人気設備を導入して空室対策に!ウォークインクローゼットに関する知っておきたいリフォーム方法

2024.07.24更新

この記事の監修者

いしわた さとみ
いしわた さとみ

宅地建物取引士/二級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー

人気設備を導入して空室対策に!ウォークインクローゼットに関する知っておきたいリフォーム方法

ウォークインクローゼットが人気の理由やリフォームする際のポイントを、工事にかかる費用の目安と合わせてご説明します。

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目次

入居者に人気の設備とは

賃貸物件において、入居者から求められている設備にはどのようなものがあるのでしょうか。全国賃貸住宅新聞社の調査結果を見てみましょう。

【参考】全国賃貸住宅新聞社 2019年人気の設備

2019年版の人気の設備ランキングによると、単身者、ファミリーともに1位が無料のインターネット回線でした。小学校高学年の2人に1人がスマートフォンを所有し、テレワークも今後ますます普及すると考えられる現代において、賃貸物件のIT化は必要不可欠であるといえるでしょう。

また、2位以降では、オートロックホームセキュリティなどのセキュリティシステムが上位にランクインしており、防犯意識が高まっていることもうかがえます。

そのほか、浴室乾燥機独立洗面台などの水回り設備、単身者や共働き家庭に便利な宅配ボックス24時間ゴミ置き場がランクインしています。

単身・ファミリー向けどちらにもランクインしている「ウォークインクローゼット」とは

前出の人気の設備ランキングにおいて、単身者向けで8位、ファミリー向け10位にランクインしているのがウォークインクローゼットです。まずは、ウォークインクローゼットとはどのようなものかをご紹介していきます。

一般的なクローゼットは、奥行きが60センチほどの収納スペースで、間口が開き戸や折れ戸で全面開放できるようになっています。ハンガーパイプが設置されており、衣類をかけて収納できます。ハンガーパイプの上には上段(棚)、下部の空いたスペースには収納ケースを置くことができます。

対するウォークインクローゼットは、中へ入って衣類などを収納するタイプのクローゼットです。広さに応じてL字型やコの字型、Ⅱの字型にハイガーパイプが配置されています。可動棚を設置するなど、カバンや帽子といった小物類も収納できるようになっているのがポイントです。

ウォークインクローゼットは従来、寝室に夫婦用のクローゼットとして設置されることが一般的でした。しかし、最近ではファミリークロークとして、リビングやキッチン、水周りのそばに設置されることも増えており、小さな子どものいる家庭を中心に人気を集めています。

なぜウォークインクローゼットが人気なのか

ウォークインクローゼットは衣類の収納だけにとどまらず、小物類から掃除機やシーズンオフの暖房器具といった大物までを1か所に収納できる、非常に機能的な収納スペースです。

賃貸物件はどうしても収納が不足しがちなので、ファミリー向けの物件などでは和室や洋間の一室を収納として使っている人も少なくありません。そのため、収容力があってバックヤード的な役割を果たしてくれるウォークインクローゼットが設置されていると喜ばれることが多いです。

また、壁付けのクローゼットの場合は間口が全面建具になるため、家具を置くスペースが少なくなり、建具の色によっては部屋に圧迫感が出てしまいます。その点、ウォークインクローゼットなら出入り口が1か所あるだけなので無駄に壁面を使うこともなく、見た目もすっきりします。

ウォークインクローゼットをリフォームで導入する場合に考えるべきこと

ウォークインクローゼットの導入を考えるときの問題点は、所有物件にウォークインクローゼットを設置できるかどうかです。ここではウォークインクローゼットを導入する際に検討すべき点を、具体的に説明していきます。

設置スペースを決める

ウォークインクローゼットに必要な広さは夫婦2人で2畳分。間口・奥行きともに180センチ程度になります。真ん中に通路をとり、両側を収納スペースとします。

単身向けの場合は間口を120センチまで縮め、片側収納とします。ウォークインクローゼットの天井を低く設定し、上部をロフトとして使用するなどひと工夫することで、部屋が狭くなった分をカバーできます。

ファミリークロークとして使用するのであれば、3畳から4畳程度のスペースが必要です。この場合、ひと部屋をつぶしてクローゼットに改修する必要がありますので、間仕切り壁の移動をともなう大がかりなリフォームになるでしょう。

どんなウォークインクローゼットにするかを決める

ウォークインクローゼットも、内部の造作次第で使い勝手や収容力は大きく変わり、例として以下のような方法が挙げられます。

・ハンガーパイプをコの字型やⅡの字型に設置した、衣類収納をメインとしたもの
・全面に収納棚を設置し、部分的にハンガーパイプを取り付けるなどしてシステム収納化したもの
・造作なしでスペースだけをつくっておいて、既製のユニット家具を置く

単身者は持ち物も限られていますから、ハンガーパイプ1本と空いたスペースに棚を何段か設置しておきます。ファミリーの場合は家庭によって収納したいものはさまざまですから、ハンガーパイプを1本だけ渡し、後は入居者に収納ユニットを持ち込んでもらうという形でもよいでしょう。

どんなの業者に依頼すべきか

ウォークインクローゼット1つでも、工事の種類は多岐に渡ります。間仕切り壁は大工さんですが、造作棚は木工業者の仕事です。建具も造作であれば木工業者がつくりますが、既製品であれば建具工事業者に依頼します。湿気対策や換気用に窓を設置する場合も同様です。

そして、ウォークインクローゼットの場合、内部に照明が必要なので電気工事業者が工事を行います。同じ設備工事でも、換気設備は空調工事業者の工事になります。

これだけの工種をまとめる必要があるので、大家さんみずから采配する分離発注は現実的に不可能です。まとめてリフォーム会社に依頼するか、可能であれば大工さんに一括発注してもよいでしょう。

【参考】ウォークスルークローゼットとは

ウォークスルークローゼットとは、二方向から出入りできるウォークインタイプのクローゼットのことで、動線の回遊性を重視して取り入れる物件も増えています。

ウォークインクローゼットのスペースを確保するのが難しい場合などに、通路と兼用のウォークスルークローゼットを設置するという方法があります。

壁から120センチ程度離して間仕切り壁をもう1枚つくり、その裏側にハンガーパイプや可動棚を設置すれば、ウォークスルークローゼットは完成です。多少部屋は狭くなりますが、通路を兼ねているため動線上の不便は少ないでしょう。

ウォークインクローゼットのリフォームについての注意点

ウォークインクローゼットをリフォームで新たに設置する場合、どのような点に注意すべきか、そのポイントについてご説明します。

通路の確保

人間の肩幅は、身長の25%が標準値とされています。身長160センチの人なら、肩幅40センチ。身長180センチの人でも、肩幅は45センチ程度です。そのため、ウォークインクローゼットの通路幅は、肩幅より少し余裕をもった60センチとすることが多いです。

ただし、中で着替えをする場合を想定する場合、80センチは必要です。しかし、賃貸物件をリフォームしてウォークインクローゼットを設置するとなると、あまり広さに余裕がないと考えられますので、肩幅ギリギリの45センチでも大きな問題はないでしょう。

湿気対策

ウォークインクローゼットの湿気対策には、いくつか方法があります。1つ目は、窓を付ける方法です。一方向では風が通らないため、上げ下げ窓で空気を循環させます。ただし、日当たりがよすぎると衣類が色焼けしてしまうので、注意が必要です。

2つ目は、機械で換気する方法です。クローゼット内部に換気扇を設置しておけば、天気に左右されず換気でき、衣類が色焼けする心配もありません。

そして、3つ目。クローゼットの内部を調湿効果のある建材で仕上げる方法です。湿気に弱い着物が桐箪笥や桐の衣装箱で保管されるように、桐には調湿効果や防虫・抗菌効果があります。内部を桐で仕上げることで、衣類を桐箪笥に収納するのと同じ効果を得ることができます。

広さや場所により照明が必要

奥行きのあるウォークインクローゼットの場合、日中でも奥の方は真っ暗になることもあるため、照明を設置する必要があります。配線工事と、照明器具・スイッチの取り付け、あわせてコンセントも追加しておくと、掃除機の充電や除湿器を使用する際に便利です。

そのほか、パーテーションのように間仕切り壁の上部(欄間部分)をオープンにしておくと上の方から明かりが入ってくるため、照明が不要な場合もあります。ただし、クローゼットの配置や室内照明との位置関係にもよりますから、リフォーム会社に相談してみましょう。

動線を意識する

ファミリー向けの場合は動線にも注意が必要です。いくら機能的なウォークインクローゼットでも、設置する場所を間違えると使い勝手の悪い収納になってしまいます。

衣類の収納をメインで考えると、物干し場の近くに配置するのが家事動線を短縮する上でもっとも効果的です。

また、朝起きて着替える時の動線も忘れてはいけません。キッチンや洗面所のそばにウォークインクローゼットの出入口を配置してしまうと、朝の準備で忙しい時間帯に家族の動線が混雑してしまうおそれがあります。生活動線はできるだけ干渉しないよう、注意してください。

ウォークインクローゼットのリフォームにかかる費用

部屋の一角にウォークインクローゼットを後付けする場合、比較的軽微な作業になるため、2~3畳程度の広さであれば20~50万円程度でリフォームできます。ただし、床から天井まで壁一面に棚板や引き出しをはりめぐらせたシステム収納の場合は、3畳程度の広さでも50~80万円程度かかることを想定しておきましょう。

造作家具の面積が大きくなるほど、木工事の金額は高くなります。和室をウォークインクローゼットにリフォームする場合は、床から壁、天井とすべてを改修しなければならないため、80万円程度はかかるでしょう。間仕切り壁の移設をともなうリフォームの場合は、さらに金額が上がります。

空室対策の売りになるようにポイントをまとめておこう

ウォークインクローゼットは所有物件のセールスポイントとして、しっかりとアピールするようにしましょう。マイソクの「設備・条件」の欄に忘れず記載することはもちろんのこと、写真はクローゼットの内部(棚板やハンガーパイプ)までしっかりと写るように撮影します。ステージングの要領で、衣類や小物を収納した状態で写真を撮ると、より使い勝手をイメージしやすくなります。

入居希望者へのアピールとして、ただ「ウォークインクローゼットを完備している」というだけでなく、「機能性」「動線」「換気対策」など、所有物件のウォークインクローゼットのスペックをしっかり伝えて、入居者獲得につなげていきましょう。

まとめ

賃貸の入居者に人気のウォークインクローゼット。普通のクローゼットとの違いや人気の理由などをお伝えいたしました。普通のクローゼットや押入れと同様に、湿気がたまりやすいというデメリットはあるものの、リフォーム時に対策を講じることで湿気のリスクは軽減できます。

また、大容量収納の実現は、入居希望者に強くアピールできますので、費用対効果を考えた上で、入居者の心をつかむ機能的なウォークインクローゼットの設置を計画してみてください。
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この記事の監修者

いしわた さとみ
いしわた さとみ

宅地建物取引士/二級建築士/既存住宅状況調査技術者/ホームステージャー

建築設計事務所、不動産会社、建設会社等での勤務を経て、現在は不動産・住宅・建設ライター、住宅営業、建設CADオペレーターとして活動。

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●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。