アパート建て替え費用ってどれくらい?現状維持、フルリフォームと比較検討をしてみよう

2024.03.27更新

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

アパート建て替え費用ってどれくらい?現状維持、フルリフォームと比較検討をしてみよう

アパートの建て替えを検討している大家さんへ、建て替え、現状維持、フルリフォームそれぞれのパターンについてご紹介します。

目次

築古アパートにありがちな空室問題

新築当初は、満室経営ができていたアパートでも、築年数を重ねるにつれて空室が増えてきてしまったという悩みを抱える大家さんは少なくありません。入居者の立場から考えてみれば、立地や賃料、その他サービスがさほど変わらないのであれば、古いアパートよりも新しいアパートを選びたいと思うのは当然の心理です。

また、入居者が求めるアパートの要素(設備、間取り等)は時代によって変化していきます。新しいアパートには当然のように備わっている設備やサービスが、古いアパートには備わっていないということもあります。とはいえ、築古アパートの大家さんが、一朝一夕に、設備の取替やリフォーム、サービスの追加を行うことは物理的、コスト的に限界がある場合も考えられます。

空室対策のためのアパート建て替え

そのため、少しでも空室が生じることを回避するために、賃料の引き下げを検討する大家さんも多いでしょう。しかし、賃料の引き下げによって入居者が増えたとしても、新築当初と比較するとキャッシュフローの悪化は避けることができませんし、賃料の引き下げには限界もあります。

このように、リフォームや賃料の引き下げのみでの対応には限界もあるため、アパート経営を継続していきたいと考える際には、大きなコストはかかるものの建て替えを検討しなければならない時期が到来すると考えておいた方がよいでしょう。

アパート建て替えに必要な費用

築古アパートを所有する大家さんにとって、いずれは検討する時期が到来する建て替え。そもそも、アパートを建て替える場合、費用・期間をどのように考えておけばよいのでしょうか。

解体費用

アパートを建て替える際、既存のアパートを解体する必要があります。そのための解体費用を用意しなければなりません。解体費用は、アパートの規模や立地によって異なります。

工事車両や重機などの出入りが容易にできるなど、解体作業が行いやすい環境であれば費用も平均的な金額となりますが、解体作業を行いづらい環境因子の多さに伴って上乗せ費用が必要となる可能性があります。

平均的な金額はアパートの規模、エリアによっても異なるため一概に目安を提示することは難しいでしょう。いくつかの解体業者に見積もりをとって、費用相場を把握しておくことが大切です。

建設費用

アパートを解体した後、新しくアパートを建設する費用が必要です。どのようなアパートを建設するかによって、その費用は異なります。どのような規模(坪数、階数など)および構造(木造、鉄骨造など)のアパートにするのかを大家さん自身も考えた上で、いくつかの建設業者からの提案、見積もりをとりましょう。
また、アパートの構造によって、耐用年数も異なります。耐用年数とは、税務上の減価償却を行うことができる期間のことですが、「使用に耐えうることができる期間(寿命)」の目安としてとらえることもできるものです。耐用年数を踏まえ、建て替えた後、アパート経営をいつまで大家さん自ら行うのか、リタイア後はアパートをどうするのかについて合わせて考えておくことは大切です。

(参考)アパート構造による耐用年数

建物構造耐用年数
木造22年
軽量鉄骨造19~27年
重量鉄骨造34年
鉄骨鉄筋コンクリート造47年

退去費用

建て替えのための解体や建設を行うためには、入居者に退去してもらう、立ち退きの依頼を行う必要もあります。その際には、立ち退きは、賃貸借契約期間満了の6か月前までに行う必要があるほか、立退料(引越し代など)が必要となる可能性もあります。トラブルに発展するケースもあるため、弁護士と相談しながら、誠意をもって、慎重に進めていく必要があります。

建て替え費用を抑えるには

大きなコストがかかる建て替え。少しでもその費用を抑えるためには、まずは複数の業者から提案と見積もりをもらうことが大切です。相場観を把握しながら、コストパフォーマンスの高い業者を選択しましょう。

そのほかにも、補助金の活用を考えるのも一案です。自治体によっては、老朽化建物の建て替えに対して補助金が出る可能性もあります。自治体や建設業者に問い合わせて情報収集をしておくとよいでしょう。

また、退去費用を抑えるためには賃貸借契約時に、定期借家契約(契約期間満了により、更新されることなく契約終了となる賃貸借契約)での賃貸借契約締結をするのも有効な手段です。

現状維持とフルリフォームと建て替えを比較

築古アパート建て替える以外に、「フルリフォーム」「現状維持」といった選択肢もあります。ただし、各選択肢によって費用規模は異なります(建て替え>フルリフォーム>現状維持)。どの選択肢を選ぶ場合でも収支シミュレーションを行い、計画性をもって進めていくことが重要なのはいうまでもありません。

例えば、1R(20m2)の部屋が6戸あるアパート(軽量鉄骨造)を建て替える場合、解体費を含めておよそ3,500万円程度かかりますが、フルリフォームをする場合は1,500万円程度で済む場合があります。

※エリアなどの諸条件により変動するため、上記はあくまで一例です。

各選択肢のメリットとデメリット

建て替え、フルリフォーム、現状維持ではさまざまな違いが出てきます。それぞれのメリット・デメリットについて表にまとめました。

メリットデメリット
建て替え・自由設計が可能
・人気の設備や間取りにできる
・担保価値が高い
・費用が多額
・税金負担が生じる
フルリフォーム・建て替えよりも低コスト
・建て替えよりも工期が短い
・既存躯体等の制限を受ける
現状維持・費用がかからない・賃料の見直しが必要

下記で詳しく見ていきましょう。

建て替え

メリット

既存のアパートを解体し、ゼロから建設を行うため、自由に設計を行うことができます。そのため、築古アパートにありがちな現在のトレンドとは異なる間取りや設備を、現在のトレンドに合わせて一新することが可能です。そのため、入居率、入居者満足の向上を期待することができます。なお、建て替えることで新築物件となり、担保価値も上がるため、フルリフォームと比較すると承認を受けられる融資規模は大きいといえます。

デメリット

先にも述べた通り、建て替えは既存の入居者の立ち退き依頼・交渉から始まり、解体、建設着工、引渡しまでに長い期間を要することになりますし、フルリフォームよりもコストがかかります。なお、法改正の状況によっては、既存のアパートと同規模のアパートを建てることが難しい可能性もあります。そのほか、新築物件建設時と同様、不動産取得税などがかかることになることもデメリットとして挙げられます。

フルリフォーム

メリット

建て替えと比較するとコストが低いことがメリットでしょう。また、既存アパートの躯体等は残して、間取りや設備や内装などをリフォームしていくことになるため、建て替えに比べると工期も短くなります

デメリット

フルリフォームは、原則として躯体等は残して活用するのが一般的ですが、劣化が激しい場合はその補修費用がかかる場合もあります。なお、解体してゼロから建設をする建て替えと比較すると、当然ながら自由度が低いことはデメリットといえるでしょう。

現状維持

メリット

現状維持の最大のメリットはコストがかからないことです。近い将来、大家さん自らアパート経営を行えなくなったとき、売却や事業承継を考えないというケースにおいては、建て替えやフルリフォームを検討する必要性は低いかもしれません。

デメリット

建て替えやフルリフォームを行わず、築古アパートでのアパート経営を行う際、入居率を上げるためには賃料の引き下げを考える必要もあるでしょう。賃料の引き下げでキャッシュフローの悪化も考えられるため、固定費等の支出、空室の発生を想定し、賃料収入がいくらまで減少してもアパート経営を維持できるか、シミュレーションを行っておくことが必要です。

まとめ

築古アパートの空室リスク回避、収益率の改善に対して、建て替えは費用がかかるものの有効な手段であるといえます。建て替えの検討に際して、かかる費用について熟慮することはもちろんのことですが、建て替え後、大家さん自らがアパート経営を行えなくなった場合、どのようにしていくのか(売却、事業承継など)、出口戦略についても考えておくことは重要なことです。建て替えは、専門家や家族と相談しながら、慎重に計画性をもって進めていくようにしましょう。

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
●また、具体的なご相談事項については、各種の専門家(税理士、司法書士、弁護士等)や関係当局に個別にお問合わせください。