フリーレント期間の会計処理はどうすればいい?2つの方法をご紹介します

2024.07.17更新

この記事の監修者

フリーレント期間の会計処理はどうすればいい?2つの方法をご紹介します

フリーレントを活用している大家さんに、この2種類の方法について、会計処理の際に気をつけるべきことも合わせてお伝えします。

空室対策に有効と言われるフリーレント。
会計処理の方法も理解し、トータルのキャッシュフローを改善していきましょう。

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目次

フリーレントは空室対策のひとつ

賃貸経営では、安定した家賃収入を得るために空室を防ぐための対策が重要です。たとえば、家賃を減額する、敷金・礼金を無料にするなどのほか、フリーレントも効果的な空室対策として大家さんに採用されています。

フリーレントとは、一定期間の家賃を無料にするという契約方法です。設定した期間分だけ家賃収入が減ってしまいますが、敷金・礼金を無料にした場合と同様、入居者の初期費用の負担が軽減されるため、入居者にとって魅力的な物件になります。家賃が無料と聞くと、入居者側のみメリットがありそうですが、大家さん側にもメリットがあります。

フリーレントについては以下の記事で詳しく説明していますので合わせてご覧ください。
以下より、それぞれのメリットについて見ていきましょう。

入居者にとってのメリット

入居者にとってのメリットは大きく分けて2つあります。1つ目のメリットは、物件の契約を行う際の初期費用を抑えられる点です。

入居者が物件の契約を行う際に支払う費用は家賃だけではなく、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・火災保険料といった初期費用がかかるため、家賃の5倍程度は初期費用として準備しておく必要があります。

しかし、フリーレントでは前家賃の費用を抑えられるため、その分を引っ越しなどの費用に回すことが可能になるのです。

2つ目のメリットは、二重家賃を防げる点です。一般的に、賃貸物件を解約する際は、1ヶ月前に退去通知を行う必要があり、退去通知を行って、すぐに新しい物件が見つかると、現在の物件と新しい物件の両方の家賃を支払わなければなりません。

しかし、フリーレントでは入居時の家賃が請求されないため、仮に二重家賃が生じるような状況になっても元の物件の家賃だけで済むため、二重家賃を防ぐことができます。

大家さんにとってのメリット

大家さんにとってのメリットも大きく分けて2つあります。1つ目のメリットは、フリーレントによって入居者が集まりやすくなる点です。

「フリーレントにした場合、大家さんの負担が大きくなるのでは?」と思った人もいるかもしれませんが、何もしないで空室期間が長くなるよりも、フリーレントですぐに空室が埋まった方が大家さんにとっては得なのです。

2つ目のメリットは、一時的に収入が減少するだけで済む点です。空室対策の中には家賃を下げるという方法もありますが、一度家賃を下げると入居者が退去するまでその家賃が継続することになるため、長期的な視点で考えると利益を大きく減らすことになります。

しかし、フリーレントの場合には家賃を下げることなく、フリーレントの期間だけ空室期間が長くなっただけなので一時的に収入が減るだけです。

例えば、1か月の家賃が10万円で1か月フリーレント期間を設定して契約が成立した場合には、最初の1か月だけ家賃収入が0であるものの、翌月からは通常通りの10万円が得られます。長期的な目線で考えると、家賃を減額する場合よりも、フリーレントの方が安定した経営につなげやすいと言えるでしょう。

初めてフリーレントを採用した大家さんへ

賃貸経営によって得られた家賃収入は、不動産所得として会計処理を行う必要があります。

一般的な賃貸契約の場合には、お金の流れに合わせて会計処理を行えば問題ありませんが、初めてフリーレントを採用した大家さんの中には、入居者がいるにもかかわらず家賃が0円である状況を、どう会計処理すればいいのか悩んでしまう人も多いはずです。

具体的に、会計処理の方法を見ていきましょう。

フリーレント期間の会計処理は2パターン

フリーレント期間の会計処理の方法は、大きく以下の2つのパターンに分類されます。

・フリーレント期間中は計上しないパターン
・賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターン

家賃月12万円、契約期間2年、フリーレント1ヶ月、期間内に得られる家賃は12万円×(24ヶ月-1ヶ月)=276万円という条件で、それぞれ会計処理の方法について見ていきましょう。

1. フリーレント期間中は計上しないパターン

フリーレントの期間は収入が生じていないと考え、計上しないパターンです。フリーレント1か月の場合、その期間は空室期間と捉え、入居2か月目から通常の計上方法で処理します。

処理方法

フリーレント期間中は計上しないパターンの処理方法はとてもシンプルで、フリーレント期間中は、計上しないため仕分けとしては何も記載しません。

今回の条件では、フリーレント期間中の1ヶ月目は何も記載せず、フリーレント期間が終了した2ヶ月目以降は、借方に地代家賃12万円、貸方に現預金12万円を記載さえすれば会計処理は完了です。

消費税の取り扱い

フリーレント期間中は計上しないパターンでの消費税の取り扱いは、フリーレント期間の終了時に処理します。今回の条件では、フリーレント期間中である1ヶ月目の消費税は仕分けに何も記載されていないので処理する必要がありません。2ヶ月目以降は家賃収入の12万円を消費税の課税売上として処理することになります。

2. 賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターン

賃料総額を賃貸期間(フリーレント期間を含む)で案分して計上するパターンです。フリーレント期間中は計上しないパターンよりも、少し計算方法が複雑になります。

処理方法

まずは、フリーレント期間を含む1ヶ月の家賃収入がいくらかを求めます。今回の条件では、契約期間の家賃総額は276万円で契約期間は2年なので、276万円÷24ヶ月=11万5千円です。

こちらはフリーレント期間が終了した後だけでなく、フリーレント期間中も会計処理を行います。

フリーレント期間中は、借方に地代家賃11万5千円、貸方に未払金11万5千円を記載し、フリーレント期間が終了した2ヶ月目以降は、借方に地代家賃11万5千円と未払金5千円、貸方に現預金12万円を記載します。差額を未払金として会計処理することを忘れないようにしましょう。

消費税の取り扱い

賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターンでの消費税の取り扱いは、フリーレント期間を含めて処理します。

今回の条件では、フリーレント期間を含めて、案分して算出した家賃収入の11万5千円を消費税の課税売上として処理することになります。案分前の12万円に対してではないので注意しましょう。

どちらの方法で会計処理した方がいい?

会計処理の複雑さや手間などを考慮すると、フリーレント期間中は計上しないパターンの方が賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターンよりも会計処理がスムーズです。

実際、フリーレント期間中は計上しないパターンが用いられているのが一般的なので、その他の会計処理の方法として、賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターンもあると覚えておく程度で良いでしょう。

※計上方法は、税理士の方とも事前にご確認ください。

会計処理の際に気をつけること

フリーレント期間中は計上しないパターンは、シンプルで理解しやすいというメリットがあるため、一般的によく用いられています。

しかし、契約期間中に解約できないという特約が記載された賃貸契約を締結した場合には、フリーレント期間中は計上しないパターンをあまり用いません。では、どのように会計処理を行うのかについて見ていきましょう。

中途解約に関する特約の有無を確認

中途解約に関する特約が賃貸契約に含まれている場合は、慣例的に賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターンを用います。

その理由は、中途解約できないということは、契約期間満了までの賃料総額が確定しているということになるためです。賃料総額が確定しているのであれば、契約期間で割って1ヶ月ごとに会計処理を行っても問題ないため、賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターンが用いられます。

中途解約に関する特約を記載する際は注意

中途解約に関する特約には、契約期間が○年で違約金が△円などのように、契約期間内に解約した場合のペナルティを合わせて記載しておくのが一般的です。また、違約金はいくらでもいいというわけではありません。

フリーレント期間中の家賃が妥当とされるため、大きな金額を記載して、後でトラブルにならないように注意しましょう。

まとめ

フリーレントの会計処理について説明してきました。会計処理の方法として、「フリーレント期間中は計上しないパターン」「賃料総額を賃貸期間で分割して計上するパターン」の2つがありますが、特に、会計方法が明確にルール化されているわけではなく、シンプルで手間が省けるという理由から前者が一般的とされています。

一方で、賃貸契約書に中途解約が不可とされる特約が付与されている場合は、契約期間満了までの賃料総額が確定していると見なされ、後者の方法が慣例的に用いられています。

会計処理方法に明確な決まりはないものの、フリーレントを採用する際には、状況に応じて会計処理方法が異なる可能性があるため、上記2つのパターンについてしっかり知識を入れておきましょう。

空室対策に有効と言われるフリーレント。
会計処理の方法も理解し、トータルのキャッシュフローを改善していきましょう。

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●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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