高齢者が少しでも安心して暮らせる物件に。導入を検討している大家さん必見のおすすめ見守りサービス5選

2024.02.02更新

この記事の監修者

いしわた さとみ

いしわた さとみ

【資格】宅地建物取引士/二級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー

高齢者が少しでも安心して暮らせる物件に。導入を検討している大家さん必見のおすすめ見守りサービス5選

高齢の入居者、離れて暮らすご家族、そして大家さんの不安を解消するのに効果的な「見守りサービス」をご紹介します。

目次

少子高齢化社会における賃貸経営の問題とは

1950年時点では総人口の5%にも満たなかった日本の高齢化率は、2018年10月に28%を超えました。65歳以上人口は2042年にピークを迎えるとみられていますが、それ以降も高齢化率は上昇を続け、2065年には38.4%。国民の約2.6人に1人が65歳以上になると考えられています。

2020年4月時点での総人口は1億2596万人。2065年には8,808万人まで減少すると推計されており、賃貸市場での入居者獲得競争はさらに激化し、賃貸住宅の空き家も増えていくと考えられます。これからは大家さんとしても、人口減少・少子高齢化に向けた取り組みが必要になっていくでしょう。

その中で大家さんができること

2016年に日本賃貸住宅管理協会が実施した調査によると、高齢者のみ世帯の入居を拒否する賃貸人は4.7%、高齢者世帯に拒否感がある賃貸人の割合は70.2%にものぼります。

理由としては、「家賃滞納の不安」が最多。次いで、「室内での死亡事故等に関する不安」となっています。しかし、最新(2019年上半期)の賃貸住宅市場景況感調査によると、高齢者層の平均居住期間は6年以上が69.9%と、ほかの層に比べて圧倒的な長期に及んでいます。

不動産会社を訪れる高齢者数が増加していることからも、積極的に高齢者の受け入れを行うことは長期的に安定した賃貸経営を行う上でも、社会福祉への貢献という意味でも有益であるといえます。

高齢者向け賃貸に人気のサービス&設備

高齢者向けの賃貸に必要な措置といえば、まずバリアフリー化が挙げられます。最低でも、段差の解消と手すりの設置は行いましょう。そして、次におすすめなのがオール電化。

2018年中の火災の原因は、たばこ、たき火に次いでコンロからの出火という結果でした。キッチンをガスコンロからIHクッキングヒーターに変更しておくことで、火災のリスクを軽減できます。

このほか、高齢者世帯を狙った強盗などの被害もあるため、セキュリティ対策もある程度は講じておきたいところです。そんな対策も兼ねて取り入れたいのが、今回ご紹介する「見守りサービス」です。

簡単に導入できる「見守りサービス」とは

賃貸物件への「見守りサービス」導入は、大家さんの不安を軽減するだけでなく、入居者本人やその家族にも安心感を与えてくれます。どのようなサービスがあるのか、具体的に見ていきましょう。

見守りサービスのタイプを知ろう

「見守りサービス」にもさまざまなタイプがあります。代表的なものをいくつかご紹介します。

センサー型

室内に設置したセンサーで高齢者の生活を見守ります。一定時間以上センサーが感知しないなど、異常を察知すると家族のスマートフォンやパソコンへ通知を行います。日常的な安否確認には役立ちますが、高齢者と家族が直接コミュニケーションをとる手段のないことがデメリットです。

訪問型

提携している介護事業所の職員が、定期的に高齢者宅を訪問します。直接対面で安否や様子を細かく確認し、確認した内容をメールなどで家族に連絡します。また、1人暮らしの高齢者でも社会との接点をもてるという点も、メリットの1つです。

対話型

コールセンターのオペレーターが高齢者宅へ定期的に電話をして、安否確認を行うサービスです。通話の内容はメールなどで家族に連絡します。電話だけなので訪問型に比べて気軽に対応できる半面顔が見えないことに物足りなさを感じる人もいるかもしれません。

カメラ型

室内に設置したカメラの映像で、遠方の家族が高齢者の生活を見守ります。24時間いつでも様子を確認でき、スピーカーとマイクが搭載されたものであれば音声での会話も可能です。ただし、プライバシーがなく高齢者側がストレスを感じる場合もあるため、導入は慎重に検討する必要があります。

宅配型

お弁当や食材の宅配を行う地域の事業者が提供するサービスで、高齢者宅へ食事を配達した際に安否確認を行います。異変に気付いた場合には、連携する地域包括センターなどへ連絡します。公的機関が間に入る安心感と、食事の宅配とあわせてサービス提供を受けられるのがメリットです。

通報型

室内に緊急通報装置を設置し、万が一の場合に入居者がボタンを押して通報すると、必要に応じて警備会社や救急車が駆け付けます。緊急時に限らず、平常時であっても心身の不安を相談するために利用することもできます。ボタンを押せる状態の時でないと、異常を発見できない点がデメリットです。

その他

このほか、電話の自動音声による安否確認や、電力の使用量から生活リズムの異常を察知するサービス、タブレットのアプリを利用するものなど、さまざまな見守りサービスがあります。自然な会話のできる見守りロボットは、伝言機能もあるなど近年注目を集めています。

見守りサービスの導入にかかる費用

センサーやカメラ、緊急通報装置など、機器を設置するタイプの見守りサービスは安価なもので月々2,000円程度から利用できます。ただし、機器の数を増やすと、その分料金はアップします。また、機器レンタルと買い取りでは初期費用の有無や月額料金が異なりますので、サービスや金額を比べながらチェックしてみてください。

コミュニケーション型の見守りサービスは、電話による対話型なら月々1,000~3,000円、訪問なら3,000~6,000円程度を目安にするとよいでしょう。宅配型は宅配料に含まれますが、料金に下限が設けられている場合がありますので確認が必要です。いずれにしても、1戸あたり月々5,000円もあれば何らかの見守りサービスを導入できるでしょう。

見守りサービスを選ぶポイント

賃貸物件にはどのような見守りサービスを導入するとよいのでしょうか。さまざまなタイプの見守りサービスがありますが、入居する高齢者とその家族の双方に満足してもらえるサービスでなければなりません。したがって、以下の3点に留意して、導入するサービスを選択するとよいでしょう。

・生活の様子を見守りながらも、プライバシーを確保できる。
・緊急時の対応が難しい家族に代わる、駆け付けサービスがある。
・身体機能の衰えてくる高齢者でも簡単に操作ができる。

おすすめの見守りサービスをご紹介

ここからは、賃貸物件におすすめの見守りサービスを5つご紹介します。

1.SECOM(セコム株式会社)

国内で初めて、警備保障会社として創業したSECOM。企業向けオンライン・セキュリティシステムや日本初のホームセキュリティシステムのほか、社会システム構築にも取り組んでいます。

セコム「親の見守りプラン」は、センサーによる生活リズムの監視と通報サービスを兼ね備えた見守りサービスです。トイレの前など毎日必ず通る場所にセンサーを設置し、一定時間動きがない場合にはセコムへ通報されます。

救急通報ボタンは「握るだけ」のペンダントタイプで、防水機能があるため浴室で具合が悪くなった時でも安心。万が一の時はセコムが駆けつけます。

2.TOKYO GAS(東京ガス株式会社)

東京ガスはガスや電力の製造・供給、販売を中心に、エネルギー関連のエンジニアリング、不動産、情報処理サービスなど多方面に事業を展開しています。

「くらし見守りサービス」は、ドアや窓にセンサーを設置し、外出後の玄関ドアの施錠忘れをスマートフォンのプッシュ通知で教えるサービスです。外出前や就寝前の戸締りも一括チェック。玄関や窓の開閉があった時にはスマートフォンへ通知します。冷蔵庫やトイレのドアにセンサーを設置すれば、扉の開閉で家族も高齢者の生活リズムを把握できます。

3.HITACHI(日立グローバルライフソリューションズ株式会社)

HITACHIは、家電や住宅設備機器、IoT技術によるサービスの提供など、個人向け・法人向け各種事業を展開する、日立グループの生活ソリューションカンパニーです。

活動センサーの設置により高齢者の生活を見守る「ドシテル」は、現在の様子や生活リズムを家族がアプリで確認でき、不在や静止した状態で一定時間が経過すると異変を知らせます。

生活リズムや活動量の履歴がひと目でわかるので、健康管理にも役立ちます。IoT冷蔵庫と連携し、冷蔵庫の開閉状況をタイムラインで通知することも可能です。

4.CSL(セントラル警備保障株式会社)

CSLはセキュリティ、オフィスセキュリティなど、警備・防犯・セキュリティ対策を総合的に取り扱うホーム警備保障会社です。

具合が悪い時、けがをした時などボタンを押すだけで通報できる緊急通報サービスと、トイレのドアに設置したセンサーで生活反応を見守るライフリズムサービスをセットで提供する「見守りハピネス」。通報ボタンは壁付けコントローラーと首にかけられるワイヤレスボタンの2種類があり、コントローラーを通じて警備員と会話もできます。

5.ALSOK(綜合警備保障株式会社)

ALSOKは個人向けホームセキュリティや、法人向けの防犯・災害対策、建物やインフラの維持管理、貴重品の運搬管理など、国内外で広く警備保証に関わる業務を行っています。

「みまもりサポート」は、高齢者でも簡単に操作ができるシンプルなコントローラーです。警備員が駆け付ける緊急ボタンと、24時間いつでも看護師につながる相談ボタンを搭載しています。持病やかかりつけ病院の情報をあらかじめ登録できるため、万が一の場合の救急搬送時もスムーズです。

見守りサービスで空室対策につなげるためのポイント

高齢者やその家族から物件の問い合わせや内見があった時には、導入した見守りサービスの内容やメリット・デメリットを説明できるよう、大家さん自身も内容をきちんと理解しておきましょう。「この物件なら、高齢者1人暮らしでも安心だ」と思ってもらうことが、何よりも大切です。

ただし、高齢者向けの物件として入居者を獲得するためには、立地条件も重要です。公共交通機関の様子や近隣の商業施設など、車移動のできない高齢者でも不便なく生活できる環境であるか否かを、まずは確認しておきましょう。

まとめ

少子高齢者が進み、高齢者の1人暮らしが増加している現在においても、単身高齢者の受け入れに懸念を示す大家さんや管理会社は少なくありません。

だからこそ、所有物件への高齢者受け入れ態勢を整えておくことは長い目でみても空室対策として有効であり、社会福祉の観点からも大変有意義であることがわかります。見守りサービスにもさまざまな内容のものがありますので、入居する高齢者とご家族、そして大家さん全員が納得のいく見守りサービスを探してみてください。

この記事の監修者

いしわた さとみ

いしわた さとみ

【資格】宅地建物取引士/二級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー

建築設計事務所、不動産会社、建設会社等での勤務を経て、現在は不動産・住宅・建設ライター、住宅営業、建設CADオペレーターとして活動。実家は建築屋。主婦で3児の母。

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