空室対策として大家さんができること
大家さんが賃貸経営を行ううえで、空室期間が長くなると家賃収入が無くなるため、空室対策を行うことが大切です。空室対策として大家さんにできることといえば、以下のようなものがあります。
・家賃などの条件を変更する |
・掲載用の物件の写真を魅力的なものに変える |
・複数の不動産会社に客付け依頼をする(管理会社と要相談) |
・共用部の清掃 |
・新たな設備の追加 |
・リフォーム |
など
家賃などの条件変更は簡単に行えますが、家賃を値下げすればもちろん収入も下がってしまいますし、ローンの支払いとの兼ね合いもあるでしょう。また、設備の追加やリフォームの場合は入居者のニーズや費用対効果を考えて行わないと、費用をかけても空室が埋まらないということになりかねません。
入居者の声を聞くということ
ご自身の物件に住んでいる入居者の声を聞いたことがありますか?入居者は、実際に暮らしているからこそわかる情報を持っています。そんな入居者の声に耳を傾けることで、空室の原因を探ったり、今後の賃貸管理に活かしたりすることができるようになるのです。
そこで今回は、入居者の声を聞くための「退去者アンケート」についてご紹介します。賃貸経営をしている大家さんは、ぜひ参考にしてみてください。
退去者アンケートの目的
退去者アンケートを行うことで、「入居者は何が原因で退去をしたのか」という理由がわかります。退去原因には、「卒業のため」「結婚のため」などの物件とは関係のない理由、「更新料が高い」「家賃が高いので生活に響く」などの契約条件に関する理由、「設備不具合が多い」「管理会社の対応が悪い」などの管理面での理由などが挙げられます。
退去者が出ると退去後のクリーニングや入居者募集などの手間やお金がかかりますから、入居者にはなるべく長く住んでいただきたいですよね。退去者アンケートを行うことにより、入居者の潜在的な不満や改善点を知ることができるため、空室対策や賃貸管理の対応に活かすことができるのです。
空室対策に退去者アンケートが有効な理由
ここでは、退去者アンケートが空室対策に役立つ理由について解説します。
1.退去理由がわかる
退去者アンケートを行うことにより、退去する理由がわかります。設備の不具合や契約条件への不満など、退去する理由がわかれば退去を防ぐための対策や、退去後に備える方法を考えることができるので、有効に活用できるでしょう。
2.入居者の声が聞ける
賃貸経営を行ううえ、物件の管理は管理会社に委託しているため、入居者の声を聞く機会がほとんどないという大家さんもいるでしょう。退去者アンケートを行うことで、実際に物件に住んでいる人の声を聞くことができます。「壁紙が気に入っている」「トイレの上に棚をつけてほしい」など、大家さんの視点では気付かなかった物件の特徴や入居者の要望を知ることができるのです。
3.空室対策のヒントが見える
退去理由など入居者の声が、空室対策の大きなヒントとなることが考えられます。上記で例にした退去理由から考えてみましょう。「卒業のため」という退去理由が多ければ、学生に焦点を当てた空室対策を考えられます。学生の場合は入学・卒業の時期が決まっているため、入退去の時期が2月・3月に集中します。退去予定の人には早めに申告してもらい、早い客付けを狙う工夫が必要です。また、「設備の不具合」という退去理由が多いのであれば、修繕やリフォームなどを検討する必要があるでしょう。このように、入居者からの声を聞くことにより、どのような空室対策が効果的なのかということに役立たせることができるのです。
4.設備の更新やリフォームの検討に繋がる
入居者からの声を聞くことで、ご自身の所有している物件で暮らす入居者のニーズをピンポイントで知ることができます。設備の更新やリフォームの検討の際に、「TVインターフォンを付けてほしい」「クロスはこの色の方が良かった」などの入居者の意見も加味して考えることができるでしょう。
5.トレンドを知ることができる
退去者にアンケートを行うことで「ネット無料物件に引っ越すことにした」「防犯カメラのあるセキュリティ性の高いマンションに住みたい」などのリアルな意見を聞くことができます。そのアンケート内容から、入居者に需要のあるトレンドの設備を知るきっかけにつながることもあるのです。
退去者アンケートの内容
退去者にアンケートを行う場合、答えやすく回収しやすいものを作成しましょう。そして、大家さんが知りたい情報を得られる項目が必要です。例えば、退去理由、物件への要望、管理会社の対応についてなど、知りたい項目をリストアップし、精査していくことから始めると良いでしょう。
退去者アンケートのフォーマット
退去者が答えやすいようなフォーマットを作ることで、回収率を上げることに繋がります。項目が多すぎたり、すべての項目が記述式であったりすると、回答することを手間に感じてしまい、回答しない方もいるかもしれません。また、チェック項目のみの場合、選択肢以外の意見を聞くことができません。そのため、おすすめはチェック方式と記述式を混ぜることです。
例えば、
・退去理由…いくつか選択肢を作りチェック方式にする。その他を選んだ人は記述。 |
・住み心地、管理会社の対応…項目を5段階評価できるようにする。 |
・適正家賃…数字を記入できるようにする。 |
・希望する設備やサービス…記述式で自由にお答えいただけるようにする。 |
このように、チェック方式と記述式の両方を取り入れて、入居者の負担にならずに大家さんの知りたい情報を得るフォーマットを作成すると良いでしょう。アンケートの回数を重ね、入居者とのやり取りの中で改善していくことをおすすめします。
退去者アンケートを依頼するタイミング
退去者アンケートを依頼するタイミングはいくつか考えられます。例えば、「解約通知書にアンケートを盛り込む」「解約通知書の受理後」「退去立会」「敷金精算」など。回収率のことを考えると、「解約通知書にアンケートを盛り込む」「退去立会のときに記入してもらいその場で回収する」ことが良いでしょう。しかし、前者はアンケートを記載するスペースが限られてしまう点、後者は管理会社に見られながら書くことになる、退去立会に時間がかかる点がデメリットとして挙げられます。アンケートを行うには管理会社の協力が必要ですから、依頼している管理会社と運用方法について相談してみましょう。
退去者アンケートの回収率をアップする工夫
せっかく退去者アンケートを配布しても、回収できなければ情報収集ができません。アンケートへの回答は少々手間になるため、回収率を上げるためには工夫が必要です。例えば、アンケートの回答者に特典をつけることなどが挙げられます。また、先ほど解説したような「解約通知書とアンケートをセットにする」「退去立会時にアンケートを回収する」という方法も回収率を高める一案として考えられます。まずは退去者アンケートを行ってみて、回収率が悪い場合は対策を検討していきましょう。
退去者アンケートを空室対策に繋げるには
退去者アンケートを回収したら、まずは分析することから始めましょう。
・退去理由はどんな内容が多いのか |
・希望される設備は何が多いのか |
・住み心地や管理会社の対応は、どのくらいの満足度があるのか |
など、アンケートで得た情報をまずは整理していきましょう。そこから入居者のニーズと物件への不満を分析し、設備の追加や家賃の値下げなどの対策を考えることが大切です。
定期的な入居者アンケートも有効!?
退去者だけでなく、定期的な入居者アンケートも有効です。退去者アンケートは退去を決めた人に行うアンケートのため、退去を防ぐことは難しい場合が多いです。しかし、「更新の〇ヶ月前」と決めてアンケートを送付するようにすると、入居者の要望を叶えて退去を防ぐことができるかもしれません。ただし、アンケートを行うことで表に出てこなかった入居者の不満を呼び起こすことになり、新たなクレームに発展してしまうかもしれません。そういった点も踏まえ、入居者から指摘された箇所で修繕が必要なものは直したり、入居者の要望のうち可能なものは取り入れたりするなど、管理会社と相談しながら入居者の不満対策をうまく考えていく必要があるでしょう。
定期的なアンケートの他、オーナーチェンジで中古物件を購入した後、既存入居者にアンケートを行うという方法も考えられます。また、入居者へのアンケートだけでなく、案内を行った客付け業者に対してアンケートを行うという方法も考えられます。案内に行った業者はお部屋探しをしている人と一緒に内見をしているので、「決め手は何だったのか」「なぜ候補から外れたのか」という顧客の視点や、案内をした業者から見た視点を探ることができるからです。いずれにせよ、アンケートを行うには管理会社の協力が必要ですので、委託している管理会社と相談しましょう。
まとめ
空室対策の1つとして、入居者の意見に耳を傾けることが大切です。退去者アンケートを行うことで、大家さんでは気付けなかった所有物件の一面を知ることができるかもしれません。また、退去者から得た退去理由・物件の不満や要望などの情報は、空室対策や今後の賃貸管理の分析に役立つことにつなげることができます。空室対策の方法は多々ありますので、気になる大家さんはぜひ、退去者アンケートを検討してみてください。
この記事の監修者
花 惠理
【資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/2級FP技能士
大学卒業後、不動産会社や住宅メーカーの不動産部に勤務し、不動産賃貸・売買契約の他、社宅代行、宅地造成などの業務に携わる。現在は、不動産や金融関係の執筆をするWebライターとして大手メディアなどに多数寄稿。初心者にもわかりやすい言葉で解説している。また、将来に備えて夫婦で不動産投資や株式投資を行う。
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