目次
経営セーフティ共済ってどんな制度?
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、取引先が倒産した場合、連鎖倒産・経営難に陥ることを防ぐための制度です。夜逃げによる倒産の場合は対象外になってしまいますが、取引先の企業が、取引停止処分や災害による不渡りなどを理由に倒産した場合、共済金の借り入れを受けることができます。なお、経営セーフティ共済への加入後6か月以内の借り入れも不可とされているので注意が必要です。
本来は、中小企業など規模の小さい企業向けに提供している共済制度ですが、賃貸経営をしている大家さんでも一定の条件を満たすことで加入することができます。それでは、もう少し具体的に共済制度について見ていきましょう。
本来は、中小企業など規模の小さい企業向けに提供している共済制度ですが、賃貸経営をしている大家さんでも一定の条件を満たすことで加入することができます。それでは、もう少し具体的に共済制度について見ていきましょう。
経営セーフティ共済の特徴
なお、解約で払い戻された金額への課税については、法人の場合は益金、個人事業主の場合は事業所得扱いになり、業績によっては税金を支払わないといけなくなるので覚えておきましょう。そのほか、経営セーフティ共済については、中小機構のホームページをご覧ください。
大家さんが経営セーフティ共済に加入するための要件
先述した通り、経営セーフティ共済は、原則として中小企業向けであり、取引先の倒産に伴う売掛金の回収困難に対応するための制度です。一般の消費者が取引対象の大家さんは売掛金を回収することがないため、本来は加入することはできません。しかし、法人化することで、大家さんでも加入することが可能になります。では、大家さんが法人化し、経営セーフティ共済に加入した際、どのようなメリットがあるのでしょうか。
経営セーフティ共済は節税効果が期待できる
経営セーフティ共済加入のメリットとして、節税効果が挙げられます。実際、節税目的で加入する方もいらっしゃいますが、どのくらいの節税効果が期待できるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
期待できる節税効果はどのくらい?
経営セーフティ共済の掛け金は月額5,000円~20万円まで自由に選ぶことができ、掛け金は増額・減額も可能です。法人では掛け金を損金に、個人事業主ならば経費とすることができます。では、個人事業主が経営セーフティ共済に加入し、掛け金を損金扱いした場合と、経営セーフティ共済に加入せず損金がない場合の所得税額の違いについて見ていきましょう。条件は以下の通りです。
※分かりやすくするため、保険料等のその他の控除はないものとし、復興特別所得税2.1%は計算に加えていません。
経営セーフティ共済に加入の場合
(900万円-10万円×12か月-65万円-38万円)×20%-42万7,500円=92万6,500円
経営セーフティ共済に未加入の場合
(900万円-65万円-38万円)×23%-63万6,000円=119万7,100円
経営セーフティ共済加入・未加入の所得税の差
119万7,100円-92万6,500円=27万600円
※税率は課税される所得金額によって変わります。
経営セーフティ共済に加入の場合は掛け金を経費扱いにし、収入から控除できるため、所得税額は「20%-42万7,500円」という税率で計算できます。それが、経営セーフティ共済に未加入の場合は収入から控除できる経費がないため、所得税の税率は「23%-63万6,000円」で計算しないといけません。
経営セーフティ共済の加入が節税対策になることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
年間の収入 | 900万円 |
---|---|
毎月の掛け金 | 10万円 |
青色申告特別控除額 | 65万円 |
基礎控除額 | 38万円 |
※分かりやすくするため、保険料等のその他の控除はないものとし、復興特別所得税2.1%は計算に加えていません。
経営セーフティ共済に加入の場合
(900万円-10万円×12か月-65万円-38万円)×20%-42万7,500円=92万6,500円
経営セーフティ共済に未加入の場合
(900万円-65万円-38万円)×23%-63万6,000円=119万7,100円
経営セーフティ共済加入・未加入の所得税の差
119万7,100円-92万6,500円=27万600円
※税率は課税される所得金額によって変わります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
経営セーフティ共済の加入が節税対策になることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
節税目的の加入でも問題なし
事業で利益が出るといちばん気になるのが税負担のことだといっても過言ではないでしょう。経営セーフティ共済は取引先の倒産リスクに備えられるだけでなく、掛け金は全額損金・もしくは経費扱いすることができます。取引先の倒産リスクがない賃貸経営の場合は必要ないようにも思えますが、節税対策として加入を検討しておくことをおすすめします。
賃貸経営を法人化する方法
賃貸経営を法人化する方法について確認しておきます。賃貸経営を法人化する場合、まず、「株式会社」「合同会社」どちらにするか、また、資本金額を決めなければなりません。この2点が決定したら、出資割合・決算期・定款を定め、その後、登記書類を作成、届出を提出します。不明な点があれば、司法書士など専門家の手を借りながら手続きしてもいいでしょう。
なお、節税効果を狙うのならば、設立した法人に持っているアパートを譲渡し、賃料などの収入を法人が受け取る「不動産所有方式」がおすすめです。個人資産(この場合は保有するアパート)がなくなるため、個人に税金がかかることがなくなります。
なお、節税効果を狙うのならば、設立した法人に持っているアパートを譲渡し、賃料などの収入を法人が受け取る「不動産所有方式」がおすすめです。個人資産(この場合は保有するアパート)がなくなるため、個人に税金がかかることがなくなります。
法人化で得られるメリットは多い
法人化で得られるメリットは、経営セーフティ共済の加入ができることだけではありません。例えば、税金が所得税から法人税に変わる点もメリットのひとつとして挙げられます。所得税は、所得が増えれば増えるほど高くなる累進課税ですが、法人税はそうではなく、税率も所得税に比べて低くなります。
また、家族を従業員にし、給与を支払える点も法人化のメリットだといえるでしょう。家族に資産を移した場合、金額によっては贈与税の対象になりますが、法人にすると、給与・役員報酬扱いになり、税率の高い贈与税の対象から外れます。
また、家族を従業員にし、給与を支払える点も法人化のメリットだといえるでしょう。家族に資産を移した場合、金額によっては贈与税の対象になりますが、法人にすると、給与・役員報酬扱いになり、税率の高い贈与税の対象から外れます。
経営セーフティ共済加入のための手続き
最後に、経営セーフティ共済に加入する際の手続きについてお伝えします。まず、覚えておきたいのが、申込書類の郵送での受付は不可という点です。中小機構と業務委託契約を結んでいる団体、または、金融機関の窓口で申込書類の提出を行う必要があります。受付窓口については中小機構のサイトに掲載されているので、確認しておきましょう。次に、必要書類について見ていきます。
経営セーフティ共済加入のための必要書類
加入までに約2か月は必要
経営セーフティ共済には、申し込み後すぐに加入できるわけではなく、2か月ほどかかります。加入の際は中小機構から「共済契約締結証書」「加入者必携」が届きますので大切に保管しておいてください。特に、共済契約締結証書は、共済金借り入れや解約などの各種手続きに必要になるため重要です。
まとめ
経営セーフティ共済についてお伝えしてきました。経営セーフティ共済は、本来、中小企業向けの共済制度ですが、節税対策として加入する大家さんもいらっしゃいます。ただ、大家さんが加入するためには法人化しなければならず、その分の労力が必要です。それでも節税効果を考えると加入するメリットは大きいため、一度、検討してみてもいいのではないでしょうか。
この記事の監修者
たじり ひろこ
2級FP技能士/証券外務員第一種
証券会社営業、生命保険会社営業サポート、銀行コールセンター等複数の金融機関勤務経験あり。2016年末からライターとして活動し、主に金融系サイトで執筆。