【無効にならないために】不動産相続に関する有効な遺言書の書き方

2024.11.18更新

この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

【無効にならないために】不動産相続に関する有効な遺言書の書き方

遺言書を書く場合には、一定のルールに従う必要があります。遺言の種類や記載方法を確認の上で、有効な遺言書を用意しましょう。

この記事のポイント
  • 遺言書作成のルールに則っていないものは、たとえ遺言書の内容が理解できたとしても無効になることもあるため注意が必要です。
  • 自筆証書遺言書保管制度を活用することで紛失や破棄のリスク減に!
  • 「土地」「建物」「区分所有」で記載事項は異なります。必要事項を確認しながら作成するようにしましょう。

目次

遺言書は必要?

相続は、人が亡くなった時に、その人の持っていた資産を配偶者や子どもなど、親族に配分する制度です。亡くなって相続される人を「被相続人」、相続する人を「相続人」といいます。

被相続人はすでに亡くなってしまっているため、資産をどう配分するかについては、法定相続分といって法律で決められた配分があるほか、被相続人が亡くなってから、相続人が集まって資産を配分する遺産分割協議を行うこともあります。

一方、資産の配分について、被相続人の遺志を反映させるために作成するのが遺言書です。遺言書には、誰に(法定相続人以外を指定することも可能)どのくらいの配分で資産を相続させるといった内容を記載します。

原則として、相続では被相続人の遺志を尊重するために、遺言書が書かれている場合には遺産分割協議等を行わず、遺言書どおりに資産配分を進めることになります。

遺言書は必ず書かなければならないものではありませんが、以下のようなケースに該当する場合は用意しておくべきだといえるでしょう。なお、遺言書には書き方のルールがあり、このルールを守らず書かれたものについては無効となるので注意が必要です。

・遺産の配分を自分で決めたい
・法定相続人以外の人に相続させたい/相続させたくない人がいる
・法定相続人がいない
・多額の資産を持っていて、相続後の際、親族間のトラブルが考えられる

遺言の種類

遺言書には3つの種類があり、それぞれルールが異なります。

・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

以下、それぞれについて見ていきましょう。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、その名のとおり遺言者が自筆で作成する遺言書のことです。本文、氏名、日付のすべてを自筆する必要があり、パソコンで作成して印刷したものは無効となります。

ただし、法改正により、添付する財産目録についてはパソコンで作成したものでも有効となりました。ほかの方法と比べて、作成時に証人の立ち会いなど不要ですが、それだけに、被相続人が作成した遺言書の場所を誰にも伝えないまま亡くなってしまうと、見つけてもらえないリスクがあります。

相続人は、被相続人の死後、自筆証書遺言による方法で作成された遺言書を見つけた場合は、家庭裁判所で検認の手続きをする必要があります。検認とは、家庭裁判所により遺言書が所定のルールに則って作成されているかを確認するもので、問題がなければ検認調書が作成されます。

なお、検認前に遺言書を勝手に開封してしまった場合には5万円以下の過料が課せられるので、注意が必要です。ただし、遺言の効力自体が無効になるわけではありません。

自筆証書遺言書保管制度とは

自筆証書遺言は作成後、自宅で保管されるケースがほとんどで、被相続人が亡くなった後、遺言書が見つからなかったり破棄されてしまったりするリスクがあります。

また、上記どおり自筆証書遺言により作成された遺言書は検認手続きが必要ですが、こうした相続発生後の手続きが手間という問題がありました。

このような問題を解消するために2020年7月より、法改正がなされ自筆証書遺言書の保管制度がスタートしています。この制度は、作成した自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえるというもので、紛失や破棄のリスクがなくなるだけでなく、法務局に保管してもらっていた自筆証書遺言書については検認の手続が不要となるというメリットもあります。

また、法務局に預ける段階で法律上の要件を満たしているかを確認してもらえるので、死後、遺言書の形式が誤っていたため無効となるリスクも回避できるようになりました。

ただし、自筆証書遺言自体は無料ですが、保管制度を利用すると法務局に対して3,900円の手数料を支払う必要があります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で、公証人の立ち会いのもと、あらかじめ定めた日程で証人2人と一緒に遺言書の作成を行うものです。

先述のとおり、自筆証書遺言では遺言書が見つからないといったリスクや、遺言書がルールに則って作成されておらず無効となるリスクがありますが、公正証書遺言ではそうした心配はありません。また、作成された遺言書は公証役場で保管されるため、検認の必要がありません。

こうしたことから、遺言書を作成する際には、この公正証書遺言による方法が多く選ばれていました。しかし、2020年7月より自筆証書遺言書の保管制度が始まっているため、今後はそちらの利用も増えていくことも考えられます。

なお、公正証書遺言を利用すると、相続財産が3,000~5,000万円のとき5~8万円程、1億円程度のとき5~15万円程度と、財産額に応じて費用がかかる点には注意が必要です。

※上記に加え、弁護士や司法書士にサポートを依頼した場合にはその報酬も支払う必要があります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は遺言の内容を公証人や承認に秘密にしたまま保管してもらい、公証人に遺言の存在のみを証明してもらう方法のことです。秘密証書遺言は、あらかじめ遺言書を作成し封をしたうえで、証人2人と日程を合わせて公証役場に出向かい、公証人立ち会いのもと、遺言書を提出します。

また、遺言書の内容について公証人が関与しないため、相続発生後は家庭裁判所で検認の手続を受ける必要があります。なお、秘密証書遺言を行う際には公証役場に対して11,000円の手数料を支払う必要があります。

映像では遺言を残せない

ビデオやスマホで映像を撮影して、被相続人の想いを相続人に伝えたいと考える方もいらっしゃいます。確かに、被相続人の顔を見ながら、本人の言葉で語られた方が、家族への想いは伝わりやすいように思いますが、結論からいうと、こうした映像を遺言書の代わりとすることはできません。遺言書は、あくまでも定められたルールに則って文書で残す必要があります。

もちろん、遺言書としてではなく、相続人に想いを伝えるという意味では映像を残すことは効果的です。遺言書を作成したうえで、映像制作することを考えるのもよいでしょう。

遺言が無効にならないために必要なこと

遺言書の作成にはルールが定められており、そのルールに則っていないものは、例え遺言書の内容を見て理解できる場合であったとしても、遺言が無効になることもあるため注意が必要です。具体的には、以下のようなケースでは遺言書が無効になる可能性があります。

・日付がないなど必要な内容が記載されていない
・作成のルールを守っていない
・不動産に関する情報があいまい
・加筆修正のルールを守っていない

まず、初歩的なミスですが、意外と多いのが日付の記載忘れです。遺言書は、後の加筆修正などの可能性も考慮して、いつそれが書かれたかが重要となるため、正確な日付が書かれていないものは無効となります。また、先にご紹介した遺言書作成のルールを守っていないものは無効です。

そのほか、とくに不動産を遺言によって相続させる場合は、事前に登記情報を取り寄せて登記簿に記載されている内容(所在や構造、床面積等)を正確に記載する必要があり、また、一度作成した遺言書を後に加筆修正する場合もルールに則った方法で行う必要があります。不動産に関して遺言書に記載する内容と、加筆修正のルールについては以下でご説明していきます。

不動産に関わる遺言の書き方

ここでは、とくに不動産に関わる内容を中心に遺言の書き方についてお伝えしていきたいと思います。

土地

土地については、法務局で最新の登記簿謄本を取得したうえで登記簿謄本に記載の通り、以下の項目を書くようにしましょう。

・所在
・地番
・地目
・地積

とくに地番については、普段使っている住所(住所表示)とは異なるため違和感を感じるかもしれませんが、あくまでも登記簿謄本どおりに書くことが大切です。

建物

次に、建物についても登記簿謄本どおり、以下の項目を記入します。

・所在
・家屋番号
・居宅
・構造
・床面積

なお、登記されていない建物を相続させる際は、登記簿謄本がでないため、役所で固定資産評価証明書などを取得して、その内容どおりに記載します。その際には、家屋番号の欄に「未登記」と記載したうえで「上記建物は未登記のため平成○○年○○月○○日付○○市長○○○○作成家屋評価証明書の記載による」のように記載するようにしましょう。

区分所有

相続させる不動産がマンションの場合、区分所有権と敷地権を保有していることになります。この場合、「区分所有建物及び敷地権」として、登記簿謄本どおりに以下の情報を記載していきます。

1棟の建物の表示

・所在
・建物の名称
・構造
・土地の符号
・地積

敷地権の目的たる土地の表示

・家屋番号
・建物の名称
・種類
・構造
・床面積

敷地権の表示

・土地の符号
・敷地権の種類
・敷地権の割合

共有持分

共有持分の不動産を相続させるケースや、複数の相続人に分けて持分を相続させるケースでは、土地や建物の所在や面積などを記載した後、「持分の〇分の〇」と記載します。

未登記や仮登記の不動産も遺言書で相続させられる

通常、未登記の建物などは法律的手続きができません。しかし、相続の場合は手続きをすべき本来の所有者が死亡してしまっているわけですから、手続きしようがなく、先述のとおり、未登記の建物でも遺言書で相続させられることになっています。

これは、仮登記の不動産であっても同様です。ただし、未登記の物件については相続した後に速やかに相続人が登記する義務が発生します。

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遺言の内容を変更する方法

遺言書は一度作成した後でも、加筆修正をすることができます。しかし、加筆修正もルールに則った方法で行わないと無効になるため、注意が必要です。

変更箇所が少ない場合

自筆証書遺言においては、遺言書の内容を加筆修正する場合、遺言者自身が訂正したうえで、変更の場所を指示し、変更したことを付記します。また、変更した場所に押印したうえで、付記した部分に署名しなければなりません。

変更箇所が多い場合

変更箇所が多い場合は加筆修正ではなく、遺言書自体をいちから作り直すことを考えた方がよいでしょう。遺言書が複数ある場合は、日付が新しいものが効力を生じることになっています。なお、公正証書遺言の場合は、加筆修正といったことができないため、変更したい場合は再度遺言書を作成し直し、最初の方法と同じ方法で遺言書を提出する必要があります。

住所が変わっても遺言の書き直しは不要

遺言書は生前、どのタイミングで作成してもよいため、中には、遺言書を作成した後に引越しして住所が変わったり、結婚や離婚をして氏名が変わったりするケースもあるでしょう。こうしたケースでも、基本的に遺言書を書き直す必要はないとされています。

その時点の住所や氏名は役所に公文書として残るため、死後に照会することも可能だからです。また、行政の手続により地番が変更されるケースもありますが、これについても相続後に不動産を特定することは可能なため、書き直しは不要です。

まとめ

相続財産に不動産があるケースを中心に、遺言書の書き方についてお伝えしました。遺言書には作成のルールがあり、このルールに則って書かないと無効になるリスクがあります。

このため、遺言書を作成する際は、公証人に確認してもらえる公正証書遺言による方法で作成されることが多いのですが、2020年7月に自筆証書遺言書の保管制度が始まったことにより、この制度を利用すれば遺言書が無効になるリスクを回避できるようになりました。

ご自身が遺言書を作成される場合には、一定の条件を満たすものとなっているか、内容を改めて見直すことをおすすめします。ご家族が取り扱いやすく、ご自身の意思を反映させた相続を実現してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

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