ネット設備は今や入居者にとって必須
現代では子どもから大人まで多くの人が利用しているインターネット。ネットショッピングやスマホ決済サービスなど、インターネットは今や生活に欠かせない存在であるといえるでしょう。実際、全国賃貸住宅新聞の行った「入居者に人気の設備ランキング(2019)」において、「インターネット無料」が単身者向け・ファミリー向けともに1位を獲得しています。
賃貸物件に暮らす入居者がインターネット回線を準備する場合、プロバイダと契約したり、ポケットWi-Fiを契約したりするため、家賃とは別にネット料金がかかってしまいます。あらかじめインターネット回線を導入した「ネット無料」の物件であれば、プロバイダなどとの契約の手間が必要なく、家賃にネット料金が含まれていますので「別途のネット料金」を考える必要がありません。このような理由から、入居者にとって「あったら嬉しい設備」とされているのでしょう。
インターネット無料の仕組み
一般的に、戸建ての場合は各戸にそれぞれ独立して回線を引いています。一方集合住宅では、共用部分に引かれた回線から各戸に分配している仕組みを採用していることが多く、建物に引かれた回線を住人が共同で使用しているのです。回線を各戸に分配しているため、各戸に独立して回線を引き込むよりも月々のインターネット使用料が安価になります。そして、インターネット使用料を大家さんが負担することで、入居者に無料で提供することができるのです。
インターネットを導入するための基礎知識
ここでは、インターネットを物件に導入するために必要な費用や回線の種類について解説します。空室対策のためにインターネットの導入を検討している大家さんは、ぜひ参考にしてみてください。
必要な費用(初期費用、月額など)
インターネット回線を導入するにあたって、建物に回線を引き込むための工事費用が「初期費用」としてかかります。そこから、月額インターネット使用料が建物ごとに請求されます。例えば、10戸のマンションで月額15,000円のインターネット使用料であれば、1戸あたり1,500円を大家さんが負担しているということになります。大家さんがインターネットの月額費用を支払うことで「ネット使用料無料」が実現するのです。
回線の種類
集合住宅でインターネット回線を導入する際、特に「ネット無料」を検討するのであれば、回線を各戸で共有する方式となるでしょう。共有方式の中には「有線」と「無線」の2つの方式がありますので、それぞれ解説していきます。
有線
建物に引き込まれた回線を、各戸に有線LANケーブルで引き込むのが有線方式です。有線方式の場合、各戸の部屋の中にLANケーブルの差込口があり、入居者はLANケーブルを差し込んでインターネットを利用するという仕組みになります。なお、有線方式では各戸で工事が必要となります。既存物件の場合は、入居者と工事業者の日程を合わせないと工事ができないため、導入に時間がかかることがあります。
無線
建物に引き込んだ回線をWi-Fiルーターに通し、Wi-Fiの電波を各戸に届けるというのが無線方法です。各戸の工事が必要ないので、既存物件でも早く導入ができるというメリットがあります。ただし、Wi-Fiという性質上、回線が不安定になったり、部屋によって電波の届き具合が異なったりすることがあります。また、木造以外の構造の集合住宅では部屋の中に電波が届かないことがあるため、基本的には木造アパートのみに適用される方式です。提供サービスの中には重量鉄骨でも無線Wi-Fiの電波が届くものがありますので、木造以外の構造の建物に無線Wi-Fiを導入したい場合はこうしたサービスを提供している会社に依頼すると良いでしょう。
インターネット業者を選ぶためのポイント
インターネット回線の導入は、業者に依頼しなければなりません。ここでは、インターネット業者を選ぶためのポイントについて解説します。
回線の種類
インターネット業者によって、取り扱っている回線の種類が異なります。有線方式・無線方式は上記で解説したように、どちらもメリットとデメリットがありますので、まずは複数社に見積もりを依頼し、費用を含め検討してみましょう。
回線の速度
数々あるプランの中には、各戸に独立した回線を引き込むものもあるため、速くて安定した回線を入居者に提供できるでしょう。しかし、このような各戸まで光回線を引き込む方法と、共有部分まで光回線を引いて建物全体で共有する「共有方式」を比較すると、費用面で考えれば共有方式の方が安く済むことがほとんど。回線の速度と費用などの点から回線の種類を検討する方法もあるでしょう。
対応している建物構造
回線の種類によっては対応していない建物の構造があります。例えば、上記でご紹介した「無線方式」。こちらはWi-Fiの電波を各部屋に届けるという仕組みですから、木造以外の構造では電波が届かない可能性があります。無線方式のサービスを提供している会社の中には木造以外の構造の建物にも対応しているところがありますので、インターネット業者に見積もりを依頼する際には、所有している物件の構造に対応しているか確認しておくと良いでしょう。
費用
初期費用や月額費用などは依頼する業者によって異なります。提供されているプランの中では各戸まで回線が引かれるものもあるため、1つの回線を各戸で共有する場合と比較すると費用が高くなる傾向があります。しかし、最大概ね1Gbpsという速度や安定した回線を誇りますので、ネット回線の速度・安定さを求める入居者にとっては喜ばれるでしょう。その他、通信工事業者に依頼する方法があります。業者によって費用は様々ですので、参考までに筆者自身が1棟2戸の物件にインターネットを導入した際の費用についてご紹介します。なお、この物件では通信工事業者に有線方式で依頼しています。
上記のような金額となりました。独立した回線を各戸に引いた場合のネット料金が5,000~6,000円ということを考えると1戸あたり約3,500円ですから、少し安くなったことがわかります。戸数が少ないので、一般的なマンションより1戸あたりの費用がやや割高です。その他、工事費用を分割して月額費用に含めるので初期費用はゼロなど、業者によって支払い方法が異なります。想定される家賃収入などを含め、検討すると良いでしょう。
サポートの有無
業者によってサポートの有無や内容が異なります。24時間365日体制でサポート窓口を開いていたり、導入後3か月以内に入居がつかずに解約した場合は初期費用を全額返金したりする業者などがあります。業者を選ぶ際は、インターネット導入後のサポート内容も事前に確認しておくと良いでしょう。
インターネット業者比較
インターネットのサービスを展開している業者は幅広く、さまざまなサービスやプランを展開しています。ここでは、大家さんにおすすめなインターネットの業者5社をご紹介していきます。
1. バッファロー
無線方式の導入で代表的な「バッファロー」。「アパートWi-Fi」という名称でWi-Fiインターネットサービスを提供しています。空室対策に悩む大家さん向けのサービスであり、無線方式のため、既存物件でも手間をかけずに導入できるところが魅力です。テレビ配線タイプ・共用部設置タイプ・各戸設置タイプの3種類があり、木造以外の構造の集合住宅でも利用できるように工夫されています。
メーカー | 株式会社 バッファロー・IT・ソリューションズ |
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商品名 | アパートWi-Fi |
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2. B-CUBIC
B-CUBICの魅力は、導入費用・月額費用が比較的安価で提供されているという点です。また、B-CUBICは北海道から九州まで導入実績がありますので、都内近郊だけではなく、地方に物件を所有している大家さんも実績を参考に導入を検討することができます。ヘルプサポートや入居促進活動サポートなどのアフターフォローがあることも特徴です。
メーカー | 株式会社ブロードエンタープライズ |
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商品名 | B-CUBIC |
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3. CITV
CITVは全国52,000戸の実績を持つインターネット業者です。LAN配線方式だけでなく、同軸ケーブル配線方式を採用しています。同軸ケーブル配線方式ではTVジャックを利用しているため、配線工事が必要ありません。また、インターネット回線にプラスして防犯カメラや宅配ボックスなどの設置も可能なので、空室対策や収益改善で設備の充実を考えている大家さんにおすすめです。
4. NTT東日本
NTT東日本には「フレッツ光ネクスト マンション全戸加入プラン」という全戸特別価格で提供する大家さん向けのプランがあります。各戸に光配線を引き込むため、共有方式よりも速くて安定した回線を提供することができるというメリットがあります。また、1室のみでも導入可能、入居がつくまで月額費用が発生しないなど、導入後のリスクを減らすための取り組みをしているのも特徴です。
メーカー | 東日本電信電話株式会社(NTT東日本) |
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商品名 | フレッツ光ネクスト マンション全戸加入プラン |
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5. JNETS
JNETSは、有線設置やWi-Fi設置・設定工事など、通信に関連する様々な事業を行っています。JNETSではマンションへのWi-Fi導入の他、防犯カメラやオートロックなども取り扱っていて、実際に導入事例ではWi-Fiの導入と一緒に防犯カメラなどセキュリティ性を上げる設備を導入している物件があります。Wi-Fiだけでなく、通信やセキュリティに関する工事などもまとめて検討できるという魅力があります。
家賃アップの期待値
もともとの設定家賃などは物件の状況によりますが、ネット無料の導入によって見込める家賃アップは2,000円~3,000円程度ではないでしょうか。物件の入居者が個別にネット回線を引いた場合は月額5,000~7,000円程度かかります。しかし、その入居者全員がネット契約をするとは限らないため、周辺相場より設定する家賃を個別回線の月額料金と同程度上げてしまうと、固定回線が必要ない層にとっては魅力を感じにくいからです。とはいえ、現代はインターネットを日常的に利用している人が多く、「インターネット無料」の需要が高いことは、冒頭でご紹介した全国賃貸住宅新聞のアンケート結果にも表れています。周辺相場との兼ね合いもありますので、総合的に考えて家賃設定を行いましょう。
まとめ
日常生活に欠かせない存在となっているインターネット。インターネット使用料無料は入居者にとって人気設備のため、空室対策の選択肢へとつながるでしょう。費用はインターネット業者によって異なりますので、まずは複数社を比較して、依頼することをおすすめします。空室にお悩みの大家さんは、ぜひインターネット回線の導入を検討してみましょう。
監修花 惠理
【資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ファイナンシャルプランナー2級
大学卒業後、不動産会社や住宅メーカーの不動産部に勤務し、不動産賃貸・売買契約の他、社宅代行、宅地造成などの業務に携わる。現在は、不動産や金融関係の執筆をするWebライターとして大手メディアなどに多数寄稿。
初心者にもわかりやすい言葉で解説しています。また、将来に備えて夫婦で不動産投資や株式投資を行っています。
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