建築基準法とは?大家さんなら知っておくべきアパート・マンション建築の法規制

2024.02.14更新

この記事の監修者

逆瀬川 勇造

逆瀬川 勇造

【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

建築基準法とは?大家さんなら知っておくべきアパート・マンション建築の法規制

大家さんが最低限身につけておきたい建築基準や建築関連法規。ここでは、建物の法規制に関する基本的な知識をお伝えします。

目次

大家さんなら知っておくべき建築基準法

日本国内で建物を建てようとした場合、原則として建築基準法の規制を受けることになります。アパートやマンションなど取り扱う大家さんであれば、建築基準法の基本的な内容は押さえておくことが大切です。

万が一購入したり、相続で引き継いだアパートやマンションが違反建築物だった場合、将来的に建て替えや増改築の際に建築基準法の許可を得られない可能性があります。建築基準法の許可を得られなければローンの審査承認が得られなくなる可能性が高いですし、そもそも建て替えや増改築自体実施できないでしょう。

そうしたことにならないためにも、違反建築物でないことを見分けられるだけの知識は持っておきたいものです。

建築基準法の目的と仕組み

建築基準法とは、日本国内で建てられる建築物や構築物に関してルールを定めたもので、その目的は「国民の生命や健康維持、財産を守ること」とされています。

その目的のため、建物が突然崩壊したり有害な物質を出したりしないように、建築物に関して規制が設けられているのです。

具体的には建築物の構造や耐力、通風や採光などについて定めた単体規定と、建ぺい率や容積率、高さ制限などエリアごとに制限を定める集団規定があります。

建物を建築しようとする人は、事前に自治体か民間の指定確認検査期間に対して建物の構造などまとめた書類を提出して確認を受けなければなりません。この手続きのことを、建築確認と呼びます。

建築確認とは?申請の流れと交付書類

建物を建てる時は自治体か指定確認検査期間に対して建築確認申請書とともに敷地面積や配置図などの記載された建築計画概要書を提出しなければなりません。

建築確認申請書を提出して建築確認に問題がなければ建築確認通知書が発行されます。建築確認通知書の発行がなされてから建物の着工です。その後、着工中には工事が事前に提出した書類のとおり実施されているかを確認する中間検査が行われます。最後に、工事完了後に完了検査が行われ、そこで問題なければ検査済証が発行されます。

土地を購入してアパートやマンションを建築したり、建て替えしたりする際には、これらの書類がしっかり発行しなければなりません。また、中古のアパート・マンションを購入する場合は、そのアパートやマンションが新築された時に発行された建築確認通知書や検査済証があるかどうかも確認しておきましょう。

建築確認通知書や検査済証の内容をしっかり確認して、購入する物件が違反建築物かどうかを判断する材料とすることが大切です。

建築基準法の単体規定・集団規定

建築基準法では建築する建物についてさまざまな規制がなされますが、それらの規制は大きく単体規定と集団規定に分けることができます。単体規定とは、建築物の構造や居室の通風、採光、換気など個々の建築物に対して安全性や居住性を確保するためのものです。

一方、集団規定とは、都市計画法と連動して地域ごとに制限が決められるもので、建ぺい率や容積率、高さ制限、接道義務などが該当します。

「違反建築」と「既存不適格」の違いとは

中古アパートやマンションを購入する時は、「違反建築」と「既存不適格」の違いについて知っておくことが大切です。違反建築とはその名の通り、建築基準法などの法律で定められた規制に反して建てられたものです。違反建築物は、行政より取り壊しの命令などがなされる可能性があります。

一方、既存不適格建築物は「現行の法律には適合していないけど建築当時は適法だった」というものです。既存不適格建築物の場合、建築当時は適法だったということもあり違法性はありません。

ただし、現行の法律に適合していないため一定規模以上の増改築や建て替えの際は現行規定に適合させる必要がある点に注意する必要があります。

アパート・マンションは「特殊建築物」

法律上、アパートやマンションは共同住宅に分類され「特殊建築物」という扱いになります。特殊建築物とは不特定多数の人が利用することから衛生上・防火上特に規制すべき建物のことです。

アパートやマンション以外に、学校や病院なども特殊建築物となります。特殊建築物については、耐火面などより安全性に配慮しなければなりません。

都市計画法・消防法も準拠するべし

アパートやマンションは特殊建築物であり、一定の規模以上の建物を建てる際には耐火建築物準耐火建築物としなければなりません。

具体的には、アパートでは3階以上の建物を耐火建築物とする必要があります。また、2階の床面積の合計が300㎡以上の場合は、特定避難時間倒壊等防止建築物にしなければならない点にも注意が必要です。

なお、耐火建築物とは具体的には以下の条件を満たしているものをいいます。
・主要構造部が耐火構造でできているか、一定の技術基準に適合している
・外壁開口部の延焼の恐れがある部分に防火戸など防火設備を有している

その他、消防法に基づき6カ月に1回の機器点検、1年に1回の総合点検を実施しなくてはなりません(法定点検)。点検は消防設備士や消防点検資格者が行うものとし、点検を行った結果を消防庁または消防署長に提出する必要があります。

定期点検と報告が義務

特殊建築物は、上記消防法に基づく法定点検とは別に、その規模に応じて定期点検と報告が義務付けられています。具体的な規定は都道府県によって異なりますが、東京都の場合は階数5階以上かつ床面積の合計が1,000㎡を超える共同住宅について、年に1回定期点検の実施と結果報告の義務があります。

法定点検は、1・2級建築士など専門的な知識を持った資格者により行わなければなりません。具体的には共用の換気設備や排煙設備、非常用照明設備、給排水設備などを点検します。検査の結果が良好であれば、「報告済証マーク」が配布されることになります。

その土地はアパート・マンション建設に向いている?

土地の上にアパートやマンションの建設を考える際には、法的にどのような規制がなされるのかを確認しておくことが大切です。ここではとくに、都市計画法によって規定される土地の用途規制について解説していきたいと思います。

用途地域とは

用途地域とは、住居エリアや商業エリア、工業エリアなどエリアごとに建てられる建物の種類や規模を定めるために指定するものです。

「第一種低層住居専用地域」や「商業地域」、「工業専用地域」など13種類に分けられています。用途地域では、エリアごとにそれぞれ建ぺい率や容積率、高さ制限なども指定されます。

とくに高さ10m(もしくは12m)以上の建物を建てられない第一種・第二種低層住居専用地域では、建てられる建物の大きさがかなり制限されることになる点に注意が必要です。

アパート・マンションが建てられない土地とは

都市計画法では日本全国を「都市計画区域」と「都市計画区域外」、「準都市計画区域」に分け、都市計画区域をさらに「市街化区域」と「市街化調整区域」、「非線引き区域」の3つに分けています。「都市の健全な発展と秩序ある整備」を計画的に実行するため、土地の無秩序な用途利用や良好な環境の喪失を防ぐ目的で区域指定されています。

これら、用途地域や都市計画、区域区分については以下の記事で詳しく解説しています。
とくにアパートやマンションを建てる際には都市計画では「都市計画区域外」、区域区分では「市街化調整区域」、用途地域では「工業専用地域」での建築ができない点に注意しておきましょう。

自治体条例も要チェック

また、自治体によっては独自の条例を定めていることもあるので必ず確認しておくようにしましょう。たとえば、東京都調布市では15戸以上の共同住宅(アパート・マンション)を建てる際や階数4階以上もしくは延床面積1,500㎡以上の建物を建てる際には、事前に届出をしなくてはならないことになっています。

自治体をまたいでアパートやマンションの建築を考えているようなケースでは十分注意しなければならないでしょう。

建築基準法による主な建物規制

ここでは、改めて建築基準法による建物規制についてお伝えしていきたいと思います。

床面積について

建物を建てる際には、建ぺい率容積率について注意する必要があります。建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合、容積率とは敷地面積に対する延床面積の割合のことです。

建ぺい率や容積率の上限が低く設定されているエリアだと、敷地面積は大きくとも規模の大きな建物を建てられないケースがあるため注意が必要です。とくにアパートやマンションは、規模の大きな建物を建てられるほど収益性が増すのが一般的で、容積率の高いエリアほど価値が高まる傾向にあります。

高さについて

建築基準法では建物の高さに対する以下のような制限も取り決められています。

・北側斜線制限
・道路斜線制限
・日影規制

それぞれについて見ていきましょう。

北側斜線制限

北側斜線とは北側隣地から5m(もしくは10m)の高さから1:1.25の斜線内に建物を建てなければならないというものです。北側隣地の採光確保を目的とするもので、低層住居専用地域と中高層住居専用地域に指定されます。

道路斜線制限

道路斜線制限とは敷地が接する道路の反対側境界線から1:1.25(もしくは1:1.5)の角度で引いた斜線内に建物を建てなければならないというものです。道路の採光確保を目的とするもので、すべての用途地域で指定されます。

日影規制

日影規制は商業地域、工業地域、工業専用地域を除く用途地域内に指定されるもので、中高層建築物が一定距離の範囲に日影を生じさせないように建物の形態を制限します。

なお、中高層建築物とは「低層住居専用地域においては軒高7mを超えるもの、または地上階数3以上のもの、そのほかの地域においては、高さ10mを超えるもの」のことを指します。

道路について

建物を建てるには、幅4m以上の道路に2m以上接道している必要があります。このことを接道義務と呼びます。ただし、実際には幅4m以上以下の道路でも、新築住宅が建っているのを見かけたことがあるのではないでしょうか。

こうした道路は「2項道路」と呼ばれる道路のことで、幅4m以上ない道路であっても一定の条件を満たせば道路の中心線から水平2m分セットバックすれば建物を建てられることとなっています。

なお、2項道路に面して建てられた建物を売買する際には、その旨を広告などに記載する必要があります。

防火・耐震について

建築基準法では安心して生活できるよう防火性能や耐震性についても規制がなされています。耐震性については、耐震基準が設けられており、定められた耐震性をクリアできない場合には建物を建築できません。

なお、1981年に耐震基準に関する大きな法改正がなされたことから、1981年以前の耐震基準を旧耐震基準、1981年以降の耐震基準を新耐震基準と呼んでいます。単に耐震性能に大きな違いがあるだけでなく、税制優遇を受けられるかどうかなどの違いもあるためよく確認しておくようにしましょう。

街づくりに参画しているという意識を

アパートやマンションなど建物を建てる際には、さまざまな法規制をクリアしなければなりません。法規制を守るために建築費が高くなることもあるため、苦々しく思ってしまうこともあるかもしれません。

しかし、建築基準法や都市計画法などによる法規制は、街並みとそこに住む人々の安全で健やかな暮らしを守るために制定されています。アパートやマンションを建てる際には法規制のそうした側面に着目し、街づくりに参画しているという意識を持つことが大切だといえるでしょう。

また、建築基準法や都市計画法は実情に応じて改正が重ねられていくものです。購入時、建築時に法律の内容を確認して終わりではなく、経営者として法改正にキャッチアップしていくことも重要だといえるでしょう。

まとめ

建築基準法について法律の内容や申請の流れ、そのほか関連法令を合わせた注意点などお伝えしました。建築に関する法律は多岐にわたり、内容が難しく感じるものも多いかもしれません。

しかし、効率の良い賃貸経営につなげていくためには、アパート・マンションを所有する大家さんが正しい基礎知識をおさえておくことは極めて重要といえるでしょう。この記事の内容を参考に、土地活用や建て替え計画に活かしてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

逆瀬川 勇造

逆瀬川 勇造

【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

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