- 遺言書作成のルールに則っていないものは、たとえ遺言書の内容が理解できたとしても無効になることもあるため注意が必要です。
- 自筆証書遺言書保管制度を活用することで紛失や破棄のリスク減に!
- 「土地」「建物」「区分所有」で記載事項は異なります。必要事項を確認しながら作成するようにしましょう。
目次
遺言書は必要?
被相続人はすでに亡くなってしまっているため、資産をどう配分するかについては、法定相続分といって法律で決められた配分があるほか、被相続人が亡くなってから、相続人が集まって資産を配分する遺産分割協議を行うこともあります。
一方、資産の配分について、被相続人の遺志を反映させるために作成するのが遺言書です。遺言書には、誰に(法定相続人以外を指定することも可能)どのくらいの配分で資産を相続させるといった内容を記載します。
原則として、相続では被相続人の遺志を尊重するために、遺言書が書かれている場合には遺産分割協議等を行わず、遺言書どおりに資産配分を進めることになります。
遺言書は必ず書かなければならないものではありませんが、以下のようなケースに該当する場合は用意しておくべきだといえるでしょう。なお、遺言書には書き方のルールがあり、このルールを守らず書かれたものについては無効となるので注意が必要です。
遺言の種類
以下、それぞれについて見ていきましょう。
自筆証書遺言
ただし、法改正により、添付する財産目録についてはパソコンで作成したものでも有効となりました。ほかの方法と比べて、作成時に証人の立ち会いなど不要ですが、それだけに、被相続人が作成した遺言書の場所を誰にも伝えないまま亡くなってしまうと、見つけてもらえないリスクがあります。
相続人は、被相続人の死後、自筆証書遺言による方法で作成された遺言書を見つけた場合は、家庭裁判所で検認の手続きをする必要があります。検認とは、家庭裁判所により遺言書が所定のルールに則って作成されているかを確認するもので、問題がなければ検認調書が作成されます。
なお、検認前に遺言書を勝手に開封してしまった場合には5万円以下の過料が課せられるので、注意が必要です。ただし、遺言の効力自体が無効になるわけではありません。
自筆証書遺言書保管制度とは
また、上記どおり自筆証書遺言により作成された遺言書は検認手続きが必要ですが、こうした相続発生後の手続きが手間という問題がありました。
このような問題を解消するために2020年7月より、法改正がなされ自筆証書遺言書の保管制度がスタートしています。この制度は、作成した自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえるというもので、紛失や破棄のリスクがなくなるだけでなく、法務局に保管してもらっていた自筆証書遺言書については検認の手続が不要となるというメリットもあります。
また、法務局に預ける段階で法律上の要件を満たしているかを確認してもらえるので、死後、遺言書の形式が誤っていたため無効となるリスクも回避できるようになりました。
ただし、自筆証書遺言自体は無料ですが、保管制度を利用すると法務局に対して3,900円の手数料を支払う必要があります。
公正証書遺言
先述のとおり、自筆証書遺言では遺言書が見つからないといったリスクや、遺言書がルールに則って作成されておらず無効となるリスクがありますが、公正証書遺言ではそうした心配はありません。また、作成された遺言書は公証役場で保管されるため、検認の必要がありません。
こうしたことから、遺言書を作成する際には、この公正証書遺言による方法が多く選ばれていました。しかし、2020年7月より自筆証書遺言書の保管制度が始まっているため、今後はそちらの利用も増えていくことも考えられます。
なお、公正証書遺言を利用すると、相続財産が3,000~5,000万円のとき5~8万円程、1億円程度のとき5~15万円程度と、財産額に応じて費用がかかる点には注意が必要です。
※上記に加え、弁護士や司法書士にサポートを依頼した場合にはその報酬も支払う必要があります。
秘密証書遺言
また、遺言書の内容について公証人が関与しないため、相続発生後は家庭裁判所で検認の手続を受ける必要があります。なお、秘密証書遺言を行う際には公証役場に対して11,000円の手数料を支払う必要があります。
映像では遺言を残せない
もちろん、遺言書としてではなく、相続人に想いを伝えるという意味では映像を残すことは効果的です。遺言書を作成したうえで、映像制作することを考えるのもよいでしょう。
遺言が無効にならないために必要なこと
まず、初歩的なミスですが、意外と多いのが日付の記載忘れです。遺言書は、後の加筆修正などの可能性も考慮して、いつそれが書かれたかが重要となるため、正確な日付が書かれていないものは無効となります。また、先にご紹介した遺言書作成のルールを守っていないものは無効です。
そのほか、とくに不動産を遺言によって相続させる場合は、事前に登記情報を取り寄せて登記簿に記載されている内容(所在や構造、床面積等)を正確に記載する必要があり、また、一度作成した遺言書を後に加筆修正する場合もルールに則った方法で行う必要があります。不動産に関して遺言書に記載する内容と、加筆修正のルールについては以下でご説明していきます。
不動産に関わる遺言の書き方
土地
とくに地番については、普段使っている住所(住所表示)とは異なるため違和感を感じるかもしれませんが、あくまでも登記簿謄本どおりに書くことが大切です。
建物
なお、登記されていない建物を相続させる際は、登記簿謄本がでないため、役所で固定資産評価証明書などを取得して、その内容どおりに記載します。その際には、家屋番号の欄に「未登記」と記載したうえで「上記建物は未登記のため平成○○年○○月○○日付○○市長○○○○作成家屋評価証明書の記載による」のように記載するようにしましょう。
区分所有
1棟の建物の表示
敷地権の目的たる土地の表示
敷地権の表示
共有持分
未登記や仮登記の不動産も遺言書で相続させられる
これは、仮登記の不動産であっても同様です。ただし、未登記の物件については相続した後に速やかに相続人が登記する義務が発生します。
土地のまま相続するより、貸し付けている状態のほうが相続税評価額を下げられます。
活用方法を検討するなら、一括プラン請求が便利です。
土地活用プラン一括請求はこちら 無料
安心の提携企業がさまざまな土地活用プランをご提案致します
※ページ下部の「賃貸経営一括相談および土地活用プラン一括請求サービスの注意点」をご確認いただいたうえ、ご利用ください。
遺言の内容を変更する方法
変更箇所が少ない場合
変更箇所が多い場合
住所が変わっても遺言の書き直しは不要
その時点の住所や氏名は役所に公文書として残るため、死後に照会することも可能だからです。また、行政の手続により地番が変更されるケースもありますが、これについても相続後に不動産を特定することは可能なため、書き直しは不要です。
まとめ
このため、遺言書を作成する際は、公証人に確認してもらえる公正証書遺言による方法で作成されることが多いのですが、2020年7月に自筆証書遺言書の保管制度が始まったことにより、この制度を利用すれば遺言書が無効になるリスクを回避できるようになりました。
ご自身が遺言書を作成される場合には、一定の条件を満たすものとなっているか、内容を改めて見直すことをおすすめします。ご家族が取り扱いやすく、ご自身の意思を反映させた相続を実現してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士
明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。