将来はZEHが当たり前に!?省エネ賃貸のメリットや補助金制度を解説します

2024.08.19更新

この記事の監修者

キムラ ミキ
キムラ ミキ

AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

将来はZEHが当たり前に!?省エネ賃貸のメリットや補助金制度を解説します

所有する賃貸物件の建て替えやリフォームを検討中の大家さんへ、省エネ化の基準と省エネ化によるメリットをご説明します。

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目次

新築住宅の省エネ基準がとうとう義務化?

近年、自然災害が急増している要因の1つとして、地球温暖化が挙げられます。そして、その地球温暖化の大きな原因は、温室効果ガス(二酸化炭素など)の増加である可能性が高いと言われています。

温室効果ガス(二酸化炭素など)抑制が声高に叫ばれる前から、日本では昭和54年に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(通称省エネ法)が制定されており、省エネ法改正の都度、省エネ基準や対象範囲などを拡大しています。

【省エネ法および住宅の省エネ基準の変遷】

省エネ法住宅の省エネ基準
昭和54年制定昭和55年
省エネ基準
・住宅の省エネ基準の制定
平成5年
改正
平成4年
省エネ基準
・断熱性能強化
・一部エリアにおける気密住宅
平成10年改正平成11年次世代
省エネ基準
・躯体断熱性能強化
・全エリアを対象とした気密住宅前提
・計画換気、暖房設備などに関する規定追加
平成22年には、国土交通省・経済産業省・環境省が設置する低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議により、令和2年までにすべての新築住宅・建築物について、従来基準(主に建物の壁や屋根、窓や基礎部分といった、いわゆる外皮性能についての基準)よりも高い省エネルギー基準への適合を段階的に義務化する必要があるとの取りまとめが行われました。

その取りまとめと、東日本大震災における原発事故によるエネルギー供給減という状況も鑑みて、平成25年の改正では、従来の省エネ基準(平成11年基準まで)に加え、太陽光発電によるエネルギー削減量も考慮した住宅全体の一時消費量の基準も設けられました。

また、「住宅については、2025年までに今の省エネ住宅が標準的な新築住宅で、2030 年までにZEH(※)水準の省エネ住宅が新築住宅の基準を目指す。(中略)2020 年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する。」という内容を盛り込んだ「エネルギー基本計画」が閣議決定されています。
(※「高断熱」、「省エネ」、「創エネ」の基準を満たした住宅。後段でご説明します。)

賃貸住宅にも省エネ化が望まれる時代に

省エネ政策が進められる中、国民意識にも変化はあるのか、国土交通省の行っている生活総合調査を踏まえて、ご説明します。

住まいへの不満ってどんなもの?

平成30年住生活総合調査の調査結果によると、現在住んでいる住居に対する不満として、上位10項目の中に「断熱性」、「省エネ性」といった省エネについての項目が2項目も含まれており、いずれもおよそ4割の方が不満としています。

また、最近5年間に実施した住み替えの目的を「性能の向上(断熱性、省エネ性など)」とする方もおよそ6%います。また、今後5年以内の住み替えの目的として「性能の向上(断熱性、省エネ性など)」を挙げる方は、「広さや部屋数」、「使いやすさの向上」、「新しさ・きれいさ」といった、いわば一般的な目的に次いで4位となっています。

また、この前回調査である平成25年の同調査では、現在住んでいる住居に対する不満として、「冷暖房などの省エネルギー性」「住宅の断熱性や気密性」を挙げる方が、いずれも5割程度いました。

また、住み替えの主な目的として、「省エネルギー性能の向上」を挙げる方は、今後5年以内の住み替え意向を持つ世帯、最近5年間に住み替えた世帯ともに、10%近くいました。

平成25年調査、および平成30年調査を比較してみると、依然として住宅の省エネ性に対する不満はあります。しかし、日本における住宅の省エネ政策が進められている中、大手住宅メーカーなどを中心として実際に住宅の省エネ化が一部前進しているからこそ、住宅の省エネ性に対する不満が減少していると読み取れるのではないでしょうか。

今後、中小の工務店や設計事務所などの住宅の省エネ政策に対する習熟度が高まっていくのに従い、国民の住まいに対する省エネ意識はさらに高まっていく可能性が高いと考えます。

なお環境省は、賃貸住宅からのCO2の大幅な削減を目指し、国土交通省と連携して、省エネ基準を超える高効率の機器を賃貸住宅に導入した場合、最大で費用の2分の1を補助する「賃貸住宅における省CO2促進モデル事業」を行っています。さらに、ZEH支援事業も集合住宅へ拡充するなど、住宅の省エネ化の動きは、持ち家だけにとどまらず、賃貸住宅にも波及しています。

省エネ賃貸のメリット・デメリット

賃貸住宅にも波及する住宅の省エネ化の動きを受けて、所有する賃貸物件の省エネリフォームを検討している大家さんもいらっしゃるでしょう。ここでは、賃貸物件を省エネ化するメリット・デメリットについて、ご説明します。

メリット

所有する賃貸物件を省エネ化するメリットには、次のような点が挙げられます。

【物件の強みを作ることができる】

省エネ性が備わっている住宅は地球環境に優しいだけでなく、エアコンの使用時間短縮などにより、水光熱費負担が軽減されるため、家計にも恩恵をもたらします。

住宅の省エネ政策により、今後、建築物には省エネ性が備わっていることが”当たり前”の世の中となっていく中、省エネ住宅での生活に慣れた人が、省エネ性が備わっていない住宅に住み替えることに前向きな関心を寄せるとは考えづらいのではないでしょうか。

省エネ化のためのリフォームを行うことによって、その“当たり前”の潮流に乗ることもでき、家計に優しい「エコマンション」「エコアパート」といったことをアピールして、類似近隣物件との差別化を図ることも可能です。

省エネ化を図ったからといって、新築物件との競合力を有するまでにはいたらないかもしれません。しかし、省エネ化があまり進んでいない既存の賃貸物件との競合力は高まることになるでしょう。

【資産価値を高めることができる】

住宅の省エネ政策により、建築物に省エネ性が備わっていることが“当たり前”の世の中になっていく中で、省エネ性を有していない物件を購入したいというニーズが低下することは、想像に難くないでしょう。

リフォームや建て替えにより省エネ化を図ることは、所有する賃貸物件の資産価値を高めます。資産価値が高い賃貸物件にしておくことで、売却に難航しない可能性が高まり、相続時にも相続人に負の資産を遺さずに済みます。

【補助金を受けられる】

一定条件を満たした住宅の省エネ化についてのリフォームや建て替えは、補助金を受けられる可能性があります。

デメリット

所有する賃貸物件を省エネ化することによって、次のようなデメリットも挙げられます。

【費用がかかる】

補助金を受けられる場合でも、リフォームや建て替えには費用がかかります。工事期間中の家賃収入の減収なども考慮したキャッシュフローを確認し、資金計画を考える必要があると留意しておきましょう。

所有物件を省エネ住宅にするには

所有物件を省エネ住宅にするには、断熱性や気密性を向上させたり、省エネ性能を備えた設備を導入したりする方法があります。

ほかにも、建物管理の徹底や緑化など、さまざまな方法、基準があります。

省エネ基準とは?

省エネ基準には、さまざまなものがあります。その一部として「低炭素建築物」「住宅トップランナー基準」「ZEH」などが挙げられます。その概要は以下のとおりです。詳細については、リンクを参照ください。

低炭素建築物の認定基準

低炭素建築物とは、二酸化炭素の排出の抑制に資する建築物で、所管行政庁(都道府県、市または区)が認定を行うものです。

住宅トップランナー基準

住宅トップランナー基準とは、省エネ基準(いわゆる「平成11年基準」。)満たす外壁、窓などを有する住宅に、平成20年時点での一般的な設備を備えた場合の一次エネルギー消費量と比べ、おおむね10%の削減に相当する省エネ性のことを言います。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

ZEHとは、外皮の断熱性能などを大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅のことを言います。

賃貸住宅でも受けられる補助金制度

住宅を省エネ化するための工事費用などに対する補助金制度が設けられています。そのうち、賃貸住宅でも受けられる補助金には「ZEH支援事業」、「長期優良住宅化リフォーム補助金」、「省エネ改修補助金」などがあります。

【ZEH支援事業】

ZEHを新築する、ZEHの新築建売住宅を購入する、または既存の一戸建て住宅をZEHへ改修する方に補助金を交付する制度。

【長期優良住宅化リフォーム補助金】

一定の住宅性能を有するようリフォーム工事を実施することなどを満たしたリフォームを行う方に、リフォーム工事実施後の住宅性能に応じて補助金を交付する制度。

【省エネ改修に関する特例措置】

一定の省エネ改修工事またはそれを含む長期優良住宅化リフォームを行った場合、所得税の税額控除を受けられる制度。

まとめ

ほかの先進国と比較して、建築物の省エネ化が遅れている日本。しかし、政策として省エネ化を進めていく以上、省エネ住宅はいずれ当たり前の世の中になっていきます。

省エネ住宅が当たり前の世の中になってから慌てるのではなく、将来を見通し、省エネ住宅への改修および建て替えを検討するのは、賃貸経営の事業主である大家さんとして必要な姿勢ではないでしょうか。

今回の記事から、どの補助金などを活用し、どのタイミングで所有する賃貸物件の省エネ化を進めていくのか、考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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この記事の監修者

キムラ ミキ
キムラ ミキ

AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

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