日本政策金融公庫で大家さんが融資を受けるにはどうしたらいい?

2024.02.28更新

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本政策金融公庫で大家さんが融資を受けるにはどうしたらいい?

金融機関からの融資を検討している方へ、日本政策金融とはどんな金融機関なのか、民間金融機関との違いをご説明します。

目次

日本政策金融公庫とは?民間の金融機関との違い

日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫を前身とする政策金融機関です。日本政策金融公庫は、株式会社の形態をとっていますが、国が株式の100%を常時保有することが法律で定められている特別な株式会社です。

主な事業としては、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業、および危機対応など、円滑化事業があります。その各事業は「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を主な目的としており、国の中小企業・小規模事業者政策などに基づき、法律や予算で決められた範囲で金融機能を持っています。

賃貸経営だけでなく、新しい事業経営をスタートする際、評価できる実績や資産が少ない場合は、民間の金融機関の融資を受けづらいという場合があります。しかし、新たな事業の創出は日本経済の成長にも貢献する可能性があります。そこで、日本政策金融公庫では一般の金融機関が行う金融を補完する役割を担っています。

日本政策金融公庫で融資を受ける際の特徴と注意点

日本政策金融公庫は、国が株式の100%を常時保有することが法律で定められている特別な株式会社であるため、民間の金融機関と異なり、デフォルトリスク(倒産リスク)はありません

また、一般の金融機関が行う金融を補完する役割を担うため、新規事業のスタート時でも、民間の金融機関よりも融資審査に通りやすい傾向にあります。また、全国に創業サポートデスクが設置されており、専任の担当者から事業計画書の作成についてのアドバイスや情報提供を受けられるという特徴もあります。

このような特徴がある日本政策金融公庫ですが、注意点もあります。ここでは、賃貸経営の融資を日本政策金融公庫で受けることを検討する場合、どのような注意点があるかについてご説明します。

金利

金利は、担保や保証人の有無、申込者の開業業種や年齢、性別、融資期間などによって細かく決められています。あらかじめ日本政策金融公庫に相談し、どの金利が適用になるか確認しておくとよいでしょう。なお、日本政策金融公庫の融資金利はすべて固定金利となります。

日本政策金融公庫は利益を目的とした金融機関ではないため、金利も低水準であり、賃貸経営における事業計画が立てやすいといえます。また、景気低迷時には、民間の金融機関の変動金利よりも、やや高い金利水準となる可能性にも留意しておきましょう。

融資期間(融資可能年齢)

融資期間は、設備資金で最長20年、運転資金は最長7年です。また、融資可能年齢は、とくに設けられていません。55歳以上の方を対象としたシニア起業家支援資金もあり、年齢を問わず、積極的に新規事業を起こそうと考える方への積極的な融資を行っています。

ほとんどの民間の金融機関は、融資期間を最長35年としており、それと比較すると、日本政策金融公庫の融資期間はやや短めといえます。ちなみに、日本政策金融公庫の融資限度額は、原則4,800万円で、シニア起業家支援資金でも7,200万円となっています。

このような融資期間や融資限度額を考えると、比較的小規模な賃貸物件の取得などを検討する方に向いている融資だといえるでしょう。

審査基準

日本政策金融公庫の融資を受けるには、事前に創業計画書を作成する必要があります。その創業計画書をもとに、事業計画の収益性や継続性が審査されます。民間の金融機関でも、事業計画の妥当性を審査するのは同様ですが、事業者の保有資産や賃貸物件の担保価値に重点をおいて審査する点が、日本政策金融公庫の融資審査と異なる点といえるでしょう。

日本政策金融公庫で賃貸業の融資を受けるための流れと準備

賃貸経営のために、日本政策金融公庫の融資を受けたい場合、どのような流れで準備をしていけばよいのか、ご説明します。

融資を受ける流れ

まずは、日本政策金融公庫の窓口で、融資の相談を行います。その際に、取得しようとする賃貸物件の資料や、リフォームの見積もり資料などを持参するとよいでしょう。日本政策金融公庫で融資を受ける場合、創業計画書の提出が必要のため、事前に事業計画書を作成したうえで、相談に行くことをおすすめします。

リフォームの場合、賃貸経営の決算書(2期分)を持参しましょう。なお、創業サポートデスクでアドバイスを受けながら事業計画書の作成を進めることもできます。創業計画書に基づいて面談が行われた後、審査が行われ、融資が実行されるという流れとなります。

事業計画書とは?

事業計画書とは、賃貸経営をどのように進めていくか(資金計画、ターゲット層、集客見込み、集客方法など)をまとめた計画書です。日本政策金融公庫では、担保性よりも事業の継続性や収益性を重視して審査を行います。専門家にも相談しながら、自分なりに事業計画書を作成したうえで、融資相談をすることをおすすめします。

日本政策金融公庫の融資に関するよくある質問

日本政策金融公庫の融資を検討する際によくある質問には、以下のようなものがあります。

日本政策金融公庫で融資を受けるメリットはありますか?

自己資金が少なかったり、実績がなかったりと、民間の金融機関で融資を受けることが難しい方にとっても、融資を受けられる可能性が広がるという点において、日本政策金融公庫で融資を受けることを検討するメリットはあります。

また、金利はすべて固定金利であるため、返済終了まで返済金額は一定です。そのため、事業計画が立てやすいというメリットも挙げられます。民間の金融機関で必要となる融資手数料や保証料がかからないという点も大きなメリットといえるでしょう。

面談ではどんなことを聞かれるのですか?

日本政策金融公庫では、創業計画書に基づいて、面談が行われます。面談では、主に「資金使途」や「事業概要」について聞かれます。賃貸経営は、賃貸物件を活用した事業経営にほかなりません。

賃貸経営の事業主として、創業の動機やどのような見通しをもって事業運営を行っていくのかについて、考えをまとめておくのは当然のことです。

専門家の力を借りながら事業計画を作成するとしても、面談では、どのような質問にも大家さん自身が自分の言葉で説明できることが大切です。主体的に自分事として関わる姿勢を忘れないようにしましょう。

一般金融機関よりも融資基準が低いのですか?

一般の金融機関では融資が受けづらい方でも、融資を受けられる可能性があります。ただし、これは必ずしも融資基準が低いとは言えず、審査における重視ポイントが異なることが要因といえます。

一般の金融機関では、賃貸物件の担保評価や融資を受ける方の収入や保有資産も重視したうえで、事業計画の妥当性を審査します。一方、日本政策金融公庫は、事業計画の妥当性に重点をおいた審査を行います。事業計画の妥当性が低ければ融資を受けられない可能性は十分にあります。

【おさらい】日本政策金融公庫で大家さんが融資を受けるには

大家さんが日本政策金融公庫で融資を受ける場合、比較的小規模の賃貸経営を考えているケースに適しています。ただし、融資には時間を要するため、スピードを重視する場合には、民間の金融機関への相談をおすすめします。

また、会社にお勤めで賃貸経営を兼業しようと検討されている方も、事業計画はもちろん、融資を受ける方の収入や保有資産なども重視して審査されるので、スピード感を重要視する場合は民間の金融機関の方が向いているかもしれません。

なお、リフォームについての融資については、今までの実績も重視されます。賃貸経営の経営状態を健全な状態にしておくことは前提条件です。そのうえで、民間の金融機関でのリフォームローンも視野に入れながら、日本政策金融公庫への相談をするとよいでしょう。

まとめ

日本政策金融公庫は融資を受けやすい、という話は正しくもあり、誤りでもあります。誰でも日本政策金融公庫で融資を受けられるというわけではなく、事業計画の妥当性の審査に重きを置いているというだけの話です。

賃貸経営は、賃貸物件を活用した事業経営にほかなりません。事業主として、事業の将来性や今後どのように賃貸経営を展開していく予定なのかを、自分の言葉で語ることが重要です。日本政策金融公庫で融資を受けるからこそ、情報収集を重ね、しっかりとした事業計画を練る必要性が求められると考えておきましょう。

この記事の監修者

キムラ ミキ

キムラ ミキ

【資格】AFP/社会福祉士/宅地建物取引士/金融広報アドバイザー

日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP(ファイナンシャルプランナー)、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、2008年8月より独立し、現在、自社の代表を務める。

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