余った農地で長期入居を促進。畑付き物件を賃貸する時に知っておきたいメリット・デメリット

監修弘中 純一

  • 公開日:
  • 2022年02月18日
  • 更新日:
  • 2022年02月18日
余った農地で長期入居を促進。畑付き物件を賃貸する時に知っておきたいメリット・デメリット
家庭菜園などを身近で楽しむ人が増えた昨今、「畑付き物件」というジャンルが生まれています。しかし、畑は農地法の規制を受けるケースもありますので、安易に畑を貸してしまうとトラブルの原因になる可能性があります。この記事では地方や郊外にあるアパートを経営し、畑などの農地をあわせて所有している大家さんに向け、空室対策として考えられる「畑付き物件」の特徴や、賃貸時の注意点などについてわかりやすくお伝えします。

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目次

余った農地を入居者に賃貸する「畑付き物件」

畑付き賃貸物件は、地方自治体やNPO法人などが空き家の有効利用を図り、移住目的の需要に対応する方法として広がってきました。地方自治体が運営していた「空き家バンク」は現在ポータルサイトに統合され、ますます認知度が高まっています。

最近はさらに需要が多くなっている傾向にある畑付き物件について、まずその社会的な背景と、農地特有の規制についておさらいしてみます。

家庭菜園や田舎暮らしをしたい人は多い

2010年ごろからブームとなった家庭菜園やガーデニングは、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として提唱された「ステイホーム」により、ますます注目されています。また、1987年に創刊された月刊誌『田舎暮らしの本』(宝島社)に象徴されるように、田舎暮らしは高度成長期から安定経済に入った日本において、ビジネスマン憧れの定年後のライフスタイルとして注目されてきました。

さらに2011年には国土交通省が二地域居住推進に関する調査を行うなど、都会と田舎暮らしをともに楽しむデュアルライフへの注目が高まり、そこに拍車をかけたのがやはりコロナ禍の影響でした。「テレワーク」や「ワーケーション」が新語・流行語大賞にノミネートされるなど、田舎暮らしは新しい生活様式の1つとして一定のポジションを確立していると言えるでしょう。

一般の人はすぐに畑を借りることができない

農地の売買や貸借は農地法で規制されています。農業は食糧自給という国家的な重要施策の根幹をなすものであり、農地の自由な権利移転を認めてしまうと、荒廃などにより大きな問題となる可能性があるからです。農地法では、農地の売買や貸借に農業委員会の許可が必要であり、権利移転の規模についても「虫食い」状態を防ぐため一定面積以上とすることが定められています。また権利移転をする相手も農家でなくてはならず、自由な取り引きは認められていません。

では「畑付き賃貸住宅」の場合、どのように考えればよいのでしょうか。畑付き賃貸住宅の畑には2種類あります。
1.農地ではなく雑種地や宅地として扱われる畑
2.農地法の適用を受ける畑

畑付き賃貸住宅は賃貸ポータルサイトに掲載されますが、この区分は必ずしも明確ではありません。農地ではない畑が付いたアパートや一戸建て物件では農地法が適用されないので、自由に家庭菜園を楽しむことができます。農地法の適用を受ける畑では、市町村によりますが、許可に必要な面積要件を「別段の面積」として設定しているケースがあります。この場合は小さな面積でも貸借契約が可能であり、畑付き賃貸住宅として農地を貸すことが可能になります。

国土交通省が公表している「『農地付き空き家』の手引きについて」にはその事例が掲載されています。お持ちの物件がある自治体の農業委員会に確認してみてください。また、1992年の指定から30年が経過し、2022年に指定が解除される「生産緑地」の活用方法として、市民農園が注目されています。そのため、都市部においても畑付き賃貸住宅の供給が増える可能性があるでしょう。

畑付き物件を賃貸した場合のメリット・デメリット

アパートのそばに畑があるなどの場合、家庭菜園を目的に入居する人も多いと考えられます。季節の野菜を新鮮な状態で収穫し調理するなどの体験は、都会生活ではなかなか味わえないものです。では、大家さんの立場から見て畑付き物件にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

畑付き物件を賃貸した場合のメリット

畑付きという点を魅力に感じる入居者にとって、自然と密接した豊かな生活を送れることは大きな付加価値となり、次のような効果を生むでしょう。

・入居率を向上させ空室対策になる
・競合物件との差別化を図れる
・長期入居が増え退去予防になる

遊休農地を活用できるため農地の管理不全を防ぎ、環境の維持と保全も期待できます。また、畑作業は大家さんと入居者の共通の話題になり、コミュニケーションを活発にする効果も生まれるでしょう。

畑付き物件を賃貸した場合のデメリット

農地の貸借には農業委員会の許可が必要で、これには農地法第3条「権利移動の制限」における許可と、農業経営基盤強化促進法による「利用権の設定」という2種類の手続きがあります。

農地法第3条による場合は入居者の耕作権が保護され、大家さんからの契約更新拒絶は難しく、将来的に農地転用などがしづらくなります。ただし、無償の貸借(使用貸借)と利用権設定の場合は耕作権の保護が適用されないため、大家さんに対する制約はありません。

また、入居者に畑を貸したとしても農地の管理責任は大家さんにあるので、維持管理には常に気を配り荒廃農地とならないよう十分な注意が必要です。

畑付き物件にすると家賃アップは見込める?

家庭菜園を目的に入居する人は少なくありませんが、畑付きという付加価値を家賃に反映できるかと言うと難しい面があります。また、畑の使用料を別途請求することも難しいでしょう。畑付き物件は無料で家庭菜園を楽しめることが大きな魅力であり、アピールポイントとなるのです。そのため、同一地域内にある競合物件と比較して、畑付き物件には家賃を上げられるほどの魅力はないと考えるのが妥当でしょう。

畑付き物件の始め方

物件の敷地に農地が隣接している場合や少し離れた所に農地がある場合など、畑付き賃貸物件として市場に出したい時はどのように進めるのがよいのか解説します。おおまかな流れとしては以下のようになるでしょう。

1.農地の地目を確認する
2.地目が「農地」の場合は農業委員会に相談(「農地」以外であれば次のステップへ)
3.家賃相場を調べる
4.契約条件を設定する
5.物件の管理方法を決める(管理委託・自主管理)
6.物件のクリーニングなど内見の準備をする
7.入居者募集を開始する

入居者募集はインターネットをメインに行い、通常のポータルサイトのほか、空き家バンクや移住支援サイトを利用する方法も有力です。

畑付き物件を始めるための相談先はどこ?

畑付き物件を始めるにあたって重要なのは「管理方法」です。長く賃貸経営をしている方以外は、管理会社へ管理業務を委託し、地目の確認や農業委員会からのヒアリングなどもまかせることが一般的でしょう。

また入居者募集にあたっては、畑付き物件を求めるターゲット層にマッチした集客方法で行う必要があります。このようなマーケティングに強い管理会社が望ましいでしょう。農地法の制限を受ける農地の場合は、農業委員会への許可手続きの際に的確なアドバイスをしてくれるか、代理人として申請手続きをしてくれる管理会社を選ぶとスムーズに進みます。

畑付き物件以外にも!余った農地でできるおすすめの活用方法

農地を畑付き物件として活用するのではなく、農地と物件を分けて活用する方法もあります。次の方法はいずれも農地として利用しないので「農地転用」の手続きが必要です。

・アパートやマンションの建設用地
・高齢者用施設の建設用地
・オフィスや工場などの事業用地
・太陽光発電
・駐車場用地

また、自身が農業を営まず農地として活用する方法として「市民農園制度」もあります。くわしくはこちらの記事をご覧ください。

活用が難しい場合、余った農地の売却を検討する

畑付き物件やほかの活用方法が難しい場合でも、農地を維持するためには管理費用がかかりますし、遊休農地に該当する場合は「遊休農地対策」の対象になるため注意が必要です。また、市街地内の農地で「特定市街化区域農地」に該当する場合、宅地並みの高い固定資産税が課されます。

そのため、活用できない農地は早めに売却することも考えなければなりません。農地の売却には農業委員会の許可が必要で、購入希望者を見つけるにはある程度の時間もかかりますので、計画的に売却しましょう。

畑付き物件についてよくある質問

ポータルサイトに掲載されている畑付き物件はあまり多くありませんので、特徴や畑付きではない一般の物件との違いを把握しづらい面があります。ここでは、畑付き物件についてよくある疑問にお答えします。

アパート・マンションと一戸建ての違いはある?

一口に畑付き物件と言っても、アパート・マンションと一戸建てで次のような違いがあります。
アパート・マンション一戸建て
畑との距離・アパートやマンションの敷地に隣接するケースやしていなかったり、住居と一体という状態にはならないでなかったりするケースもある
・「専用畑」の場合は面積が小さく家庭菜園向きの物件が多い
住居と畑が一体となった物件が多い
快適さ朝早くの作業やなど生活時間の違いや、土の付着した靴や衣類などでの出入りする際など、ほかの入居者に対する配慮が必要である他人に気兼ねなく農作業ができる
便利さ畑作業用の道具の収納スペースなどが確保できないことがある外部物置や玄関前のオープンスペースなどに作業道具を収納できることが多い

都心と地方は違いがある?

畑付き物件には都心か地方かによっても違いがあります。
都心の物件地方の物件
畑の規模生産緑地や畑として利用できる空き地であることが多く、一般的に面積は狭い畑として使える土地の面積が広く、本格的な農業体験も可能
畑の社会的環境市街地にある市民農園などで交友関係が生まれやすい農業のプロがいる場合が多く、本格的なノウハウを学ぶことも可能

畑付き賃貸をやめたくなったら、畑と賃貸に戻すことはできる?

大家さんが畑付き賃貸の契約をやめたいと思った時の契約終了の方法は、契約の仕方により異なります。農地法に基づく賃貸契約をしている場合は、契約期限が来ても大家さんから解約することはできません。使用貸借(無償貸借)や農業経営基盤強化促進法に基づく利用権設定の場合は、契約期限が来ると契約を終了できます。

住宅の賃貸借契約の特約に畑の使用が含まれているケースでは、賃貸借契約の解約と同時に畑の利用権も終了するのが通常です。住宅の賃貸借期間中に畑のみを解約することは基本的に難しく、特約条件に明記されていなければ入居者との協議になります。

まとめ

畑付き物件の需要は今後広がり、増えていくことが予想されます。空き家対策や地方活性化の観点から、遊休農地の活用を図る地方自治体も増えているのです。さらにテレワークやワーケーションなどが普及し、都会と地方で多拠点居住をしたいというニーズも増えています。畑付き物件はこのニーズに対応する有力な賃貸経営の方法と言えるでしょう。お持ちの畑などの農地を賃貸として活用したいという方は、管理会社と相談しながら入居者を探してみてください。

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弘中 純一

監修弘中 純一

【資格】宅建取引士/一級建築士

宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年以上になります。
住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動。
さまざまな情報が多い不動産業界ですので、正しい情報発信に努めています。

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