長く快適に住んでもらうために。賃貸物件に導入を検討している方必見のホームセキュリティをご紹介します

2024.01.22更新

この記事の監修者

いしわた さとみ

いしわた さとみ

【資格】宅地建物取引士/二級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー

長く快適に住んでもらうために。賃貸物件に導入を検討している方必見のホームセキュリティをご紹介します

入居者に安心して長く住んでもらうため、検討したいホームセキュリティ。おすすめのサービスや費用、導入効果などを解説します。

目次

ホームセキュリティの導入が増えてきている背景

侵入による窃盗被害は、約6割が戸建てやマンション・アパートなどの住宅で発生しているといいます。しかし、社会全体のセキュリティに対する意識の向上にともない、空き巣や泥棒などの窃盗犯罪は年々減少を続け、警察庁の公表する犯罪情勢のデータによると、2016年の窃盗犯罪は認知されているもので9万5千件。

前年の10万8千件より1万3千件の減少となっています。さらに、ここ9年間の推移をみると15万件近く減少していることがわかります。
とりわけ、アパート・マンションの侵入窃盗の減少率が高いのは、オートロック玄関や管理人の常駐、共用部への監視カメラや各住戸への非常通報ボタン付きインターホンの設置など、セキュリティの充実した賃貸物件の増加が理由として考えられます。

ところが、2016年の空き巣の侵入手口は約1万件が窓のガラス破りによるもので、この結果からも、従来の玄関まわりや共用部を中心としたセキュリティ対策では防犯対策として不十分であることがわかります。

入居者に人気の設備

世間的な防犯に対する意識の高まりは、2018年度版の『全国賃貸住宅新聞の人気の設備ランキング』からも見て取ることができます。エントランスのオートロックが単身者・ファミリー向けともに第3位、ホームセキュリティがともに第6位、単身者向け8位には防犯カメラと、10位以内にこれだけの防犯設備がランクインしています。この結果を見ただけでも、アパートやマンションの入居者が防犯設備への関心や需要が高まっていることがわかります。

ホームセキュリティってどんなサービス?

ホームセキュリティとは、防犯カメラやセンサーなどにより24時間、敷地内や建物の中を監視し、住まいと入居者の安全を守る総合的なセキュリティシステムのことです。具体的なサービスや警備の内容について、ご説明していきます。

物件の防犯、安全を守る

人感センサーにより建物内外の異常を察知し、侵入や災害による被害を最小限にとどめることが、ホームセキュリティ最大の役割です。庭や玄関先にセンサーが設置されていて、通りかかると自動で点灯する照明は、ご覧になったことがある方もいると思います。

アパートやマンションのホームセキュリティでは、住戸のドアやベランダ側の掃き出し窓にセンサーを設置することで、開閉の異常や戸締りを検知するものが多く採用されています。それ以外にも、室内にセンサー付きのカメラを設置して不審者の侵入や動きを感知するものや、ガスや煙を感知して火災の発生を知らせてくれるセンサーもあります。

万が一の場合、警備員が対処してくれる

ホームセキュリティはただ危険を知らせるだけでなく、セキュリティ会社と契約することで、センサーが異常を感知した時には待機中の警備員が駆けつけ、建物内外の異常や安全確認を入居者にかわって行います。

ガスや煙を感知した際には、一旦セキュリティ会社へ通報が入り、必要に応じてセキュリティ会社からガス会社や消防署への連絡を行います。不在時にもこのように警備員が対処してくれることで、被害を最小限にとどめることにつながります。

日々の暮らしをサポート

ホームセキュリティは犯罪や火災から住まいを守る以外にも、さまざまな形で家族の生活をサポートしてくれます。センサーカメラなどによる、小さなお子様や高齢者、ペットの見守りがその1つです。

とくに、家族と離れて暮らす1人暮らしの高齢者が増えている現代において、センサーや救急通報ボタンによるセキュリティ会社のサービスは、高齢者ご本人にとってもご家族にとっても大きな安心となります。また、トイレのドアの開閉を感知し、一定時間トイレが使用されないことで異常を判断する生活リズム監視では、万が一室内で倒れた場合にも警備員が駆け付け、早期に発見することができます。

ホームセキュリティの種類

ホームセキュリティと一口に言っても、大手セキュリティ会社と契約するタイプのものからコンセントに差し込むだけの簡単なものまで、実にさまざまです。

各住戸に設置するだけの簡易なものであれば、玄関ドアや窓にセンサーを取り付け、本体を無線ルータに接続するだけですから、大家さんご自身で設置することも可能です。しかし、共用部や住戸の出入りを管理室に集約して監視できるような大掛かりなシステムを導入する場合には、セキュリティ会社によるアパート・マンション向けのホームセキュリティを契約する必要があります。

セキュリティ機器にも、ベランダの外に設置できる屋外カメラ、人の動作や熱・煙を感知するセンサー、会話のできるマイクとスピーカー付きのものや動画を保存できるカメラ、緊急ボタンなど、種類が豊富です。住戸ごとに制御装置となるコントローラーで操作しますが、コントローラーも壁面に設置するタイプや据え置きタイプのもの、リモコンタイプのものや、最近ではスマートフォンで遠隔操作できるものもあります。

ホームセキュリティを導入することの効果

ホームセキュリティは基本的に、入居者の安全や財産を守ることを目的に設置されます。アパートやマンションにおいても、ホームセキュリティが設置されていることで入居者に安心感を与えることができ、物件として差別化を図るポイントになります。

とくに防犯面で不安のある1階部分のセキュリティを充実させることは、入居者を募集する上で大変メリットがあるといえます。学生向けとして保護者の方々にもアピールすることが可能ですし、生活のリズムをチェックするシステムを導入すれば、1人暮らしの高齢者も受け入れやすくなります。

このように、ターゲット層に合ったホームセキュリティを導入することは、アパート・マンションの空室対策として大きな効果をもたらしてくれると同時に、防犯設備が整っているという付加価値がついて資産価値の向上にもつながります。

ホームセキュリティ導入工事の費用と期間

ホームセキュリティの導入には、機器の設置工事が必要です。工事費はセキュリティ会社によって異なりますが、1戸あたり大体30,000円から60,000円程度です。機器レンタルの場合はこの工事費が初期費用となり、機器買い取りの場合には工事費と機器代金をあわせて支払います。

セキュリティ会社に申し込みをすると、まずは担当者による現地調査とヒアリングが行われ、それからプランの提案。気に入ったら契約、導入のための工事というのが一般的な流れです。スムーズにいけば、申し込みから1週間程度で導入できます。工事にかかる日数はプランの内容や導入する戸数にもよりますが、だいたい1日から長くても2日程度で終わります。

月々かかる費用の相場

機器レンタルの場合、月々3,500円から6,000円程度とセキュリティ会社によって、かなり幅があります。買い取りの場合は、どこの会社もだいたい3,000円が相場のようですが、機器購入代として別途150,000円から250,000円程度の費用がかかります。この月額費用の中にセンサーなどの機器がどれだけ含まれているのか、どのようなサービスが付帯しているかが選択のポイントになりそうです。

どんな目的を持って導入するのか

ホームセキュリティを導入するには、どのような問題を解決したいのか、そのためには本当にホームセキュリティが必要なのかを、よく検討する必要があります。学生さんや共働き夫婦の多い地域であれば、全階に玄関の出入り監視と、1階住戸にはベランダのセンサーがあると、夜間や不在時の来訪者を確認でき、侵入者があった場合にはすぐに対応できるので安心です。

ファミリーや高齢者の多い地域なら、戸数を限定して見守りセンサーを導入することで他の物件と差別化することができるでしょう。しかし、家賃の安さを売りにしている賃貸物件の場合は、ホームセキュリティを導入することが空室対策になるとは考えづらいです。ターゲット層や周辺アパート・マンションの状況も考えながら、費用対効果に見合ったサービスを検討しましょう。

おすすめのホームセキュリティをご紹介

ここからは、警備会社と契約するタイプのものやご自身で手軽に設置できるタイプのものまで、アパートやマンションにおすすめのホームセキュリティをご紹介していきます。

1. 綜合警備保障株式会社(ALSOK)

「綜合警備保障株式会社(ALSOK)」は、歴史のある大手セキュリティ会社です。

ALSOKが大家さん、管理会社に向けたホームセキュリティには2つのプランがあります。1つは、各部屋に機器を設置する『アパート・マンションプラン』。小規模なアパートや防犯を強化したい部屋にだけホームセキュリティ機器を設置するもので、空き巣の侵入や火災・ガス漏れなど非常時の対応のほか、ライフリズムの見守りにも対応しています。必要に応じて警備員の出動や警察、救急車への通報が行われます。もう1つは『インターホン監視プラン』。インターホン設備からの信号をALSOKが受信し、共用部分の監視を行います(各戸に防犯機能付きインターホンの設置が必要です)。
メーカー綜合警備保障株式会社(ALSOK)
商品名アパート・マンションプラン
インターホン監視プラン

2. セコム株式会社

1962年に日本で初めての警備保障会社として創業した「セコム株式会社」は、今も警備業界をけん引し続けている大手セキュリティ会社です。

セコムの「アパート・マンション一棟向けプラン」は、建物や周辺の状況、大家さんの要望に合わせてカスタマイズします。
・常駐警備や防犯カメラなどによる侵入者、不審者の発見と非常通報
・非常時に向けた備蓄品の準備と管理、安否確認システムの運用
・AEDや消火器の設置、設備の管理

上記のように、マンションやオフィス・テナントビルで考えられるリスクや課題に対して、最適なプランを提案してくれます。 「マンション・戸建て小規模プラン」は、1室から導入可能で、玄関やベランダからの侵入を感知し、異常を送信します。緊急時の駆けつけ、盗難補償や修復費用見舞金も基本サービスに含まれています。
メーカーセコム株式会社
商品名アパート・マンション一棟向けプラン
マンション・戸建て小規模プラン

3. 東急セキュリティ

「東急セキュリティ株式会社」は東急沿線エリアの安全・安心な街づくりに貢献することで地域活性化を目指す、地域密着のセキュリティ会社です。従来の枠にとらわれない新しいセキュリティサービスの提供に努めています。

東急セキュリティの『マンションセキュリティ』は、建物の配置や周辺環境に応じてエリアを分け、それぞれに最適なセキュリティ機器を設置します。屋外には外周センサーや遠隔画像監視、センサーライト。エントランスや共用部には、常駐や巡回の警備員配置と、オンラインセキュリティによる管理室での監視など。

そして専用部では、住戸の玄関扉へのICセキュリティ導入やベランダへのセンサーライトの設置を行います。共用部エントランスに設定可能な『キッズセキュリティ』は、PASMOやICタグを持たせることでお子様の通過情報が保護者にメール配信されるという、子供の見守りサービスもあり、ファミリー向けのマンションにおすすめです。
メーカー東急セキュリティ株式会社
商品名マンションセキュリティ

4. Secual

IoT分野のホームセキュリティシステム開発する「株式会社Secual」は、リーズナブルなセキュリティを提案することを目的として創業された会社です。

Secual(セキュアル)では、大家さん向けの「賃貸住宅家主様向けプラン」が用意されています。導入はとても簡単で、防犯が気になる場所にセンサーを貼り付け、各センサーからスマートフォンへの通知を行う機器(ゲートウェイ)をコンセントに設置して、Wi-Fiに接続するだけです。窓やドアの微細な振動を検知して、警報アラームの鳴動とスマートフォンへの通知を行います。操作もスマートフォンのアプリを使って簡単に行えます。
メーカー株式会社Secual
商品名賃貸住宅家主様向けプラン

5. プリンシプル

「株式会社プリンシプル」は2007年に創業し、2012年よりセキュリティ機器の開発を開始しました。IoTの技術を駆使し、ホームセキュリティサービスを提供している会社です。

工事が不要で、申し込みから数日で利用が開始できるというプリンシプルの大家さん・管理会社向け「スマートルームセキュリティ」。申し込むと1週間ほどでSOSボタン(1個)、センサー(2個)、各機器からの情報を受信するホームターミナル、提携警備会社のステッカーなどが同梱されたスターターキットが届きます。設置はホームターミナルの電源を入れて、センサーを玄関ドアやベランダに面した窓に貼り付けるだけ。スマートフォンでの遠隔操作も可能です。
メーカー株式会社プリンシプル
商品名スマートルームセキュリティ

ホームセキュリティ導入で、家賃や負担はどう変化する?

『全国賃貸住宅新聞の人気の設備ランキング』の結果からも、防犯設備の整った物件には一定の需要があることがわかります。ホームセキュリティを導入するということは、それだけの付加価値をともなうということですから、5,000円程度は家賃アップも見込めます。

月額5,000円を超えるプランにすると超えた分を大家さん側で負担することになるので、できるだけ月額3,000円前後のプランを選択しましょう。買い取りの場合は初期費用がかかるため、最初は1階部分だけというように、少ない戸数からスタートし、需要があると確信できた段階で導入戸数を増やしていくという方法もあります。

まとめ

ホームセキュリティの内容や種類、導入することで得られる効果や、おすすめのホームセキュリティについてお伝えしました。人気の高い設備ですから空室対策としても期待できる反面、セキュリティ会社と契約するタイプでは初期費用のほかに月額費用もかかるなど、ランニングコストがかかるのも特徴です。ホームセキュリティを導入するにあたってはそれらを踏まえ、目的別に入居者のターゲット層に合ったプランを検討することをおすすめします。

この記事の監修者

いしわた さとみ

いしわた さとみ

【資格】宅地建物取引士/二級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー

建築設計事務所、不動産会社、建設会社等での勤務を経て、現在は不動産・住宅・建設ライター、住宅営業、建設CADオペレーターとして活動。実家は建築屋。主婦で3児の母。

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