大家さんなら覚えておきたい!賃貸経営に欠かせない火災保険

2023.11.06更新

この記事の監修者

逆瀬川 勇造

逆瀬川 勇造

【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

大家さんなら覚えておきたい!賃貸経営に欠かせない火災保険

アパート経営をしている大家さんや検討している方へ、火災保険の重要性について、基本情報や補償内容を含めてお伝えします。

目次

大家さんのための火災保険

火災保険は、自然災害や人災などの被害を受けた際に、その損害に合わせて補償を受けられる保険です。被災したときには、多くの私財を投じて損壊した部分を修復する必要があるため、その被害総額によっては経営状況が急激に悪化してしまうリスクがあり、そのリスクを下げるためにも十分な補償内容を付保しておくことが重要です。

また、賃貸経営では、入居者とのトラブルによって金銭的な損害が発生することもあります。そのときに賠償を受けられるような保険内容にしておくことも大切です。

火災保険の対象は?

火災保険の補償対象には「建物」と「家財」があり、建物はアパートやマンションの建物自体、家財はアパートやマンションの居室内にある財産が補償対象となります。契約内容により対象は異なりますが、「建物」「家財」「建物と家財」の3種類が多く、大家さんは自分の資産である「建物」に対する保険、居住者は居室内の「家財」に対する保険に加入するのが一般的です。

保険料は物件によってさまざま

火災保険の保険料は一定ではなく、物件の所在地と建物の構造、そして、取り扱う保険会社や保険プランなど、さまざまな要因によって変動します。一般的な相場を知ることよりも複数の保険会社から見積もりをとり、比較検討することが大切です。

保険料については、どの保険会社のどの商品を選ぶかによっても異なります。大まかな保険料を確認したい場合は、損害保険会社のサイトなどで、建物の種類や所在地など入力することによって火災保険料を試算することができます。

所在地によって変わる理由

なぜ、物件の所在地によって保険料が変わるのでしょうか。それは、都道府県によって事故や自然災害の発生率、損害状況の予測が異なるからです。建物の面積や構造、補償内容が全く同じ場合でも、建物の所在地によって保険料は変わってきます。

また、保険料が異なる大きな要因として挙げられるのが地震保険です。地震保険料は地震の危険度により、都道府県毎に等級が決められており、東京都や神奈川県、千葉県等は一番保険料の高い3等地、佐賀県や北海道、京都府などは一番保険料の安い1等地となっています。

財務省のホームページに掲載されている「保険金額1,000万円あたり保険期間1年につき」地震保険料は、3等地の東京都は25,000円、1等地の佐賀県は7,100円であることが確認できます。ちなみに、同じ条件で地震保険料なしにした場合、東京都は17,250円、佐賀県は11,470円となります。地震保険特約を除いた保険料も東京都の方が高くなっていますが、これは都道府県別の事故の発生・損害状況を元に算出されており、東京都の方が佐賀県より保険料率が高く設定されている、ということになります。

構造によって変わる理由

建物構造によっても保険料は変わります。これは、建物構造によって被害の及びやすさに差が出るためです。たとえば、燃えやすい昔ながらの木造建築よりも、燃えにくいコンクリート造りの建物の方が保険料は低くなります。建物構造は、M構造・T構造・H構造の3種類があり、保険料が一番安いのはM構造、一番高いのはH構造です。
建物構造
M構造コンクリート造建物や耐火建築物の共同住宅建物
T構造コンクリート造建物や鉄骨造建物、共同住宅建物以外の耐火建築物、
準耐火建築物など
H構造M構造、T構造に該当しない木造建物など

火災保険の補償内容はどんなもの?

火災保険の補償内容は、火災のような人為的な被害のほか自然災害にも対応しており、非常に多岐にわたります。それぞれの補償内容を事例と共に見ていきましょう。なお、補償内容は商品やプランによって異なるため、契約時に確認するようにしてください。

人為的な被害で補償されるもの

賃貸経営をしていると以下のような、人為的な被害が起こることもあります。

●放火や周囲の不動産からの延焼被害
●入居者が起こした水漏れ
●自動車が突っ込むなどの事故
●ガスに引火して爆発が起こるなどの被害

これらの被害についても、保険内容次第では火災保険の補償を受けることができます。具体的に、どのような補償があるのか見ていきましょう。

火災

火災保険という名のとおり、失火やもらい火、放火などにより建物が燃えてしまった場合に補償を受けられます。

水漏れ

住宅設備の事故やほかの住戸から漏水して部屋が水浸しになった場合など、水漏れによる被害を受けた際に補償されます。

事故(建物外部からの落下・飛来・衝突)

自動車が建物に突っ込んできた場合など、建物外部からの衝突、落下、飛来などによる被害に対して補償が受けられます。

盗難(盗難による窃取・破損・汚損)

泥棒に窓ガラスを割られた場合など、盗難による損傷・汚損などに対して補償されます。

破裂・爆発

ガスに引火して爆発が起こった場合など、爆発や破裂による被害について補償を受けられます。

集団行動に伴う暴力行為

暴力的な集団によって窓ガラスが割られた場合など、集団行動などに伴う暴力行為や破壊行為によって損害を受けたときに補償されます。

自然災害で補償されるもの

次に、自然災害による被害を受けたときに補償されるものについて説明します。

風災・雪災・ひょう災

風災とは、台風や旋風・暴風雨などを指し、洪水や高潮などは除きます。また、雪災とは、豪雪やなだれなどのことで、融雪洪水は補償対象ではありません。台風による強風で窓ガラスが割れた場合や、大雪によって屋根が壊れた場合などに補償を受けられます。

水災

台風や集中豪雨により床上浸水などした場合、補償を受けられます。地震による津波は、火災保険ではなく地震保険の対象となりますので注意しましょう。

落雷

落雷により家電が壊れた場合などに、補償を受けられます。

大家さんが入る火災保険と入居者が入る火災保険、何が違う?
大家さんが建物に対する火災保険に加入するのに対し、入居者は部屋内の財産を守るための火災保険(家財保険)に加入するのが一般的です。家財保険の相場は、2年間で1.5〜2万円程度でしょう。必要な補償内容を網羅したプランに加入してもらうため、大家さん側で家財保険をあらかじめ用意しておくことが多いです。

保険会社の選定ポイント

保険会社を選ぶ際、まずは、保険会社のタイプを見てみましょう。大手損保会社は、担当者による対面方式の申し込みができる点や、大手ならではの安心感があるところが魅力です。一方、実店舗がないネット系保険会社では、保険料が比較的お手頃な点にメリットがあるといえるでしょう。なお、建物の構造や所在地、補償内容によって保険料は異なるため、すべての場合において保険料がお手頃ということではありません。

次に、保険会社の提供する保険プランの特性に着目してみましょう。基本プランに特約はつけられるのか、特約の種類は豊富なのかなど、各保険会社によって特色は異なるため、気になる保険会社を数社ピックアップして、保険料や補償内容などを比較検討することが大切です。

火災保険で補償されないものはある?

火災保険では、地震や噴火・地震による津波などの損害は補償されません。地震による被害が不安な方は、地震保険への加入も検討した方が良いでしょう。地震保険には、以下のような補償があります。

●地震による火災で建物が燃えてしまった
●地震のよる噴火で建物が破損した
●地震による津波で建物が流された

なお、地震保険は火災保険と一緒に加入するタイプの保険で、地震保険のみ単独で加入することはできません。火災保険を選ぶ際に、一緒に検討するといいですね。

火災保険を選ぶときに考慮したいこと

ここでは、火災保険を選ぶときに考慮したいことについて解説していきます。理想の火災保険に加入するため、しっかり確認していきましょう。

補償対象を何にするか

火災保険の補償内容を、建物、家財、建物+家財のどれにするかを決めます。大家さんであれば、建物のみが一般的でしょう。

補償範囲をどこまでにするか

火災保険の補償範囲をどこまでにするかで、保険料は大きく変わります。最低限の「火災、落雷、破裂・爆発、風災・雪災・ひょう災」のみ補償するプランから、すべての補償範囲を網羅するプランなど複数あるプランのうち、どれを選択するかは迷うところだと思いますが、満室経営ができている場合は経費もかけやすいので、補償内容が一番手厚いプランを選択しても良いでしょう。

一方、空室が目立ってあまり経費を捻出できない場合は、一番簡素なプランにしておき、経営状況が上向いた時点でプランを変更してもいいですね。なお、火災保険は「10年一括」等、長期で支払うとそれだけ保険料を安く抑えられるため、長期での加入も検討しましょう。その際は、「一番空室が多い状態」を想定した上で「保険料/年の額を家賃/年の額の5%以下にする」など、基準を設けることもひとつの方法です。

火災保険に加えて地震保険にも加入する場合には、さらに保険料が増えますので、その分を加味して検討し、あとは、補償を手厚くしておきトラブル発生時の出費リスクを減らすか、補償と保険料を最低限にとどめ、トラブル発生時に預貯金等で補填するか、経営者自身の考え方によって決めましょう。

保険期間を決める

契約期間が長いほど保険料が割り引かれるため、物件の耐久年数を確認して保険期間を決めることも必要です。なお、火災保険料は、確定申告時に経費に計上できますが、2年や5年、10年など長期一括で支払った場合は、支払った保険料の内、その年の分だけを経費計上します。

賃貸経営は、基本的に築年数が若い時の方が高い家賃収入を得やすいので、そうした観点から見ても、最初に保険料を負担しておくのは悪くない考えでしょう。ただし、売却も視野に入れている場合は、売却時期を想定した上で保険期間を決めるとより万全です。

まとめ

火災保険の基本情報や補償内容についてお伝えしてきました。火災保険は大家さんのアパートやマンションを守るために必要不可欠な保険である一方、保険料がキャッシュフローを圧迫する可能性があることも事実です。保険料は、物件の所在地や構造の他、保険期間や補償範囲によっても左右されるため、保険期間はどうするか、また、自分の物件がどのような被害に遭うリスクが高いかを確認しながら、プランを決めるようにしましょう。

この記事の監修者

逆瀬川 勇造

逆瀬川 勇造

【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

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