不動産取得にかかわる契約書に必要な印紙税っていくらかかる?

監修秦 光一郎

  • 公開日:
  • 2021年05月17日
  • 更新日:
  • 2021年05月17日
不動産取得にかかわる契約書に必要な印紙税っていくらかかる?
不動産売買契約書や建物建築請負契約書には必ず印紙の貼付が求められます。これらの契約書は契約金額が多額になりがちで、伴って印紙税も意外と軽視できない金額となります。今日は不動産賃貸経営の観点から、知っておきたい印紙税のあれこれについてご紹介していきたいと思います。

目次

印紙税とは税金の一種

印紙税は17世紀オランダで戦費調達のために発明された税金で、日本にも明治時代に導入されました。政府税制調査会によれば、印紙税は経済取引に伴う文書作成の背景にある何らかの経済的利益に担税力を見出し課税する税金、とのことです。正確な会計帳簿作成が義務づけられる今日においては、経済的利益はかならず捕捉され所得税などが課税されます。このため有識者の中には、印紙税は二重課税でありすでに合理性を欠いているとの見解を述べる方もいらっしゃいます。

印紙税は文書に対して課税される税金です。今日の社会では、商慣習として取引に際して、その内容を証する書面を残します。たとえば、契約書、覚書、証券、領収書等です。印紙税法はこれら文書のうち、課税物件表に列記されている文書のみを課税の対象とし、課税文書と呼びます。そして課税文書作成時に印紙を貼付し消印をすることを求めています。納税義務者は課税文書の作成者であり、確定申告等の手続きを経ず、文書作成時に納税義務と納税額が確定し、印紙の貼付と消印により納付が完了します。

印紙税はあくまでも課税文書に課税されるもので、その前提となる取引に課税するものではありません。このため「文書税」と言われています

印紙税の課税標準

印紙税の課税物件表は、第1号から第20号文書までの課税文書を定めています。いわゆる「領収書」は課税文書に該当し第17号文書と呼ばれるものです。課税文書ごとにそれぞれ課税標準と印紙税額が定められています

契約書はその記載内容が、第1号、第2号、第5号、第7号および第12号~第15号のいずれかに該当する場合、課税文書となりますが、すべての契約書に印紙の貼付が求められるわけではありません。課税文書となる契約書で一般的なものは以下のとおりです。
第1号の1文書不動産、工業権、無体財産権、船舶、航空機又は営業の譲渡に
関する契約書
第1号の2文書地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
第1号の3文書消費貸借に関する契約書
第1号の4文書運送に関する契約書
第2号文書請負に関する契約書
第7号文書継続的取引の基本となる契約書
上記、第7号文書の継続的取引とは、売買、請負等取引の基本契約書で、2回以上、契約期間3か月超などの定めがあるものをいいます。契約書が課税文書である場合、課税標準は記載された契約金額です。たとえば、不動産の譲渡に関する契約書は1号の1文書に該当します。印紙税の場合、記載金額が5000万円超1億円以下であれば印紙税6万円などと、個別に税額を定めています。

印紙税がかからない契約書もある

印紙税法上、課税文書であったとしても、印紙を貼らなくても良い、非課税文書となる場合があります。たとえば、前述の第1号文書又は第2号文書に該当する契約書であれば、記載された契約金額が1万円未満のものは印紙を貼付しなくてもよいことになっているほか、国や地方公共団体が作成する契約書も非課税文書とされます。国等の公共工事を請け負っている会社が保管する工事請負契約書は、文書作成者が国などであるとみなされることから、印紙が貼付されていません。

契約金額の記載のない契約書は一律200円

前述の第1号又は第2号文書に該当する契約書に金額の記載がない場合、印紙代は一律200円です。混乱しがちですが、契約書に9,900円と記載したならば、1万円未満なので印紙税は非課税ですが、金額を省略し記載しないと200円印紙がかかることとなります

不動産取引にかかる印紙税

印紙税法でいう契約書は、表題が「契約書」と記載された文書に限られません。協定書、覚書などの名称のいかんを問わず、契約の成立などを証する書面は、印紙税法上は契約書として課税文書扱いされます。印紙税法基本通達第12条は、「課税事項」のうち一の「重要な事項」を証明する目的で作成される文書は、契約書に該当するとしています。

たとえば、第1号の1文書であれば、「課税事項」は「不動産の譲渡」です。この文書作成上「重要な事項」は、印紙税法基本通達別表第2において、目的物の内容、引渡方法、期日など、10項目が定められています。前述の取扱いによれば、不動産の譲渡に際して、この「重要な事項」のうちいずれか一の事項の合意を証する文書は、印紙税法上契約書に該当し印紙税が課されます。つまり、仮契約書や覚書など名称のいかんを問わず、記載内容によって課税文書となるわけです。

契約に際してはむやみに複数の文書を作成せず、なるべく1つの文書で「重要な事項」を網羅することは、印紙税を節約する観点で重要なことです

不動産売買契約書

前述のとおり、不動産売買契約書は第1号の1文書として印紙税の課税対象です。契約書に記載される売買代金の金額が課税標準となります。

土地交換契約書

土地の交換契約書は、土地の所有権を移転させることを目的とする契約書なので、第1号の1文書に該当します。交換する土地が等価であって金額の記載が省略されている場合には、記載金額の無い契約書として、印紙は200円です

交換対象資産の双方の価額が記載されている場合には、いずれか高い金額が課税標準に、価額差を補填する交換差金のみが記載される場合は、交換差金が課税標準となります。地上権や借地権も不動産に該当するため、地上権と底地の交換取引のような、地主さんと賃借人の間で取り交わされる交換契約も、土地交換契約として上記の取扱いの対象です

不動産売渡証書

不動産売渡証書は、登記に際して、売主が売渡物件を表示して、その売渡事実を証明し、代金の受領事実を記載して買主に交付するものです。この文書は不動産の譲渡に関して、先に述べた「重要な事項」の一部を証する書面であるため、第1号の1文書に該当し、課税されます。証書に売買金額の記載があればその記載金額が課税標準となり、金額の記載がなければ印紙は200円となります

贈与契約書

不動産の贈与として比較的よく見られるのが、夫から妻への自宅不動産の一部贈与です。20年以上連れ添った夫婦であれば、通常の贈与税の非課税枠110万円に加えて2,000万円が非課税となるため、相続税対策として、生前に奥様へ自宅の一部を贈与することはよく活用される方法の一つです。現金贈与であれば契約書に印紙を貼付する必要はありませんが、自宅不動産の贈与契約であれば所有権移転が目的なので第1号の1文書に該当し、金額の記載のない契約書として200円の印紙が課されます

ちなみに贈与契約書に不動産の評価額が記載されることがありますが、この評価額は対価ではないため印紙税の課税標準にはなりません。あくまでも不動産の贈与契約書に貼付される印紙は200円になります

土地賃貸借契約書

土地の賃貸借契約書は、土地の賃借権の設定事実を証明する契約書であり、第1号の2文書に該当し、印紙税の課税文書になります。しかしながら、課税標準となる記載された契約金額の考え方に注意が必要です。

あくまでも、土地の賃借権の設定対価として記載された金額が課税標準となり、土地の使用の対価(いわゆる賃借料)は課税標準となりません。土地の賃貸借契約書に、返還不要の保証金、権利金、礼金などの金額の記載がある場合は、その金額が印紙税の課税標準となります。これらの金額の記載がない場合には、金額の記載のない契約書として200円となります。建物の賃貸借契約書は印紙税法上課税文書に該当しないため印紙貼付の必要はありません。

金銭消費貸借契約書

金銭消費貸借契約書とはローン契約のことです。住宅ローン、オートローン、学資ローンなどはいずれも、金銭消費貸借契約に該当します。金銭消費貸借契約は、第1号の3文書、消費貸借に関する契約書に該当し印紙税法上の課税文書となり、課税標準は記載された借入金額です。

工事請負契約書

工事請負契約書は、第2号文書、請負に関する契約書に該当し、課税文書となります。課税標準は、記載されている請負金額です。建築請負契約やリフォーム請負契約などがこれに該当します。課税標準は記載された請負金額です。

変更契約書

変更契約は第2号文書である請負契約書において、よく見られる事象です。工事の進行に伴って、工事内容が変更され、請負金額が増額又は減額されます。請負金額が減額となった場合、工事変更契約書に減額金額が記載されていたとしても、契約金額の記載のないものとして200円の印紙を貼付します。

請負金額が増額となった場合は注意が必要です。たとえば元々5億円の請負工事であったものが、変更されて5億5千万円になった場合を考えてみましょう。変更契約書に原契約からの増額分5千万円を記載した場合、印紙税は2万円となります。他方、変更契約書に変更後の請負総額5億5千万円と記載した場合、印紙税は20万円になります。契約書の記載の仕方次第で、印紙税額が大きく異なる場合がありますので、ご注意ください

契約書を2通以上作成した場合の取り扱い

印紙税は文書課税ですので、契約書を2通以上作成した場合には、それぞれに印紙の貼付が必要です。他方、複写された契約書は正本の単なる写しなので、印紙は不要となりますが、複写された文書でも次に該当する場合には印紙税の対象となります。

① 契約当事者の双方又は一方の署名又は押印があるもの(ただし、文書所持者のみが署名又は押印しているものを除く)

② 正本等と相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることの契約当事者の証明(正本等との割印を含む)のあるもの

これは印紙税法上の文書の「作成」の意義と関係しています。印紙税法上は、作成される文書が作成目的に従って行使される時を、文書の作成時としています。そして文書作成時に印紙税の納税義務が成立する、つまり印紙を貼付し消印することを求めています。

契約書のように当事者の合意を証明する目的で作成される文書は、その証明時が、文書作成時となります。そして証明時とは署名押印の時ということになります。複写により文書は作成されますが、通常複写時には署名押印はなされないことから、単なる複写文書には印紙が不要となるわけです。この考え方は次の電子契約とも関係があります。

電子契約の取扱い

電子契約については、印紙税は課されません。これは契約時に電子署名がなされ、文書が作成されないからです。しかし電子契約の方法で契約手続きをしたとしても、注意が必要な場合があります。前述のとおり、印紙税はその文書が作成目的に従って行使された時を文書作成時としており、その時に納税義務が成立します。

たとえば、注文請書は請負契約の「重要な事項」を証する書面として、印紙税法上第2号文書に該当します。注文請書は発注者に交付することが文書の作成目的となることから、その交付時が文書作成時=納税義務成立時です。つまり、電子契約の方法で請負契約を締結したとしても、注文請書を紙ベースで作成し発注者へ交付する場合は、その注文請書は第2号文書として印紙の貼付が必要になります

印紙税の軽減措置

令和4年3月31日までの間に作成される契約書については、軽減措置が講じられています。

不動産譲渡契約書

不動産の譲渡に関する契約書の印紙税額および軽減額は以下のとおりです。
記載された契約金額原則R4.3.31迄
10万円以下のもの200円200円
50万円以下 〃400円200円
100万円以下 〃1,000円500円
500万円以下 〃2,000円1,000円
1,000万円以下 〃10,000円5,000円
5,000万円以下 〃20,000円10,000円
1億円以下 〃60,000円30,000円
5億円以下 〃100,000円60,000円
10億円以下 〃200,000円160,000円
50億円以下 〃400,000円320,000円
50億円超 〃600,000円480,000円
記載のないもの200円200円

建設工事請負契約書

請負に関する契約書の印紙税額および軽減額は以下のとおりです。
記載された契約金額原則R4.3.31迄
100万円以下のもの200円200円
200万円以下 〃400円200円
300万円以下 〃1,000円500円
500万円以下 〃2,000円1,000円
1,000万円以下 〃10,000円5,000円
5,000万円以下 〃20,000円10,000円
1億円以下 〃60,000円30,000円
5億円以下 〃100,000円60,000円
10億円以下 〃200,000円160,000円
50億円以下 〃400,000円320,000円
50億円超 〃600,000円480,000円
記載のないもの200円200円

印紙税が未納の場合のペナルティ

印紙の貼付を、課税文書作成の時までに行わなかった場合には、いわゆる印紙税相当額の3倍の過怠税が徴収されます。過怠税の合計額が1,000円に満たない場合は、1,000円とされますが、課税文書の作成者が自主的に「不納付事実の申出」を行った場合、過怠税の額は、印紙税相当額の1.1倍とされます。

消印していなかった場合

課税文書に貼付した印紙に消印をしていなかった場合には、印紙税相当額の過怠税となります。

まとめ

ここまで不動産に関連した印紙税の留意点について考えてきました。印紙税法上は、文書名称の如何を問わず、「重要な事項」の合意を証する文書は契約書として扱われます。また、請負工事等の変更契約書では、記載方法により貼付すべき印紙税額が大きく異なる場合がありました。

印紙税法は複雑で特殊な規定です。もともと印紙税法に詳しい税理士は少ないですが、お客様を気遣う誠実な税理士は、相談を受ければ一生懸命調査し対応します。契約書作成に際しては、顧問税理士とよく相談し、不測の課税を招かないようなさってください。
秦 光一郎

監修秦 光一郎

【資格】税理士

会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。
税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。
平成22年税理士法人シン総合会計設立。
主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。
不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。

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