この記事のポイント
- 生前贈与・相続ともにそれぞれ税金が発生します。どのタイミングで相続をするか考えておきましょう。
- 一等親が生きている場合は、孫への相続は手順を確かめて適切な相続手続きが必要です。
- 実際に手続きをする際は専門家へ相談をしましょう。
目次
収益物件の相続人を「孫」にすることは可能?
財産の譲渡方法には、売買、相続、贈与などがあります。身内への譲渡では、相続か贈与が多くのケースを占めるでしょう。相続は人が亡くなることで発生しますが、贈与は譲渡人の生前に行うことが可能です。
生きているうちに財産を譲渡することを、生前贈与といい、相続の場合は相続税、贈与では贈与税がそれぞれ発生します。相続による財産の譲渡を検討する前に、まずは、生前贈与の内容と贈与税について、下記を参考に理解を深めていきましょう。
生きているうちに財産を譲渡することを、生前贈与といい、相続の場合は相続税、贈与では贈与税がそれぞれ発生します。相続による財産の譲渡を検討する前に、まずは、生前贈与の内容と贈与税について、下記を参考に理解を深めていきましょう。
家庭ごとにいろいろな事情があります。そのため、財産を子どもではなく「孫」に相続させたいと考える人もいます。子どもに相続させるよりも手続きは複雑になりますが、孫に財産を相続させることは十分可能です。
孫に収益物件を相続させるための3つの方法
孫が収益物件を相続するための方法は複数あります。今回は3つの方法を紹介します。どれも一般的な相続とは異なるため、馴染みのない方法かもしれません。しかし、適切な手続きを行えば、そこまで難しくはありません。それぞれの方法について内容と手順を解説していきます。
代襲相続をする
1つ目の方法は、代襲相続 という手段です。代襲相続とは、通常であれば相続するはずだった人がすでに死亡しているなどの理由で相続できない時に、代わりにその人の子ども、つまり被相続人にとっての孫が財産を引き継ぐ制度です。代襲相続できる理由が「死亡など」であり、死亡以外の場合でも代襲相続ができる可能性があるのがポイントです。
死亡以外の理由には、本来の相続人が「相続欠格」または「相続廃除」と該当する場合です。被相続人の命を脅かす行為をとったり、遺言書を脅迫によって修正させようとする行為などをすると、相続欠格事由に該当します。
また、相続人から虐待を受けていたなど、相続人が日常的に周囲に迷惑をかける行為に及んでいたような場合は、裁判所に申し立てをすることで、相続人を相続廃除とすることも可能となります。本来の相続人である子どもが相続放棄をした場合は、孫は代襲相続することができない点には注意しましょう。
死亡以外の理由には、本来の相続人が「相続欠格」または「相続廃除」と該当する場合です。被相続人の命を脅かす行為をとったり、遺言書を脅迫によって修正させようとする行為などをすると、相続欠格事由に該当します。
また、相続人から虐待を受けていたなど、相続人が日常的に周囲に迷惑をかける行為に及んでいたような場合は、裁判所に申し立てをすることで、相続人を相続廃除とすることも可能となります。本来の相続人である子どもが相続放棄をした場合は、孫は代襲相続することができない点には注意しましょう。
「孫に相続させる」旨を記載した遺言の作成
2つ目は、具体的に物件を相続させたい孫がいる場合は、「孫に相続させる」という内容を記した遺言書の作成 により相続が可能になります。遺言を作成すれば、相続人、譲り渡す財産の内容、分配方法などを指定することができるので非常に効果的です。
ただし、法定相続人には遺留分侵害額請求権 という権利が認められているため、希望どおりの財産をすべて特定の人が相続できるとは限りません。遺留分侵害額請求権とは、遺言書などにより特定の人にだけ財産が譲渡されてしまう場合に、法定相続人が最低限の財産を受け取る主張ができる権利です。
遺留分侵害額請求権を行使するかどうかは、法定相続人が決めることで、行使しなければ、遺言どおりに財産を譲り渡すことは可能です。
ただし、法定相続人には遺留分侵害額請求権 という権利が認められているため、希望どおりの財産をすべて特定の人が相続できるとは限りません。遺留分侵害額請求権とは、遺言書などにより特定の人にだけ財産が譲渡されてしまう場合に、法定相続人が最低限の財産を受け取る主張ができる権利です。
遺留分侵害額請求権を行使するかどうかは、法定相続人が決めることで、行使しなければ、遺言どおりに財産を譲り渡すことは可能です。
孫と養子縁組をして親子関係になる
3つ目の手段は、養子縁組の制度を利用した相続 です。祖父母が孫を養子にすることで、財産を正式に相続させることができます。適切な手続きで養子縁組した孫は、相続時においても正式な子どもとみなされるため、第一順位の相続人として財産の多くを譲り受けることができます。
ただし、養子縁組は祖父母の気持ち1つで決定できるような簡単な手続きではありません。養子縁組には普通養子縁組制度と特別養子縁組制度の2種類があり、裁判所の許可が必要になることもあるため手続きが複雑です。
ただし、養子縁組は祖父母の気持ち1つで決定できるような簡単な手続きではありません。養子縁組には普通養子縁組制度と特別養子縁組制度の2種類があり、裁判所の許可が必要になることもあるため手続きが複雑です。
孫に収益物件を相続させる場合の特徴と注意点
本来は子どもに相続する予定の財産を、意図的に孫に相続させるのは、自然な形ではありません。そのため、支払う相続税の負担が多くなるなど、デメリットも存在します。孫への相続を決定する前に、一度メリットとデメリットについて冷静に比較したうえで、手続きを検討しましょう。
特徴
財産を孫へ相続させると、税金面では節税効果が生じます。本来ならば、親から子ども、そして子どもから孫と、合計2回の相続を経て孫に物件が引き継がれます。
財産が基礎控除額を上回れば相続税が発生しますので、本来であれば2回は納めるはずだった相続税を一回の納税で済むことになります。また、相続税には基礎控除があり、相続人数が多くなるほど基礎控除は増えるため、孫が法定相続人になることで実際に支払う相続税が低くなる効果があります。
また、あらかじめ親族間で話し合いを行ったうえで孫への相続を決めていれば、実際の相続発生時に、親族間における収益物件を巡る争いは防げます。相続で発生しやすい親族間トラブルを未然に防げるという点は、孫への相続のメリットと言えるでしょう。
財産が基礎控除額を上回れば相続税が発生しますので、本来であれば2回は納めるはずだった相続税を一回の納税で済むことになります。また、相続税には基礎控除があり、相続人数が多くなるほど基礎控除は増えるため、孫が法定相続人になることで実際に支払う相続税が低くなる効果があります。
また、あらかじめ親族間で話し合いを行ったうえで孫への相続を決めていれば、実際の相続発生時に、親族間における収益物件を巡る争いは防げます。相続で発生しやすい親族間トラブルを未然に防げるという点は、孫への相続のメリットと言えるでしょう。
注意点
祖父母が孫と養子縁組をして相続が起きると、相続人全体では相続税の減少効果はあるものの、実際に養子になった孫は、収益物件の相続により、相続税に2割加えた金額を納税しなくてはなりません。また、節税目的で養子縁組したとみなされると、相続人の数に養子をカウントしてもらえなくなる可能性もあるので要注意です。
孫に収益物件を相続するまでの流れ
ここでは、収益物件を実際に孫に相続させるまでの流れを説明します。孫が相続するケースでは、一親等が生きている場合と、すでに亡くなっている場合の2通りのパターンがあります。どちらのケースかにより手続き内容が異なるので、個別の状況に置き換えて考えましょう。
一親等が生きている場合
一親等が生きている状態で財産を孫に相続をさせる方法には、遺言と養子縁組 があります。遺言による相続は、遺言作成により、指定した人に財産を相続させる方法です。遺言を残せば、被相続人の意思表示が明確化されるため、相続人同士のトラブルを回避しやすく、指定した相続人に財産をスムーズに引き継がせることができます。遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますので、いずれかの方法で遺言書を作成します。
紙とペンさえあれば遺言を作成できる手軽さが特徴ですが、自分自身で遺言書を管理するため偽造や紛失のリスクがあるうえに、内容に不備があると無効になってしまうリスクがあります。
遺言者の遺言内容を聞きながら公証人が遺言書を作る遺言制度です。保管先は公証役場になりますので、偽造される心配はありません。ただし、公正役場への申請が必要なので、時間と費用がかかる遺言方法です。
遺言内容を誰にも知られることなく、遺言書の存在だけ公証人に証明してもらう遺言書です。メリットは、第三者に遺言内容を知られずに、遺言書の存在を正式に証明できること。一方デメリットは、公証人は遺言内容をチェックしないため、遺言内容に問題があると、遺言そのものが無効になる可能性があることです。
特別養子縁組と普通養子縁組があります。普通養子縁組は、養子になる孫が未成年者の場合は家庭裁判所の許可が必要で、特別養子縁組は、養子縁組の請求から6か月経過していること、さらに養子縁組について家庭裁判所から認めてもらう必要があるなど手続きが複雑です。
一親等が亡くなっている場合
一親等がすでに死亡している場合は、孫が親を代襲して相続人になります。この場合は、通常の相続と同様になるため、相続放棄のような特別な手続きは必要ありません。
預金や不動産などの手続きも、通常の相続同様に相続手続きや不動産の名義変更を行います。ただし、代襲相続する場合は、もともとの相続人がすでに死亡しているという事実と、もともとの相続人と代襲相続人との親子関係を証明するための書類を準備する必要があります。
預金や不動産などの手続きも、通常の相続同様に相続手続きや不動産の名義変更を行います。ただし、代襲相続する場合は、もともとの相続人がすでに死亡しているという事実と、もともとの相続人と代襲相続人との親子関係を証明するための書類を準備する必要があります。
専門家に相談しながら納得できる方法を考えよう
収益物件の孫への相続は、節税対策や親族間のトラブル回避などメリットも多く含みます。しかし、遺言作成や節税シミュレーションなど、専門知識が必要になる場面は非常に多いです。
遺言作成や養子縁組手続きでは、弁護士などの法律の専門家の知識がないと手続き不足が発生する可能性もあります。節税対策のために行う相続対策でも、納税金額の計算に間違いがないかなど、事前に相続に強い税理士に相談する方が賢明と言えるでしょう。
遺言作成や養子縁組手続きでは、弁護士などの法律の専門家の知識がないと手続き不足が発生する可能性もあります。節税対策のために行う相続対策でも、納税金額の計算に間違いがないかなど、事前に相続に強い税理士に相談する方が賢明と言えるでしょう。
まとめ
本来であれば、相続人は配偶者や子どもになるため孫は相続の対象外です。しかし、遺言書や養子縁組などの制度を利用すれば、孫に直接財産を渡すことは可能です。ただし、実際に手続きを行うためにはさまざまな専門知識が必要になるので、すべてを自分で行うのは簡単ではありません。
収益物件の相続は、法律や税金の専門家に適宜アドバイスを受けながら、手続きに不備が発生しないよう慎重に進めていきましょう。
収益物件の相続は、法律や税金の専門家に適宜アドバイスを受けながら、手続きに不備が発生しないよう慎重に進めていきましょう。
この記事の監修者
髙野 友樹
公認 不動産コンサルティングマスター/相続対策専門士/宅地建物取引士など
株式会社髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社アーキバンク 取締役 COO、一般社団法人グローバルイノベーションネットワーク協会 顧問。不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、国内不動産ファンドでAM事業部のマネージャーとして従事。