目次
賃貸経営における所得とは何か
課税対象になる収入について
家賃 |
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毎月、入居者から支払われる家賃は賃貸経営における収入です。 |
共益費 |
家賃と共益費を分けて入居者に支払ってもらうケースもあるでしょう。 共益費とは、不動産の表示に関する公正競争規約施行規則によると、「借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用をいう」と定義されています。具体的には、共用部分の水光熱費や備品代などに充てられるものです。とはいえ、厳密に共益費を分割管理する義務などはありません。共益費も家賃の一部と考えてよいでしょう。 家賃と共益費を分ける理由としては、家賃7万円と表示するよりも家賃6.5万円+共益費0.5万円として割安感を感じてもらえることをねらっていると考えられます。ただし、礼金、敷金で家賃の〇か月分という表記においては、共益費を含まない家賃で計算されることになります。 |
礼金 |
昔からの慣習で、文字通り大家さんに対してのお礼金として支払われるものです。礼金も賃貸経営における収入となります。最近では礼金0円とうたう賃貸物件も増えています。 |
更新料 |
当初の賃貸借契約が期間満了となった後も、引き続き契約を継続する場合に、入居者から更新料を支払ってもらうケースがあります。この更新料も賃貸経営における収入となります。 |
参考)敷金
賃貸借契約を締結する際に、敷金を受け取るケースがあります。敷金は、現在「その名目の如何を問わず、不動産を目的とする賃貸借契約に関し、賃借人の賃貸人に対する賃料債務その他一切の賃貸借契約による債務 を担保する目的で賃借人から賃貸人に交付される金銭であって、賃貸借契約の終了する際に、賃貸人から賃借人に利息を付すことなく返還されるべきものをいう。」と定義されています。
つまり、家賃滞納や通常の使用では起こりえない損耗などの担保として預かるお金であるため、賃貸経営における収入ではありません。
経費対象について
・アパートローン返済額の利子部分
・火災保険料
・管理委託費
・消耗品費
・交際費
・研修費
・水光熱費(共用部分)
・租税公課(固定資産税、都市計画税、印紙税、不動産取得税)
・減価償却費
なお、アパートローン返済額の元本部分、所得税、住民税は、税務上の必要経費ではありません。
所得とは
いつ、どのような税金がいくらくらい必要になるの?
不動産を取得したとき
不動産取得税=固定資産税評価額 × 税率4%(標準税率)
なお、課税標準の額が次の金額未満の場合、不動産取得税は課税されません。これを免税点と言います。
【免税点】
土地 | 10万円 | |
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家屋 | 新築、増築、改築 | 23万円 |
そのほか | 12万円 |
不動産を保有しているとき
固定資産税=課税標準額×税率1.4%(標準税率)
【免税点】
所有する土地、家屋、償却資産のそれぞれの課税標準額が次の金額に満たない場合には、 固定資産税は課税されません。
土地 | 30万円 |
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家屋 | 20万円 |
償却資産 | 150万円 |
都市計画税=課税標準 × 税率最高0.3%(制限税率)
不動産を相続するとき
その課税遺産総額を一旦、法定相続分で遺産分割したと仮定して、各相続人の税額を算出します。算出された税額を合計して、実際の遺産分割の割合に応じて税額負担額を決定します。
※1 基礎控除=3000万円+(600万円×法定相続人)
※2 課税遺産総額がゼロ以下になる場合には、相続税は課税されません。ただし特例の適用を受けて上記の状態になる場合には申告が必要です。
不動産を売るとき
なお、不動産の所有期間が5年以下であれば短期譲渡、5年超であれば長期譲渡とされ、それぞれに対応する税率が適用されます。
譲渡所得=譲渡収入-(取得費※1+譲渡費用※2)
【税率】※住民税含む
短期譲渡 | 長期譲渡 |
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39.63% | 20.315% |
※1 取得費は、譲渡した不動産を、取得した価格のことを言います。不明である場合には、譲渡収入の5%と概算することもできます。
※2 譲渡費用は、仲介手数料、印紙税等、譲渡にかかった費用のことを言います。
条件を満たせば、さまざまな特例が認められている
例えば、相続によって賃貸アパートを譲り受けた場合を例に挙げて、適用を受けることができる可能性があるものについてご説明をいたします。
不動産所得税に関する特例
固定資産税に関する特例
小規模住宅用地(200m2以下の部分) | 課税標準 × 1/6 |
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一般住宅用地(200m2超の部分) | 課税標準 × 1/3 |
※面積は、集合住宅の場合、敷地全体の面積を居住用住戸の戸数で除した面積で判定します。
相続税に関する特例
賃貸アパートの敷地は、貸家建付地として評価されるため、自宅敷地など自ら利用する土地の相続税評価額よりも評価を引下げることができます。さらに小規模宅地等の特例の適用を受けることで、さらに相続税評価額の引き下げができるので、相続税対策につながります。
まとめ
忘れた頃に納税通知書が届いて、資金不足に青ざめないように、日頃から税金について理解を深めておきましょう。納税積立も考慮したキャッシュフローのシミュレーションを行っておくことも、大切な大家さんの仕事の1つです。
この記事の監修者
AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー
日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。