民泊事業を始めたらどんな税金がかかる?
事業を始める前におさえておきましょう!
目次
そもそも民泊ってなに?
民泊の法整備が進められた背景には、政府の観光立国を目指すとの方針があり、公表情報によれば、2016年当時2,400万人であった訪日外国人旅行者を、2030年には6,000万人へ増加させることを目標に掲げています。
しかし、この目標には宿泊施設の不足という問題もあり、訪日外国人受け入れ可能な施設の増加を図るため民泊事業が推進されました。民泊新法に従って民泊事業を営もうとする住宅宿泊事業者は、都道府県知事に届出を出し、その監督を受けることになっています。
民泊事業を始めるその前に
他方無視できないのは事業廃止件数で、2020年10月7日時点の事業廃止件数は7,292件です。コロナの影響も考えられますが、法施行日からわずか2年の間に、民泊の届出者の概ね4分の1が既に廃業しています。
何についても言えることですが、実際に始めてみると予想もしなかった問題が発生するもの。「こんなはずでは…」となる前に、徹底的に情報収集し、メリットとデメリット等を比較検討することが重要です。
検討すべき大きな要素の一つとして、税金があります。民泊事業を始めてみたものの、税金を納めたら手元には何も残らなかった…とならないよう、民泊事業を始めるとどのような税金が課されるのかを整理しておきましょう。
民泊と税金
①事業を始めると課される一般的な税金
所得税
この土地を後日150万円で売却しました。仮に手数料等の費用が一切掛からなかったとすると、所得は、150万円-100万円=50万円となります。この所得50万円に対して所得税が課されます。
事業税、消費税
消費税は年間の収入が1,000万円を超えると課されるようになるので、民泊事業の収入が年間1,000万円を超えた場合、消費税を納めなければなりません。消費税の課税の有無は前々年の収入を基準に判定することになっており、たとえば、令和2年に初めて事業の年間収入が1,000万円を超えた人は、令和4年分の収入から消費税が課されます。
事業税も消費税もあくまでも事業に対して課される税金です。このため、たまたま行われた不動産の売買等はこの税金の対象となりません。税法上の「事業」の考え方は後述します。
②宿泊税
たとえば、東京都であれば一人一泊当たりの宿泊料金を元に計算され、宿泊料金10,000円以上15,000円未満については100円、15,000円以上については200円と定められています。
これは東京都に所在するホテル旅館等への宿泊時に宿泊者が負担するものですが、現実にはホテル旅館等が宿泊者から宿泊料金を精算する際に預かって納税します。宿泊料金設定に係ることですので、民泊事業を行おうとする所在地が宿泊税の対象地域に該当するか調べておきましょう。
民泊事業では「所得」の区分に注意が必要
民泊事業の場合、その運営の形態に応じて「雑所得」、「不動産所得」もしくは「事業所得」のいずれかに該当することになります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
①「雑所得」に該当する場合
また、雑所得の一例として、シェアリングエコノミーに係る所得が挙げられます。本業ではない、副業による収入は雑所得として取り扱われます。
民泊事業は一般的にはシェアリングエコノミーの一形態であり、遊休財産の活用と考えられることから、副業の一形態と考えられています。このため原則として個人が民泊事業を新たに始めた場合、その収入は雑所得に分類されます。
雑所得で損失・赤字の場合は切り捨て
②「不動産所得」に該当する場合
不動産所得の場合は損益通算が可能
ただし、不動産所得には損益通算に一定の制限があり、赤字の金額のうち土地の購入に対応する借入金支払利息部分は、損益通算が認められません。
また、不動産所得は税務署長に申請することにより、青色申告の承認を得ることができます。後述しますが青色申告には幾つかの恩典があります。
③事業所得に該当する場合
税法の考え方では、事業とは、対価を得て反復、継続、独立して行われる経済活動のことを指しますが、民泊事業は遊休資産の有効活用が建前とされ、年間の宿泊日数が180日に制限されることから、事業所得と判断するうえでは、継続性に問題があると考えられます。
しかし複数の施設を民泊事業として使っているなど規模が大きい等、民泊事業が所得税法上の事業として営まれていることが明らかな場合には、その所得は事業所得とされます。
事業所得の場合は損益通算が可能
民泊事業で認められる必要経費
1. | 収入金額を得るために直接要した費用 |
2. | その年における販売費、一般管理費その他住宅宿泊事業による所得を生ずべき業務について生じた費用 |
民泊事業の必要経費で注意しておきたいこと
一般的には日数や床面積の比などで分別しますが、面積や日数よりも合理的な基準があれば、そちらを採用できます。使用する部分の床面積を計算しておくこと、事業供用日数等の記録を取っておくこと、どのような合理的基準が考えられるか等、確定申告に備えて準備しておくことが重要です。
また「不動産所得」「事業所得」に認められる青色申告の承認を受けている場合には、生計を一にする親族に対する給与等(「青色事業専従者給与」といいます)が必要経費として認められるほか、10万円又は65万円の青色申告別控除などが認められています。
減価償却とは
民泊事業で減税の対象から外れる可能性があるもの
①固定資産税
自宅の一部を民泊事業に利用し始めると、「住宅用地」ではない部分があると判断され、毎年の固定資産税が増額される恐れがあります。民泊事業の開始により、固定資産税がどの程度増える恐れがあるのか、あらかじめ計算しておきましょう。
②相続税
自宅用に使っている土地でこの制度の対象となるものを「特定居住用宅地等」といいますが、民泊事業に利用している部分は「特定居住用宅地等」ではないと判断される恐れがあります。
また、事業用に使っている土地でこの規定の対象となるものを「特定事業用宅地等」と言いますが、民泊の場合は事業と称するに至らないと判断される場合があり、小規模宅地の特例の適用が受けられない可能性があるため注意が必要です。
③所得税・住民税(譲渡所得)
このため自宅を売却した際には、3,000万円特別控除、軽減税率を始めとする各種の税負担軽減措置があるものの、やはり対象となるのは、自宅として使っていた不動産(居住用財産)に限られます。
前述の通り、民泊はある種の事業の為に自宅の一部を利用することとなりますので、民泊用事業に使用されていた部分は「居住用財産」ではないと判断され、軽減措置の対象外とされる恐れがあります。
④所得税・住民税(税額控除)
この制度の対象となる住宅は、床面積の1/2以上が専ら自己の居住の用に供するものである必要があります。そのため、自宅の床面積の1/2以上を民泊事業用に利用した場合には、住宅借入金等特別控除の適用を受けられなくなる恐れがあります。
また、民泊事業で利用する部分がご自宅の総床面積の1/2未満であったとしても、住宅借入金等特別控除は、総床面積のうち自己の生活用に利用している床面積の占める割合に対応する金額に限られることになります。
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民泊事業を始めたら確定申告は忘れずに
しかし民泊で得られた収入は、誰かが本人に変わって計算・申告・納税をしてくれることはありません。民泊をはじめて、収入が増えて、ほくほく…、と思っていたら、もしかすると数年後には税務署職員が税務調査のため訪ねて来て、思いもよらない多額の税金を請求されるかもしれません。
民泊事業を始めて収入が増えたら、税金の申告も必ず期限までに正確に行いましょう。きちんと対策をした上で確定申告をし、納税をすることが結果として一番手元にお金を残すことになります。このことを忘れないでください。
所得20万円以下の場合は確定申告が不要?
確定申告をしなかった場合は追徴課税のペナルティ!
加算税は、申告漏れ税額の多寡や事案の悪質性等に応じ、5%~50%の率、延滞税は、完納されるまでの期間に応じ、年利2.6%~14.6%の率で課されることになっています。
まとめ
所得税や相続税、固定資産税等の減税措置とも少なからず関連があり、場合によっては減税措置などの適用が受けられない可能性もあることは押さえておきましょう。
民泊事業を始められるに際しては、税理士など専門家のアドバイスを受けながら、総合的に有利不利を比較することが大切です。そして民泊事業を始めた際には、確定申告を忘れず行いましょう。
民泊事業を始めたらどんな税金がかかる?
事業を始める前におさえておきましょう!
この記事の監修者
税理士
会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。平成22年税理士法人シン総合会計設立。主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。