大家さんになったら覚えておきたい初めての確定申告

監修キムラ ミキ

  • 公開日:
  • 2020年02月13日
  • 更新日:
  • 2020年02月13日
大家さんになったら覚えておきたい初めての確定申告
賃貸経営をしており家賃収入がある場合、大家さんは確定申告をする必要があることはご存じでしょうか。確定申告の手続きにおいては、さまざまな書類を用意したり、所得や経費の計算をしたりする必要があります。はじめてで何もわからないのに「不備なく確定申告が終えられるか?」と不安に感じている方も多いと思います。この記事では賃貸経営1年目の新米大家さんに向けて確定申告のおおまかな流れや提出書類のチェックリストを中心に、賃貸経営で行う初めての確定申告について丁寧にご説明します。

目次

大家さんも確定申告が必要です!

賃貸経営を行う上で、確定申告をすることは、1年に1回、毎年しなくてはいけない大家さんの必須業務の1つです。賃貸経営を何年も行っている、ベテランの大家さんでも「確定申告は、複雑で気が重い」と思っている人も少なくありません。

そもそも、確定申告とは何か、についてまずご説明をいたします。確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に得た収入から、税務上の必要経費、各種所得控除を差し引いて所得を計算して申告することをいいます。その申告に基づいて確定した所得税および住民税を納めることになります。

所得は以下の10種類に分類され、そのうち、原則として1、5以外に該当する所得を得ている方は、確定申告をする必要があります。ただし、5の給与所得は原則として確定申告が不要ですが、不動産所得などの副業所得が20万円を超える場合や給与収入が2,000万円を超えている場合など、例外もあります。

1.利子所得
2.配当所得
3.不動産所得
4.事業所得
5.給与所得
6.退職所得
7.山林所得
8.譲渡所得
9.一時所得
10.雑所得

賃貸経営における所得は、10種類の所得のうち不動産所得に該当するため、確定申告が必要となります。確定申告が必要なのは賃貸経営を本業で行っている場合だけではありません。先ほども述べた通り、不動産所得などの副業所得が20万円を超える場合には確定申告が必要です。そのため、サラリーマン大家さんなど、賃貸経営を副業で行っている場合も確定申告が必要であることには注意しましょう。

確定申告の提出前の準備~提出後までの流れ

確定申告は、原則としての1月1日から12月31日までの所得について、その翌年の2月15日から3月15日までに必要書類を整えて提出することで行います。

提出方法は、最寄りの税務署に郵送または手渡しで提出するほか、毎年設置される確定申告会場※1に出向き提出する方法もあります。また、e-Tax※2と呼ばれる電子申告システムを使い、オンライン上で申告する方法もあります。自分にとって便利な方法を選択しましょう。

※1 申告会場…どこに設置されるかについてはお住いの地域によって異なります。税務署などに問い合わせることをおすすめします。

※2 e-Tax…e-Taxは、インターネットで国税に関する申告や納税、申請・届出などの手続ができるシステム。確定申告期間中は、24時間e-Taxでの提出ができるため便利である以外にも、添付書類の提出省略ができたり、還付申告(納め過ぎた所得税の還付を受けることができる場合の確定申告)の場合の還付がスピーディであったりとメリットがあります。

確定申告に必要な書類チェックリスト

ここでは、確定申告に必要な書類についてご説明いたします。確定申告をする際には、青色申告をするのか白色申告をするのか、事前に決めておく必要があります。青色申告と白色申告の概要は以下のとおりです。

青色申告

不動産所得、事業所得、山林所得のある人は、一定の条件を満たすことによって青色申告を行うことができます。青色申告を行う場合は、原則として確定申告の計算期間の年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出が必要です。なお、新規開業の場合には、業務を開始した日から2か月以内に提出すれば青色申告を行うことができます。

青色申告をすると、以下のような適用が受けられます。

・青色申告特別控除(65万円または10万円)

※65万円の青色申告特別控除の利用は、不動産所得、事業所得に限られます。また、所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していることが必要です。その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付することが必要になります。

この条件を満たさない場合は、10万円の青色申告特別控除の対象となります。なお、令和2年分(令和2年1月1日~令和2年12月31日)の確定申告からは、電子帳簿保存法に対応する会計ソフトを用いて記帳し、かつ電子帳簿保存の承認申請書を税務署に提出しなければ青色申告ができません。

・青色事業専従者給与の必要経費算入
・純損失の繰越し

白色申告

青色申告の申請をしない場合には、白色申告となります。ただし、不動産所得、事業所得又は山林所得のある人は、記帳や記録保存が必要となります。ただし、記帳は、ひとつひとつの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載してもよいことになっていますので、青色申告と比べると簡易な方法と言えます。そのため、白色申告の場合は、青色申告特別控除のような控除はありません。

次に、確定申告に必要なものについてご説明をいたします。

・本人確認書類

・印鑑
認印で可、還付金受取や納税を口座振替で行う場合には、銀行印と口座番号がわかるものも必要です。

・確定申告書B
インターネットからプリントアウトもしくは税務署で受け取ることができます。

・所得がわかるもの
「確定申告書第一表」に収入と所得を記載するために、収入と所得が記載されている書類が必要です。賃貸経営の場合、青色申告決算書(青色申告の場合)または収支内訳書(白色申告の場合)が必要となります。なお、副業で賃貸経営を行っている場合には、勤務先などから受け取る源泉徴収票や支払調書の原本が必要となります。

・各所得控除、税額控除の証明書類
たとえば、所得控除であれば社会保険料控除((国民年金保険料など支払った社会保険料全額)や生命保険料控除など、税額控除であれば住宅ローン控除などを受ける場合に、その証明書が必要となります。各控除によって、何が証明書となるか異なりますので税務署や税理士などに確認をしておきましょう。

なお、提出は必要ありませんが、上記に挙げた「所得がわかるもの」を作成する際には、収入と必要経費がいくらであったかを計算する必要があります。そのため、収入については、領収書や家賃振込口座の通帳記録は大切に保管しておきましょう。また必要経費についても、日々の支払い領収書を貼付したファイル作成や通帳記録をとっておくことで、帳簿の記帳の際に確認ができるようにしておくことが必要です。

なお、確定申告で必要経費とされる主な項目は以下の通りです。

・アパートローン返済額のうち利子部分
金融機関から送られてくる返済予定表に利子の金額も記載されています。

・火災保険料

・管理委託費
管理会社に支払っている費用

・消耗品費

・交際費
同業者会や取引先との交際費用

・研修費

・水光熱費(共用部分)

・租税公課(固定資産税、都市計画税、印紙税、不動産取得税)

・減価償却費

大家さん向け確定申告の書き方

確定申告書を書くためには、まずは1年間の収入と必要経費の把握が必要です。日々の取引を記録した帳簿をもとに、青色申告決算書(青色申告の場合)または収支内訳書(白色申告の場合)を作成し、所得を算出します。

そのうえで、各種所得控除の証明書を準備して、確定申告書の記入を行います。確定申告書の手順に従って記入を行っていくと、納税額または還付金を計算することができます。作成した確定申告書などを税務署などに提出し、納税または還付によって確定申告が完了します。

この確定申告の作業をスムーズに行うためには、日々の取引をこまめに記録することがとても大切になります。領収書の整理や通帳の記帳を行い、取引の記録をつけていれば、税務署や申告会場で確定申告書等の書き方のアドバイスの理解もしやすいと思います。

確定申告に関するよくある質問

賃貸経営を行う大家さんから、確定申告に関して以下のようなものがよくあります。

家賃収入がなく、経費で赤字の場合でも申告は必要なの?

空室が続いていて、家賃収入が少なく必要経費のほうが多いので赤字である場合にも確定申告は必要なのだろうかと考える大家さんもいます。もちろん、赤字の場合にも確定申告が必要です。また、不動産所得を得ている場合には、ほかの所得の損益通算を行うことができます。

損益通算とは、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得に、赤字が生じた場合、一定の順序にしたがって、総所得金額などを計算する際に他の各種所得の金額から控除することができる制度です。たとえばサラリーマンなどで賃貸経営が副業である場合、給与所得から不動産所得の赤字を差し引くことができます。結果として、所得税および住民税の節税につながります。

申告後に不備に気付いた場合ってどうしたらいいの?

確定申告が終わってから、申告内容の不備や誤りに気付いた場合はどうしたらよいのだろうかと、考える大家さんも多いでしょう。実際の所得が申告内容より多かった場合、少なかった場合はいずれも訂正を行うことができます。

納める税金が多過ぎた場合や還付される税金が少な過ぎた場合

更正の請求という手続ができる場合があります。納め過ぎの税金があると認められる場合には、税金が還付されます。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。

納める税金が少な過ぎた場合や還付される税金が多過ぎた場合

この場合は、修正申告により誤った内容を訂正します。なお、税務署の調査を受けた後で修正申告をしたり、税務署から申告税額の更正を受けたりすると、新たに納める税金のほかに過少申告加算税がかかります。気づいた段階で、速やかに修正申告を行いましょう。

滞納した場合どうなる?

確定申告の期限が、納税期限となります。この期日に納税が間に合わず、税金を滞納した場合は期限内に納税を行わないと、納期限の翌日から納付日までの延滞税がかかります。また、税金を滞納すると、財産の差押えなどの滞納処分を受ける場合があります。このような事態を回避するためにも、日ごろから、納税資金準備についても意識を向けておくことは重要です。

まとめ

確定申告は、初めての方にとってはとても複雑そうに見えます。しかし、日ごろの取引記録をこまめに行っておけば、決して難しいものではありません。賃貸経営はその文字通り、事業の「経営」です。賃貸経営の収支把握を行い、納税額がどれくらいの見込みになりそうかを意識し、その資金準備に目をむけることは経営者の務めです。管理会社や税理士に任せるのも一つの方法ですが、経営者として内容把握ができることに越したことはありません。専門家の助けも借りながら、ゆっくり時間をかけて確定申告に自分で取り組んでみましょう。
キムラ ミキ

監修キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。
大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。
その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

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