【大家さん向け】重要事項説明とは?トラブル防止のために知っておきたい基礎知識

2024.02.21更新

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

【大家さん向け】重要事項説明とは?トラブル防止のために知っておきたい基礎知識

大家さんなら知っておきたい重要事項説明。最近話題になったIT重説も踏まえて、重要事項説明の基礎知識をお伝えします。

この記事のポイント
  • 近年ではウェブ会議などのシステムを使って重要事項説明を行うことが可能になっています。
  • 入居者の認識違いを防ぎ、後々のトラブル回避にもつながるため重要事項説明は重要!
  • 不動産会社とともに重要事項説明書のブラッシュアップに取り組むことも大切です。

目次

コロナの影響でIT重説(非対面)が話題に

コロナ禍においても、子どもの成長や転勤、進学など、さまざまな理由から住まい探しをする方がいます。しかし、感染への恐れから不動産会社に何度も出向くことを避けたいと考える方も少なくないでしょう。

そのような状況下、オンライン内見など、非対面型の案内を行う不動産会社も増えてきました。しかし、物件決定後、賃貸借契約を締結する前に、本来、重要事項説明を宅地建物取引士が対面で行い、その内容を記した重要事項説明書に記名押印して、交付するきまりになっています。

それでは、せっかく内見も非対面で行ってきた人には、感染の不安が残ることになってしまいます。そこで、以前から、個人を含む売買取引における「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験」を行っていた国土交通省は、コロナ禍における対応としてこの社会実験の期間を延長しました。

この実験に登録している不動産事業者であれば、ウェブ会議などのシステムを使って重要事項説明を行えます。

また、度重なる災害を受け、地方自治体が作成したハザードマップにおける対象物件の所在地に関する説明が義務付けられるなど、重要事項説明はその方法や内容が時勢によります。賃貸経営はその言葉通り、賃貸物件を活用した事業経営にほかなりません。

その経営者である大家さんには所有物件の強みなどを理解し、時勢に対応して賃貸経営を行う姿勢が求められます。だからこそ、物件プロフィールなどが網羅してある重要事項説明の内容理解はもちろんのこと、重要事項説明をとりまく状況変化にもアンテナを張っておく必要があるのです。

大家さんが知っておくべき重要事項説明とは

重要事項説明の基礎知識として、ここでは「説明項目」、「説明の目的」、「賃貸借契約書との違いについてご説明いたします。

重要事項説明はなぜ行うのか

次のような項目について書面(重要事項説明書)を作成し、その内容について宅地建物取引士が重要事項説明を行います(既存のアパートの一室を賃貸する場合)。

【対象物件に関する事項】

・物件の概要(所在・構造・面積など)
・登記記録(登記簿)に記録された事項
・法令上の制限(都市計画法・建築基準法に基づく制限など)
・飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の設備状況など
・その他物件に関する事項(宅地造成等規制法に関する事項、石綿使用調査や建物状況調査の実施状況など)
・台所、浴室、便所その他の設備など

【取引条件に関する事項】

・借賃以外に授受される金銭の額および当該金銭の授受の目的
・契約の解除に関する事項
・損害賠償額の予定または違約金に関する事項
・契約期間および契約の更新に関する事項
・用途その他の利用に係る制限に関する事項
・契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項(敷金など)
・管理委託を受けている者の氏名(商号又は名称)および住所

重要事項説明を行う宅地建物取引士は、不動産についての豊富な知識を持った人です。それに対して、入居者(借主)は不動産の知識が豊富とは限りません。

宅地建物取引士に賃貸物件のプロフィールや契約締結に際して知っておきたい重要な項目について説明することを義務付けることにより、入居者(借主)を保護しているのです。また、重要事項説明を行うことにより、入居者(借主)の認識違いを防ぎ、後々のトラブル回避にもつながります。

賃貸借契約書と何が違うのか

賃貸借契約書にも重要事項説明書と重複する内容が記載されています。賃貸借契約書は、あくまでも契約が成立したことを確認するための書類です。一方、重要事項説明書は、入居者(借主)を保護して、認識違いによるトラブル回避を目的とする契約前の説明資料であるため、賃貸借契約書よりもくわしい内容となります。

重要事項説明が必要でない場合とは?

重要事項説明の目的は、入居者(借主)の保護、および認識違いの予防とご説明いたしました。それは、入居者(借主)は不動産の知識が豊富とは限らないからでした。

それでは、入居者(借主)が宅地建物取引業者、つまり不動産業者であったらどうでしょうか?お互いに不動産のプロであるわけですから、説明をする必要性は低いですよね。

そのため、入居者(借主)が宅地建物取引業者、つまり不動産業者である場合には重要事項説明書の交付は行いますが、重要事項説明は行わなくてもよいとされています。

また、重要事項説明義務は、宅地建物取引業法により宅地建物取引業者に義務付けられているものです。実は、所有する賃貸物件について大家さんみずから入居者と賃貸借契約を行う場合、宅建物取引業には該当しません。

つまり、自主管理の場合、重要事項説明の義務はありません。ただしその場合でも、入居者とのトラブル回避のために、重要事項説明は行う方が望ましいでしょう。

重要事項説明にまつわるトラブル

トラブル回避のために行う重要事項説明がトラブルを引き起こしてしまうというケースもあります。ここでは、トラブル例とその対策についてご説明いたします。

特約内容は物件によって異なる

【事例1】

言わなくても火事になると危ないから常識だと思っていたのに、入居者が部屋で石油ストーブを使ってボヤを出してしまったので、損害賠償を行いました。保険の補償は受けられることになりましたが、石油ストーブを使わないでほしいと伝えると、入居者からはそんなルールは聞いてないと言われてしまいました。

【対策】

重要事項説明書のひな型は、不動産業界団体などで配布されていますので、その内容に基づいて重要事項説明書を作成していけば、宅地建物取引業法に定められている重要事項説明義務は果たすことができます。

しかし、「エアコンなどの前入居者の残置物がある場合、それを現況のまま使用する」とか、「石油ストーブの使用禁止」、「ペット飼育の禁止」、「退去時における専門業者によるハウスクリーニング費用は借主の負担」など、賃貸物件ごとに特有のルールがあるものです。

重要事項説明は、入居者(借主)を保護するだけでなく、認識違いによるトラブル回避も目的としているので、「言わなくてもわかるだろう」ではなく、重要事項説明の項目に盛り込んで説明することが望ましいでしょう。

現況および契約書とのズレ

【事例2】

重要事項説明時に説明された家賃よりも高い金額が、賃貸借契約書に記載されていたと、契約後しばらく経ってから入居者から言われました。入居者募集時から賃貸借契約書に記載の金額で表示をしていたのですが、重要事項説明時に説明した家賃にしなければならないのでしょうか。

【対策】

入居者に、賃貸借契約書の家賃が正しく、重要事項説明書の記載が誤りである旨をていねいに説明し、修正および指摘をしてもらったことについてお礼を申し上げましょう。賃貸借契約書の内容に同意をされ、賃貸借契約を締結してもらっているので、家賃を下げる必要はありません。

重要事項説明書も、賃貸借契約書も人が作成する書類ですから、記載ミスが生じる可能性はあります。また、現況の物件内には存在しないものが重要事項説明書には存在すると記載されているというケースもあります。

このような事態を避けるために、不動産会社に仲介(媒介)を依頼している場合でも、あらかじめ、大家さんも重要事項説明書と賃貸借契約書および現況の内容照合を行い、誤りがないか確認をしておきましょう。

重要事項説明で大家さんが注意すべきこととは

重要事項説明で義務付けられている内容について、所有する賃貸物件ではどのように説明されているのか、確認することは大切です。ただし、重要事項説明で義務付けられている説明事項だけでは、大家さんが考えている賃貸物件のルールは網羅できない可能性が高いでしょう。

所有する賃貸物件で、どのようなトラブルが考えられるのか、そしてそのトラブルを回避するために、どのような特約を盛り込んでおく必要があるのかを考えてみましょう。賃貸借契約後のトラブル、クレームを回避するために「言わなくてもわかるだろう」と考えるのをやめて、明文化してあらかじめ説明する姿勢に切り替えましょう。

重要事項説明も、重要事項説明書の作成も仲介(媒介)をしてくれた不動産会社が行ってくれます。しかし、特約については、大家さんから申し出なければ盛り込まれることはありません。

大家さんが考えた特約を盛り込んでもらうとともに、どのようなトラブルが多いのか、そしてそれに対して特約で対策を講じているケースがあるのか、不動産会社と重要事項説明書の内容についてすり合わせを行っておくとよいでしょう。

まとめ

重要事項説明の義務付けられている事項について理解を深めるのは、大家さんとして大切な姿勢です。また、重要事項説明の内容やその方法は、今回ご説明したとおり、時勢に伴います。

その変化の背景についても理解を深めるとともに、適宜重要事項説明書のブラッシュアップを行うことは、入居者トラブルやクレームからの回避につながります。

これを機会に、不動産会社に全部お任せするのではなく、大家さんの資産を守るためにも主体的に不動産会社とともに重要事項説明書のブラッシュアップに取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

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