ガス給湯器の種類を比較!入居者に好まれる機能や選び方を紹介します

2024.02.29更新

この記事の監修者

岩野 愛弓

岩野 愛弓

【資格】宅地建物取引士

ガス給湯器の種類を比較!入居者に好まれる機能や選び方を紹介します

毎日のように利用する給湯器の寿命は、約10年が一般的。給湯器を交換しない場合のリスクや交換費用の目安などをご説明します。

目次

給湯器は交換が必要な設備です

給湯器は10年前後で寿命が来るといわれている機器であるため、定期的に交換が必要です。なんとなく耳にはしているものの、本当に10年ごとに交換しているイメージがないと感じている大家さんもいるかもしれません。

実は、目安となる寿命があっても、急に運転が停止したりしなければ「まだまだ使える」と判断してなんとなく使い続けているケースもあります。しかし、長期間で使い続けると機器の部品の劣化や消耗は進行するため、そのままでは重大事故につながるリスクがあります

また、10年経過すると修理部品の供給もなくなることが多いため、調子が悪くなったら修理できると安易に判断することは危険です。

10年経過しなくとも、「異音・異臭がする」「お湯の温度が不安定」「本体から水漏れ」「爆発音がする」など、いつもと様子が違うと感じることがあれば給湯器が壊れる前兆かもしれません。本格的な故障の症状が出る前に、給湯器の交換を検討しておくと安心です

入居者に交換してほしいと言われたら…

給湯器は壊れていないけれど、設置年数から10年以上経過していて、入居者から「交換してほしい」と依頼された場合、基本的には交換する義務があるわけではありません

しかし、給湯器の場合、洗面台などの住宅設備とは違い、ガスや石油式では「燃焼」がともなう機器であるため、一定の寿命を過ぎて使用を続けると、大きな事故につながる恐れもあります。事故が起きてしまうと大家さんの責任は計り知れないものになってしまうため、耐用年数として交換に値する時期にきていると判断される時は、交換を検討することも必要であるといえるでしょう

給湯器の交換方法と費用

給湯器の交換は、外部に取り付ける給湯器本体と、室内や浴室に取り付ける設定リモコンの両方を交換します。室内のリモコンは一般的にキッチンの近くと浴室に取り付けます。リモコンはお湯の温度設定をしたり、現在の燃焼状況を確認したりしますので、見やすい場所に取り付けるのが良いでしょう

給湯器の交換費用は、ガス、石油、電気など熱源の違いや追い炊き機能付が付いているかなど機能によって異なりますが、本体機器は約10~45万円が目安です。プラス交換工事を含めると、合計で約30~50万円が目安となります

給湯器の種類と機能

一口に給湯器といっても、ガス、石油、電気式などさまざまな熱源があり、機能も異なります。ここからは、給湯器の種類や機能についてご紹介していきます。

給湯器の種類

給湯器には、主に大きく3つの種類があります。それぞれ見ていきましょう。

ガス給湯器

ガス給湯器は、一戸建て住宅から集合住宅まで広く採用されている給湯器です。一般的に、キッチン、浴室、洗面所の3か所に対応していることが多いでしょう。給湯器本体のパイプに水を通し、そのパイプを「ガスの熱源」を使って加熱することによりお湯が作られる仕組みです。

火力を調節することでお湯の温度が上がったり下がったりします。ガス配管が必要になりますが、キッチンの加熱機器にガスコンロを採用することも多いため、同時に配管工事ができるというメリットがあります

石油給湯器

石油給湯器は、一戸建て、集合住宅などで採用されている給湯器です。暖房機器と併用されるケースもあることから、寒冷地などで採用されることも多いでしょう。

給湯器本体のパイプを加熱してお湯を作るのはガスと同じ仕組みですが、「石油が熱源」になる点がポイントです。比較的に安価な機器もあり、ランニングコストが抑えられるという特長があります

しかし、石油は輸入の取引相場で市場価格が左右されることもありますので、イニシャルコストのシミュレーションは事前に行うことをおすすめします

電気給湯器

電気温水器には、「電熱ヒーター型」と「熱交換型」の2つの種類があります。電気温水器は、ガスや石油給湯器のように、使う時に瞬時にお湯を作るのではなく、深夜の安い電気料金の時にお湯をたくさん作って貯湯し、日中はそのお湯を使うという仕組みが一般的です。タンクに水を貯めた状態で、ヒーターでお湯を作っていきます。

熱源に電気を使うことから、火を使わず燃焼が発生しません。そのため、安全性が高いことがポイントです。一方、貯湯式であるために1日に大量にお湯を使ってしまうと湯切れが起きる可能性もあります。貯湯タンクを選ぶ際は使用量を想定して適切な機種を選ぶと良いでしょう

給湯器の機能

給湯器は、種類によって次のような機能があります。

・自動湯はり機能
設定した温度、水位まで自動で湯はりをする機能です。はじめに浴槽の栓を閉めた後は、設定水位でお湯はりが停止しますので浴槽から溢れる心配がありません。

・追い炊き・保温機能
お湯はり後の温度を保つために自動で追い炊き・保温してくれる機能です。2~4時間で温度を保ちますので、家族の入浴時間帯が異なる場合でも、快適な温度で入浴できます

・自動たし湯機能
浴槽のお湯の水位が一定数下がった時に、自動でお湯をたしてくれる機能です。

・配管自動洗浄機能
排水時に一定の温度・量でお湯を流して配管を洗浄する機能で、前回湯はりした後、配管に残ったお湯を排水したり、配管内部を洗浄したりすることができます。

・温水暖房機能
床暖房や浴室暖房乾燥機などに付随する機能で、配管に温水を通して暖房機能を運転させるものです。給湯器としての機能と合わせることで家中まるごと運転させるシステムが可能です

フルオートとオートとは

給湯器の機能を組み合わせたものに「フルオート」と「オート」があります。2つの違いは次のとおりです。

フルオート

フルオートは、一定水位の湯はり、追い炊き、保温、たし湯をすべて自動で行う「全自動型」の給湯器です。スイッチ1つで温度管理、湯量管理もしてくれるため、家事の手間が大幅に軽減されます。

オート

オートは、一定水位の湯はり、追い炊き、保温を自動で行う給湯器です。フルオートとの違いは「自動たし湯」機能がないことです。とはいえ、たし湯は浴槽リモコンを手動で操作できるものが一般的ですので、家族数や生活スタイルによって選択すると良いでしょう。

給湯器の選び方

給湯器は設置する場所や運転能力が異なるため、実際の設置場所の条件や使用する家族数などによって適切なものを選ぶ必要があります。それぞれの給湯器タイプをご紹介していきます。

設置タイプを確認する

給湯器の設置場所は、主に「屋外」と「屋内」に分けられます。それぞれの設置タイプは次のとおりです。

・屋外壁掛けタイプ
建物外壁などに取り付けるものです。集合住宅の場合は各戸のベランダに取り付けられることが多いでしょう。同じ屋外でも、外壁ではなく地面に設置する据置タイプもあります。どちらも屋外のため排気しやすい点がメリットですが、風雨の影響も受けやすくなります。寒冷地では湯温を維持する能力が弱まる可能性ありますので注意しましょう

・PS設置タイプ
玄関横などにパイプスペースとしてメーターとともに収納された状態で設置されるものです。半屋外のようになるため風雨の影響は少ないですが、排気があるため入居者の暮らしに支障がない場所が望ましいでしょう。

・屋内設置タイプ
寒冷地などで多い設置方法です。外気温からの影響が少なく、風雨や積雪を避けることができます。ガス、石油の場合は排気があるため換気対策が必要です

設置には基準があるので注意

ガスや石油給湯器は燃焼をともないます。そのため、給湯器を設置する際には、下記のような機器本体と可燃物との間に規定の離隔距離が必要です。

・可燃物と排気口出口の離隔距離
・可燃物と機器本体との離隔距離
・開口部と給気口出口との離隔距離
・修理や点検のスペース確保

使用する給湯器の種類にもよりますが、排気口出口は高温になりやすく、一定数の離隔距離が求められます。また、メンテナンスのためのスペース確保は必要です。ガス機器は定期的な点検も行われることがあります。

給湯器の号数を確認する

給湯器は運転能力=給湯能力によって機種が分けられています。ガスは「号数」石油は「kW(kcal/h)」電気は「ℓ数」などで区分されます。ガスの場合、号数とは水温25度のお湯が1分間に出る量で分類しています。

キッチンでお湯を使っている時、同時に浴室のシャワーを使うとどちらかの湯量が少なくなった経験をしたことがあるでしょう。極端に片方が少なくなってしまう場合は、号数が不足していることが要因になっていることがあります。入居者の家族数と号数は適切なものを選ぶことがおすすめです
24号
毎分24Lのお湯が出る運転能力です。水温が低い冬場でも温度を保ち、浴室、キッチン、洗面所で同時利用できます。4人家族などファミリー層に向いています。
20号
毎分20Lのお湯が出る運転能力です。浴室、キッチンで同時利用が可能であり、2人暮らしなど家族数が少ない家庭に向いています。
16号
毎分10Lのお湯が出る運転能力です。浴室のシャワーなど単独で利用する際には、十分な能力があります。1人暮らしなどシングル世帯に向いています。

号数を上げることの注意点

十分な能力を確保するために号数を上げればよいのでは?と考えるかもしれませんが、実は単純に号数を上げると次のような弊害が起こる恐れがあります。

・号数が大きくても1か所しか使わない場合、運転能力が発揮できないこともある
・ガスメーターの契約容量がオーバーする

実際に使う容量、設置条件なども確認しながら号数を選ぶことが大切です。

入居者ターゲットを確認する

給湯能力と号数の関係については前述に触れたとおりで、家族数などによって適正な号数があります。給湯器を交換する際には、想定される入居者のターゲットをしっかりと検討した上で機器を選びましょう

ガス給湯器の商品をご紹介

ここからは、具体的にガス給湯器の機種についてご紹介します。各メーカーの特徴などもあわせて確認していきましょう。

1. 屋外設置型:リンナイ(RUF-SE1615AW)

屋外壁掛け、PS設置形のリンナイガス給湯器です。リンナイはガス機器の大手メーカーで、給湯器のほかにもガスコンロなどキッチン加熱機器も多く取り扱っています。フルオート、オートタイプに対応し、直感的にわかりやすいリモコンが特徴です。16号は、シングル世帯におすすめの号数です。
メーカーリンナイ
商品名RUF-SE1615AW

2. 屋外設置型:パーパス(GX-1603AW-1)

屋外壁掛け形のパーパスガス給湯器です。オートタイプに対応している機種で、お手ごろな価格帯が魅力です。必要な機能に限定しコストパフォーマンスに優れたメーカーです。
メーカーパーパス
商品名GX-1603AW-1

3. 屋外設置型:パロマ(FH-E1611SA)

スタイリッシュなデザインが特徴的な屋外壁掛け形のパロマ給湯器です。フルオート、オートに対応し、熱効率のよい運転で省エネ使用がポイントです。自動保温は目的に合わせて「しっかり」「ゆったり」などカスタマイズできます。本体、リモコンともシンプルで現代的なデザインに統一されています。
メーカーパロマ
商品名FH-E1611SA

屋内設置型:ノーリツ(GQ-1637WS)

屋内設置形の16号のノーリツ給湯器です。給湯専用で機能を限定した機種になりますが、その分価格が安くなっています。シングルファミリーで浴槽にお湯を貯める機会が少ない場合やシャワーだけが設置された賃貸物件などに向いています
メーカーノーリツ
商品名GQ-1637WS

よくある質問

最後に、給湯器交換に関するよくある質問をご紹介します。
追い炊き機能の後付けはできる?
冬場でも入浴に適した温度にしてくれる追い炊き機能を、給湯器交換の際に検討しようと考えている大家さんもいるでしょう。後付けは、追い炊き機能付きの本体機器に変えるだけで可能です。ただし、追い炊きを運転させるためには、浴槽に循環用の穴が必要になりますので、浴槽に新たに循環口を開けるか、追い炊き対応の浴槽に変える必要があります。
エコ給湯器ってどんな給湯器?
エコキュートは電気の熱源でお湯を作るものですが、その「熱」はヒートポンプユニットに取り込んだ空気をもとにして取り込みます。単に電気ヒーターを使うことに比べて自然の熱も利用するため少ない電気でお湯を作ることができ、電気代もお得になるのです。空気を取り込むという性質から、外気温が高いほど効率よく熱を取り込めます。そのため、冬場よりも夏場の方が電気代は安くなるのが一般的です。
プロパンガスから都市ガスに変える場合は給湯器も変える必要がある?
プロパンガスから都市ガスへの変更時に、給湯器の変更は必要ありません。しかし、プロパンと都市ガスではガスの熱量が異なるため、熱量変更作業のための部品交換が必要になります。部品交換をせずにそのまま使用すると不完全燃焼などのトラブルにつながる恐れがありますので、必ず対応するようにしましょう。

まとめ

給湯器は毎日の暮らしの中で使う頻度が高い設備の1つです。また、本体機器のトラブルで急にお湯がでないと入居者にも不便が生じてしまいます。取り付けから10年前後が経過している場合は、器具の不具合がないか退去時などにしっかりと点検し、大きな事故につながる前に対応するようにこころがけておきたいですね。

この記事の監修者

岩野 愛弓

岩野 愛弓

【資格】宅地建物取引士

注文住宅会社に15年以上従事し、不動産売買業務の他、新築・リフォームの内外装、家具・建具造作の現場監修を行う。オリジナルデザインの住宅を数多く経験。不動産・住宅専門の執筆活動も行っている。

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