賃貸アパートの害虫駆除。責任や費用負担は大家?それとも入居者?

2024.11.18更新

この記事の監修者

弘中 純一
弘中 純一

宅地建物取引士/一級建築士

賃貸アパートの害虫駆除。責任や費用負担は大家?それとも入居者?

賃貸物件の「害虫」に関するクレームについて、害虫駆除の責任は大家さんと入居者どちらにある?法律上の視点も含め解説します。

この記事のポイント
  • 害虫駆除の費用負担はケースバイケース。
  • 大家さんはできる限り害虫の侵入を防ぐ対策を行っておきましょう。
  • 害虫駆除を業者に依頼する場合は業者選定を慎重に!

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目次

害虫が発生しやすい物件はある?

四季の移り変わる日本は年間を通して、さまざまな虫が人の生活環境と一体となって生存しています。なかでも “害虫” は不快なもので健康面でも悪影響を与えるケースがあり、賃貸住宅では入居者から苦情を訴えられる大家さんも少なくありません。現代の住宅は気密性が高く、虫が室内に侵入する経路はきわめて少ないと考えてしまいがちですが、実は虫の侵入機会は意外と多く、私たちが気付いていないだけなのです。

・窓の開け閉め
・玄関ドアの開け閉め
・外出から帰って来た時、衣服に付着していた
・換気口のすき間などから
・小屋裏へ侵入した虫が電気の配線を伝わって照明器具へ
・給排水管など壁や床などの貫通部のすき間から

このように、虫の侵入する経路はたくさんあります。とくに周辺に草むらや林など、虫が生息しやすい環境がある場合は、虫の発生を防ぐことは不可能だといえるでしょう。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造と、住宅の構造の種類を問わず、体の小さな虫の侵入防止は、大変難しいことなのです。

害虫駆除の方法

害虫の駆除は専門業者に依頼するか、もしくは専用の薬剤などをホームセンターで購入できるので、大家さんや管理会社が駆除することも可能でしょう。代表的な害虫の駆除方法についてお伝えします。

ゴキブリ・アリ・ムカデなどの駆除

ゴキブリやアリ、ムカデなどは、大変不快な虫であり、また以下のような危険性も指摘できます。
ゴキブリ雑菌や細菌を外部から持ち込み、食中毒や喘息・アレルギーの原因と
なることもあります。
アリコロニーを作ると室内に大量発生する場合があります。
ムカデ毒性があり、嚙まれた際には激しい痛みやアナフィラキシーショックを
起こすこともあります。
駆除の方法としては殺虫剤を使用するのがよいでしょう。巣の存在や侵入経路がわからない場合は、専門家に依頼するほうが速やかに解決できます。駆除後の侵入防止は、入居者に注意を促し生ゴミの処理や保管方法に気を付けてもらったり、待ち伏せタイプの殺虫剤を置いてもらったりすると効果が期待できるでしょう。

ハチ・シロアリの駆除

スズメバチやシロアリは人命に関わるほどの危険性があり、建物の土台・柱などや基礎を侵食し、耐震性能の低下を引き起こす恐れもあります

駆除するには専門的な知識と道具や薬剤が必要で、入居者や大家さんがみずから行うことは大変危険です。スズメバチやシロアリを発見したら、迷わず専門家に依頼することが望ましく、管理会社に相談するようおすすめします

カラスの駆除

アパートなどでは、ゴミステーションにやってくるカラスが悩みの種です。カラスの狙いはゴミの中に混じる生ゴミや残飯です。カラスの被害はアジアの南側に位置する諸国で見られ、日本より高緯度の欧米諸国では見られません。

また、駆除による個体数の減少成功例はないため、カラスを駆除することは難しいでしょう。むしろ、カラスが活動する時間帯を外した夜間・早朝のゴミ収集など、カラスの生態を利用した対策が効果的といわれます。ゴミの戸別収集や散乱防止対策など、ゴミとカラスとを分断させる対策がよいでしょう。

害獣の駆除方法

東京都内では最近ハクビシンの目撃が多く、話題になっています。ハクビシンは建物の天井裏に侵入することが多く、いったん侵入されると追い出すことは難しく、住人は大変な被害に遭うこともあります。

また、ハクビシンは鳥獣保護管理法により捕獲が禁止されているため、住民がみずから駆除を行うことは禁止されています。そのため、専門家に依頼して「有害鳥獣駆除の申請」を行ったうえで駆除作業を行わなければなりません

入居者が暮らす部屋で害虫が発生!害虫駆除の費用負担は誰?

入居者の部屋に害虫が発生した場合、駆除もしくは侵入を防ぐことは、一義的に入居者が行うことです。害虫の発生原因が入居者の生活の仕方によるものである場合は、善管注意義務を問われることもあります。

善管注意義務とは、賃貸物件の所有者である大家さんと同様の「管理者としての注意義務」が入居者にもあり、一定の責任を果たさなければなりません。

ただし、隣室がゴミ屋敷同然のため害虫発生の原因になっている、建物に欠陥があり虫が侵入しやすくなっているなど、入居者の負担にできない場合もあります。大家さんが負担するケースについて、以下で具体的に解説します。

大家さんが負担するケース

大家さんには民法上『賃借人に使用および収益させる義務』があり、虫の発生や侵入により入居者が本来の住宅として使用できない状態であれば、その状態を改善させる責任があります

しかし、相手は「虫」という自然なものであり、人為的に起こった事象ではありません。害虫駆除の専門家業者に依頼するなど、大家さんとしてできる限りの対応を行っても完全に駆除できない場合もあります。

したがって、常識的に考えられる範囲の対応を大家さんが行ったのであれば、それ以上の対応をしなければならないという法律上の解釈はないでしょう。以上のような原則論を前提とすると、大家さんが害虫駆除の負担をしなければならないケースは限定的であり、次のようなことが考えられます。

1.入居から間もなくのことであり、以前から原因があったと考えられる
2.配管設備などに問題があり、虫の侵入がしやすい状態だった
3.隣室が「ゴミ屋敷」状態であり、虫が発生した部屋の入居者には落ち度がなかった
4.建物や設備関係に何らかの異常があり、虫が発生した

負担の区分は簡単に話し合いで解決しないこともあります。時間をかけていると余計にこじれる原因ともなるため、早めに専門家に相談することも重要です。

契約書内に特約を設けることも可能

害虫発生などの自然現象に起因する賃貸住宅の不具合については、賃貸借契約書において責任負担を明確にする必要もあるでしょう。

・大家さんの免責に該当する条件を設定する
・入居者の善管注意義務について明文化する

このように『すべてを大家さんの責任』にしようとする考え方に歯止めをかけ、大家さんと入居者がともに協力して「害虫の発生」という、自然現象に対処する姿勢と認識を働きかける方法も有効でしょう。

害虫の侵入を予防するために大家さんがするべき対策

前述したように大家さんには、賃借人に使用および収益させる義務があります。できるだけ害虫の侵入を防ぐ対策をすることも、その一環といえるでしょう。

また、害虫の中にはシロアリのように建物の構造体に悪い影響を与え、放置すると賃貸経営そのものができなくなってしまうものも存在します。そのため、大家さんはできる限りの対策を率先して行う必要があるでしょう。

入居者の入居前に侵入経路をふさぐ

すでに空室で虫の発生が確認されており、入居者の募集を行っている場合は、侵入経路を探索しましょう。侵入口を遮断すると、虫が室内に入り込むことを防ぐことも可能です。

アリであれば土台や基礎の部分に蟻道がある可能性が高く、カメムシの類であれば窓周りや小屋裏換気口を見てみると侵入経路を見つけられるものです。侵入経路が確定できたら、すき間を埋めたり防虫網を取り付けたりして対策をします。入居前であれば、よりよい状態で施工ができるでしょう。

また、室内に巣のある可能性が高い場合は、入居後に生活をしている状態で行う駆除作業よりも、空室の時のほうが効果は高くなります。さらに、窓周りや天井照明器具の周りや壁のコンセント周りなど、侵入経路になりそうな器具取り付け部分の点検も行い、侵入の痕跡がないかを確認しましょう

退去のタイミングでクリーニングを行う

虫の発生があった部屋あるいは可能性のある場合は、念入りにクリーニングを行うことも重要です。給水管・排水管の貫通部分は虫の通り道にもなっています。退去後のクリーニングを徹底し、隠れている部分の洗浄も行い、すき間にはシーリングを施すと、立派な害虫対策となるでしょう。

換気口は必ずいったん外して周りの壁の状態を確認し、虫が侵入した形跡を確認し、すき間が生じる可能性があればこちらも同様に、シーリングを施して害虫の侵入防止を図るのがおすすめです。

退去のタイミングで害虫駆除の業者に依頼する

退去前から虫の発生が確認されていた部屋については、虫の巣が室内にある可能性もあるため、殺虫剤の燻蒸・燻煙などにより発生源を除去することが重要です。空室状態のほうが駆除作業はしやすく、効果が上がることはいうまでもありません。さらに、入居後のクレームをできるだけ少なくすることにもつながります。

退去後の駆除作業により隣室への虫の侵入防止効果も期待できます。費用は対象となる害虫の種類や部屋の広さにもよりますが、3万円前後が多いようです

害虫駆除業者に依頼する際は注意が必要

害虫駆除業者に依頼する場合は、業者の選択を慎重にしなければなりません。害虫駆除業者には資格や免許などはないため、経験の浅い素人同然の業者も存在します。

また、多くの人が依頼する内容の仕事ではないため、相場価格というものも存在しません。不当に高い金額を請求される可能性もあるため、管理会社にも相談し業者選択を行うようにしましょう

害虫被害の大きさによっては、建物の構造に問題が出ることも

ハチ・シロアリによる被害にあった物件は、建物の基礎が侵食され、耐震性能が低下している恐れがあります。その場合、入居者が安心・安全に過ごせるように、建て替えをするのがおすすめです。

また、カラスやハクビシンが建物近辺に住み着いた場合、オーナーは常に害獣対策に追われ、心身ともに負担がかかり続けます。住居以外での土地活用を検討するのも方法のひとつです。

「害虫被害で疲れ切ってしまい余力がない」という方でも、優良ハウスメーカーがパートナーとなり、設計プラン~管理まで一貫して対応をしてくれるので安心して任せられます。まずは土地活用プラン一括請求をして、比較・検討をしましょう。

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まとめ

害虫対策に対する負担区分や責任の所在などについて、明確な基準や規定などは存在しません。法律的には薬剤の有効性や安全性などに関する規制があるだけです。

大家さんは快適な住環境を提供し、対価として入居者が家賃を支払うという仕組みの中で、害虫が発生することによる住環境の悪化に対し、どのように折り合いを付けるかが問題です。

家賃を支払う・受け取るという関係性からは、どうしても「責任」とか「保障」などの考え方が生まれてきます。簡単に解決できるものではありませんが、大家さんとしてはできる限りの対応をしてあげることが大切なことでしょう。

所有物件の害虫駆除、責任や費用負担は誰に?
改めて確認していきましょう!

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この記事の監修者

弘中 純一
弘中 純一

宅地建物取引士/一級建築士

宅建取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年。住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動中。さまざまな情報が多い不動産業界で正しい情報発信に努めている。

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