この記事のポイント
- 地震保険への加入は経済的負担の軽減にもつながります。
- 老朽化の考えられる建物は耐震補強工事を行いましょう。
- 耐震補強工事を行う際は、実績のある業者を慎重に選ぶことをおすすめします!
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目次
いつか起こるかもしれない大地震への備え
日本は「地震大国」と呼ばれているように、この20年を振り返っても1995年1月17日には阪神淡路大震災、2004年10月23日には新潟県中越地震、2011年3月11日には東日本大震災、2016年4月14日・16日には熊本地震と日本各地で地震が起きています。日本のどこに住んでも地震に遭うリスクは考えられるため、大家さんは、建物や入居者を地震のリスクからできるだけ守ることを考えなければなりません。
耐震補強の重要性については以下の記事でも紹介しています。
耐震補強の重要性については以下の記事でも紹介しています。
地震保険への加入
地震への備えのひとつとして地震保険への加入があります。地震保険は、火災保険の付帯保険として提供されており、地震、噴火またはこれらによる津波などを原因とする損害について補償が受けられる保険です。地震などを原因とする損害については、火災保険では補償されないため、大切なアパートを守るためにも地震保険へ加入しておくべきでしょう。
また、賃貸経営を始める際にローンを組む大家さんも多いと思いますが、地震の被害を受けて建物を建て直すことになった場合、それまでのローンと再建築のためのローンを二重に抱えることになる可能性は否めません。
地震保険に加入することで補償を受けられるので、経済的負担の軽減にもつながります。
また、賃貸経営を始める際にローンを組む大家さんも多いと思いますが、地震の被害を受けて建物を建て直すことになった場合、それまでのローンと再建築のためのローンを二重に抱えることになる可能性は否めません。
地震保険に加入することで補償を受けられるので、経済的負担の軽減にもつながります。
耐震補強工事の実施
地震により建物が損壊することをできる限り防ぎ、入居者の生命をできるだけ守るためにも、耐震補強工事を行いましょう。耐震性が衰えた建物になんの対策も行っていない状態で、地震が起こり入居者の生命が奪われた場合、大家さんに莫大な額の損害賠償が命じられる可能性もあるからです。
耐震補強工事について、この記事で詳しく説明していきます。
耐震補強工事について、この記事で詳しく説明していきます。
耐震補強工事の方法と費用
地震に強い建物に変えるための耐震補強工事には、具体的にどのような方法があるのでしょうか。費用も含め、見ていきましょう。
外部補強
建物の外側に補強部材を配置する工事です。RC壁を外側に設けて補強する方法、鉄骨ブレースで建物を支える方法、フレームにより建物を支える方法などがあり、外部補強により建物の耐力と剛性(建物に加わった曲がりやねじれの力に対してゆがまない性質)を向上させることができます。費用は延べ床面積1m2あたり15,000~50,000円程度のことが多いです。
柱の補強
柱の補強には、「強度を増す工事」と「建物のしなやかさを増す工事」があり、それぞれ以下のような方法があります。
柱の強度を増す工事には炭素繊維シートや鋼板を柱に巻く方法や、耐震用補強金物を使っての補強工事をする方法があり、費用の例として、炭素繊維シートは1m2あたり6,000~9,000円がかかります。地震の力に抵抗する力を強め、 地震が起きても建物が崩れにくい状況を作ります。
建物のしなやかさを向上させる工事には、柱際、梁上、梁下などに「耐震スリット」と呼ばれる緩衝材を設ける方法があり、地震による振動を逃がし、建物が倒壊するのを防ぐ効果があります。
柱の強度を増す工事には炭素繊維シートや鋼板を柱に巻く方法や、耐震用補強金物を使っての補強工事をする方法があり、費用の例として、炭素繊維シートは1m2あたり6,000~9,000円がかかります。地震の力に抵抗する力を強め、 地震が起きても建物が崩れにくい状況を作ります。
建物のしなやかさを向上させる工事には、柱際、梁上、梁下などに「耐震スリット」と呼ばれる緩衝材を設ける方法があり、地震による振動を逃がし、建物が倒壊するのを防ぐ効果があります。
開口部の補強
建物の窓、出入り口などの開口部を設けると、建物の耐震性はどうしても弱くなります。とはいえ、採光、通気、出入りなどの都合があり、建物に開口部を設けないわけにはいきませんので、必要な開口部は残して補強工事を行いましょう。
開口部の耐震補強の方法としては、以下の方法があります。
費用は、たとえば窓の数や大きさを減らす方法には1か所あたり約140万円、耐震補強フレームを設置する場合は1か所あたり約100万円かかります。
開口部の耐震補強の方法としては、以下の方法があります。
費用は、たとえば窓の数や大きさを減らす方法には1か所あたり約140万円、耐震補強フレームを設置する場合は1か所あたり約100万円かかります。
重量の軽減
屋根に重量がある場合、地震の揺れに伴い、建物全体が大きく揺れてしまうことがあります。揺れの強さを軽減するためには屋根の重量を軽くする必要がありますが、金属屋根のガルバリウム鋼板や防災瓦に替えることで屋根の軽量化が可能です。
また、屋根瓦は崩れやすいため、地震によって屋根瓦が地上に散乱し避難の妨げとなることもあります。一方、防災瓦は、瓦どうしを強固に組み合わせることができる構造になっていることから崩れにくい仕組みとなっており、地震の際に地上に散乱する可能性も低くなります。
費用は、面積によっても異なりますが、ガルバリウム鋼板屋根に替える場合で100万円~、防災瓦を使った屋根に替える場合で70万円~が目安です。
また、屋根瓦は崩れやすいため、地震によって屋根瓦が地上に散乱し避難の妨げとなることもあります。一方、防災瓦は、瓦どうしを強固に組み合わせることができる構造になっていることから崩れにくい仕組みとなっており、地震の際に地上に散乱する可能性も低くなります。
費用は、面積によっても異なりますが、ガルバリウム鋼板屋根に替える場合で100万円~、防災瓦を使った屋根に替える場合で70万円~が目安です。
制振工法
「制振」とは、地震による振動や衝撃を和らげ、建物の揺れを抑えるという考え方です。建物の損傷や家具が転倒するリスクなどを抑え、地震の後も住み続けられることを目指します。
なお、超高層建物には制振工法を用いる効果が高いのですが、中低層の物件では効果があまり上がらないと言われています。
制振工法には、建物の柱や壁などにダンパーなどの特殊な装置を用いる方法があり、6~8か所への制振ダンパーの取りつけで費用は100万円程度かかります。また、制振テープを用いる方法がありますが、これは、木造の間柱や柱にテープを貼り付けて制振制を高めるものです。
費用は建物の大きさにもよりますが、20~30万円程度となっています。
なお、超高層建物には制振工法を用いる効果が高いのですが、中低層の物件では効果があまり上がらないと言われています。
制振工法には、建物の柱や壁などにダンパーなどの特殊な装置を用いる方法があり、6~8か所への制振ダンパーの取りつけで費用は100万円程度かかります。また、制振テープを用いる方法がありますが、これは、木造の間柱や柱にテープを貼り付けて制振制を高めるものです。
費用は建物の大きさにもよりますが、20~30万円程度となっています。
免震工法
「免震」とは、建物と地盤を切り離す免震装置を使用することで、地震の揺れを建物に伝えないようにするという考え方です。既存の建物を免震化する「免震レトロフィット」とは、建物の基礎部分に免震装置を設ける方法で、建物の美観や機能を失うことなく安全性を確保することができます。免震レトロフィットの費用は、1坪あたり300万円程度です。
耐震補強工事に対する補助金・助成金制度
前項で説明したとおり、耐震補強工事には多額の費用がかかるものが多く、資金の確保が心配になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
耐震補強工事については、市区町村から補助金や助成金の給付を受けることができる場合もあります。各自治体がさまざまな制度を設けていますが、今回は大阪市の「民間マンションの耐震診断・改修補助制度」についてご紹介します。
耐震補強工事については、市区町村から補助金や助成金の給付を受けることができる場合もあります。各自治体がさまざまな制度を設けていますが、今回は大阪市の「民間マンションの耐震診断・改修補助制度」についてご紹介します。
適用条件
以下の全てに当てはまるマンションが対象です。
・大阪市内にある民間所有の非木造共同住宅(分譲・賃貸とも)
・地階を除く階数が3階以上
・1981年5月31日以前に建築確認を得て建築され、検査済証の交付を受けたものもしくは同証の交付を受けていないが建築基準法関係規定等に適合していることを現地調査の結果を記載した書類等により確認できるものであること
・現に居住している又はこれから居住しようとするものであること
・設計内容について、事前に公的機関の評価・判定を受けているものであること【耐震改修設計、耐震改修工事】
・補助事業者(マンション管理組合を除く。)が、大阪市に住所を有することにより課税される市民税又は法人税並びに補助申請建物の固定資産税及び都市計画税を滞納していないこと【耐震改修工事のみ】
・補助申請建物は地震に対して安全な構造とする旨の特定行政庁による勧告を受けたもので、建築基準法に基づく耐震改修に係る命令を受けていないものであること【耐震改修工事のみ】
・大阪市内にある民間所有の非木造共同住宅(分譲・賃貸とも)
・地階を除く階数が3階以上
・1981年5月31日以前に建築確認を得て建築され、検査済証の交付を受けたものもしくは同証の交付を受けていないが建築基準法関係規定等に適合していることを現地調査の結果を記載した書類等により確認できるものであること
・現に居住している又はこれから居住しようとするものであること
・設計内容について、事前に公的機関の評価・判定を受けているものであること【耐震改修設計、耐震改修工事】
・補助事業者(マンション管理組合を除く。)が、大阪市に住所を有することにより課税される市民税又は法人税並びに補助申請建物の固定資産税及び都市計画税を滞納していないこと【耐震改修工事のみ】
・補助申請建物は地震に対して安全な構造とする旨の特定行政庁による勧告を受けたもので、建築基準法に基づく耐震改修に係る命令を受けていないものであること【耐震改修工事のみ】
申請方法
申請するには、「大阪市都市整備局 耐震・密集市街地整備 受付窓口」に事前相談を行わなければなりません。申請書類などはこの窓口にあるほか、インターネット上でもダウンロードすることができます。また、建物の外観が確認できる写真や建築確認済証など、必要書類についてもインターネットに掲載されているので確認しておきましょう。
補助額
補助額については以下のとおりとなっています。
耐震診断(補助予定棟数:11棟)
補助率: 診断に要する費用の2/3以内
限度額: 200万円/棟
耐震改修設計(補助予定棟数:2棟)
補助率: 改修設計に要する費用の2/3以内
限度額: 300万円/棟
耐震改修工事(補助予定棟数:1棟)
補助率: 改修工事に要する費用の23%以内
限度額: 3,000万円/棟
なお耐震診断、耐震改修については別途床面積による補助額の上限があります。
耐震診断(補助予定棟数:11棟)
補助率: 診断に要する費用の2/3以内
限度額: 200万円/棟
耐震改修設計(補助予定棟数:2棟)
補助率: 改修設計に要する費用の2/3以内
限度額: 300万円/棟
耐震改修工事(補助予定棟数:1棟)
補助率: 改修工事に要する費用の23%以内
限度額: 3,000万円/棟
なお耐震診断、耐震改修については別途床面積による補助額の上限があります。
該当する地方自治体に確認しましょう
耐震補強工事や耐震診断に関する補助金、助成金の制度は各自治体によって大きく異なりますので、各自治体のホームページで確認する必要があります。事前相談を行わなければならない場合は、着工や診断実施の前に必ず相談しておきましょう。
※記載の適用条件は記事執筆時点のものとなりますので、申請に際しては必ずご自身でご確認ください。
※記載の適用条件は記事執筆時点のものとなりますので、申請に際しては必ずご自身でご確認ください。
リフォーム会社の選び方
耐震補強工事をすると決まったら、業者選びをしなければなりません。リフォーム会社に依頼するのが一般的ですが、リフォーム会社の種類もさまざまで、初めての場合はどういった業者に依頼すれば良いのか悩んでしまうものです。ここでは、リフォーム会社の選び方についてお伝えしていきます。
複数社を比較してから業者を選ぶ
耐震性を確実に上げるためには、耐震補強工事について優れた実績がある会社を選ぶことが大切です。さまざまあるリフォーム会社の中からそのような会社を選ぶためには、まず、リフォーム会社の情報を集めます。
そして、集めた情報の中から、耐震補強工事を専門とする技術者がいることや、実績があることなどの条件をもとに、2、3社ピックアップしてみましょう。
そして、集めた情報の中から、耐震補強工事を専門とする技術者がいることや、実績があることなどの条件をもとに、2、3社ピックアップしてみましょう。
見積もり内容が明確な業者を選ぶ
リフォーム会社を2、3社ピックアップしたら見積もりを依頼します。リフォーム工事には「定価」のようなものがなく、会社によって工事費用が異なるため、適正価格を把握するため、また、できる限り費用を押さえるためにも複数社の見積もりを比較しなければなりません。ただし、「安い会社ほど良心的」とは限らないので注意が必要です。
手抜き工事や質の悪い資材を使用しての工事を行ったり、安い見積もりを提示しておきながら、後になって追加工事が必要と言い出したりするような会社の可能性もあります。見積もりに含まれている範囲、追加工事が生じる可能性など、見積もり内容をきちんと説明してくれる会社を選びましょう。
手抜き工事や質の悪い資材を使用しての工事を行ったり、安い見積もりを提示しておきながら、後になって追加工事が必要と言い出したりするような会社の可能性もあります。見積もりに含まれている範囲、追加工事が生じる可能性など、見積もり内容をきちんと説明してくれる会社を選びましょう。
まとめ
地震大国と呼ばれる日本での賃貸経営には地震への不安がつきものです。その不安を少しでも軽減するため、大家さんは建物の耐震性を維持していかなければなりません。
たとえ、耐震基準を満たしている建物でも、経年劣化によって耐震性が弱まってしまうこともあるため、定期的に耐震診断を受け、然るべき耐震補強工事を行っていくことをおすすめします。
建物の耐震性は、大切な資産を守るだけでなく、入居者の安全確保にも関わる問題です。資金面での問題もあるかもしれませんが、補助金や助成金をうまく活用しながら、耐震補強工事を進めていきましょう。
たとえ、耐震基準を満たしている建物でも、経年劣化によって耐震性が弱まってしまうこともあるため、定期的に耐震診断を受け、然るべき耐震補強工事を行っていくことをおすすめします。
建物の耐震性は、大切な資産を守るだけでなく、入居者の安全確保にも関わる問題です。資金面での問題もあるかもしれませんが、補助金や助成金をうまく活用しながら、耐震補強工事を進めていきましょう。
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この記事の監修者
河野 陽炎
3級FP技能士
3級FP技能士資格を持つライター、コラムニストとして、生命保険や医療保険、金融、経済などの執筆実績が多い。次々と発売される商品や、改正の相次ぐ税制、法律が1人の生活者にどう影響を与えるかの視点を大切にする。