施設に関するリスクを補償してくれる「施設賠償責任保険」
建物の外壁が落下して、下に停めてあった車両にぶつかり壊してしまった。マンションのロビーの床が剥がれていて、そこにつまずいた子どもがケガをしてしまった。このような時、損害を与えた人や物に損害賠償が支払われることがあります。その賠償金を補償するのが、
施設賠償責任保険です。この保険は、被保険者(大家さん)の管理の不備で生じた損害に対しても保険金が支払われるのが特徴です。
火災保険や地震保険のような不測の事態に備える保険とともに備えておきたい保険だといえるでしょう。 |
ただ、覚えておきたいのが、施設賠償責任保険は「法律上の損害賠償責任を負担することにより被る損害に対して」保険金が支払われる保険だという点です。支払いのためには裁判所の判決、もしくは
和解調書、公正証書などの一定の権利を証明できる書面が必要になります。被保険者がお詫びの気持ちで支払う「お見舞金」とは性格が違うものですので気を付けておきましょう。
「施設賠償責任保険」の保険料の魅力
思いがけない建物の不備から生じる損害の賠償金も補償してくれる施設賠償責任保険はマンション・アパートの大家さんならばぜひ加入を検討しておきたい保険です。ですが、保険料負担のことも気になるのではないでしょうか。
マンション・アパート管理をきちんとしている大家さんである場合、「建物の不備は起こりえないから、保険料がもったいないし必要ない」と思われるかもしれません。
保険料算出の具体例
では、施設賠償責任保険の保険料はどのようにして算出するかを確認していきましょう。保険料を算出するには保有するマンションやアパートの面積が基準になります。
なお、保険会社によっては築年数を聞いてくるケースもあります。これは保険会社が契約を引き受けるかどうかの判断基準などに使われるためで、ほとんどの場合、保険料に関わってくるものではありません。
「火災保険」の特例として加入する方法も!
面積をもとに施設賠償責任保険の保険料を出してもらったけれど、ちょっと高めだと感じた、そのような時はどうすればいいのか迷うところです。
もし、保険料をもっと抑えたいと考えるのならば、施設賠償責任保険を特約として付加することを考えてみてはいかがでしょうか。すでに火災保険などに加入している人向けに施設賠償責任保険を特約付加できる保険会社もあるのです。
特約として加入すれば保険料が安くなる場合も
施設賠償責任保険を単独の保険ではなく、特約として付加するメリットは保険料が安くなる可能性があることです。ただし、注意点もあるので確認しておきましょう。
注意点1
特約であるため、主契約(火災保険など)を解約したら特約も消滅します。もし保険会社を変更するために火災保険を一旦解約(継続終了)するとなれば、火災保険を探しながら特約で付加できる施設賠償責任保険も改めて探す必要があるのです。
注意点2
特約の取り扱いがない保険会社もあります。すでに契約している火災保険の保険会社で施設賠償責任保険特約の扱いがない場合は、単独の保険として契約しないといけません。
注意点3
いくら施設賠償責任保険特約を取り扱っていても付加できる主契約は決まっています。今主契約として持っている保険には付加できない可能性もありますので注意しましょう。
施設賠償責任保険を特約として付けたいのならば、以上3つの注意点を踏まえておきましょう。
保険の対象となるポイント
施設賠償責任保険加入の前に、どのようなことを補償してもらえるのかをチェックしておきましょう。マンションやアパートの不備でいちばん懸念しないといけないのは、「建物の破損で人や物に損害を与えること」ではないでしょうか。
よく例に挙げられる損害といえば、建物の外壁が落下し、通行していた人にケガをさせた、もしくは、物にぶつかり壊してしまった、というものでしょう。
これらの損害は予測できないばかりか、火災保険や地震保険で補償してもらえるものでもありません。そのため、マンション・アパートの大家さんであるならば施設賠償責任保険は必要だといえるのです。
支払い対象となる損害
落下物による損害以外にも施設賠償責任保険の支払い対象になる損害はいくつもあります。例えば、「マンションエントランスの床が老朽化で剥がれており、そこでつまずいた人が骨折した」「マンション共用部の階段が破損しており、転落した人がケガをした」これらも保険金支払い対象になります。
長い期間マンションやアパートを管理していたら一度は起こりそうなことだと思いませんか。このような万が一の事態のためにも施設賠償責任保険は入っておいた方がいい保険だといえるのです。
支払い対象外の主な損害
今まではどのようなケースで保険金が支払われるかを見てきましたが、反対に支払い対象外の損害もあります。具体的な例を見ていきましょう。
漏水による損害
マンション共用部の給水管破損などで漏水が起こり、他人に損害を与えた場合は施設賠償責任保険の補償対象外となります。もし、漏水での補償が必要ならば「漏水保障特約」を付帯しておく必要があります。ただし、保険会社によっては主契約の施設賠償責任保険でも補償してもらえる場合もありますので、契約時にしっかり確認しておきましょう。
被保険者の身内の損害
落下物による損害、施設の不備による損害であっても保険金支払い対象外になる場合があります。それは、被保険者(大家さん)と生計を一にする同居親族が受けた損害の場合です。施設賠償責任保険はあくまで被保険者と他人の間柄の人が受けた損害に対する保険です。身内の損害は入りませんので注意しておきましょう。
「施設賠償責任保険」の保険会社を探そう
さて、施設賠償責任保険に入りたい場合ですが、自分の条件に合った保険会社を探さなければなりません。もし候補の保険会社があれば、「自分のマンションの面積・築年数」を伝えて見積もりを取ってください。施設賠償責任保険は面積や築年数などによって保険料が変わってきます。保険会社のサイト上では具体的な保険料を提示していませんので、作成してもらった見積もりで確認しましょう。
その際は、いくつかの保険会社を比較する、各社で補償内容が若干違う場合があるため、内容までじっくりチェックすることを忘れないでください。
単体では加入できない場合も
すでに、火災保険、地震保険に入っている場合、施設賠償責任保険だけを探すことになるかもしれません。その際に注意しておかなければならないことがあります。保険会社によっては施設賠償責任保険単独の販売をしておらず、火災保険とセット販売しているところもあります。見積もりを取る前に、販売の仕方について保険会社のサイトで確認しておきましょう。
まとめ
施設賠償責任保険とはどのようなものか、そして保険料の目安をご紹介しました。火災保険や地震保険など、アパート経営をする上で大切な保険はいくつかありますが、施設の不備から生じる損害から大家さんを守る施設賠償責任保険もとても重要な保険です。もし現在加入していないのならば、すぐにでも検討を始めてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
証券会社営業、生命保険会社営業サポート、銀行コールセンター等複数の金融機関勤務経験あり。2016年末からライターとして活動し、主に金融系サイトで執筆。
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