所有している賃貸アパートは大丈夫?大家さんに伝えたい耐震補強の重要性

2024.01.16更新

この記事の監修者

河野 陽炎

河野 陽炎

【資格】3級FP技能士

所有している賃貸アパートは大丈夫?大家さんに伝えたい耐震補強の重要性

耐震補強工事を検討している方へ、耐震補強の重要性を事例を交えながら詳しくお伝えしていきます。

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目次

耐震補強の重要性

日本は地震大国と言われています。1995年1月17日には阪神淡路大震災、2004年10月23日には新潟県中越地震、2011年3月11日には東日本大震災、2016年4月14日・16日には熊本地震が起きており、日本国内のどこで、いつ地震が起こってもおかしくはありません。

地震で建物が倒壊した場合、大家さんの資産が失われ、入居者の皆さんも住む場所を失うといった影響が出ますが、そのほか、どういったネガティブな影響があるのでしょうか。

地震による建物倒壊で裁判に発展した事例

阪神淡路大震災で、賃貸マンションの一階部分が倒壊し、入居していた人が亡くなった事例(事件番号 平8(ワ)1533号)において、神戸地裁はマンションの大家さんに対し「安全な建物を賃貸すべき義務の違反」と「民法717条の土地工作物責任」があったと認めました。そして、亡くなった入居者のご遺族に対し、合計で1億円以上の損害賠償金を支払うよう大家さんに命じています。

なお、民放717条には次のように規定されています。

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。


上記の判例では、建物の所有者である大家さんに「土地工作物責任」があることが認められています。

耐震補強は建物管理の一部

地震が起こっても大家さんの資産である建物が倒壊したり、入居者の生命が奪われたりすることがないよう、建物の耐震補強を行うことが重要です。耐震補強は建物管理の一部と考え、定期的に点検と補強を行っていくようにしましょう。ここからは耐震補強の具体的な方法についてご紹介します。

まずは、耐震基準を確認

日本で建物を建てる場合は、「建築基準法」をはじめとする法令で規定されたさまざまな基準を守らなければなりません。

「耐震基準」もその1つです。耐震基準は大規模な地震が起こるたびに改正され、特に大きな改正は1981(昭和56)年と2000(平成12)年に行われました。なお、1981年に改正が行われる以前の基準を「旧耐震基準」、改正された後の基準を「新耐震基準」と呼んでいます。

新耐震基準

新耐震基準は以下をクリアできる構造です。旧耐震基準と比較してみます。

新耐震基準
・震度6強~7程度の揺れでも、建物が倒壊・崩壊しないこと
・震度5程度の中規模地震でほとんど損傷しないこと
旧耐震基準
・震度5程度の中規模地震で倒れないこと

新耐震基準が導入された後に発生した阪神淡路大震災では、亡くなられた方のうち建物等の倒壊が原因で亡くなった方が大部分であったこと、そして新耐震基準を満たさない昭和56年以前の建物に被害が集中していたことが明らかになっています。

建築確認済証の交付日を確認しよう

建物が新耐震基準をクリアしているか、そうでないかを確かめるには、「建築確認済証」の交付日を確認しましょう。建築確認済証の公布日が1981年6月1日以降であれば、新耐震基準をクリアしている建物です。

なお、1981年6月1日以降に竣工した建物であっても、建築確認済証はそれ以前に交付されていることも考えられます。そのため、建物の「竣工年月日」ではなく、建築確認済証の交付年月日を確認してください。

耐震性を確認する耐震診断

1981年に建築され、新耐震基準をクリアしている建物も、2021年になると築40年を迎えます。経年劣化が進み、耐震性能が落ちていることも考えられるため、「現在、どれほどの耐震性を保っているか?」を把握するためにも、耐震診断を受けることが大切です。

耐震診断費用の目安

「一般財団法人 日本耐震診断協会」によると、耐震診断費用の目安は以下の通りです。

RC造(鉄筋コンクリート造)で延床面積が1000~3,000m2の場合1m2あたり1,000~2,500円
S造(鉄骨造)で延床面積が1000~3,000m2の場合1m2あたり1,000~3,000円

たとえば、 1戸あたり3LDK(80m2)、15戸のマンションの場合、延べ床面積が1,300m2(共用部分も含めて)と考えると、耐震診断費用は130~325万円と考えられます。

耐震診断の流れ

実際の耐震診断はどのように行われるのか、大まかな流れをご紹介します。

1.耐震診断を行う地方自治体などに相談
市区町村には、耐震診断に関する相談を受け付ける窓口が設けられていることがあります。住民の相談を直接受けていない場合も、ホームページ等で耐震診断が受けられる団体やその連絡先について案内が掲示されている地方自治体もありますので、まずは、相談できる場所や時間を確認しましょう。

2.予備調査
耐震診断の専門家により、建物の設計図書があるか、建物の所在地や現在の用途などの確認、建築物の履歴に関する聞き取り調査、現地調査の可否の確認などが行われます。

3.1次調査
予備調査の内容を現地で確認すること、外観調査、コンクリート強度の調査、建物の現況と設計図書との比較が行われます。

4.2次調査、精密調査
2次調査は1次調査に比べて、より詳細な調査が行われます。精密調査が行われるのはより精度の高い診断が必要とされる場合です。

Is値(構造耐震指標)が0.6未満の場合は要注意

建物の耐震性能を表す数値がIs値(構造耐震指標)であり、次のような計算式で求められます。

Is=Eo(保有性能基本指標)×Sd(形状指標)×T(経年指標)

Eoは、建物が保有する基本的な耐震性能を表します。Eoの算出には、建物の強度や靭性などが考慮されます。Sd(形状指標)は建物の形状、壁の配置バランスなどをもとに算出され、T(経年指標)は経年劣化に関する数値です。Is値が大きいほど、建物が地震に強く安全性が高いことを示します。

・Is<0.3 …倒壊または崩壊する危険性が高い
・0.3≦Is<0.6 …倒壊または崩壊する危険性がある
・0.6≦Is …倒壊または崩壊する危険性が低い

+Is値が0.6以下の場合は、速やかに耐震補強工事を検討しましょう。 +

耐震補強の施工方法と概算費用

では、耐震補強工事にはどのような工事方法があり、費用はどのくらいかかるものなのでしょうか。

基礎の補強

建物の基礎とは、地面と建物を固定する部分のことです。建物を支えると同時に、建物の荷重や、建物に加えられた外力(風や地震による力)をバランスよく地盤に伝える役割を果たしています。

基礎は建物と一体となっていなければ、その役割を果たすことができないので、定期的に基礎部分の状態をチェックする必要があります。基礎部分にひび割れが見られるなど、何らかの不具合がある場合は補強工事を行いましょう。

補強工事の例

・ひび割れの補修
施工方法:建物の基礎のひび割れ部分に樹脂を注入し、強固に固める方法
施工費用:1mあたり1~2万円前後

・炭素繊維シートを使って基礎部分を強化する工事
施工方法:強度の高い炭素繊維シートを基礎の表面部分に貼り付け、耐震性を増す工事
施工費用:炭素繊維シートは1m2あたり6,000~9,000円

・基礎コンクリートの増打ち工事
施工方法:基礎部分にアンカーボルトを打ち込み、コンクリートを充填する工事
施工費用:1m2あたり約4~6万円

土台や柱の修理

建物の土台や柱が腐食しているなら修理をします。シロアリの被害を受けている部分は土台の取り換え、柱の根継ぎ(柱の腐食部分だけを修繕する方法)などを行って修繕します。柱の補強は、強度を増す方法に加えて、建物のしなやかさを増す方法もあります。建物のしなやかさを増す工事により、地震による振動を逃がし、建物が倒壊するのを防ぐという効果が得られます。

土台や柱の修理工事の例

・柱の強度を増すための工事
施工方法:炭素繊維シートや鋼板を柱に巻く方法や、耐震用補強金物を使っての補強工事をする方法も
施工費用:炭素繊維シートは1m2あたり6,000~9,000円

・建物のしなやかさを増すための工事
施工方法:柱際、梁上、梁下などに「耐震スリット」と呼ばれる緩衝材を設ける方法

壁の補強

壁の補強工事にもさまざまな方法があります。

壁の補強工事の例

・壁を増設する工事
施工方法:既存の壁に新しい鉄筋コンクリート壁を増設し補強する方法、柱と梁だけがある部分に壁を増設する方法、鉄骨ブレースを柱と梁に囲まれた部分に増設して壁の強度を増す方法があります。
施工費用:状況や施工内容に応じて変わりますが、鉄筋コンクリート壁の増設1か所につき100万円程度

屋根の軽量化

地震が起こると、屋根が重い建物ほど大きく揺れる傾向があります。重い屋根を軽量化することによって、建物の揺れを軽減することが可能です。

屋根の軽量化工事の例

・屋根材料を変える
施工方法:重量のある瓦を屋根に使用していた場合、軽量瓦やガルバリウム鋼板などに吹き替える方法
施工費用:軽量瓦への葺き替え100万円~、防災瓦への葺き替え130万円~

まとめ

地震大国である日本で賃貸経営をしていくには、建物を地震から守る耐震補強工事がとても大切です。建物の経年劣化により強度が衰える可能性や、法律の改正も考えられますので、耐震補強工事は建物管理の一部と考え、定期的に点検し、必要であれば補修工事を行いましょう。中でも、築年数が古い建物、特に1981年6月1日に新耐震基準が施行される前に建築確認を受けた建物は、早急に耐震診断を受け、補強工事を行うことが必要です。

また、地震で倒壊した建物で、入居者が命を落とすことがあった場合、大家さんに莫大な損害賠償請求が行われることもあります。できる限り地震への備えを行い、入居者と大家さん自身の生命や財産を守っていきましょう。
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この記事の監修者

河野 陽炎

河野 陽炎

【資格】3級FP技能士

3級FP技能士資格を持つライター、コラムニストとして、生命保険や医療保険、金融、経済などの執筆実績が多い。次々と発売される商品や、改正の相次ぐ税制、法律が1人の生活者にどう影響を与えるかの視点を大切にする。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。