が課税売上に伴って預かる消費税額の累計額から、経費の支払いや資産の購入に伴って支払う消費税額の累計額を差引いて算出します。

消費税法では、経費支出等に伴って支払う消費税のことを「課税仕入等の税額」といい、預かり消費税から「課税仕入等の税額」を差引く手続きを「仕入税額控除」といいます。そして預かり消費税より仕入税額控除が多額であれば、消費税の還付を受けることになります。しかし消費税法は、課税事業者でなければ消費税の還付を受けられないとも規定しています。そこで多額の投資計画がある場合、その年度に合わせて還付を受けるために、あえて課税事業者を選択する事業者がいるわけです

【事例】
ある事業者の課税売上高が3,000万円、消費税の対象となる経費の支払いが、1,000万円であるとします。この場合の消費税の計算は以下のようになります。
① 3,000万円×10%=300万…課税売上高に対する消費税
② 1,000万円×10%=100万円…課税仕入等税額
③ 300万円-100万円=200万円…納付消費税額
さてこの事業者が、上記の取引の他、この年に1億円のオフィスビルを購入していたとしましょう。この場合の消費税の計算は、いくつかの要素により変動しますが、おおむね、
① 3,000万円×10%=300万円…課税売上高に対する消費税
②(1,000万円+1億円)×10%=1,100万円…課税仕入等税額
③ 300万円-1,100万円=△800万円…納付(還付)消費税額
という計算になり、800万円の還付となります。建物の購入に際して支払う消費税が多額なので、仕入税額控除が多額になり還付が発生するわけです。

上記例は、建物の利用状況、その年の課税売上割合等により、全く異なる計算結果となる場合もありますので、個別具体的な案件については顧問税理士にご相談ください

簡易課税制度

消費税には、小規模事業者の事務能力を考慮して、簡易課税制度が設けられています。原則課税制度の場合、1年間のすべての取引について、取引種類ごと、税率ごとに集計しなければ、消費税額を計算できません。このため経理担当者には、知識、経験、能力が求められます。他方簡易課税制度の場合は、業種ごとにみなし仕入率を定め、仕入税額控除を概算で算出します。つまり売上金額のみ業種ごとの集計ができれば、消費税額を計算できます。

不動産貸付業のみなし仕入率は40%です。たとえば1年間の売上高が不動産貸付業の課税売上3,000万円のみの場合、この年の消費税額は以下のようになります。
① 3,000万円×10%=300万円…課税売上高に対する消費税額
② 3,000万円×10%×40%(みなし仕入率)=120万円…課税仕入等税額
③ 300万円-120万円=180万円…納付消費税額
簡易課税方式では実際支払額を考慮しないため、簡易課税制度を選択している年に高額な建物を購入したとしても、前述の還付を受けることはできません。簡易課税制度は、その年の前々年(法人の場合、前々事業年度)の売上高が5,000万円以下である場合に限り適用でき、一旦選択した場合、2年間は継続して適用することが求められます。

消費税についてもっとも注意すべき事項は届出の状況

消費税でもっとも注意すべきは届出状況です。消費税にはさまざまな届出書があります。課税事業者を選択したい場合は、課税事業者選択届出書。選択を取りやめたい場合は、課税事業者選択不適用届出書。簡易課税制度を選択したい場合は、簡易課税制度選択届出書。選択を取りやめたい場合は、簡易課税制度選択不適用届出書、などです。

これら届出書の提出期限は、適用を受けようとする期間の初日の前日です。たとえば簡易課税制度を選択している事業者が、令和3年からその選択を取りやめる場合は、届出書の提出期限は、令和2年12月31日となります。

建物購入や大規模修繕を行った年の消費税の課税方法が簡易課税制度である場合、支出にともなって支払う消費税は、仕入税控除の対象となりません。年の中途、建物購入後などに簡易課税制度を選択していることに気付いたとしても、消費税の還付を受けるうえでは手遅れになります。消費税の課税事業者である方は、ご自身の消費税の届出状況を把握しておくことはきわめて重要です。ご自身の投資計画等に照らして、届出状況が適正であるかを顧問税理士と検討なさってください

物件を売却したときは消費税を意識しよう

通常、土地や建物といった不動産は、取引価額が高額になります。土地の売却については、消費税の非課税取引となりますが、建物の売却は消費税の課税取引です。賃貸用アパートなどの売却価額が1,000万円を超えてしまう場合、消費税についての検討が必要になります。

先に述べたとおり、消費税の課税事業者の判定は、その年の前々年の課税売上高によります。たとえば、令和3年に賃貸用アパートを2,000万円で売却した個人について考えてみましょう。この人の令和元年の課税売上高が1,000万円以上であれば、令和3年中に売却した賃貸アパートの売却収入2,000万円は消費税の課税対象として取り扱われます。他方、この人の令和元年の課税売上高が1,000万円以下であれば、課税事業者選択届出書の提出が無い限り賃貸アパートの売却収入2,000万円には消費税が課されません。

また別の論点として、令和3年の課税売上高は少なくとも1,000万円を超えることになることから、令和5年は消費税の課税事業者となります。この場合仮に令和5年の課税売上高が1,000万円以下であったとしても、課税売上高が存在する限りは、消費税の確定申告と納付が必要になります。

大家さんは消費税還付不可?!これってどういうこと?

令和2年度の税制改正において、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除の取扱いが改正され、令和2年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物に係る課税仕入等の税額については仕入税額控除の対象としない、と定められました。つまり住宅用建物については、購入時に支払う消費税が多額であっても、預かり消費税からこれを差引いて還付を受けることができないことになりました。この税制改正は、近年目立っていた金地金などを用いて消費税の還付を受けるスキームを封じるために設けられました。

居住用賃貸建物の購入の年(年度)から3年以内に店舗として賃貸し、または売却等した場合には、実績に応じた仕入税額控除が受けられることになっています。

まとめ

導入当時、シンプルな税制であった消費税法も税率の上昇や複数税率の採用にともなって複雑な税制になりつつあります。また課税制度の選択に係る届出の提出状況は、納税額に多額の影響を及ぼす可能性があり、毎年検討が必要な事項になっています。ご自身の投資計画などが、今後の納税額や事業そのものにどのような影響を及ぼすのか、顧問税理士と連絡を密にとり、検討を始めてください。
秦 光一郎

監修秦 光一郎

【資格】税理士

会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。
税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。
平成22年税理士法人シン総合会計設立。
主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。
不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。

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