不動産や賃貸経営に強い税理士の選び方!依頼するメリット・デメリットも解説します

2023.12.04更新

この記事の監修者

秦 光一郎

秦 光一郎

【資格】税理士

不動産や賃貸経営に強い税理士の選び方!依頼するメリット・デメリットも解説します

不動産運用は老後に備える財産形成の一手法として注目されています。重要な税理士選びを不動産賃貸経営の目線から解説します。

目次

税理士に依頼する際のメリット・デメリット

不動産を活用した財産形成に際してまず考えられるのは、賃貸経営です。賃貸経営に関連して、税理士へ依頼することのメリット・デメリットを考えてみましょう。

税理士に業務を依頼するメリット

個人で不動産の賃貸を始めると、不動産所得という所得が発生します。これは給与や年金などの所得と合算して確定申告をしなければなりません。

不動産所得や事業所得の確定申告には、青色申告と白色申告がありますが、青色申告の承認を得るといくつかの恩典があります。税理士に依頼をするメリットの1つは、前もって依頼をしておけば青色申告の承認を受けられることです。

青色申告は、その承認が得られれば10万円控除、複式簿記による帳簿作成などの要件充足で55万円控除、更に電子申告などの要件充足で65万円控除を受けられます。その他、税理士に依頼することで、節税や資金繰りなど関連する相談に乗ってもらうことも可能です。

しかし、税理士に確定申告を依頼する一番のメリットは、確定申告書の対外的信用度が高くなることです

銀行は、確定申告書への税理士署名の有無により、融資姿勢をまったく異ならせますし、税務署は税理士の関与の有無で納税者への対応の仕方を変えます。税務調査の場面では、税理士の立ち合いの有無で納税額すらまったく異なる場合があることも事実です

このように、銀行が協力してくれる、納める税金が安くなる、税務署が脅威ではなくなるなどのメリットが考えられます。

税理士に業務を依頼するデメリット

税理士の立場からは、依頼にデメリットがあるとは考えられませんが、あえてデメリットと申し上げるならば、料金がかかる、ということです。

ただし上述の通り、通常は支払う報酬以上のメリットを得られます。少し異なる目線の話として、税理士との意思疎通や情報提供が不足していると、本人の意思と異なる内容の確定申告書などが作成されてしまう可能性があります

あくまで税理士はご本人に代理して確定申告書や帳簿書類を作成しているに過ぎず、代理人であるので、ご本人の意向やご家族の状況を常に正確に理解できているわけではありません。税理士にとってはお預かりする資料と数度の面談でお聞きする情報が依頼者の情報のすべてです。

意思疎通や情報提供が不足すると、問題が発生する可能性があるということは、デメリットの1つと考えられます。こうしたデメリットは税理士の関与の期間が長くなるにつれて、発生しづらくなるのが通常です。

大家さんが税理士に依頼できる業務内容

それでは、大家さんとして税理士に依頼できる業務にはどのようなものがあるのでしょうか。確認していきましょう。

確定申告

もっとも一般的な税理士との関わり方は、確定申告書作成の依頼です。確定申告書作成についても、年に一度、税務申告書作成のみを依頼する場合、決算書作成を依頼する場合、帳簿書類の作成から依頼する場合などさまざまなレベルが考えられます。

賃貸経営の規模、会計等管理ソフトやパソコンの有無、事務処理を担える家族の有無などを考え、税理士への作業依頼範囲を検討なさってください。
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節税対策

前もって税理士に資料を渡しておくと、節税などのアドバイスを受けることが可能になります個人であれば10月にはその年の予想収支を出せるよう準備しましょう。法人の場合も、決算月の3か月前までに予想収支を出せるようにしておいた方がよいです。

年または年度が明けると、節税対策はほとんど出来なくなります。たとえば、令和2年分の確定申告書作成を令和3年1月に依頼しても、できる節税対策はほぼありません。節税を検討したいとのご希望であれば、依頼も資料もお早めに!です。

節税については、さまざまな業者からの提案もあります。大家さんには節税商品の売り込みが頻繁に来るものです。なかには税務上問題ある提案もあります。節税商品を買ったのに後日多額の追徴税額を負担する、との例は意外とあるものです。

税務は税法の字面だけを理解すれば適正な判断ができるほど簡単な分野ではありません。節税提案については必ず税理士と相談し、安全性を検証してください。

コンサルティング

賃貸経営に関連し、税理士にぜひ依頼していただきたいコンサルティングは、キャッシュフロー計画書の作成です。とくに不動産賃貸経営はほかの事業に比べて、長期的な予測を立てやすい事業です。

計画書の確度は比較的高くなりますので、意思決定ツールとして活用できます。新しい物件の投資計画や、損益分岐点、キャッシュフロー分岐点など、将来数値を見える化して検討することはとても有益です。コンサルティングを手掛ける税理士であればキャッシュフロー計画書はすぐに作成できます

相続税納税の心配がある場合、相続税シミュレーションや相続税対策、事業承継対策のコンサルティングを依頼することもできます。ただし税理士によっては、相続税対策などのコンサルティングを手掛けていない税理士もいます。依頼を考えている税理士がこうした業務の経験を持っているか、確認をしてみてください。

大家さんが税理士を選ぶ際のポイント

不動産や賃貸経営に精通している税理士を選ぶ際には比較検討することをおすすめしますが、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。大家さんが税理士を選ぶ際のポイントについて解説していきます。

不動産関係の節税知識が豊富か

医師に内科や外科があるように、税理士にも得手不得手があります。国際税務に詳しい税理士は、不動産の税務には詳しくないかもしれません。

賃貸経営に関連して税理士に依頼するのであれば、不動産の税務に詳しい税理士に依頼することが賢明です。より確実な仕事と、よりよい提案を期待できます。不動産に関連する所得税や法人税の特別規定は多岐に渡り、非常に複雑かつ難解で経験が必要な分野だからです。

不動産に関連した税目には、登録免許税や不動産取得税、固定資産税などもあります。登録免許税や不動産取得税は不動産の移転にともなって発生し、高額になることもあります。たとえば相続税対策として、個人所有の事業用不動産を同族法人へ売却する計画を立てたとしましょう。

この場合、発生するのは所得税や消費税だけでなく、登録免許税や不動産取得税も多額に発生する可能性があります。この見積もりが適正になされていないと、計画に狂いが発生し、資金繰りに肝を冷やすことになります。

不動産活用についてのコンサルティングを依頼する場合、所得税などの知識だけではなく、周辺税目の知識を持っている税理士に依頼をすることが賢明です

不動産にかかわる業務経験が豊富か

不動産には税法以外にも多くの法律などが関係しており、それぞれの分野に専門家が存在します。隣地との境界確定には土地家屋調査士、法的トラブルが発生すれば弁護士、有効活用にはハウスメーカー、分野を挙げればきりがありません。言うまでもなく一人の専門家が、不動産に関連したすべての知識を高度なレベルで保有し続けることは不可能です。

しかし不動産の問題に明るい専門家は、問題が発生した時の解決法の概要と、適正な相談先を知っています。不動産業務に詳しい税理士は大抵、各分野の専門家と横のつながりを持っています。問題に対してワンチームで対応できる税理士に相談できることは有益です。

提案力があるか

申告代行のみを業とする税理士もいますが、これは税理士の知見を考えると少々もったいない話です。税理士は平素から、個人の不動産所得を計算し、法人にキャッシュフロー計算書を提供し、相続税申告書を作成します。これらの知見を統合すると、有益な提案資料を作成可能です。

たとえば、物件AとBを保有している大家さんが、長男に物件A、次男に物件Bを承継させたい、と漠然と考えていたとします。この場合、遺言承継、生前承継、法人を活用した承継など、さまざまな手法が考えられます。

各手法の有利不利、税負担とキャッシュフローを明確にした資料は、有益な情報を提供します。こうした資料の作成能力、イメージを具体化する企画力、提案力のある税理士は、有用なパートナーになります

ただし提案力のある税理士はよくても、提案ばかりの税理士は要注意です。節税商品や投資提案はその内容をよく吟味してください。残念ながら、税理士の提案が常に大家さんにとって有益であるとは限りません。

説明能力があるか

不動産分野も税務分野も難解な専門用語で溢れています。ともすると専門用語で、論点をうやむやにする話し方をする専門家もいます。税理士を選定する際には、説明のわかりやすい人を選ぶことが重要です。専門用語を極力使わない、難解な規定は図を用いて説明する税理士は、説明能力の高い人です

別の観点ですが、不動産に関連する税制は複雑な面もあるので、税理士が当初の説明を誤る場合もあります。当初の誤った説明を翻す際に、論点をうやむやにするような話し方をする税理士は、顧客目線で説明能力が高い人とは言えません。常に率直で正直な説明をしてくれる税理士がよいパートナーになり得ます

同じくらい重要な点として、税理士から説明を受ける際には、わからないことを理解したフリはしないことです。説明がわからないときは、何度でも聞き返し必ず内容を理解するようにしましょう。計算過程の詳細を知る必要はありません。

しかし、どのような確定申告の内容になっているのか、その内容がご本人の意思や判断と合致しているか、その内容は金融機関や税務署にどのように映るのか、当事者意識をもって理解するようしてください。

ほとんどの税理士はそのための説明を惜しみません。逆に納税者へ説明をしたがらない税理士は、あまりおすすめではありません。

担当者との相性も重要

能力や経験は重要ですが、納税に対する基本的な考え方などに共感できることは重要です。脱税行為は許されるべきことではありませんが、確定申告内容について税務当局との見解の相違が発生する場合もあります。

当局との見解の相違が生じたときに、税理士が納税者の代理人としての立場を貫いてくれるか、税務当局に阿る立場を取るのかは、重大な違いをもたらします

また、複数名の職員を抱える税理士事務所では、税理士本人ではなく資格を有さない職員が担当者となることがあります。職員は必ずしも、所長である税理士と同じ能力や考え方を有しているとは限りません。担当者の力量や考え方に不安を感じるようであれば、放置せず所長税理士へ相談しましょう。

税理士さんはどうやって探したらいい?

税理士が事務所のホームページを開設している、又は税理士紹介サイトに登録をしている場合、ホームページや紹介サイトから情報収集できます。その税理士の得意分野、仕事内容、納税などへの考え方などチェックしましょう。

不動産会社や金融機関は定期的にセミナーや税務相談会を開催します。これらの担当税理士は、不動産税務に詳しいことを期待できます。

一番おすすめしたいのは口コミです。友人に銀行マンや会社経営者、士業関係者がいれば、その方には知り合いの税理士がいるかもしれません。お知り合いに人柄がよく不動産に詳しい税理士がいれば、紹介してもらいましょう。

税理士にとって、顧客を紹介してくれる存在は大切ですから、紹介者の為にも丁寧な仕事をしてくれることを期待できます。

税理士選定に際しては、必ず面談をして税理士の知識経験のレベルや基本的な考え方などを確認なさってください。ご自身の目で判断していただくことが重要です。

税理士に依頼したときの費用相場

税理士に依頼したときの費用は、依頼する業務内容によって異なってきます。ここでは、確定申告のみの場合、顧問契約の場合について解説していきます。

確定申告のみの場合

不動産所得の確定申告書作成のみである場合、10万円前後が一般的と考えられます小規模なアパート一軒のみ場合は5~8万円程度である場合もあります。賃貸に供する部屋数が増え、年間収入が多くなると、申告書作成報酬も上がります。年に一度の確定申告のみを依頼する場合は、税理士との連絡も確定申告期に数度ということになります。この場合、節税などのアドバイスはあまり望めません。

顧問契約の場合

賃貸経営の規模が大きくなると、帳簿作成は非常に煩雑になります。部屋毎の未収入金や前受金残高の把握、入居者入替時の修繕費や資本的支出の判断、預かり敷金の残高把握などなど、が必要となります。

物件ごとに個人の共有持分が異なる場合は、全体の収支を把握したのち、按分集計するなど、極めて複雑な計算になります。

不動産所得には5棟10室という基準があります。賃貸に供している物件数がこの基準より多い場合、事業的規模と判断されます。不動産所得が事業的規模にある場合、帳簿作成等要件充足で、青色申告控除55万円または65万円の控除を受けることが可能です。不動産所得が事業的規模にある場合は、税理士と顧問契約の締結を検討するとよいでしょう。

顧問契約の場合、毎月の顧問報酬は2~3万程度が一般的です。規模が大きくなれば顧問報酬は上がり、規模によっては確定申告時に別途費用を請求される場合もあります。

顧問契約を締結した場合は、税理士との連絡頻度は1~3ヵ月に一度程度です。年度の予想収支も早めにわかりますので、節税などのアドバイスも期待できます。前述した、キャッシュフロー計算書の作成や相続・事業承継のシミュレーションなどを依頼する場合は、通常別途料金となります。

税理士に依頼したら気を付けたいこと

税理士は依頼を受けると、預かった資料などを基に情報を整理計算し、不明点の確認と判断を依頼者へ求めます。依頼をしたとしても税理士に任せきりにせず、とくに判断が必要になる事項については必ず打合せを行ってください。

税理士に見解を求めるとしても、最終的な意思決定はご本人がなさることです。税理士はあくまでも代理人として確定申告書や帳簿書類の作成を行っているに過ぎません。その内容は物件を所有しているご本人の税金そして財産に係ることです。

また税理士にとっては、お預かりする資料と、数度の面談やメールのやり取りで知ることが、依頼主に係る情報のすべてになります。場合によっては根本的な勘違いをしてしまうことも考えられます。税理士から提供される確定申告書や提案資料の内容には必ず目を通し、ご本人の判断や意思が適正に反映されていることを確認してください

まとめ

この記事では、賃貸経営をなさっている大家さんにとっての、税理士選びのポイントを解説してきました。不動産に係る税務知識と経験、周辺分野に係る外部専門家との連携、説明能力の有無、税務当局との関わり方など、賃貸経営大家さんのよいパートナーとなり得る税理士の特徴をご紹介しました。

税理士に依頼したとしても任せきりにせず当事者意識をもって事に当たり、確定申告書などには必ず本人の意思が反映されるようにしましょう。良質な知見を有する税理士との風通しのよい関係は、必ずや財産形成の一助になるはずです。

この記事の監修者

秦 光一郎

秦 光一郎

【資格】税理士

会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。平成22年税理士法人シン総合会計設立。主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。