「新築だから満室になる」わけではない!
国土交通省が2023年に発表した「令和5年度 住宅経済関連データ」を見ると、貸家の新築は2006年の約54万戸をピークに、一時は30万戸を下回っていました。
しかし、現在はピーク時の戸数には達しないものの上昇に転じており、20022年には貸家は約35万戸まで回復しています。
一方、2022年に内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の人口減少は加速しており、2029年には1億2,000万人を下回り、2053年には9,924万人、2065年には8,808万人になると推計されています。
人口の減少は賃貸需要の減少を意味しますが、それでも貸家の着工が継続していることを考えると、需要に対して過供給状態にあると言えるでしょう。
新築だからといって油断は禁物
今までは、新築アパートは中古アパートよりも設備や内装などの面で優れていることから、ある程度の需要が期待できました。しかし、現在の貸家は過供給状態にあるため、新築アパートだとしても需要が必ずあるとは言えません。そのため、いくら新築であったとしても、油断せずに空室対策を練っておく必要があるのです。
新築なのに空室が埋まらない理由
いくら人口減少に加えて新築着工数が高い水準で維持しているといっても、全ての新築の貸家の需要が低下しているわけではありません。新築なのに空室が埋まらない理由は一体何なのでしょうか?考えられる主な理由は以下です。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
・募集計画が不十分 |
・家賃が周辺相場と比較して高い |
・入居者募集が不十分 |
・競合調査が不十分 |
募集計画が不十分
アパートの需要は年中というわけではありません。日本では4月に大学進学や就職などの新生活のイベントが重なるため、2~3月にかけてアパートの需要がピークを迎えます。
そのため、需要に間に合うよう逆算してアパートを新築するのが一般的ですが、大家さんの都合で需要のない時期にアパートを新築すると、新築であっても空室が生じる可能性があります。このように募集計画が不十分な状態でアパートを新築すると、需要が期待できない場合もあるので注意が必要です。
家賃が周辺相場と比較して高い
新築アパートだから家賃を高く設定しても需要があると思ってはいけません。あくまでも借主からすると、住居費は継続して発生するものであるため、家賃は少しでも抑えたいと思うものです。そのため、周辺の家賃相場と比べて新築アパートの家賃設定が高い場合には、いくら新築で設備や内装が優れていても、空室が生じる可能性があると言えます。
入居者募集が不十分
新築アパートであれば、建設途中から目立つので、募集活動に力を入れなくても問題ないと思っている人もいるのではないでしょうか?
しかし、建設途中に目立っても、それが賃貸物件かどうかは分からないため、入居者募集を行わなければ意味がありません。また、管理費が周囲と比較して安い不動産会社を選ぶと、コストを抑えられても営業力が低いなどの理由で、新築の場合でも空室が生じる可能性があるので注意が必要です。
競合調査が不十分
競合がひしめくエリアでは、競合の家賃や間取り、設備がどうなっているのかなど、競合に対して敏感になる必要があります。例えば、競合が敷金・礼金をゼロにしたり、家賃を下げたりしているのに対して、何も対策を練らないでいる場合には見劣りしてしまい、空室が生じるようになります。
まずは空室原因を知ることから
上記の理由は、新築物件を建てたときに本来はできていなければいけないことです。アパートを新築して空室が生じたとしても、建設前に戻ることができるわけではないため、対策を練っていくしかありません。そのため、空室状態を改善するには、空室がなぜ生じたのか原因を知ることが最適な対策を練る上で大切です。
アパートの新築プランはこれから、だけど空室が多くなりそうで心配、という方は、まず複数のハウスメーカーから提案を受けることをおすすめします。
上記のような、競合調査やエリア・立地に沿ったターゲット設定など、さまざまな検討事項を踏まえて作成されたプランを、見比べることで最適なアパート経営が見えてくるはずです。
新築物件の空室対策とは?
新築物件だからといって、需要が必ずしも期待できるわけではないため、早めに空室対策を行うことが重要です。では、具体的にどのような空室対策を行えばいいのでしょうか?新築物件の主な空室対策は以下を押さえておきましょう。
・賃料は相場に合わせて設定する |
・入居者募集の方法を見直す |
・契約者特典を用意する |
・日頃の清掃業務を怠らない |
それぞれの空室対策について詳しく見ていきましょう。
賃料は相場に合わせて設定する
新築アパートを運用する方が、中古アパートを運用するよりも初期投資が大きくなりますが、だからといって投資分を早く取り返そうと家賃設定を高くしすぎてはいけません。新築アパートの方が、中古アパートよりも家賃設定が高いのが基本ですが、周辺相場よりも高く設定されすぎている場合には、周辺相場に合わせて見直すことが重要です。
まずは、不動産ポータルサイト等を活用して、周辺相場を確認します。重要なポイントは、自分の物件と似た条件で探すこと。築年数、間取り、専有面積、設備面等の物件スペックの視点、駅からのアクセスや周辺環境など、交通スペックの視点で比較し、自分の物件との優劣を整理していきます。
キャッシュフローの観点も大切になりますが、まずは自分の物件が他の物件と比較した際にどの立ち位置にいるかを把握することが大切です。
スマイティでも家賃相場の検索ができますので、確認してみましょう。
入居者募集の方法を見直す
入居者の募集は、基本的に不動産会社に管理を依頼していれば代わりに行ってくれますが、その方法が合っているとは限りません。新築でも空室が生じている場合には、入居者募集の方法を見直す必要があります。見直すポイントは以下の4つです。
・募集時期を見直す |
・広告・宣伝の機会を増やす |
・物件紹介の資料を改善する |
・内見のための対策を行う |
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
募集時期を見直す
建築前の物件であれば、賃貸需要が高まる2~3月に間に合わせるために、遅くても2月には完成するように逆算して建築を進めます。募集の開始時期は、建物が完成してからとは決まっていません。「○月に完成予定」など、前倒しで募集を行うことによって、完成後に空室に悩む可能性を低く抑えることができます。
広告・宣伝の機会を増やす
不動産会社に管理を依頼すると、営業が宣伝やネットへの掲載などの広告が一般的ですが、これだけでは入居希望者の目に触れない可能性があります。一般的な広告・宣伝活動以外は、プラスの広告費用などを支払う必要がありますが、例えば、大学の近くであれば、学内の掲示が可能か相談してみるという方法があります。
また、最近ではSNSを活用して、露出の機会を増やす大家さんも増えています。入居者ターゲットが若い層であれば、そのような宣伝機会も検討してもよいでしょう。
物件紹介の資料を改善する
マイソクなどに記載されている物件紹介においても内容が優れていないと、せっかく良い物件でも魅力が十分に伝わりません。物件の良さをより多くの人に伝えるためにも、内容を変更する、掲載されている写真を撮りなおすなど、物件紹介の資料を改善することも契約につながる重要なポイントです。
写真は物件の第一印象を決めるものでもあるため、例えば家具や植物を設置した写真も加えておくだけでも、入居後の生活をイメージしやすくなります。
内見のための対策を行う
内見は、入居希望者に対して物件の良さを直接アピールできる絶好のチャンスです。そこで何も工夫せずに、入居希望者が見に来て終わりというだけでは、なかなか契約には結び付かないでしょう。例えば、POPを駆使して物件のアピールポイントを伝える、1部屋は家具や小物を設置してホームステージングを行っておけば、内見に来た入居希望者の契約率の向上につながります。
契約者特典を用意する
入居者募集の際、建築段階から「契約者にはアマゾンギフト券をプレゼント」といったような特典を加えることもポイントです。例えば、一人暮らしの女性であればエステ券、ファミリーであればお食事券など、想定している入居者をイメージし、どのような特典が契約の後押しになるか、を考えてみましょう。
ただし、金額や内容によっては、景品表示法に触れる可能性があるので不動産会社に相談してから取り入れるようにしてください。
日頃の清掃業務を怠らない
新築物件の場合は基本的に建物がきれいに維持されていますが、それでも雨が降った後は、汚れていたり落ち葉が散らばっていたりする場合があります。
「新築物件=きれいなもの」と油断せずに、清掃業務はしっかり行うようにすると、内見に来た入居希望者の印象も良くなるため、契約につながりやすくなるでしょう。毎日は難くても、内見が増える土日に清掃をするだけでも、印象は大きく変わるでしょう。
管理会社との関係性を強化しよう
実際に、不動産の募集活動を行うのは、物件の大家さんではなく不動産会社です。そのため、不動産会社と良好な関係を築くことができていない場合は、募集活動に影響が出てしまう可能性もあります。
コミュニケーションを取るのが不動産会社からの一方通行になってしまうと、情報発信が少なくなりやすい傾向があります。そうならないためにも、大家さん側からも「入居状況はどうなのか」「今後の戦略はどうするのか」など、積極的にコミュニケーションを取れば、原因調査や改善につなげることができます。それでも解決しない場合は、不動産会社の変更も選択肢の1つでしょう。
まとめ
今までは、新築アパートというだけで「きれい」「設備が新しい」と評価され、需要が期待できました。しかし、貸家の着工数の水準が高い、人口減少といった理由から、現在は新築でも空室が生じる物件も出てきているので、空室対策を行うことが重要です。新築の空室対策は、何でも対策を練ればいいというわけではなく、何が原因で空室が生じているのかを知ってから対策を練らなければなりません。
賃料は相場に合わせて設定する、入居者募集の方法を見直す、日頃の清掃業務を怠らない、募集条件を緩和するなどを意識しながら、状況に合わせて適切な空室対策を行いましょう。
この記事の監修者
不動産住宅情報サイト「スマイティ」の編集部。不動産を所有している方に向けて、悩みや疑問を解決するための正しい知識や、大切な資産をより有効に活用するためのノウハウをお届けしています。
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