戸建て賃貸の空室対策に効果的なリフォーム内容を紹介します

2023.11.10更新

この記事の監修者

逆瀬川 勇造

逆瀬川 勇造

【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

戸建て賃貸の空室対策に効果的なリフォーム内容を紹介します

賃貸用戸建てのリフォームを考えている大家さんに空室対策に効果的なリフォーム内容を、費用の目安も交えながらお伝えします。

戸建てのリフォームを実施するなら、
入居者ターゲットを考慮することが大切です!

目次

戸建ての全面リフォームには500~1,000万円かかる

戸建ての全面リフォームを実施するには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?もちろん、建物の状況によって、どういったリフォームが必要かは大きく異なるため、あくまでも目安となりますが、いくつかのデータを参照してみたいと思います。例えば、「新築そっくりさん」で有名な住友不動産のサイトを見てみると、リフォームの相場として以下のように書かれています。

・住友不動産の戸建てまるごとリフォーム費用相場:300~2,000万円程度

戸建のリフォーム費用の相場・目安

次に、キッチンやお風呂など、住まいに関する設備を一通り提供しているパナソニックでは、戸建のリフォーム費用の相場・目安として以下のように書かれています。
費用相場割合
~500万円30.8%
501~1,000万円23.4%
1,001~1,500万円14.9%
1,501~2,000万円10.6%
2.001~2,500万円9.0%
また全面リフォームに関する事例も紹介されています。
築年数費用相場
築10年約480万円
築27年約500万円
築35年約950万円

全面リフォームには500~1,000万円程度費用がかかる

以上のことから、全面リフォームを実施するのであれば、概ね500~1,000万円程度費用がかかることを想定しておいた方がよいと考えられます。ただ、500~1,000万円を全面リフォームのために出費するとなると、例えば、家賃設定が10万円/月の戸建て賃貸であれば、回収するまでに4~8年以上かかることになります。

全面リフォームの段階ですでに戸建て本体の投資費用の回収が済んでいればよいですが、そうでない場合には本体部分についても考慮しなければなりません。

例えば、2,000万円で戸建てを購入し、家賃10万円/月で15年間運用してきたという場合、回収額は1,800万円なので、まだ200万円回収できていません。実際には、その他、管理委託費等の経費も考慮する必要があるでしょう。このように、全面リフォームを実施する時は、投資した額に対して何年で回収できるか、という視点を持つことが大切です。

リフォームに1,000万円もかけたくない!そんな大家さんへ

全面リフォームをすると建物を丸ごときれいに、新しくできますが、上記キャッシュフローの観点から、全面を手掛けるのではなく、築年数を基準に部分リフォームを検討してみるのもよいでしょう。

例えば、先ほどの住友不動産のサイトでは、全面リフォームではなく、住まいの中心のLDKと水回りのみリフォームした場合の費用が約500万円、屋根・外壁や玄関ドア、防蟻処理など、気になるところだけの部分リフォームの費用相場が20~100万円程度と書かれています。

築年数を基準にしたリフォーム内容

ここでは、築年数ごとにどのようなリフォームが必要で、概算費用はどのくらいかを説明します。

築年数5年

築5年程度であれば、まだまだ新しいので必要となる費用は少なく済みます。まず、原状回復として、入居前にクリーニングは実施しなければならないでしょう。クリーニング費用は、10万円程度見込んでおくとよいです。一方、空室対策としては、和室であれば畳の表替えを検討するとよいでしょう。

畳を表替えするだけで、見た目に見える部分は新築のような状態になります。表替えの費用は概ね畳1枚あたり5,000円程度。6畳の和室であれば3万円程度を見込むとよいでしょう。

リフォーム内容費用
原状回復クリーニング10万円
空室対策畳の表替え(6畳)3万円
合計13万円

築年数15年

築15年程度になると、外壁塗装やクロス交換も検討する必要があります。原状回復としては、築5年でご説明したクリーニングと畳の表替えのほか、クロス交換で0.5万円/m2程(100m2の場合で50万円)、外壁塗装で0.8万円/m2程(外壁面積120m2で96万円)を見込みます。

空室対策としては、ユニットバスの交換(100万円程)や給湯器(20万円程)、洗面台(15万円程)、便座(5万円)など、水回りの交換を検討するべきです。

リフォーム内容費用
原状回復クリーニング10万円
畳の表替え(6畳)3万円
外壁塗装96万円
クロス交換50万円
空室対策ユニットバス交換100万円
給湯器交換20万円
洗面台交換15万円
便座交換5万円
合計299万円

築年数25年以降

築25年を超えると、水回り関係は一通りリフォームを検討すべきです。具体的には、築15年の時にご紹介した、原状回復+空室対策に必要な費用に加え、キッチン交換(80万円程度)を検討しましょう。また、フローリング工事(30万円程度)も検討します。

リフォーム内容費用
原状回復クリーニング10万円
畳の表替え(6畳)3万円
外壁塗装96万円
クロス交換50万円
空室対策ユニットバス交換100万円
給湯器交換20万円
洗面台交換15万円
便座交換5万円
キッチン交換80万円
フローリング交換30万円
合計409万円

戸建てをリフォームする際に考慮しておきたいこと

ここでは、戸建てのリフォームを実施する際に考慮しておきたいことをお伝えします。

入居者ターゲット

まず、エリアや物件の間取りの特性から、どういった層をターゲットとするか決めた上でリフォームを実施するとよいでしょう。

例えば、高齢者比率の高いエリアなのであれば、手すりを設置するなどすると内見時に喜ばれる可能性が高いでしょう。また、ペット可物件にして差別化を図りたいのであれば、各ドアにペットの通路を設けてあげるなどが考えられます。

なお、複数のリフォームが必要な場合には、どのリフォームを優先するかを決める判断材料ともなります。例えば、4LDKの戸建てでファミリー層をターゲットにするのであれば、一般的に女性が気にすることの多い水回りのリフォームを優先するといったことが考えられます。

使用する素材の耐用年数

戸建てはファミリーの利用が多く、アパート、マンションより平均居住期間が長いのが一般的です。例えば、大和ハウス工業のサイトによると、単身者の平均居住期間は2~4年が67.8%と多いですが、ファミリーは4~6年が58.1%と、一番長くなっています。

なお、高齢者(65歳以上)は6年以上が62.1%というデータにも注目です。戸建てでファミリーや高齢者をターゲットにする場合、外壁や水回りの設備など居住期間中に不具合が起きないよう、耐用年数の比較的長い素材を選ぶ必要があるでしょう。

入居者が必要としている設備の把握にも努めましょう

リフォームを実施する際、特に空室対策としては、「入居者が必要としているものは何か?」という視点から導入する設備を検討するのも効果的です。

例えば、athome VOXの「大家さんも必見?賃貸物件で重宝している&欲しい住宅設備ランキング」によると、戸建てでは「追い焚き機能付きバス」「魚焼きグリル」「食器洗い洗浄機付IHコンロ」等、特に、家事を便利にする設備が求められていることが分かります。これらの設備は築年数の古い戸建てにはついていないはずです。

リフォームの際、原状回復に必要なリフォームと合わせて、これらの設備を導入することで空室対策に役立ってくれるのではないでしょうか。もちろん、かけた投資額に対してきっちり回収できるかどうかという視点は忘れないようにしましょう。

まとめ

戸建て賃貸のリフォームに関し、全面リフォームでは高額になってしまうため、必要に応じた箇所のみリフォームする部分リフォームについて、合わせてお伝えしました。部分リフォームを実施するにあたっては、間取りやエリアの特性に応じてターゲットを想定し、優先的にリフォームすべき箇所はどこか?という視点を持てるとよいでしょう。

また、かけたリフォーム費用に対し、どのくらいの期間で回収できるかという視点は常に持っておくことが大切です。

戸建てのリフォームを実施するなら、
入居者ターゲットを考慮することが大切です!

この記事の監修者

逆瀬川 勇造

逆瀬川 勇造

【資格】AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

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