大家さんなら知っておきたい!共益費と家賃を分けるメリット・デメリット

2024.08.16更新

この記事の監修者

キムラ ミキ
キムラ ミキ

AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

大家さんなら知っておきたい!共益費と家賃を分けるメリット・デメリット

賃貸経営を検討している方に向けて、共益費と管理費の違い、共益費と家賃を分ける意味などの疑問にお答えします。

共益費の設定については管理会社と相談しましょう。

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※ページ下部の「賃貸経営一括相談サービスの注意点」をご確認いただいたうえ、ご利用ください。

目次

共益費とは賃貸経営において何に使う費用?管理費との違いは

ここでは共益費の概要と、管理費との違いについて解説します。

共益費とは?

共益費とは、賃貸物件の共用設備を運営および維持していくための費用で、入居者は賃貸物件の家賃と別に毎月支払います。たとえば、共用廊下の照明やエレベーターの電気代、維持管理費(修理費用など)、共用部分の水道代、定期清掃費などが含まれます。

賃貸物件によっては、共益費と同様の意味で「管理費」という言葉が使われることもあります。しかしこれは、共益費や管理費といった呼び方にかかわらず大家さんの収入なので、家賃収入と同様に扱われ所得税が課されます。

また、消費税についても家賃と同じく、「住宅を共同で利用する上で居住者が共通に使用すると認められる部分の費用を居住者に応分に負担させる」ようなものについては非課税となります。
ただし、不動産の表示に関する公正競争規約施行規則によると、次のように定義されています。

【管理費】
マンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、修繕積立金を含まない。
【共益費】
借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用をいう。


大まかに言えば、分譲マンションの所有者が管理組合に支払うものが「管理費」、賃貸物件の入居者が大家さんに支払う共用部分の維持管理費が「共益費」というイメージです。大家さんが管理会社に管理委託を依頼する際の対価も管理費となるので、混乱しないように言葉を使い分けるとよいでしょう。

共益費の相場を知ろう

共益費の相場は、エリアや物件によって異なります。共益費をどれくらいに設定すればよいか迷う時は、賃貸物件情報のポータルサイトで近隣の類似物件を検索し、共益費をどの程度に設定している物件が多いか調べてみましょう。

たとえば、東京都のある駅の賃貸物件相場を調べてみました(小数点第2位以下切り上げ)。
参考)駅徒歩5分以内、築年数10年以内、1K、20m2程度の場合
家賃共益費総額共益費割合
82,000円3,000円85,000円3.6%
90,000円2,000円92,000円2.2%
89,000円3,000円92,000円3.3%
85,000円2,000円87,000円2.3%
98,000円0円98,000円0%
参考)駅徒歩10~15分以内、築年数10年以内、1K、20m2程度の場合
家賃共益費総額共益費割合
86,000円4,000円90,000円4.5%
93,000円5,000円98,000円5.1%
78,000円3,000円81,000円3.7%
78,000円3,000円81,000円3.7%
参考)駅徒歩10分以内、3Kの場合
家賃共益費総額共益費割合
107,000円3,000円110,000円2.8%
駅近物件のほうが、家賃に対する共益費の割合を低く設定していることが多いとわかります。また、駅からの距離が同程度でも、間取りが異なると家賃に対する共益費の割合にも違いが出ます。

このように、共益費の相場は賃貸物件の条件によっても異なるでしょう。まずは近隣にある類似物件を検索して、おおよその共益費相場を知っておくことが大切です。

共益費を家賃と分けるメリット・デメリット

通常、共益費と家賃は分けられていますが、それはなぜでしょうか。ここでは、共益費を家賃と分けるメリットとデメリットについてご説明します。

メリット

1.家賃を安く見せられる
賃貸物件ポータルサイトでは多くの場合、5,000円単位で希望する家賃の物件を絞り込んで検索できます。たとえば、家賃の予算を60,000円で考えている人がいたとしましょう。その人が「家賃上限60,000円」で検索すると、大家さんの所有する物件の家賃が63,000円の場合、ヒットしません。しかし家賃60,000円・共益費3,000円と分けて設定すると、検索にヒットします。

ほとんどの賃貸物件ポータルサイトでは家賃が大きく表示され、共益費は少し小さく表示されます。また、不動産会社に掲示されている募集チラシでも、家賃は大きく、共益費は小さく別欄に表示してあることが一般的です。

このように共益費を家賃と分けることによって、実際には家賃を減額しなくても、家賃を安く見せられます。結果として、所有する賃貸物件をより多くの人に検討してもらえるため、空室対策につながるでしょう。

2.入居者は初期費用を抑えられる
敷金や礼金、また仲介手数料は、家賃を基に計算されます。入居者にとっては、共益費と家賃が分かれていることによって初期費用が安くなるでしょう。

たとえば、敷金・礼金・仲介手数料がそれぞれ家賃1か月分である時
・家賃63,000円の場合:初期費用189,000円(63,000円×3)
・家賃60,000円(+共益費3,000円)の場合:初期費用180,000円(60,000円×3)
となるため、9,000円の差が生じます。引っ越しで何かと費用がかかる入居者の立場からすれば、より少ない費用で入居できる物件を魅力的に感じるため、空室対策につながります。

デメリット

敷金・礼金・仲介手数料・更新料の収入が減る
メリットの裏返しでもありますが、共益費を家賃と分けることによって、敷金・礼金・仲介手数料・更新料による収入が減ります。しかしその差はわずかですし、一時的なものです。その減収分を、空室を埋めるコストとしてとらえるのも一案でしょう。

家賃に「共益費込み」と表示することもできる

共益費を家賃に含めても、実際には共用設備を運営および維持していくための費用はかかりますので、家賃に「共益費込み」と表示することも可能です。

その場合は上で述べたメリットを受けられませんが、駅近であるなどポテンシャルの高い物件で、実家賃の安さをアピールするには有効と考えられます。

【共益費のよくある質問1】共益費の内訳を入居者に聞かれたらどう答えるのがベスト?

共益費は、賃貸物件の共用設備を運営および維持していくための費用です。しかし前段でお話した通り、実際には空室対策のため便宜的に家賃と共益費を分けているだけで、家賃からも共用設備の運営・維持費用を捻出しているケースがあるでしょう。

このような場合、共益費は家賃と同様の意味を含むため、入居者から共益費の内訳を聞かれても開示する必要性は低いと言えます。契約書の中に、共益費について大家さんが収支の説明を行わない旨の条項を含めておくのも一案でしょう。

ただし、定期的に期間を決めて共益費を清算する旨の賃貸借契約を締結している場合は、内訳を明示する必要があります。

【共益費のよくある質問2】共益費の支払いを入居者に拒まれたらどう対応したらいい?

先ほどご説明したとおり、空室対策のため便宜的に共益費と家賃を分けている場合、共益費は家賃と同様の意味合いを有します。この時、共益費の支払いを拒むのは家賃の支払いを拒むということと同じです。共益費の支払いを再三求めても聞き入れてもらえない場合は、賃貸借契約の解除を検討する必要もあるでしょう。

ただし、共益費の支払いを拒む背景として、賃貸物件の管理状態に不満があるのかもしれません。ゴミ集積所の清掃が行き届いていない、共用部分の照明がいつまでたっても交換されないといった状況であれば、入居者は何のために共益費を支払っているのかと疑問を抱いてもおかしくないでしょう。

共益費の支払いを拒む理由を入居者にヒアリングし、不満解消に努めるのも大家さんとして必要な姿勢です。

【共益費のよくある質問3】エレベーターを使用しない1階の入居者から共益費を安くしてほしいと言われたら

共益費は本来、賃貸物件の共用設備を運営および維持していくための費用を入居者間で負担するものです。そのため、たとえエレベーターを日常的に利用しないからといって、共益費を安くしてほしいという要求に答える必要性は低いでしょう。

中には、高層階に住んでいても健康のためにエレベーターを使用しない方もいるかもしれません。こうした理由から、入居者ごとの事情に合わせて共益費を設定するのは難しいと言えます。

ただし、高層階と低層階で眺望や床面積などに差がある場合は、総額家賃(家賃+共益費)の設定を見直してみてもよいでしょう。

まとめ

賃貸物件を将来相続する可能性があるといった場合、現在は空室に悩まされていなくても、物件の老朽化などの理由から空室が増えるかもしれません。その際、安易に家賃を値下げすると家賃収入が減り、賃貸経営が行き詰まる可能性もあります。

そのような事態にならないためにも、共益費と家賃を分けるなどの方法で、家賃収入を減らすことなく空室対策を講じられることを覚えておきましょう。まずは、周辺にある類似物件の共益費の設定状況を確認してみることをおすすめします。賃貸経営をする際、どのような戦略で入居者を獲得していくのか考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

共益費の設定については管理会社と相談しましょう。

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キムラ ミキ
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AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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