【サブリース契約の実態】トラブルの原因や問題点と対策を解説します

2024.06.28更新

この記事の監修者

キムラ ミキ
キムラ ミキ

AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

【サブリース契約の実態】トラブルの原因や問題点と対策を解説します

賃貸経営でサブリースの使用を検討している方に、トラブルの理由を紐解きながらトラブル回避のポイントを紹介していきます。

トラブル回避のためには問題点を把握することが大切!
客観的な意見をプロに聞いてみるのもいいでしょう。

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目次

そもそもサブリースとは?仕組みを解説

サブリースとは、簡単にいえば転貸借のことです。サブリース会社が大家さんから賃貸物件を借り上げて、サブリース会社が入居者募集などの賃貸管理を行い、入居者から家賃収入を得ます。

大家さんは、サブリース会社から入居率に関わらず、本来の家賃から一定の額を差し引いたサブリース家賃の支払いをうけることを保証してもらえます。サブリースは、賃貸経営のリスクである空室リスクを回避することができる手段のひとつです

サブリースのメリット

サブリースの一番のメリットは、空室リスクを回避できることです。サブリースを活用しない場合と比較すると、家賃収入は減少することになりますが、空室があってもサブリース契約に定められた一定の収入を得られることは大家さんにとって大きなメリットと言えるでしょう。

また、入居者募集や賃貸契約の締結、家賃回収、入居者対応などの管理業務をサブリース業者に代行してもらえることになるため、手間隙が省けることも大家さんにとってのメリットといえます。

なお、上記のように入居に関する管理業務はサブリース業者が行ってくれることになるため、オーナーは入居者の入退去時にかかる費用などの計上が不要となり、確定申告にかかる収支管理が簡便になるという点もメリットのひとつでしょう。

サブリースでよくあるトラブル

上記のような問題以外にも、国土交通省による「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査結果」を見ると、サブリースに関するトラブルや問題点が多く挙げられています。具体的にどのようなトラブル事例があるのか、ご紹介いたします。

サブリース家賃の減額を求められた

国土交通省による「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査結果」でも、「サブリース業者から、サブリース契約途中での大幅な家賃減額等の予期せぬ条件変更を求められた」というトラブルは多いという結果になっています。しかし、多くの場合、サブリースの契約書には、「家賃の見直しは〇年ごとに行える」等の文言が盛り込まれているものです

また、サブリース家賃を減額しない条件として特定の業者によるリフォームを義務付けている契約内容となっていることもあります。賃貸物件も老朽化していけば、入居率が下がることも考えられるため、家賃見直し(減額)はサブリース契約を締結していなくても起こりうる話です。

サブリース家賃の減額を求められたことに起因したトラブルは、大家さんが契約内容をよく確認しなかったために生じたといってもよいでしょう

解約を申し出たら違約金を求められた

サブリース家賃の減額を求められるなどしたため、サブリース契約の解約を申し出たら違約金を求められるといったトラブルもあります。サブリース契約は、サブリース業者としては転貸借を目的としています。

しかし、マスターリースにおいて、賃貸物件の貸主は大家さんであり、借主はサブリース業者です。この関係性についての規定を定めているのが、借地借家法です。

借地借家法は、借主保護の立場に立っています。そのため借地借家法では、貸主は「正当の事由があると認められる場合でなければ解約の申し入れをすることができない」と定めています。つまり、大家さんはマスターリースにおいて、サブリース業者よりも弱い立場にあります

違約金は、いわば立ち退き料にあたると考えるとわかりやすいでしょう。この内容もサブリースの契約書に盛り込まれているものです。大家さんが契約内容をよく確認しなかったために生じたといってもよいでしょう

メンテナンス業者の変更を拒まれた

サブリース家賃を減額しない条件として、特定の業者によるリフォームを義務付けている契約内容となっていることもあります。その特定の業者による見積もりが高額であり、メンテナンス業者の変更を申し出ても、サブリース業者と特定のメンテナンス業者が提携関係にあるため、拒まれるケースもあるでしょう。もちろん、この内容についても契約書には盛り込まれています

サブリース会社が倒産した

サブリース業者が倒産してしまうと、当然ながら、サブリース家賃の保証もなくなってしまいます。過去、サブリース会社が倒産した事例もあります。

その会社は、周辺相場家賃よりも高い家賃設定としており、入居率が低いにも関わらず、賃貸物件の建設費用をサブリース家賃の支払いに充てていく自転車操業を繰り返していました。その後、アパートローンの不正融資も明るみになったことで、新規建設が見込めなくなり、倒産に至りました。

これは、サブリース会社そのものが問題ではありますが、サブリース会社の健全性、物件スペックと家賃設定のバランス、周辺類似物件との差別化および競争力など、本来大家さんが賃貸経営をスタートする際に検証すべき点を軽視してしまった結果といえます

サブリースのトラブル:原因と問題点

サブリース自体は、賃貸経営における空室リスクを回避することができるひとつの有益な手段ですが、活用する際には、トラブルの原因と問題点を正しく理解しておく必要があります。

サブリース会社の説明が不足している

サブリース会社との契約締結の際、大家さんへの説明不足がトラブルの原因になっていることがあります。たとえば、保証される賃料やサブリース契約の解除についての説明です。

物件の経年劣化や周辺環境の変化によって賃料相場が変動する可能性があるのは当然のことで、そのため、サブリース契約では一般的に、定期的にサブリース賃料の見直しを定めています。しかし、この点について契約締結の際に説明が不足していたことからトラブルに発展してしまうことが少なくありません。

また、サブリース契約は、大家さん側から簡単に解除することは難しいケースが多く、なぜなら、借地借家法では、賃借人であるサブリース業者を保護する方向に働くためです。契約期間の途中で大家さん側から解約を申し出ると違約金が発生する場合もあり、このことでトラブルになることがあります

なお、サブリース会社からの契約期間の途中で解約を申し出る場合には、違約金などの規定がないことが一般的です。

サブリース会社は倒産する可能性がある

サブリース会社が倒産してしまうと、サブリース契約による家賃保証はなくなります。既に入居者がいる場合、サブリース会社と入居者の間で交わされた賃貸借契約は、大家さんに引継がれます。満室経営が続いていた場合には自主経営としての建て直しの道はありますが、入居率が低い場合、当然、賃料収入が減少します。

そのほか、サブリース会社が入居者から受け取った敷金、礼金等は引き継がれない可能性が高いため、入居者が退去する際に敷金の返金が生じた場合には、大家さんの自己負担が生じる場合もあります。

サブリースのトラブル:回避のための対策

メリットがあるものの、トラブルに発展してしまうこともあるサブリース。トラブル回避のためにおさえておきたい対策についてお伝えしていきます。

1. 家賃相場を知る

既にご説明をした通り、そもそも、サブリース会社から大家さんに支払われるサブリース賃料は、サブリース会社が入居者から受け取る家賃よりも下回ることになります。もしも、サブリース賃料が、サブリース会社が入居者から受け取る家賃を上回ると提案されたら、サブリースについてほんの少しの知識があれば疑問を抱くことはできるでしょう。

前述したシェアハウス業者の場合、入居者から受け取る家賃は、周辺のワンルームマンションと同額程度、もしくは少し上回る金額に設定されていたケースがありました。

これは、高度な不動産知識がなかったとしても、周辺の不動産会社を見て回るだけでも収集できる情報です。その情報を得ただけでも、シェアハウスとワンルームマンションで同額程度の家賃設定で入居者は集まるだろうかと考えることはできたかもしれません。

つまり、このトラブルを回避するためには、ほんの少しでも主体的に情報収集をしてみるという姿勢が大切であったということになります

2. 契約内容を理解する

一般的なサブリース契約では、数年ごとにサブリース賃料の見直しを行う旨が規定されています。「30年家賃保証」とうたっているものの、2年ごとにサブリース賃料の見直しを行う旨が明記されています。

サブリースの活用有無を問わず、賃貸物件は永久に新築であり続けることはできません。経年劣化とともに、賃貸物件の魅力が低下することにより、賃料の引き下げを行わなければ入居者が集まらない時期が来ることも十分に考えられることです。

また、賃貸需要の変化が生じる可能性もあるでしょう。そのため、サブリース契約において、数年ごとにサブリース賃料を見直す旨が規定されていることは、問題点ではなく当然のことと言えます。

つまり、このトラブルを回避するためには、まず契約内容を確認し、数年ごとにサブリース賃料の見直しがあることを知っておくということが大切です。そして、その契約内容を踏まえ、数年ごとにサブリース賃料が減少する事業計画でもキャッシュフローが悪化しないかをあらかじめシミュレーションしておくことで、トラブルに巻き込まれることを回避することができたかもしれません

そもそも「30年家賃保証」とは

「30年家賃保証」といった宣伝文句は、先ほどお伝えしたシェアハウス業者以外のサブリース会社も使っています。「30年家賃保証」に類似する宣伝文句が使われていても、当初提案されたサブリース賃料の金額を30年に渡って同額で保証を受けられることに、まず疑問を持ちましょう。

3. 賃貸経営のプランをきちんと考えておく

賃貸経営を検討するのであれば、大家さん自ら主体的に賃貸物件周辺の賃貸需要や家賃相場などの情報収集を行い、長期的な事業計画を練りましょう。その事業計画作成が自分一人では難しい場合、専門家などの第三者のサポートを受けることも考えておきましょう。中には専門家への相談料がかかることを懸念する方もいると思います。

しかし、専門家への相談料を渋り、専門家への相談料を遥かに超えるコストをかけて甘い考えのままに賃貸経営を行い、頭を抱える事態を迎えてしまってからではあとの祭りです。

4. その他の保証サービスも検討する

サブリースの他にも、大家さんをフォローするサービスは様々なものがあります。自分にあったサービスを選びましょう。
【賃貸経営での保証サービスの種類】
管理委託賃貸経営にかかる管理業務を代行してくれる委託サービス
滞納委託滞納家賃の回収を代行してくれる委託サービス
空室補償月々定額の補償料を支払うことで、空室が生じた場合には補償額を受け
取ることができるサービス。サブリースと異なり、礼金等の収入は大家
さんが受け取ることができます。

サブリースは一時的なものとして考えることが大切

賃貸経営を行う際、”サブリースありき”で事業計画を考えることはやめましょう。じっくりと練り上げた事業計画をフォローする、一時的なものとしてサブリースの検討を考えておく方が無難です。

サブリース契約をする際は注意が必要!

ここまでサブリースのトラブルについてお伝えしてきました。サブリースを活用することを選択した場合には、トラブル回避のためにも契約書をしっかり確認することが重要です。

まず、サブリース賃料については確認すべき項目のひとつですが、サブリース賃料は、サブリース会社独自の基準で金額設定を行うため、周辺の家賃相場とは関係なく設定される場合があります。

大家さん自ら、周辺の家賃相場をチェックしたり、第三者に意見を伺ったりしながら、納得した上でサブリース契約を行いましょう。家賃保証を行わない期間である免責期間はサブリース会社によって設定が異なるので、こちらも合わせて確認が必要です。

また、サブリース契約は、契約期間途中の大家さんから、契約の解約を申し出る際には違約金が発生することが一般的です。契約期間と契約更新について、どのような取り決めになっているか確認することをおすすめします。そのほか、詳しくはこちらの記事を参照ください。

よくある質問

こちらの章では、サブリースに関するよくある質問をまとめています。
サブリース新法でトラブルが減る可能性がある?
サブリース新法によって、「誇大広告の禁止」、「不当な勧誘行為の禁止」、「特定賃貸借契約締結前の重要事項説明」がサブリース会社に求められることになります。そのため、サブリースのトラブル減少が期待されています。詳しくはこちらの記事を参照参照ください。

サブリース会社を選ぶときのポイントは?
サブリースでのトラブルを避けるためにも、良いサブリース会社を選定する必要があります。経営状況は安定しているか、賃貸管理など過去の実績といったポイントに気を配りながら選定することをおすすめします。詳しくはこちらの記事を参照参照ください。
サブリースのコストに建築費も含まれている場合がある?
サブリースは、入居率に関わらず家賃保証を行うことに加えて、賃貸管理業務も代行するなどコストが多くかかるため、アパート建築業者が行うサブリースの中には、あらかじめ建築費にサブリースのコストを見込んである場合があります。賃貸物件の建築に、サブリースの活用が必須条件になっている場合、同レベルの賃貸物件と建築費用などを比較しておきましょう。

まとめ

サブリースは、大家さんをフォローする有益な仕組みです。しかし、その内容やメリット・デメリットを十分に理解しないままに甘い考えで活用すると、トラブルに巻き込まれる可能性があります。大きな資金をかけて行う賃貸経営だからこそ、業者の勧めを鵜呑みにせず、自ら慎重にじっくりと検討した上で取り組むことが大切です。

トラブル回避のためには問題点を把握することが大切!
客観的な意見をプロに聞いてみるのもいいでしょう。

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この記事の監修者

キムラ ミキ
キムラ ミキ

AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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