アパートのリフォームを検討中の大家さんに、リフォームローンの基礎知識をご紹介します

2023.12.19更新

この記事の監修者

戸崎 いずみ

戸崎 いずみ

【資格】2級FP技能士/住宅ローンアドバイザー

アパートのリフォームを検討中の大家さんに、リフォームローンの基礎知識をご紹介します

管理物件のリフォームを検討している大家さんに、リフォームローンの申込方法や必要な手続きについてご紹介します。

目次

管理物件の修繕計画は立てていますか?

ご自身の管理物件の修繕計画は立てていますか。アパートなどの賃貸物件について、どのような工事がいつごろ必要になるのか、その工事にかかる費用はどのくらい見込まれるのかをあらかじめ考えておきましょう。

国土交通省住宅局の調査結果

国土交通省住宅局の行った「民間賃貸住宅の大規模修繕等に対する意識の向上に関する調査検討報告書」によると、長期修繕計画を作成している大家さんの内、94.1%の方が長期修繕計画に基づき計画的・定期的な修繕を行っていることがわかっています。

反対に、長期修繕計画を作成していなかった大家さんの修繕の実施状況を見てみると、修繕を「定期的に実施」している割合は 3.8%で、「必要に応じて実施」(46.5%)とあわせても、修繕を実施している割合は50.3%でした。

さらに、長期修繕計画に基づく修繕を実施した大家さんが感じている計画的に修繕を実施した効果を見ると、「家賃水準を維持できた」が 42.8%で最も高く、次いで、「高い入居率を確保できた」(39.3%)、「長期にわたり住宅の性能が維持できた」(30.4%)と続きます。

長期修繕計画を立てましょう

長期修繕計画を作成することによって、管理物件の修繕が必要な時に計画的に備えられるのが大家さんにとってのメリットだと言えるでしょう。リフォームローンを利用する際にも、外壁塗装などの大規模修繕を計画的に行うにあたって長期の修繕計画を立てるのが重要です。

リフォームローンでできること

リフォームローンでできることは、賃貸を目的としたアパートなどのリフォームに必要な工事資金をまかなうことです。修繕積立金など、リフォームのためにあらかじめ用意していた現金資金が不足した場合などに検討されます。

リフォームローンは具体的に、賃貸物件の下記の工事に利用されるのが一般的です。ただし、金融機関によって戸建賃貸やアパート併用の貸事務所・店舗の部分については適応外になる場合がありますので注意しましょう。

・外装や外壁、屋根・屋上の補修・防水・塗装
・バルコニー、共用部(階段・廊下・軒天)の防水、塗装、シート貼替
・給排水管、設備の取替
・内装や賃貸物件内の改修
・水回り設備の交換 など

アパートローンもリフォーム資金に使用できる

賃貸物件を建てるための土地や物件そのものを購入するにあたって組むローンがアパートローンです。アパートローンは賃貸物件のリフォーム資金にも利用できます。

アパートローンの融資を受けるには融資を受ける物件を担保としなければなりません。一般的に担保物件の評価により、融資上限金額が変わります。金利はリフォームローンと比較すると低い水準にありますが、担保の抵当権設定のための登録免許税や諸費用に加えて、融資の条件として火災保険料に加入するなどといったことが必要で、リフォームローンより支払い金額が多くなってしまう場合もあります。

賃貸併用住宅なら住宅ローンも使える

住宅ローンとは自分の住む家の建築や購入費用が借りられるローンのことです。賃貸併用の住宅でも、住宅ローンを使える場合もあります。ただし、原則としてローンを組む本人の居住面積が建物の割合の50%以上である場合に限ります。

リフォームローンの基礎知識

ここまで修繕計画の大切さやその他のローンの概要をご説明してきました。ここでは、リフォームローンについて詳しくご説明していきます。

利用できるローン

リフォームローンはフラット35で有名な住宅金融支援機構に加え、銀行や信用金庫などで独自のリフォームローンの専用商品があります。また、不動産賃貸業として賃貸物件を経営している大家さんには、日本政策金融公庫の普通貸し付けが適応されます。各金融機関の商品によって詳細な内容は異なりますが、ここでは一般的な例をご紹介します。

利用用途

基本的には、本人または同居家族が所有する居住目的の賃貸物件のリフォーム資金です。各金融機関によって内容が異なりますが、挙げられるのは以下の通りです。

・増改築・改修資金、入居者退去後の内装工事を含む
・宅配ボックスなどの付帯設備資金、住宅設備機器などの購入
・太陽光発電設備・高効率給湯器・オール電化システムなど環境配慮型設備の工事資金
・耐震・免震工事資金

利用できる方

住宅金融支援機構の賃貸住宅リフォーム融資(耐震改修)の例を見ていきます。下記は住宅金融支援機構のホームページから引用しています。

次のすべてに当てはまる方

1.返済期間を通じて賃貸住宅を適切に経営し、確実な返済が見込まれる方
2.個人の申し込みの場合で、お客さまの年齢が満65歳以上の時は、後継者と連名によりお申し込みいただける方
3.法人の申し込みの場合で、機構が必要と認める時は、法人の代表者と連名によりお申し込みいただける方
4.リフォーム後の賃貸住宅の所有権をお持ちの方(取得される予定の方を含みます。)。また、リフォーム後の賃貸住宅にかかる土地について、所有権または借地権(地上権または賃借権)をお持ちの方(取得される予定の方を含みます。)
5.個人(日本国籍の方または永住許可などを受けている外国人の方)または法人

ローン申し込み前に金融機関へ確認

ローンを申し込む金融機関によって対象の居住地に制限があったり、パートやアルバイトの方は申し込みができなかったりする場合や、賃貸経営の経験年数や前年度の実績が求められる場合、団体信用生命保険に加入できるか、保証会社の保証が受けられるかなども定められている場合があります。対象の年齢も上限が異なりますので、各金融機関に確認することをおすすめします。

融資金額

金融機関によって異なります。融資の対象となる工事費の80%が限度など割合で規定される場合や、金融機関によって10万円~1,000万円以内などの設定があります。借り入れ単位も1万円単位から10万円単位などさまざまです。

利用期間

6ヶ月以上~最長20年など幅広い範囲で設定されています。金融機関によって利用期間や利用単位は異なり、1ヶ月単位のところや1年単位のところもありさまざまです。

金利

一般的に変動金利が多いです。変動金利は市場の金利水準によって金利が変動します。ずっと金利の変わらない固定金利を選択できるものや、金利を上乗せし特約として固定金利を選択できるローンもあります。

返済方法

返済方法には「元利均等返済」「元金均等返済」の2つがあり、ほとんどの金融機関が元利均等返済を指定しています。元利均等返済とは毎月の支払い金額が一定になる返済方法です。元金均等返済は返済開始当初の返済額が多くなりますが、元金の返済が早く済むのが特徴です。支払期間が同じ期間であった場合は、元金均等返済の方が支払い総額は少なくなります。

リフォームローン利用の流れ

続いて、リフォームローンを利用する流れを見ていきましょう。

1. リフォーム業者に見積もりをもらう

まずは、リフォーム業者に見積もりをもらうことから始めます。各社によって提案内容が異なる場合が多いため、複数の会社に概算の見積もりをもらい、ご自身の納得できる計画を立てましょう。

2. ローン仮申し込み

一部の金融機関ではオンラインやFAXでローンの仮申し込みを行えます。オンラインで申し込みをした後に、金融機関から確認の電話がかかってくる場合があります。なお、仮申し込みの時点で審査があり、この審査に通った後にも別途、本審査があるので忘れないようにしましょう。

3. ローン本申し込み

仮申し込みの審査が通ったらローンの本申し込みができます。リフォーム会社と取り交わした最終見積もりや、工事請負契約書など資金の使用目的を証明する書類や、ご本人の所得を証明する書類などの必要書類を金融機関に提出します。一般的に本申し込みは来店して行うケースが多いですが、郵送やWebで行っている金融機関もあります。

4. 融資承認

融資承認の後、各リフォーム工事会社への振込が必要です。融資の承認までの期間はローンの申し込み時期や金融機関、担保の有無によって異なります。時期については、繁忙期の影響を受ける場合は審査に時間がかかる場合もあります。担保がない審査の方がより早く結果がでる傾向にあります。アパートオーナー向けのリフォームローンは個人向けのローンと比較すると、事業性についても審査が必要であるため、審査の期間は長くなる傾向があります。時期に余裕を持って審査の申し込みをすることがおすすめです。

参考繁忙期などの要因により変動しますが、住宅金融支援機構の場合は、申し込みから審査結果が出るまでに1~2か月程度かかります。

ローン申請に必要な書類

お申し込みの内容や各金融機関によって異なりますので、必ずご確認の上、書類を揃えて下さい。下記が一般的に必要とされる書類です。

・本人確認資料
・所得証明書
・リフォームするアパートの不動産登記簿謄本(発行1ヶ月以内)
・資金使途を証明する書類(最終見積もりや、工事請負契約書など)

リフォームローンケーススタディ

ここからは、具体的にはどんなリフォームローンを組む方がいるのか、ケーススタディのかたちで紹介します。

大規模なリフォームをする時

50歳のAさんは、年収1,200万円の会社員。親から受け継いだアパートの大家をして5年になる。建設時に住宅メーカーがAさんの両親に対して、長期修繕計画と修繕費用の確保について説明をしている。今回は管理会社の修繕計画によって、防水性の回復と外観の向上のため、アパート1棟の屋上防水シート張替、屋根塗装、外壁塗装費、鉄部塗装で1,100万円の大規模なリフォームをすることになったが、計画に基づき貯蓄は普通預金で行っていた。

普通預金で必要な際に引き出しをしていたため不足分があったが、リフォームのために290万円を銀行のアパートリフォームローンに申し込んだ。会社員であるAさんは、現在はボーナスがあるため、毎月の支払い金額を抑えて、ボーナスでまとまった金額を支払う方法が無理のない返済方法であった。そのため、毎月元利金均等返済で変動金利、ボーナス払いも含め、3年契約とした。

大家さんが、後継者に引き継ぐ時

Bさんは60歳、35歳の公務員の娘さんと同居している。現金預金に加えて、年金収入の一部も修繕積立金として貯金している。賃貸物件を娘さんに引き継ぐために、空室対策としてリフォームをすることにした。

居住性の向上のため、3点ユニットバスを独立型に交換、キッチンの幅を拡大する、壁クロス張替といった室内リフォームを実施。一部屋あたり120万円前後かかり、1棟(6戸)720万円のリフォーム資金が必要となり、そのうち200万円をリフォームローンで借りることにした。急な金利変動で支払い金額が変動することないように固定金利が選択できる金融機関を選び、毎月元利金均等返済で5年契約とした。

状況を考慮してローンを検討しましょう

どのリフォームローンを選ぶかはローンを検討される方の状況によって変わります。ご自身の状況をふまえながら比較して、あなたにぴったりの資金計画を立てましょう。

まとめ

リフォームを検討される目的には賃貸物件の「空室対策」や「資産価値の下落対策」など大家さんのご意向があると思います。その目的に沿ったリフォーム内容で資金に不足があった場合にリフォームローンを検討することをおすすめします。具体的には、リフォームをする内容をどの程度にするのか、返済計画には無理はないか、借り主がDIY可能な物件にするなど資金を抑える対策は他にないか、など複数の専門家の意見も参考にしながら検討されるとよいでしょう。

また、リフォームローンは各金融機関や保証会社によって審査があり、審査基準も異なりますので、一つの金融機関で審査が落ちたからといって全ての金融機関で審査が通らないという訳ではありません。複数の金融機関を比較してリフォームローンを検討しましょう。

この記事の監修者

戸崎 いずみ

戸崎 いずみ

【資格】2級FP技能士/住宅ローンアドバイザー

大手信託銀行にて、資産運用・継承相談業務に従事。リクルート住まいカンパニーSUUMOカウンターの店長を務め、住宅相談業務を行う。現在は金融・住宅をメインに執筆活動を行う。

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