退去アンケートの大切さ、理解していますか
「退去アンケート」とは、入居者の退去理由や意見を聞くために行うアンケートで、賃貸経営において、今後の退去防止の方策も立てることができる非常に貴重なデータとなります。
たとえば家賃が高いというようなネガティブな意見を取得できれば、今後の空室対策を考えるきっかけになります。
逆にポジティブな意見として、気に入っていたところや、今後取り入れるともっとよくなる設備などの意見があれば、そういった面を積極的に伸ばしていくことも可能です。
退去アンケートはできる限り実施するようにし、今後の賃貸経営にしっかり役立てていきましょう。
入居者が退去する理由を理解していますか?
まずは入居者が退去する理由にしっかり向き合い、理解するようにしましょう。入居者からの退去届をただ機械的に処理していては、空室対策に生かすことができません。
次に住む入居者のためにも、本音の意見をしっかりともらって、日ごろ気が付かない物件の弱みや問題点を把握していきましょう。物件から離れた所に住んでいる大家さんにも、効率的に意見を収集できる良い機会ではないでしょうか。
アンケートの回答から空室になる原因を調査しよう!
退去アンケートの回答をもとに、空室になる原因をしっかり調査・分析しましょう。退去者の手間を取らせないように〇✕形式などを含めると、ていねいな回答をもらえる率が高まります。
表面的な退去理由
進学や就職、転勤、結婚など、ライフイベントに合わせて退去せざるを得ないというケースも多いでしょう。これらは物件に問題があるわけではなく、仕方がない理由による退去だと言えます。しかし、本当のことを書きづらくて、表向きの理由で回答している場合もあります。
本音はこんな理由かもしれない…
たとえば近隣に比べて家賃が高い、騒音問題などの近隣トラブルなどが退去理由となっている可能性もあります。管理会社の対応が気に入らないということも考えらえますし、さまざまな本音があるはずです。
ここからは退去理由と空室対策のいろいろなパターンについて見ていきます。
退去理由が契約条件面の場合
家賃や物件の使用方法など、契約条件を理由に退去する入居者もいます。ここでは代表的な理由と空室対策について解説します。
家賃が高い
「家賃が高い」という入居者の気持ちは致命的です。家賃は毎月意識されていますし、家賃が安い物件があれば積極的に住み替えたいと考える入居者は多いです。
家賃相場・競合調査
家賃が退去理由の場合の空室対策としては、まず大家さんは近隣の家賃相場や、競合する物件がいくらで貸し出されているのかを調査しましょう。
ご自身の物件が、周辺家賃に比べて著しく高いなどの状況があった場合には、家賃の改定も視野に入れて次の入居者募集につなげましょう。また家賃相場や競合調査は定期的に行うことをおすすめします。
家賃は据え置き、2人入居可などの条件を緩和する
家賃は一度下げてしまうと次に上げることが難しいため、家賃を下げずに据え置いて、賃貸借契約の条件を緩和するという空室対策もあります。たとえば1DKを2人入居可にしたり、ペット可や無料インターネットを導入するのも有効です。
更新料が高い
賃貸借契約の更新時期に発生する更新料が高いと感じる場合には、退去率が高くなることがあります。入居者にとっては更新料に家賃0.5か月分~1か月分の出費がかさむわけですから「更新料を払うくらいならその金額を使ってもっとよい物件へ引越ししよう」と考える人も少なくありません。
更新料ゼロの検討
更新月に家賃の支払いが増えることが退去理由となることがあります。更新時期の退去者が多い場合には、更新料をゼロにすることを検討してみましょう。
近年は更新料ゼロの物件も増えつつあるうえ、敷金・礼金ゼロで気軽に住み替えられる賃貸物件もあるため、住み替えによる退去の防止が期待できます。
退去理由が管理面の場合
もし退去者の不満が管理面だとすれば、入居者の生活環境に直結している分、退去につながる可能性も高いでしょう。さまざまなポイントがあるため、1つずつしっかり押さえていきましょう。
物件の見た目、周辺環境に難を感じる
物件の見た目や周辺環境が乱雑な場合、入居者は「ここに住み続けたくない」という気持ちになってしまいます。
物件・周辺の清掃をこまめに行う
物件や周辺の清掃が行き届いていなければ、退去だけでなく次の入居者もなかなか見つからなくなります。物件の見回りや清掃の頻度を見直し、成果の確認もしっかり行いましょう。
設備や建物の老朽化
設備や建物の老朽化は、入居者の利便性や危険性に関わるだけでなく、心情にも大きなマイナスとなります。
設備の交換・修繕の検討
古くなった設備は、適宜交換や修繕が必要です。設備の有無で入居を決める入居者も多く、設備は生活の利便性に直結するため、しっかりと対応しましょう。
修繕はいまや義務!放置していると家賃が減額される
入居者が原因で修繕が必要な場合は別ですが、大家さんには賃貸物件に関する修繕の義務があります。2020年4月からの改正民法により、賃貸物件の一部が使用できなくなった場合には家賃が減額されることになっているため、これからはとくに注意が必要です。
管理会社に難がある
たとえば「緊急時に管理会社に連絡がつかない」、「入居者の要望が聞き入れられない」という場合は退去原因になります。
管理会社の見直しを検討する
入居者からの要望が管理会社で止まってしまっていることもあるため、注意が必要です。目に見えるトラブルがなくとも、管理会社を変更することで退去率が改善したという例もあります。
退去理由が人や立地の場合
近隣住人とのトラブルや、立地条件が悪いことも退去理由となります。
騒音トラブル
マンションやアパートは共同生活の場であるため、近隣からの騒音をストレスに退去するケースがよく見られます。
掲示板、各入居者へ連絡
建物の構造上、騒音は意外に場所の特定が難しく、入居者が思っていた部屋とは違う部屋が原因だったということがあります。まずは掲示板やポスティングにて、騒音を出さないよう各入居者にお願いしましょう。
入居前に契約内容を細かく設定する
「子どもを走らせない」大人数で騒がない」というように、契約内容に騒音に関する条項を盛り込んでおくことで、騒音トラブルが起こったときに毅然とした対応が取りやすくなります。
通勤・通学に不便な立地・アクセスがしづらい立地
立地条件の改善は困難であるため、大家さんとして対策できることをいくつか紹介していきます。
付加価値をつけてターゲットの間口を広げる
内装をDIY可としたり、ペット用シャワーの設置などで付加価値を付けることができます。入居者がもっと長く住みたいと思える物件になれば、退去率を抑えられます。
駐輪場・駐車場を付ける
公共交通機関を利用しづらい立地では駐輪場・駐車場の整備が重要です。都心部には駐車場がない物件も多いため、今の物件に住み続けるメリットの1つになります。
退去予防も対策をしよう
退去率を抑えるためには、退去理由となる原因をうまく取り除き、できるだけ長く今の家に住み続けたいという気持ちを入居者に持ってもらうことが大切です。大家さんのひと工夫だけでも退去予防策につながります。ここではその一例を紹介していきましょう。
入居者とコミュニケーションをとる
大家さんと入居者の間にコミュニケーションがあることで風通しがよくなり、物件や大家さんに対する安心感が増加することで退去率を抑えられるようになります。
近年はLINEなどのSNSやメールを利用して手軽にコミュニケーションをとることができるため、空室対策として積極的に取り入れてみましょう。
大家さんとの直接のコミュニケーションでは、管理会社には言いづらいような要望なども聞くことができ、改善も迅速に行える可能性があるため、双方にとってのメリットを期待できます。
長期入居特典の付与
できるだけ入居者に長く住み続けてもらうため、入居継続年数に応じて特典をプレゼントするという空室対策の方法もあります。たとえば家具や家電のほか、自由に使える商品券をプレゼントする場合もありますし、1か月分の家賃をフリーレントとして無料にすることなども有効です。
費用対効果をふまえてよく検討しよう
退去理由には入居者によってさまざまです。効果的な空室対策について紹介してきましたが、何らかの対策をとろうとすれば、大家さんに費用的な負担が多少なりとも発生するでしょう。
たとえば家賃を下げるのであれば、支出はなくとも収入が減りますし、修繕などにはまとまったお金が必要です。費用対効果をしっかりふまえて、どのような空室対策をとっていくかはよく検討するようにしましょう。
まとめ
退去アンケートは、入居者の退去理由を把握し、今後の空室対策に役立てることができる有効な意見収集です。退去アンケートの回答から、退去理由を深く探ってみましょう。家賃などの条件面や管理会社の対応、近隣トラブルや立地など、管理会社任せでは見えなかったさまざまな問題に気が付けるかもしれません。
退去者は、ご自身の物件の住み心地を誰よりも知っている優良アドバイザーです。費用対効果をふまえながら、うまく改善を検討していきましょう。
この記事の監修者
吉田 成志 宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー/マンション管理士/消防設備士
専任の宅建士として不動産仲介会社に従事した後、マンション管理士・消防設備士として独立。宅建士をはじめとした幅広い知識や経験を生かし、不動産売買や賃貸時に気になる疑問点の相談なども担当している。
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