万が一の災害に備える!大家さん向け火災保険の補償内容とケーススタディ

2024.06.27更新

この記事の監修者

河野 陽炎
河野 陽炎

3級FP技能士

万が一の災害に備える!大家さん向け火災保険の補償内容とケーススタディ

火災保険に加入済、あるいは見直しを検討中の大家さんへ、火災保険の補償内容や特約でカバーができる範囲をご紹介します。

目次

大家さんだって、備えあれば憂いなし?

2018年は規模の大きな災害が続きました。6月18日の大阪府北部地震、6月28~7月8日の平成30年7月豪雨、台風21号および24号による被害など、復旧に時間がかかっている地域もまだまだ多いです。実は筆者の自宅兼事務所も、台風21号の強風で雨戸が破損しましたが、懇意にしている工務店に復旧依頼が殺到しているため、いまだに復旧ができていません。

毎年のように台風が通過し、地震大国でもある日本列島。どこに住んでも、災害そのものを避けることは難しいので、損害保険に加入して万が一の場合に備えておきましょう。

火災だけじゃない火災保険の補償内容

被災したとき頼りになるのが火災保険。火災だけではなく、台風や水漏れ、盗難などさまざまな災害や事故により受けた被害を補償してくれる保険です。

火災保険で補償されること

具体的にどのような事故のとき、火災保険による補償が受けられるのでしょうか?

水漏れ

たとえば集合住宅で上階からの水漏れにより家財が被害を受けてしまった場合や、給排水設備が故障して部屋が水浸しになった場合などに補償が受けられます。

落雷

雷が落ちて建物が損傷を受けた場合に補償されます。

水災

大雨で床上浸水した場合などが、補償の対象です。事故後の清掃、搬出など後片づけにかかる費用は「残存物取片づけ費用」として補償が受けられます。

風災

強風によって窓ガラスが割れたり、ベランダの隔て板が割れたりした場合に補償が受けられます。

窃盗盗難

盗難にともなう損傷、汚損などについての補償です。ドアを壊されたりするなどの被害を補償してもらえます。

火災保険では補償されないこと

幅広い補償が得られる火災保険ですが、補償されないケースもあります。どのような事故が補償されないのか、確認しましょう。

地震による被害

火災保険では、地震が原因の被害について補償が受けられません。たとえば、地震により建物が損壊した場合や、地震による津波で建物が損害を受けた場合などが該当します。ただし、火災保険の加入と合わせて地震保険に加入している場合は、地震による被害も補償対象となります。

噴火による被害

火災保険では、噴火が原因で被った損害について補償が受けられません。火山の噴火により家が燃えた場合でも、火災保険の補償は受けられません。ただし、地震保険に加入することで、噴火による被害でも補償が受けられるようになります。

契約者などが故意に損害を与えた場合

契約者の過失・ミスではなく、保険金を受け取る目的で故意に家財を傷つけたような場合は、補償が受けられません。

特約で補償範囲は広げられる

火災保険にはさまざまな特約が用意されており、契約者の必要に応じて補償の範囲を広げることができます。ただし、特約だけを契約することはできず、主契約である火災保険にオプションとしてつけなければなりません。

特約の例としては、火災事故の後にガス漏れ検知器や漏電遮断器などを設置するなど事故再発防止工事を行った場合の費用を補償する特約、臨時賃貸・宿泊費用補償特約などを用意している保険会社もあります。

地震保険は必要?

地震保険は、火災保険ではカバーできない地震や噴火、津波などによる損害の補償を受けられる保険です。火災保険のように損害のほとんど全てを補償してくれるものではなく、被災者が生活をスムーズに再建できるよう、損害額の一部を補填するという位置づけです。以下のように定められ、被災の状況に応じて受け取ることができる金額が決まります。

保険金額は火災保険で設定した金額の30~50%
保険金額の上限は建物5,000万円、家財1,000万円

地震大国とも呼ばれる日本では、いつどこで地震に遭うのかわからず、その被害が大きくなることも考えられます。生活再建のための費用を少しでも早く準備するためにも、地震保険にはぜひ加入しておきましょう。

火災保険ケーススタディ

火災保険の主契約でどこまで損害を補償してもらえるか、特約がどれだけ用意されているかは、保険会社ごとに異なります。過剰な補償を得ようとすると保険料が高くなり、逆に保険料の節約を意識しすぎて補償の範囲を狭めると、万が一の場合に十分な補償が受けられません。

火災保険の商品そのものや、特約の選び方などで注意が必要な点をいくつかご紹介します。

入居者が「うっかり壁にぶつかる」事故は意外に多い

火災保険のなかには「建物の汚損、破損」などを補償する商品と、そうでないものがあります。汚損や破損の補償をする特約を用意している損保会社も。

アパートの入居者がうっかり自転車ごと壁にぶつかったり、引っ越し作業などの途中で手すりを傷つけたり、というケースは多いものです。そのたびに大家さんが自費で修理すると、半年や1年経ったとき、かなりの負担になります。住民の層(ファミリー向け物件でいたずら盛りの子供が多い、など)によっては、保険料が高くなっても破損や汚損の補償をつけるほうが安心です。

一人暮らしの入居者が多いため「孤独死」に関する補償をつけた

大家さんは、「入居者が亡くなる」というリスクについて意識しなければなりません。特に、一人暮らしの入居者が孤独死し、発見が遅れた場合には、その対応のためにさまざまな費用がかかります。大家さんにとって、以下のような損失や費用を補償してもらえる特約をつけると安心です。

・入居者の孤独死、自殺、犯罪による死亡によって家賃収入が得られないという損失
・清掃や遺品整理、リフォームなどにかかる費用

水災や雪災が少ない地域では特約をつけるか熟考を

水災(洪水、高潮など)や雪災(雪が積もって屋根が破損した、など)の災害は、地域によっては起こりづらいことがあります。沖縄や九州地方で、何mも雪が積もる機会は少ないでしょうし、標高が高い地域で水災に遭うという可能性は低いかもしれません。そのような場合、水災や雪災まで補償される商品を選ぶと、無駄に高い保険料を支払うことになります。

火災保険を選ぶ際に確認したいこと

火災保険の補償内容は、損害保険会社や保険商品によって異なります。最適な保険を選ぶために確認すべきことをご紹介します。

保険の対象を確認

火災保険の対象には、次の3つのパターンがあります。

建物大家さんが所有する建物が受けた損害を補償するタイプです。一般的なアパート、マンションの大家さんは建物の保険に加入します。建物を一棟所有する大家さんは、専有部分や共用部分の区別なく建物全体に火災保険をかけましょう。分譲マンションの1室を所有し賃貸している大家さんは専有部分に火災保険をかけます(共有部分はマンションの管理組合が加入しています)。
家財家財が受けた損害を補償するものです。通常は、家財の持ち主は入居者なので、入居者が契約者となる家財保険に加入してもらうケースが多いです。
建物+家財建物と家財の両方が受けた損害を補償するタイプ。家具つきの賃貸物件を経営しているならこのタイプが必要でしょう。

万が一の事故の際、受け取る保険金の額は「建物+家財」の補償の場合が一番大きく、次いで「建物」「家財」の順でしょう。そのため、毎月支払う保険料も「建物+家財」の補償を受ける場合は「建物」のみの場合に比べて高めです。

建物の構造を確認

建物の燃えやすさを決める要素に、建物の構造があります。火災保険の保険料は、構造に応じて決まります。最も保険料が安いM構造と、最も高いH構造では3~4倍の違いとなる場合もあるようです。

M構造3つの構造のなかで、もっとも燃えにくく耐火性が強いとされる。コンクリートやレンガなどで造られている共同住宅を指します。
T構造M構造とかわらない素材で造られた、共同住宅以外の物件を指します。
H構造木造や土造の、もっとも耐火性が弱い戸建て住宅。M構造やT構造以外のものを指します。

アパートやマンションなど共同住宅の場合、おおまかに次のように分類されます。

・コンクリート造り、もしくは耐火建築物の認定を受けている物件はM構造
・鉄骨造りの場合はT構造
・準耐火建築物・省令準耐火建物はT構造
・それ以外はH構造

保険金額の確認

万が一の事故が起こったとき、支払われる保険金額の決め方が2通りあります。

時価アパート建築にかかった費用から、事故時までの時間の経過によって劣化した価値を差し引いた保険金額を受け取る方法です。保険料は抑えられますが、特に築年数が経過し、劣化が進んだアパートほど、受け取ることができる保険金額が少なくなります。場合によっては「建て替えや修繕に必要な金額が受け取れない」という事態も考えられ、注意が必要です。
新価再建築に必要な費用や、修繕に必要な費用を受け取ることができます。保険料は「時価」での契約に比べて高くなりますが、アパート経営をスムーズに再スタートさせることができます。

保険期間の確認

保険期間は1~10年の間で設定できます。なお、10年超の長期契約は2015年10月から引受停止となっています。自然災害が増加し損害保険会社の収支が悪化していることや、将来の収支予測が困難となっていることが理由です。

長期契約、短期契約のメリット

長期契約および短期契約のメリットは以下の通りです。大家さんのニーズに合う保険期間を選びましょう。

長期契約・1年あたりの保険料が安くなる
・保険料の値上りリスクに備えることができる
・更新の手間が少なくなる
短期契約・加入時に一括して払う保険料が少なく、資金繰りが厳しい
 場合でも加入しやすい
・更新の機会に保険の見直しがしやすい

特約をどうするか確認

火災保険の主契約に特約を付加することで、次のようなメリットがあります。
・補償の範囲を広げることができる
・別の保険契約を結ぶより、火災保険に特約を付加するほうが保険料の総額を
 抑えられることが多い
・保険契約の本数を絞り込むことで、事故時の連絡先も減らすことができる

一方で注意点もあります。
・特約保険料がかかるようになる
・不必要な特約まで付加すると、保険料を支払っても補償を受ける機会がない

賃貸物件そのものの構造や住人の層、周辺環境などをもとに、物件や賃貸経営にどのようなリスクがあるのか洗い出し、また、不要な補償について考えましょう(例:温暖な気候の地域では雪害を受ける可能性は低い)。その上で、本当に必要な特約だけを選ぶことがポイントです。

まとめ

アパート経営のリスクに備えるために、火災保険はとても重要です。ただし、アパートの立地条件や建物の状態、入居者層などの条件によって、必要な補償は異なります。万が一の場合に、損害からの回復がスムーズに進むよう、必要かつ十分な補償を得るようにしましょう。

その一方で、過剰な補償をつけすぎると「高い保険料を支払っているのに、補償を受ける機会が永遠にこない」という可能性もあります。不要な補償を取り除き、無駄な保険料負担をしないで済むよう、専門家とも話し合いながら、火災保険とうまくお付き合いしましょう。

この記事の監修者

河野 陽炎
河野 陽炎

3級FP技能士

3級FP技能士資格を持つライター、コラムニストとして、生命保険や医療保険、金融、経済などの執筆実績が多い。次々と発売される商品や、改正の相次ぐ税制、法律が1人の生活者にどう影響を与えるかの視点を大切にする。

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