大家さんになるなら知っておきたい賃貸経営のメリットとデメリット

2023.11.24更新

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

大家さんになるなら知っておきたい賃貸経営のメリットとデメリット

この記事では、賃貸経営においてのメリットとデメリット、想定されるリスクについて詳しくご説明します。

目次

賃貸経営はメリットばかりって本当ですか?

賃貸経営に興味が湧いたときに、「家賃収入が得られるから収入増が図れる」「年金への不安が解消される」「相続税評価を引下げにつながるため、相続対策が期待できる」などメリットに魅かれて、賃貸経営を始めたという方も多いのではないでしょうか。

確かに、賃貸経営はメリットも多く、ほかの資産運用の手段と比べて、リスクの見通しやその対策を立てやすいと言えます。しかし、賃貸経営に限ったことではありませんが、何事にもメリットばかりではなくリスクやデメリットも存在します。

賃貸経営においても、賃貸物件を取得したらその後は何もしなくても家賃収入が入るというわけではありません。家賃収入が得られる一方で、賃貸物件の管理や修繕等に対する費用、入居者対応などの時間も必要になります。

また、常に満室経営ができるとも限らないため、空室リスクも存在します。自然災害によって賃貸物件が被害を受ける可能性も考えられます。

賃貸経営を始める前に、まずメリットだけではなく、さまざまなリスクやデメリットがあるという可能性にも目を向けて、その内容を理解したうえで賃貸経営をスタートすることが重要です。それによって、リスクに対する対策ができますし、何より「こんなはずではなかった」という事態を防ぐことにもつながります。

一般的に言われる賃貸経営の4つのメリット

一般的に言われる、賃貸経営のメリットについてご説明いたします。

安定収入が期待できる

賃貸借契約は、2年間などの期間を決めて締結されることが一般的です。そのため、契約期間中は毎月家賃収入を得られます。また、入居者にとっては、新たな賃貸借契約の際に、礼金や敷金、仲介手数料などの初期費用がかかります。そのため、契約期間満了ごとに転居することは家計にとって経済的ではありません。

つまり、一度入居者が決まれば、入居者への満足の向上に努めることで、契約更新する可能性が高いと考えられるため、長期に渡って安定収入が期待できると言えます。

生命保険の代わりになる

上記の通り、安定収入が期待できるため、大家さんに万一のことがあった場合、毎月の家賃収入から必要経費を差し引いた利益を家族に対する生命保険代わりに遺すことができます。

アパートローンが完済されていたり、団体信用生命保険に加入していたりする場合には、遺族にアパートローンの返済負担が残ることもありません。

相続税対策になる

賃貸経営は、不動産評価額を引下げることができるため、相続税対策につながります。相続税は、相続財産それぞれの評価額を算出、合計し、基礎控除を行った金額に対して相続税が課されます。そのため、不動産評価額を引き下げることで相続税の軽減が期待できるのです。

【相続税評価による評価額の引き下げ】
土地(宅地)と建物については、不動産に付着する権利によって以下のように評価を行います。

・土地
自用地 路線価方式または倍率方式によって算出
貸宅地=自用地評価額×借地権割合
貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

・建物
自用家屋=固定資産税評価額×1.0
貸家=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

賃貸経営を行う土地、建物は、貸家建付地、貸家としてそれぞれ評価を受けることになります。自用地、自用家屋の場合には自分の権利しか土地建物に付着していません。しかし、貸家建付地、貸家には、それぞれ借地権や借家権といった他人の権利が付着することになるため、自用地、自用家屋の評価額から他人の権利分を差し引いて相続税評価額が計算されます。

【小規模宅地等の特例による評価額の引き下げ】
賃貸経営を行う土地については、条件を満たしていた場合に限り「小規模宅地等の特例適用」を受けることができます。

これは、相続などにより取得した一定の宅地について評価減を受けられる制度です。「被相続人等の貸付事業用の宅地等」は、200m2まで50%の減額が期待できます。

資産が残る

賃貸経営は、現物不動産投資とも呼ばれます。つまり、現物の不動産を活用して資産運用を行う手段ですので、賃貸経営を終えた後も資産が残ります。賃貸物件を自宅として活用したり、売却をして現金に換えたりすることも可能です。

賃貸経営で想定される6つのデメリット・リスク

次に、賃貸経営で想定される6つのリスクについて、ご説明をいたします。

空室・家賃下落の問題

賃貸経営における最大の問題が空室リスクです。家賃収入は、入居者がいてこそ発生するものです。空室が生じれば、その分家賃収入は減少します。そうならないためにも、管理会社や人任せにせず、大家さん目線で入居者満足の向上のための工夫を考えることが大切です。

ただし、入居者満足の向上に努めていても、転勤などのやむを得ない理由で入居者が退去する可能性もあります。退去後、次の入居者が決まるまで空室が発生する可能性にも留意しておきましょう。

なお、後述する建物の老朽化に伴い、空室が目立つようになった場合に、家賃の引き下げを検討しなければならない場合もあります。この場合、入居者が決まっても家賃収入は今までよりも減少します。

賃貸経営の事業計画を立てる際には、空室・家賃下落の可能性も盛り込み、余裕のある事業計画の作成を心がけましょう。

家賃滞納の問題

入居者が家賃を滞納するという可能性もゼロではありません。入居者がいても、予定どおりに家賃収入を得ることができなければ、実質空室と同じです。家賃滞納が発生した場合、経験豊富な家賃回収代行業者に依頼をすることも1つの方法です。

しかし、事前に家賃補償システムやサブリースの活用を検討したり、入居審査時に信用できる入居者かどうかを確認したりして、家賃滞納の問題を回避できるよう努めましょう。

建物の老朽化・修繕コスト

建物は、年数を経ると老朽化します。建物の老朽化をそのままにしておくと、物件価値やその魅力が下がってしまうため、空室リスクや家賃下落リスクが高まります。物件価値を維持するためには、計画的な修繕が必要です。建物だけでなく、設備も経年劣化します。入居者から故障した設備の交換依頼もあるでしょう。

なお、2020年4月より民法が改正され、「賃借物の一部滅失等による賃料の減額・解除」についての規定が盛り込まれます。

従来は、賃借物の一部が滅失した場合、「その割合に応じて、賃料の減額を請求することができる」、「賃借の目的を果たせない時には契約解除ができる」と定められていました。

しかし改正により、滅失の時だけでなく「使用及び収益をすることができなくなった場合」についても、賃料の減額請求や契約解除が可能になります。つまり、賃貸物件の修繕を怠ると、空室リスクや家賃下落リスクが生じる可能性もあると言えます。

そのような事態を回避するためにも、修繕計画とその資金準備を事業計画に盛り込んでおくことはもちろんのこと、突発的な設備交換等にスピーディに対応できる余裕のある事業計画を作成しておきましょう。

地震や火災による災害

自然災害や火災によって、賃貸物件が被害を受けるリスクもあります。賃貸物件が被害を受けると、入居者が安全に住むことができなくなり結果として入居者が退去し、家賃収入が得られなくなる可能性があります。

また、賃貸物件の修復費用も必要になります。そのような事態に備えて、火災保険に加入することはもちろんですが、その内容についてもしっかりと確認が必要をしましょう。

商品によっては、復旧期間中の家賃補償を受けられるものもあります。もしもの時の備えとして十分な内容となっているか理解をしておきましょう。

金利の変動・上昇リスク

アパートローンの借り入れをする際には、金利の変動リスクもあります。金利が上昇すると返済額負担が増加することになり、キャッシュフローが減少します。

アパートローンの借り入れをする際には、複数の金融機関に相談を行い、その中からできるだけ低い金利での融資を選択するようにしましょう。また、金利の固定期間が長いものを選択するのも一案です。

売却時のリスク

将来的に売却を検討するのであれば、売却しようと思った時に、物件条件によっては買い手がすぐに見つからない可能性もあります。

最初から売却を検討してるのであれば、買い手が付きやすい条件の物件取得や賃貸経営の状況を良好に保つ努力も重要なポイントになります。

まずは現状把握をすることから

賃貸経営は、ほかの資産運用の手段と比べて、リスクの見通しやその対策を立てやすい資産運用の手段であるということは、先に述べた通りです。

だからこそ、事前準備が重要になります。賃貸経営をスタートする前にまずは現状把握をしてみましょう。そのうえで、事業計画について以下の内容をチェックしてみましょう。

【賃貸物件】
・賃貸物件の立地するエリアの賃貸ニーズ
 ・どのような属性(年齢層、家族構成、男女など)のニーズが多いのか
 ・そのニーズにあった物件となっているか
・周辺類似物件の賃料相場から大幅にずれていないか
・現況の入居率
 ・低い場合には、どこに要因があり、どのような改善策を講じる必要があるか
・修繕計画とその資金準備
 ・余裕のあるキャッシュフロー、資金準備計画があるか

【入居者】
・入居者審査について
・家賃滞納対策

【管理会社】
・委託の範囲
 ・管理をどこまで管理会社に委託するか
・信頼性
 ・豊富な経験をもつ管理会社か
 ・管理会社の評判はどうか
・管理委託費
 ・管理委託費のコストは妥当か

まとめ

賃貸経営は、文字通り事業の「経営」です。大切な自分の資産を活用して事業を行うのですから、まずは賃貸経営のメリット・デメリットの理解に努めましょう。

そして管理会社任せ、人任せにせず、事業計画を入念に立てて見通しをつけたうえで、賃貸経営をスタートさせましょう。もちろん、予定通りにいかないことも出てくる可能性はありますが、事業計画がしっかりと練られていれば、軌道修正する際の道しるべになるでしょう。

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。