公務員でもアパート経営を相続して不動産投資は可能!始めるための条件とは

2024.03.15更新

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

公務員でもアパート経営を相続して不動産投資は可能!始めるための条件とは

兼業禁止の公務員でも、一定の基準を満たせばアパート経営は可能です。兼業違反にならないアパート経営の方法をご紹介します。

目次

公務員のアパート経営は兼業違反になる?

国家公務員ならびに地方公務員は、以下のように法律で兼業(副業)が禁止されています。なぜなら、公務員には「職務に専念する義務」があるためです。公務員は、勤務時間および職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用いるよう定められています。

国家公務員法第103条

職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(営利企業)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

地方公務員法第38条

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(営利企業)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則等で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

ただし、国家公務員ならびに地方公務員でも、一定の基準を満たす場合には兼業が認められる旨があわせて規定されています。

公務員がアパート経営で違反にならないためのポイント

「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」に、公務員の兼業についての細かな基準が記されています。公務員の兼業が許可される「一定の基準」とは何か、公務員がアパート経営を行っても違反にならないためのポイントについてご説明します。

5棟10室基準

アパート経営の収入は、不動産所得として扱われ所得税が課されます。不動産所得には5棟10室基準というものがあります。この基準を超えるアパート経営を行った場合、税制上、事業規模とみなされるのです。

人事院規則においても、「独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること」「独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること」は自営とみなすと規定されています。この基準未満であれば、アパート経営を行ってもよいと解釈できます。

アパート経営収入

アパート経営による収入についても、人事院規則において不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらをあわせて行っている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合に自営とみなすと規定されています。この基準未満であれば、アパート経営を行ってもよいと言えます。

管理業務

公務員の職務に専念する義務の確保のため、人事院規則には入居者の募集、賃貸料の集金、不動産の維持管理等の不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務を事業者に委ねることなどにより、職務に支障が生じないことが明らかであればよいとされています。管理業務は管理会社に委託をすることが望ましいでしょう。

一定の基準を超えてしまう場合、申請・許可が必要

先にご説明した一定の基準を超えて自営とみなされるような場合は、申請をして許可をもらう必要があります。

条件を満たさない場合はどうなるの?

一定の基準を超えてしまい、先の条件を満たさないようなアパート経営の場合、以下のような添付書類を添えて、自営兼業承認申請書を提出・申請します。くわしくは、上長または総務の窓口に相談されてみるとよいでしょう。

添付書類

・不動産登記簿の謄本
・賃貸契約書の写し(家賃収入額がわかるもの)
・不動産管理会社に管理業務を委託する契約書の写し など

許可が下りやすいケースとは?

許可を得られやすいケースとして、アパートを相続取得した場合が挙げられます。相続は誰にでも生じる可能性があるからです。相続でアパートを取得しないようにする規定設置や、取得したことに対する退職勧奨などは行き過ぎた対応となります。アパートを相続する可能性がある場合には、あらかじめ上長または総務の窓口へ早めに相談しておくとよいでしょう。

また、転勤などで環境の変化が生じた場合(現在の住まいが空き家になるため賃貸に出す場合など)も許可が下りやすいと言えますが、そもそも一定の基準を超える可能性は低いはずです。

「アパートを相続取得した場合」および「転勤などで環境の変化が生じた場合」以外のケースは、許可が下りにくいと考えておきましょう。許可なく一定の基準を超えるアパート経営を行った場合、減給や免職の可能性もあるので注意が必要です。

公務員がアパート経営を始める前に知っておくべき「大家業」

公務員の方がアパート経営を始める際のメリット・デメリットについてご説明します。

公務員がアパート経営を行うメリット

公務員がアパート経営を行うメリットとして、アパートローンを借りる際に有利である点が挙げられます。アパートローンは事業性融資であるため、主にアパート経営の事業計画の妥当性が審査されます。

しかし、事業計画が必ずしも予定どおりに進むとは限りません。突発的に支出が必要となった場合、対応できる収入や資産があるかどうかなども確認されます。その点、公務員は景気に左右されず安定した収入を得られる可能性が高いため、有利な条件でアパートローンを借りやすいでしょう。

また、公務員の場合、管理業務は自分で行ってはいけないルールになっているため、管理会社に委託することになります。つまり、最初から管理会社に委託する前提で計画を立てることになるでしょう。逆に考えれば、手間をかけずにアパート経営ができると言えます。

公務員がアパート経営を行うデメリット

公務員がアパート経営を行うデメリットとしては、事業規模を拡大しづらいという点があります。一定の基準を超えるアパート経営には許可が必要です。相続にともなわないアパート経営を行いたいと思っても、一定の基準を超える場合は許可が下りにくいでしょう。

経営拡大も視野に入れるなら、退職までは一定の基準内でアパート経営を行い退職後に拡大するなど、長いスパンで計画を立てていく必要があります。

管理会社の検討をすることも重要!

公務員は自分でアパート経営における管理業務を行うことができません。管理会社と一口に言っても、委託できる管理業務の範囲や料金はさまざまです。

まずは、相続予定のアパートの管理を行っている管理会社について、業務範囲や料金を確認しておきましょう。そのうえでほかの管理会社についても調べ、自分がアパートを相続することになった場合、どの会社に管理業務を委託するのか、比較検討しておくとよいでしょう。

まとめ

公務員として働いている方でもアパート経営は可能ですが、法律で「職務に専念する義務」が規定されているので、その範囲には限りがあります。しかし、一定基準内なら許可申請不要でアパート経営を行えますし、相続によりアパートを取得した場合は許可を受けやすいという特徴があります。

アパートを相続する予定がある場合は、一定基準内かどうかを確認し、基準に収まらないようであれば上長などに相談しておくと安心です。また、相続するまでの期間は、管理会社の選定も含めてアパート経営のビジョンを考えておくのも有益でしょう。何ごとも早めに対策を講じておくことが、アパート経営成功のコツです。

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

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