入居者ニーズ急拡大中!賃貸物件で「テレビを壁掛けにできないか」と相談されたら

2024.08.23更新

この記事の監修者

弘中 純一
弘中 純一

宅地建物取引士/一級建築士

入居者ニーズ急拡大中!賃貸物件で「テレビを壁掛けにできないか」と相談されたら

空室対策としてテレビの壁掛けを検討中の大家さんへ、仕組みと入居者が持ち込むテレビを壁掛けにする方法をご紹介します。

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目次

壁掛けテレビの需要は伸びている!?

大型テレビには、キッチンなど離れた所からも見やすい、文字が大きく高齢者に喜ばれる、真正面に座っていなくてもよく見えるなどの特徴があり、需要が伸びています。

そして、大型テレビの出荷台数と比例し「壁掛けテレビ」のニーズが増加。これは賃貸住宅の場合でも同様で、大家さんとしては、今後ますます増加が予想できる壁掛けテレビの需要へどのように対応していくか検討することが望ましいでしょう

大家さんは損?得?テレビを壁掛けにするメリット・デメリット

テレビの壁掛けを空室対策として採用する場合、メリットとデメリットを把握したうえで慎重に判断することが重要です。

テレビの壁掛けのメリット

大型サイズのテレビを壁掛けにする最大のメリットは、リビングなどのスペースが広がり、使いやすく掃除も楽になることでしょう。また部屋がすっきりすることからおしゃれになり、入居者が増えるきっかけになり得ます。

また、大型テレビは地震時の転倒も心配でしょう。転倒防止グッズでは心もとないと感じることもありますが、壁掛けであれば地震の際にも安全です。このような点から、「テレビを壁掛けできる物件」というアピールポイントは、空室対策として有効と言えます。

テレビの壁掛けのデメリット

壁掛けをする一般的な方法は、壁掛け専用の金具を壁に設置するというものです。テレビは軽い家電ではありませんので、重みに耐えられるようにするため、壁の補強など穴をあけて工事をしなければならないケースもあります

また、壁掛けしたテレビから電源コードや同軸ケーブルが露出してしまっては、せっかくのおしゃれな雰囲気が台なしです。そこでコンセントの移設やテレビ端子の位置も問題になります

さらに、据置タイプのテレビと違い内装に傷が付くことも多く、退去時の原状回復に関してトラブルになる可能性も。このような時、大家さんがどこまで許容するのかが重要です。原状回復工事の負担をできるだけ少なくする方法もあるので、後ほど解説します。

大家さん目線で解説!壁掛けテレビの設置工事は簡単?難しい?

テレビを壁掛けにする工事はそれほど大規模ではありません。方法によっては大家さんがDIYで行うことも可能です。具体的なテレビ壁掛け工事の方法について概要を知っておきましょう。

費用や工事期間はどれくらい?

テレビを壁掛けにするためには、専用金具を壁に取り付ける工事を行います。具体的には次のような方法が考えられます。

1.大家さんが専門工事店に依頼する
2.入居者が専門工事店に依頼する
3.大家さんがDIYで工事する
4.入居者がDIYで工事する

専門工事店に依頼する場合は工事可能な壁の種類が多く、電源やテレビ端子の移設が可能になります。一方でDIYの場合、木下地に石こうボード壁にする以外は難しく、木下地に壁掛金具をビス止めできるタイプに限ります

壁掛金具代の負担だけで済みますが、電源やテレビ端子の位置は現状のままです。どちらが費用を負担するかについては、入居条件の設定によります。入居促進策として行うのであれば大家さんが負担するとよいでしょう。工事金額の目安は以下のとおりです。
DIY専門工事店
木下地・石こうボード壁金具代のみ約3,000円~約3万円~約6万円
軽量鉄骨下地・石こうボード壁約4万円~約8万円
GL工法・石こうボード壁約4万円~約8万円
コンクリート壁約4万円~約8万円

原状回復は可能?

壁掛金具を取り付けると、壁にはビス穴があいた状態となりますが、壁紙など仕上材の張り替えや塗り替えにより原状回復が可能です。その際も、大家さんと入居者のどちらが費用を負担するかは、次項で説明する入居時の取り決め内容によります。

敷金トラブルの原因になる?

テレビを壁掛けにした部分の原状回復については、入居時に取り決めをし、賃貸借契約書の特約事項などに明記します。大家さんが壁掛けを認め、壁掛金具の設置工事をみずから行うか専門工事店に依頼した場合、退去時にはそのままにすることもありますし、元の金具がなかった状態に戻すこともあります。

元に戻す場合は大家さんが費用と責任を負うことになるでしょう。大家さんが認めて入居者が工事を行った場合、原状回復について入居者負担とするかどうかは、契約時に双方が協議して決めることになります

トラブルになりやすい2つのケース

1.大家さんが工事を認めていないにもかかわらず、入居者が勝手に行った場合
2.大家さんはテレビの壁掛けを認めていたが、入居者が行った工事に対する原状回復について明記していなかった場合

以上のようなケースでは入居者に原状回復義務が求められ、その費用を入居者が負担しない場合はトラブルになる可能性があります。入居者は原状回復の費用負担に同意せず、敷金返還請求をする可能性が高いですが、大家さんとしては原状回復費用が必要となるため、敷金の返還を拒否するでしょう。

このようなトラブルを防ぐためにも、原状回復義務についてはしっかり話し合いをして、取り決め事項を契約書に明記しなければなりません。取り決め事項の内容については管理会社にも相談し、有効性のあるルールを作るようにしましょう。

原状回復を視野に入れたテレビを壁掛けにするためのアイデア

原状回復の施工範囲ができるだけ少なく済む方法として、壁掛けテレビ用の金具を設置するものがあります。

ビス止めだけで行い原状回復は壁一面だけ

壁の下地が木造の場合は、45センチ間隔で縦に「間柱」が入っています。壁掛用金具を取り付けるビスの位置が間柱の位置と合っているようであれば、金具を間柱にビス止めしましょう。

原状回復の時には、テレビを掛けていた壁一面の壁紙を張り替えるだけで済みます。木下地の間柱の位置を探す専用の器具もありますが、長さ1.5センチ以上の細いピンを壁に差し込んでも探すことができます。

壁掛金具の取り付け位置が間柱の位置と合わない場合は、ホームセンターで厚さ9ミリか12ミリの合板を、長さ60~90センチ、幅10~20センチぐらいのサイズに切断し、間柱にビス止めしましょう。そのうえで壁掛金具を取り付けた合板にビス止めすることができます。

ホッチキス止めテレビ壁掛金具

テレビを壁掛けにするための金具には、文房具のホッチキスを使って取り付けできるタイプがあります。通常の壁掛金具より値段は高いですが、壁にできる傷はホッチキスの針穴だけなので目立ちません。

傷の付き方によっては原状回復も不要になります。「テレビを壁掛けにしたいけれど原状回復はしたくない」と希望する入居者にはおすすめできるでしょう

突っ張り棒を使った壁掛けテレビ

床と天井の間に突っ張り棒状の支柱を立てて壁掛けにする方法で、壁にビス止めすることなく壁掛けにできます。突っ張り棒の位置は床ならどこでも大丈夫ですが、天井には45センチ間隔で下地が入っていますので、下地のある所に突っ張り棒の端部が当たるよう位置を調整して固定します。

アルミ製の突っ張り棒も市販されていますが、ホームセンターなどで入手できるツーバイ材とアジャスターボルト付きのツーバイ材固定金具を使う方法でも、突っ張り棒タイプの壁掛金具を設置できます。

装飾壁をDIYで

前述のツーバイ材とアジャスターボルト付き金具を使って、床と天井で固定された柱を4本立てます。テレビは2本目と3本目の柱の間に設置し、1本目から4本目までの柱に羽目板を張って壁を作りましょう。

すると、羽目板でできた装飾壁の中央にテレビがレイアウトされ、おしゃれなインテリアにもなります。金具を使って棚板を自由に取り付けることもできますし、電源コードや同軸ケーブルをテレビの裏側に隠すことも可能で、原状回復を気にせずテレビを壁掛けにできます

テレビの壁掛けはニーズやターゲットを調査してから検討しよう

壁掛けテレビの需要が高まっていることは前述したとおりですが、すべての物件において同様のことが言えるわけではありません。

近年は「若者のテレビ離れ」といったことも言われており、入居者の属性や生活スタイルによって、壁掛けテレビがニーズに合っていないこともあります。所有物件の入居者ニーズを的確に捉え、壁掛けテレビが空室対策になる可能性があればアピールしたい所です

空室対策にもつながるため、管理会社や仲介会社にも伝えておくことを忘れずに!

空室対策としてテレビの壁掛け設備を導入する際は、管理会社や仲介会社にも連絡し、物件資料に表記してもらうことが大切です。「テレビの壁掛けOK」や「壁掛けテレビ相談可」など、入居希望者の目に留まりやすいよう工夫してもらいましょう。

またポータルサイトへの掲載では、特徴の欄に「テレビ壁掛け」などと記載しておくと、キーワード検索のフィルタリングで物件詳細ページを表示させることも可能です。

まとめ

壁掛けテレビのニーズは増えていくことが予想され、また工事も案外簡単にできるものなので大家さんとして対応する準備をしておきたいことです。

とくに空室が目立つようになってきた物件では、管理会社とも相談し、試験的に導入することも1つの方法でしょう。まずは、工事方法を決め、原状回復に関するルール作りから始めてはいかがでしょうか。また、アピール方法を考えることも重要です。入居者ニーズの変化に対応する姿勢が空室対策のポイントになります。
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この記事の監修者

弘中 純一
弘中 純一

宅地建物取引士/一級建築士

宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年。住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動中。さまざまな情報が多い不動産業界で正しい情報発信に努めている。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。