「更新料を払いたくない」と言われたら大家さんはどうする?賃貸借契約の更新について

2024.08.26更新

この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

「更新料を払いたくない」と言われたら大家さんはどうする?賃貸借契約の更新について

賃貸借契約の更新時に入居者から支払い拒否や値引き交渉されたら?更新料や契約更新の種類、注意点などを具体的に解説します。

賃貸借契約の更新について理解を深め、
トラブルを回避し長期入居を獲得しましょう!

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目次

更新料を巡ってトラブルが起きたらどうすればいい?

賃貸借契約のうえで大きな壁となる契約更新。契約更新の際は、更新手続きや更新料支払いなどに関してトラブルが起きやすいものです。契約更新を巡るトラブルには、主に次のようなものがあります。

・更新料の支払いを拒否されてしまう
・入居者が更新手続きを拒否したのに退去しない
・更新料の減額請求をされる
・更新手続きが遅れる

このような更新にともなうトラブルに悩まされている大家さんは多いのです。トラブルに発展しないように、大家さんは契約更新について正しい知識を持って対応する必要があるでしょう。

賃貸借契約の更新とは?

賃貸借契約とは、賃貸物件に入居する時に貸主と借主の間で結ばれる契約のことを言います。ほとんどの場合、賃貸借契約の期間に期限があるものです。そのため期間が満了する前に、そのまま住み続けるのか、退去するのかを選択してもらう必要があります。そのまま住み続ける場合には契約の更新を行います。

賃貸借契約には「普通借家契約」「定期借家契約」の2種類があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
普通借家契約定期借家契約
契約更新ありなし
契約期間1年以上自由
中途解約借主:可能
貸主:正当事由が必要
借主:やむを得ない事情の場合
貸主:―
普通借家契約の特徴は、契約期間に限りがあり更新が可能ということです。賃貸物件のほとんどは普通借家契約となり、契約更新について問題なければそのまま物件に住み続けられます。

一方、定期借家契約の大きな特徴は、契約更新がないことです。定期借家契約では、契約期間が終了した時点で契約も満了となり、借主は退去しなければいけません。ただし、契約期間は自由に決めることができ、貸主と借主間の合意があれば再契約も可能です。

契約更新の種類

賃貸借契約の更新には、次の3つの種類があります。

・合意更新
・自動更新
・法定更新

それぞれ見ていきましょう。

合意更新

貸主と借主の合意によって契約期間を更新することを、合意更新と言います。合意更新の場合、更新後の契約期間の制限はなく、契約条件の変更も自由に行うことができます。

自動更新

あらかじめ契約を継続することを約束し、契約期間満了と同時に自動的に契約更新されるのが自動更新です。自動更新では更新手続きを忘れることがなく、事務手続きも必要ないなどのメリットがあります。

法定更新

更新手続きを怠ってしまった場合など、手続きがないまま契約期間が満了した場合の契約更新方法が法定更新です。契約更新の合意がない場合や更新自体を忘れてしまった場合などに、借主の住む家がなくならないよう、借主を保護するために定められています。

法定更新では、一定期間前までに契約者から更新しない旨の通知がない場合、同じ条件で契約を更新したとみなされ、借地借家法の定めによって自動的に契約が更新されます。ただし、法定更新での更新後は契約期間が変更され、いつまでという決まりのない契約となってしまうので注意が必要です。

更新はなぜ2年ごとなのか?

一般的に、賃貸借契約は2年契約となることが多いものです。2年という契約期間が多い理由の1つとして、借地借家法が関係しています。借地借家法第29条では、契約期間が1年未満の契約は、期間の定めのない契約とみなすと定められています。

建物賃貸借の期間

第二十九条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

期間の定めのない契約では、貸主はいつでも解約の申し出ができ、申し出から6か月経過すると賃貸借契約が終了します。そのため、借主を保護する目的で1年未満の契約が避けられているといえるでしょう。また、期間の定めのない契約では更新ができないケースもあり、貸す側としても更新料を徴収できないなどの問題があるのです。

1年以上であれば契約期間を自由に定められますが、借主の生活を考慮すると、3年以上の区切りでは長すぎるとも考えられます。そのため現実的に2年が妥当とされ、2年契約が多くなっているのです。

更新の手続きの方法

賃貸借契約の更新は、更新時期が来たら大家さんか不動産仲介会社または管理会社が行います。管理会社などが更新手続きをする場合でも、トラブルなくスムーズに契約更新を進めるために、手続きについて理解しておく必要があるでしょう。

必要書類

必要な書類は契約更新の通知とともに管理会社から送られてきます。それ以外に準備する書類はないことがほとんどですので、安心してよいでしょう。なお、具体的には契約書を作り直すのが一般的です。連帯保証人などの実印を省略する場合もありますが、捺印は必要になる可能性が高いので入居者に対して事前に連絡しておく必要があります。

管理会社に管理を委託している場合には、管理会社が事前連絡や必要書類の準備をしてくれますが、自主管理の場合には1ヶ月程度前からの連絡をするのに加え、期間を新しくした賃貸借契約書を準備しておくとよいでしょう。

火災保険や保証会社との契約更新も必要になる

契約更新にともない、火災保険や保証会社との更新を同時に行う場合もあります。火災保険は2年契約で結ばれていることが多く、その場合は賃貸借契約の更新と同じタイミングで更新が必要になるでしょう。火災保険の契約更新は強制ではありませんが、加入していない場合のリスクが高いため、入居条件として加入を義務としている場合が多いのです。

また、家賃滞納に備えて保証会社を利用している場合、更新料が発生する可能性があります。保証会社の保証料は1年ごとに発生するケースもあるので、契約内容を確認しておくとよいでしょう。

更新の流れ

契約更新の大まかな流れは以下のようになります。

・契約期間満了の1~3か月前:大家さんや不動産会社から契約更新を通知する
・期日まで:更新契約書の記入と署名捺印
・期日まで:更新料や手数料の振り込み

基本的には、期間満了の1~3か月ほど前に入居者へ更新の案内通知を郵送し、更新の意思確認を行います。更新の条件に問題がなければ、指定の期日までに更新契約書へサインし、更新費用を支払って契約更新が完了します。

更新料の相場は?

契約更新料は法律でいくらと決められているものではなく、大家さんが自由に設定できます。しかし、あまりに更新料が高ければ更新のタイミングで退去されてしまう可能性があるでしょう。

更新料の相場として家賃1か月分という設定が多いですが、地域によっても大きく異なり、更新料自体が設定されていない地域もあります。

東京都など首都圏の相場が家賃の半月~1か月分という契約が多いのに対して、京都府などでは1~2か月分と設定された契約が多くなっています。

取り分は管理会社と大家で1:1

基本的に、更新料を受け取る権利は大家さんにあります。しかし、一般的には管理会社に管理を委託していることが多く、その場合は更新手続きも管理会社が行います。

そのため、更新料は管理会社に一度振り込まれ、手続きにかかった費用などを差し引いた額が大家さんに振り込まれるのです。

管理会社が仲介として入る場合の取り分は、大家さんと管理会社で1:1となることが一般的です。管理会社によっては一度大家さんに全額を渡す場合もありますが、その場合は別途、更新事務手数料が請求されるでしょう。

更新時に大家さんが注意すべきこと

契約更新時はトラブルに発展する可能性もあり、注意しなければいけないことも多くあります。更新時に大家さんが注意すべきこととして、主に次の4つがあります。

・更新料ゼロにしても事務手数料は発生する
・賃貸借契約書に明記されていないと更新料が取れない
・更新の手続きが遅れた場合
・家賃値上げの交渉について

更新料ゼロにしても事務手数料は発生する

更新料は大家さんが自由に設定できるものです。長く入居してもらうために更新料をゼロに設定することも可能で、実際にそのような物件も珍しくありません。しかし更新料をゼロにした場合でも、更新費用は掛かることに注意が必要でしょう。

管理会社が更新手続きをする場合、管理会社に対して更新手数料を支払わなければなりません。更新料を徴収している場合はそこから手数料を支払いますが、更新料ゼロの場合、手数料は大家さんの負担となるのです。

管理会社によっては、更新手数料を減額してもらえる可能性もあるでしょう。一般的には更新の手続きにともない費用が発生するため、更新料をゼロにした場合の費用について理解しておくことが大事です。

賃貸借契約書に明記されていないと更新料が取れない

更新料を自由に設定できるといっても、設定した金額が賃貸借契約書に記載されていなければ、徴収することはできません。

賃貸借契約書には更新料について、「契約を更新する場合、借主は更新料として新家賃の1か月分を支払わなければならない」このように記載されていることが多いものです。その場合、借主は記載のとおり更新料を支払わなければなりません。

しかし契約書に記載がなければ、更新料を支払う借主の義務はなくなるのです。大家さんは、更新料についての記載漏れがないようにしっかり確認する必要があるでしょう。

更新の手続きが遅れた場合

自主管理の大家さんが一人で更新手続きをする場合、うっかり手続きを忘れてしまったということもあるかもしれません。

契約更新の通知や契約書の作成をしないまま契約期間が終了してしまった場合でも、入居者から契約終了の通知をされていないのであれば、契約は有効のまま継続されます。ただし、この場合は「法定更新」となるのです。

法定更新では、以前と同じ条件で契約が更新されたとみなされます。しかし、法定更新後の賃貸借契約では期間の定めがなくなり、さらに更新することができなくなります。そのため、法定更新時の更新料について契約書に記載がなければ、次回以降の更新料を徴収できなくなるでしょう。

また、借主が退去する場合、合意更新の場合は解約の申し入れを1か月前までに行いますが、法定更新の場合は3か月前までになります。すぐに退去したい場合でも入居者は3か月分の家賃を支払わなければならず、支払いを巡るトラブルに発展する可能性があるのです。

くわえて、借主が火災保険に加入している場合、更新時期に借主の火災保険の契約期間が満了になっている可能性もあります。手続きが遅れたことに気づいた時点で早めに確認する必要があるでしょう。

家賃値上げの交渉について

家賃の値上げについては法律で認められており、大家さんの判断で金額を変更することが可能です。ただし借地借家法により、家賃を上げる場合の条件として次の3つが定められています。このいずれかの条件に当てはまる場合に家賃の値上げが可能となります。

・土地や建物の租税などの増加によって現在の家賃が不相当な場合
・土地や建物の価格の増減などの経済状況の変動によって現在の家賃が不相当となった場合
・周辺の類似物件の家賃と比べて家賃が不相当な場合

とはいえ、大家さんの言い値がそのまま通るわけではありません。家賃は貸主と借主の合意のうえで決定されるものですので注意しましょう。

また、家賃の値上げ交渉は基本的にいつでも可能ですが、一般的に更新のタイミングで行うパターンが多いでしょう。大家さんとしても値上げの交渉は言い出しにくいものであり、契約更新は1つのタイミングといえます。

しかし、値上げ交渉がうまくいかず、借主が更新を承諾しない場合には注意が必要となります。この場合は更新せずに退去される可能性だけでなく、更新の手続きができず法定更新になる可能性もあるのです。

強制的に家賃の値上げを行うことはできませんので、入居者に納得してもらう必要があることを意識して値上げ額を検討し、交渉するようにしましょう。

よくある質問

ここでは、賃貸物件の契約更新についてよくある質問を紹介します。
Q.更新拒否はできる?
普通借家契約では原則的に、契約終了には貸主・借主間の合意が必要であり、貸主から一方的に更新を拒否することはできません。しかし、正当な事由がある場合は立ち退きを要求できます。正当な理由がある場合でも、借主が受け入れてくれなければ、更新拒否できないケースも。更新拒否後に契約が終了しても借主が住み続けたとして、異議を立てなかった場合、法定更新となってしまう点に注意が必要です。
Q.入居者に「1年間だけ更新したいから更新料を半額にできないか?」と聞かれたら
更新料について契約書に明記してある場合は、契約どおりの更新料を支払うことが原則となり、減額請求は拒否することが可能です。しかし、拒否してしまうと更新せずに退去されてしまう場合や、退去時の原状回復費用の清算などでトラブルになる可能性もあります。更新料については大家さんの裁量次第でもあるため、減額請求に応じるのも1つの手段といえるでしょう。
Q.取り壊しを予定しているが更新時に定期借家契約に切り替え可能?
現行の借地借家法では、現在の賃貸借契約を解除した後であれば、新たに定期借家契約で契約することが可能です。定期借家契約への切り替えのポイントは「現在の契約を合意解除すること」です。現在の契約を解除できない場合は、新しく定期借家契約を結べず、そのままの契約が継続されてしまいます。そのため、合意解除ができる契約期間満了時はよい切り替えのタイミングといえるでしょう。

まとめ

賃貸借契約の更新について、更新料の扱いや更新の種類などをお伝えしました。一般的に、賃貸借契約の更新は2年ごとに行われ、入居者から更新料を徴収して手続きをします。

その際、更新料を巡るトラブルに発展しやすく、また手続き漏れなどがあると法定更新になってしまうなどの問題もあるのです。更新料の相場や手続きの流れ、注意点を理解しておくことで、このようなトラブルを回避できるといえます。この記事を参考に契約更新について理解し、大家さんも入居者も納得のいく更新ができるようにしましょう。

賃貸借契約の更新について理解を深め、
トラブルを回避し長期入居を獲得しましょう!

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この記事の監修者

逆瀬川 勇造
逆瀬川 勇造

AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士/相続管理士

明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学在学中に2級FP技能士資格を取得。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より父親の経営する住宅会社に入社し、住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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