住宅に使われる鍵の種類
はじめに、住宅や事務所の玄関などに使われている「鍵」について、機能の種類や目的などをご紹介していきます。「鍵」は大きく分けると「錠前」と「シリンダー」のふたつに分類できます。錠前は扉をロックするものを指していて、南京錠のように独立した鍵を指していることもあります。
シリンダーは、一般的にはシリンダー鍵を差し込んで解錠する鍵の種類を指します。暗証番号式など鍵の差し込みを必要としないものではない限り、住宅の玄関を含め最も多く普及している鍵の種類になるでしょう。シリンダー錠には、ディンプル、マグネット、ピンシンリンダーなど機能によってさらにバリエーションがあります。
防犯性の高い鍵とは?
一人暮らしの世帯や共働きの世帯など外出している時間が長い家は、不法侵入などの犯罪リスクが高まります。昔に比べピッキング被害は激減していますが、もしも現在、一般的に住宅用の鍵の使用率の高いギザギザした鍵(ピンシリンダーやディスクシリンダー)を採用しているのならば、より防犯性の高い鍵への交換を検討してみましょう。
近年アパートなどの賃貸住宅においても、防犯に対する意識は高まっており、より防犯性の高いディンプルキーへの交換は入居者への安心感をアピールすることができ、ライバル物件との差別化や空室対策・退去防止にもつながるからです。
「ディンプルキー」ってどんな鍵?
防犯性に優れているといわれるディンプルキーとはどのようなものか、詳しくご紹介しましょう。ディンプルキーの名前にある「ディンプル」は「くぼみ・えくぼ」を意味します。鍵穴の中の形状は、一般的なものとほぼ同じ仕組みで、複数のピンの形状と鍵の形状が合致することによって、解錠します。
ピンの本数が多くなるほど、ピッキングは難しくなります。鍵穴の中の仕組みが従来と似ていても、ディンプルキーの場合は、より繊細な合致方法でなければ解錠しないものになっているため、防犯性が高い鍵とされているのです。
ディンプルキーの強み
ここからはディンプルキーの強みを具体的にご紹介してきましょう。
・ピッキングされにくい
通常のシリンダー錠よりも、鍵穴の内部が複雑で繊細なため、ピッキングをしようとしても時間がかかり犯罪抑制が期待できます。しかし、ディンプルキーでも自転車の鍵のように「カギ違い数」が少なければ、セキュリティは低い点に注意が必要です。
ディンプルキーに交換を検討している場合はプロと相談のうえカギ違い数の多い住宅向けのディンプルキーを選ぶようにしましょう。
・複製が難しい
ディンプルキーの形状は複雑であり、くぼみの高さ(深さ)は非常に精密につくられていますので、合鍵をつくるのにも高度な技術求められます。そのため、第三者が犯罪目的などで、不正に複製するのは極めて困難となります。入居者が鍵を紛失した場合などに複製費用が高額になる、時間がかかりすぐには複製できないなどの点に注意が必要です。
・バリエーションが豊富
ディンプルキーは、くぼみの形状を変えるだけで全く別の鍵になるため、バリエーションを多く作ることができます。登録制で番号を示さないと合鍵ができないディンプルキーもあります。種類が多いと、開錠の種類も増えて、鍵を容易に開けることが難しくなりますので、防犯性が高いといえるでしょう。
賃貸物件向けディンプルキーのおすすめ商品紹介
ここでは具体的に賃貸住宅におすすめのディンプルキーとメーカーをご紹介します。詳細につきましては各社へお問い合わせください。(順不同)
美和ロック
美和ロックは、国内大手の鍵メーカーの会社です。鍵に特化しているため、さまざまな種類のディンプルキーを取り扱っています。また、ディンプルキーの中でも唯一ディスクタンブラーを採用しているのも特徴です。
ディスクタンブラーとは、外筒と内筒にわかれた構造をしていて、正しい鍵を入れると内筒が動きますが、誤った鍵を入れると内筒は動かない仕組みの錠で、非常に犯性の高い仕様になっています。
アルファ
アルファは、国内で多く扱われている鍵メーカーです。防犯性の高い世界最高クラスのディンプルキーを取り扱います。FBロックは、鍵の先端にフローティングボールを埋め込み、鍵の複製、ピッキングを極めて困難にした、安心のCP-C認定シリンダーです。
ピッキングをより困難にするアンチピッキングピンを使用し、鍵違いも最大1,300億通りにもなります。価格や防犯性に合わせて種類も豊富なので、自物件に合うディンプルキーを選択しましょう。
WEST
WESTは、建具の金物全般を扱うメーカーです。鍵のほかにもドアハンドルなども多く取り扱っています。デザインにこだわりがあり、意匠性と防犯性の両方を求めたい方におすすめです。ディンプルキーは、ピッキングに強く合致した鍵には反応よく開錠し操作性が良いのが特徴です。
ドルマカバジャパン
ドルマカバは、2015年9月にドイツのDORMA社とスイスのKABA社が合併し誕生した会社(本社はスイス)です。合併に伴い、日本カバからドルマカバジャパンに社名が変更され、鍵以外にもセキュリティゲート、ホテルロック、ドアハードウエアなどの輸入製造販売を行っています。
鍵メーカーではありますが、鍵の中でも交換用ディンプルキーシリンダー製造を行っており、錠前は製造していません。
Kaba star plusは、鍵の所有者だけがスペアキー注文を行えるようにする「所有者登録システム」を採用したディンプルキー。鍵の所有者情報をドルマカバジャパンにて登録し、第三者による鍵の不正コピーを防止できるようになっています。
マルティロック
マルティロックは、イスラエル発の世界トップクラスの技術力を持つ鍵メーカーです。テロなどの危険と脅威にさらされる環境で生まれたもので、ダブルディンプル、インタラクティブピン(特許)の採用で、不正開錠できないハイセキュリティなシステムになっています。
また、合鍵作製は、身分証明書・オーナーカード・鍵本体(画像)の3点提示が必須など、徹底した防犯対策を採用しています。
ディンプルキーに変更する場合
一般的な鍵からディンプルキーに変更する場合、基本的には、退去時に鍵交換を行うことが望ましいです。もし入居者がいる状態で鍵交換を行うのであれば、既存の鍵で何かおきたのではないかと不安な気持ちにさせてしまう場合もあり注意が必要なので、なぜ鍵を交換するのか、事前にしっかりと説明することをおすすめします。
また、合鍵が簡単に作製できないディンプルキーの場合、入居者が失くした際、新しく鍵を作るのに手続きに時間がかかるなど不便になる可能性がありますので、気を付けましょう。なお、ディンプルキーへの交換費用の目安は、種類にもよりますがおおよそ2~4万円ほどで、交換作業は1日かかります。
変更する理由を明確にしておこう
鍵の交換を行うときは、目的を明確にすることが大切です。空室対策で防犯性を高めたいなら、きちんと防犯機能を持つ鍵を選び、物件紹介でもアピールしましょう。
鍵を交換した際の入居者への対応
賃貸物件で鍵を交換した際は、入居者へ合鍵を作製するときの費用についても説明しておきましょう。*ディンプルキーは防犯性が高いことから、合鍵作製も一般的なギザギザの鍵より高額になります。
*合鍵だけで5千円ほどになることもありますし、シリンダー交換になった場合更に高額になります。入居者への事前説明がなかったことで、合鍵作製の費用でトラブルになることもありますので、説明は十分に配慮しましょう。
空室対策につなげるための工夫
空室対策の方法のひとつとして、防犯性の高い鍵に交換する場合は、入居者に対して物件の防犯対策を魅力の1つとして認識してもらうことが大切です。不動産広告で鍵交換をアピールしたり、具体的なセキュリティ効果について事例を記載したりするなど、安全・安心な物件である点を印象づけるようにしましょう。
なお、実際に交換する前に、賃貸経営のプロフェッショナルである管理会社に意見を仰ぐこともおすすめです。
まとめ
近年、ますます防犯に対する意識は高まってきています。特に女性の一人暮らしや学生、単身者、子育て世代は、より防犯性の高い物件に興味を示す傾向があるでしょう。大掛かりな工事を必要とせず、短期間でできる方法ですので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
注文住宅会社に15年以上従事し、不動産売買業務の他、新築・リフォームの内外装、家具・建具造作の現場監修を行う。オリジナルデザインの住宅を数多く経験。不動産・住宅専門の執筆活動も行っている。
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