賃貸物件が事故物件になったら大家さんがすべき対処法や客付けを解説します

2024.11.18更新

この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

賃貸物件が事故物件になったら大家さんがすべき対処法や客付けを解説します

将来所有物件が事故物件になってしまったら、と不安を感じている大家さんに向けて具体的な対処法や客付けの方法を解説します。

所有物件が事故物件になってしまったら…
大家さんとしてとるべき対処方法や手順をおさえておきましょう!

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目次

所有物件が事故物件になる可能性はゼロではない

自分の所有物件で入居者が自殺するなどして事故物件になるとは想像していない方も多いでしょう。もちろん、そう頻繁に起こることではありませんが、事故物件になってしまう可能性はゼロではありません

厚労省のデータによると、平成30年の自殺者数は2万840人で、自殺した場所は「自宅」が59.2%と圧倒的に高い結果となっています。自殺以外にも、所有物件で殺人事件が起こってしまう可能性もあるでしょう

ちなみに、警察庁のデータによると令和2年の殺人事件の件数は929件となっています。

事故物件とは

そもそも事故物件とはどのような物件のことをさすのでしょうか?事故物件には明確な定義があるわけではありませんが、基本的には入居者が亡くなった物件と考えるとよいでしょう。大きく分けると「殺人」「自殺」「自然死」の3つに分けられます。

とはいえ、とくに3つ目の自然死の場合まで事故物件と考えるべきかというと難しい問題になります。最終的に、事故物件かどうかは、住む人が「もしそのことを知っていたら住まなかった」という場合に、損害賠償できる心理的瑕疵に該当するかどうかで判断されると考えるとよいでしょう

自然死については半年以上経過した場合には告知義務はないとする判例もあります。

所有物件が事故物件になった際の対処法

実際に所有物件が事故物件になってしまった場合、どのような手順で処理していくとよいのでしょうか?具体的な流れは以下のようなものです。

1. 警察と保証人や相続人に連絡

まずは警察と保証人、相続人に連絡をします。入居者が亡くなっても賃貸借契約は継続され、その権利は相続人に移ることになります。また、入居者の部屋に勝手に入るとトラブルに発展する可能性があるので、警察と保証人に連絡することは必須です

2. 賃貸契約の解約手続きを行う

警察や保証人、相続人に連絡して残置物の処理など済ませたら、相続人に対して賃貸契約の解約手続きを行います。敷金に残額がある場合には相続人に対して返還しなければなりません

3. 損害賠償について遺族と話し合い

入居者の死亡により新しい入居者が決まらなかったり、家賃を減額しなければならなかったりなど、賃貸経営にマイナスの影響があった場合、相続人に対して損害賠償できる場合があります。入居者の過失など、弁護士に相談して手続きを進めましょう。

4. 室内清掃を行う

新しい入居者募集に向けて、室内清掃を行います。汚れがひどい場合や悪臭がする場合は、特殊清掃業者に依頼するのが一般的です

また、事故物件となってしまったことにより物件価値が下がってしまうことも珍しくありません。その場合は、空室対策を目的として付加価値を加えるようなリフォームを検討してもよいでしょう。

供養(お祓い)を行うこともある

とくに、自殺や殺人の場合、新しく入居者を募集する前に供養を行うことも考えるとよいでしょう。ちなみに、お祓いをお願いする時の宗教や宗派については、とくに故人と関係のあるものでなくても問題ありません。ちなみに、法要時の写真を撮るなどして、お祓いしたことの証明にするケースもあります。

5. 客付けを開始する

準備が済んだら客付けを開始しましょう。自殺や殺人事件により事故物件となった場合にはそのことを告知する必要があります。入居者が決まらないからといって、告知しないまま入居させてしまった場合、損害賠償請求されることもあるため必ず告知してもらうようにしましょう

既存入居者への対応も忘れずに

事故物件となってしまった物件と同じアパートやマンションの、ほかの部屋の既存入居者の方にも事情を説明するようにしましょう。

自分が住んでいる部屋でなくとも、同じ建物内で亡くなった方がいることを気にする方もいらっしゃいます。なお、中には賃下げ交渉や退去費用を請求されることもあるかもしれませんが、基本的には対応する必要はありません

所有物件が事故物件になった時にかかる費用

所有物件が事故物件になってしまった場合、残置物処理や室内清掃(特殊清掃)など、事後の処理費用が必要になります。事故の状況によっても異なりますが、おおよその相場は以下のとおりです。
残置物処理5,000~15,000円/m2
室内清掃(特殊清掃)クロス張替え1,000~2,000円/m2
フローリング張替え3,000~4,000円/m2
畳の交換8,000~12,000円/畳
間取り費用相場
1R・1K・1LDK10~30万円
2DK・2LDK15~50万円
3DK・3LDK20~70万円
4DK・4LDK25~90万円
遺体発見までに時間がかかったケースなどでは、より高額な費用がかかることも多いです。場合によっては数百万円の費用が必要になることもあるでしょう。

孤独死保険を検討しよう

事故物件になってしまうと次の入居者が決まりにくくなるだけでなく、その後始末に大きな費用がかかってしまいます。そこで、孤独死保険の利用を検討してみるとよいでしょう。

孤独死保険とは、所有物件内で発生した入居者の死亡事故で生じた「遺品整理費用」や「原状回復費用」、事故後の「家賃損失」について補償を受けられる保険です。

補償内容や補償額は、利用する商品や契約内容によって異なりますが、おおむね原状回復費用で100~200万円程度、家賃損失費用について100~200万円程度(それぞれ負担した額を上限とするのが一般的)といった形になっていることが多いようです。

また、家賃損失については家賃補償保険に加入することで保証を受けることもできます。家賃補償保険は大家さん向けの保険で、孤独死に限らず入居者の死亡や火災や落雷などの災害などで家賃損失が生じた場合に補償を受けられるものです。

災害などにより家賃を受け取れなくなった場合に、その期間分の家賃(最大6か月など上限あり)の補償を受けられるほか、入居者が亡くなっているケースでは孤独死保険と同様、原状回復費用の補償を受けられます

事故物件の客付けはどのように行えばいい?

事故物件になってしまった後は、客付けが難しくなるものです。ここでは、事故物件の客付けで工夫できるポイントをご紹介していきます。

家賃を下げる

似た条件で事故物件とそうでない物件があった時、わざわざ事故物件に住みたいと思う人は少ないはずです。しかし、家賃が安ければ事故物件に住みたいという人はいます。事故物件になってしまった部屋については、相場よりやや安い価格設定にすることを検討してみるとよいでしょう

初期費用を下げる

家賃を下げる以外の方法として。敷金礼金を0にしたり、フリーレントを導入したりするのもおすすめです。こちらも、部屋を探している人に向けて、事故物件でない物件よりお得に住めるということをアピールして客付けするものだと考えるとよいでしょう。客付けが難しい場合には家賃を下げるのと組み合わせて行うのも1つの方法です。

リフォームする

リフォームすることで空室対策することもできます。上記でも少し触れましたが、単に原状回復するためのリフォームではなく、付加価値を付けるリフォームも検討するとよいでしょう

たとえば、最近では賃貸住宅でも壁付けキッチンではなく対面キッチンが好まれる傾向にありますが、古い賃貸物件でもこうしたニーズにマッチしたリフォームを実施することで空室対策とするのです。

大掛かりなリフォームとなると大きな費用がかかってしまうため、空室対策として有効なのか、長期的に見て家賃や初期費用を下げるのとどちらがより効果的なのか、慎重に判断することをおすすめします

建て替えをすれば、より入居者の心理的瑕疵が下がります。

リフォームではなく、建て替えをするのもおすすめです。新しい建物として建て替えられることで、事故物件特有の不快感を感じにくくなる方も多くいます。

さらに、ハウスメーカーによるデザイン性の高い物件に建て替えることで、空き室対策に繋がることも。事故物件による建て替えを検討している方は、まずはプラン一括請求をしてみましょう。

ただし、事故物件を建て替えても、資産価値は変わらず告知義務も同じように課せられる点には注意が必要です。

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告知義務

事故物件となってしまった物件については、契約時の重要事項説明でそのことについて告知する義務があります。とはいえ、冒頭でお伝えしたとおり、何が事故物件なのか明確な決まりはありません。

とくに、自然死の場合は半年ほど経過した後は告知しなくてもよいといった判例があることもあり、半年待ってから客付けを行うことも1つの方法です

まとめ

所有物件が事故物件となってしまった時の対処法などお伝えしました。自分の所有物件が事故物件になってしまう可能性はゼロではありません。

いざ事故物件になってしまったら、残置物処理や清掃などお金のかかる手続きが必要なのに加え、事故後の客付けが難しくなるのが一般的です。

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逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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